俺は今両腕を女の子に抱きつかれている状態で玄関にいる。ツナミやタズナにものすごく変な視線を送られている…だからこの状態のまま入りたくなかったのに…
「おかえり、ナルト君。ところでその両脇の子達は誰かしら?」
ツナミに聞かれた。そりゃそうだよな…っていうかできればこんな形で紹介はしたくなかったんだけど。
「ただいまだってばよ。この子達は頼んでおいた援軍の木の葉の忍者だってばよ。右にいるのがナズナ、左にいるのが多由也だ。あとは担当上忍でシスイさんがきてるんだけど…早く入ってきてくれってばよ!!」
後ろで面白がって見てるシスイに向かって叫んだ。できれば早くこの状態から抜け出したい…恥ずかしいったらありゃしない。
「はいはい…今紹介に預かりました、うちはシスイです。第七班の援軍としてきました。今日から任務終了までよろしくお願いします」
「よろしくおねがいします。私はツナミといいます、あっちにいるのが父のタズナです」
「よろしく頼むのお」
そんな感じであいさつがかわされた。だけど相変わらず目線が痛い…この状況をどうにかしなければ…
「そ、そうだツナミさん。なんか手伝うことあるか? 人数増えちゃったし手伝わないと何か悪いからさ。俺ってば家事全般できるからなんでも押し付けてもらえばやるってばよ」
そう言うとツナミさんの顔が驚いたような感じになった。なんでだ…
「ナルト君が家事全般できるなんて意外ね…見た感じできなさそうだし…」
「確かに見た目からは想像つかないかも」
「うちもそう思う」
な…確かに原作のナルトはそんな感じだけど…俺はちゃんとやってるぞ。っていうか…
「なんだか、ものすごく失礼なことを言われた気がする…」
「ふふふ、ごめんなさいね。そうね…じゃあ夕飯作ってくれないかしら? 私洗濯物たたまなきゃいけないから、お願いできる?」
「了解だってばよ!!」
料理は得意だし大人数のも作るの慣れてるから楽だな。
「食材は冷蔵庫に入ってるものを使ってくれればいいわ。少ないかもしれないけど…」
「それなら平気だってばよ。人数増えて迷惑かからないように影分身に木の葉で食材買ってこさせてあるからさ。じゃあ早速作るってばよ」
そうして料理を始めた。
料理を始めてしばらく経った。今日のメニューはカレーとサラダ、さつまいものポタージュだ。後は味見をして最終調整ぐらいにまできている。すると後ろから…
「ねえ、ナルト」
振り向いてみるとそこにはサクラがいた。
「ん? なんだってばよ?」
「ねえ、ちょっと味見させてよ。いい匂いするからお腹減っちゃって…それに料理ちゃんとできてるか心配だし…」
食い意地張ってんのかこいつは…そんなんじゃもてないぞー。まあ俺には関係ないか。
「いいってばよ。ほら」
小皿に少量のカレーをいれて渡した。
「ありがと」
そう言ってサクラがカレーをすすっている。さて、反応はどうかな?
「味はどう?」
「お、美味しい…」
美味しいなら味付けはこんなんでいいかな。後は盛り付けるだけ。ん? サクラが固まってるのはなんだ?
「サクラ、どうしたんだってばよ?」
「おにぎり貰ったときはただお腹が空いてたからって思ってたのに…なんだか私の中のなにかが崩れていくわ…」
「あー、それわかるよ。私も初めてナルっちの料理食べたときそうなったし…今でもたまになるよ…」
ナズナがサクラに同意してるけど…俺なんかしたかな? まあいいやとりあえずよそっちゃおう。
「よし、できたってばよ!!席についてくれってばよ」
俺がそう言うとそれぞれ席についていく。俺はみんなの前に料理を置いていく。よし、みんな揃ったかな。
「じゃあ食べてくれってばよ」
「「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」」
そうして食事を始めると…
「「「「「(…めっちゃ美味しい!?だと!?)」」」」」
「やっぱりナルっちは料理上手いよねー」
「なんでこんなに料理上手いの…」
「うちも同感」
「何回か母さんに教わってるの見たぜ」
それぞれの反応があった。初めて食べる連中はなんかすごい顔してるけど気にしない。まあ自分で食べて今日もいい感じに出来てるから満足かな。そんなこと考えていると…
「ねえ、ナルト…今度私に料理教えてれない?」
「あ、私も私も!!」
「うちにも…」
三人のくノ一に言われた。まあいいけどね。
「いいってばよ。じゃあ次作るときから教えるからそのときにきてくれってばよ」
「「「うん!!」」」
そんなこんなで食事の時間が過ぎていった…
食事の時間が終わり、みんなでお茶を飲みながらゆっくりしていた。食後のお茶は美味しいね。そんなことを考えていると…
「あのー…なんで破れた写真なんか飾ってるんですか? イナリ君食事中ずっとこれ見てたけど、この破れたとこなんか誰かを意図的に破ったって感じよね」
サクラがそう言うとタズナ達の空気が変わった。結構聞きにくそうなことを何食わぬ顔して聞いてんな…度胸があるのかただ単に何も考えずにそのまま聞いたかだな。まあおそらく後者だろうけど。
「…夫よ」
ツナミが答えた。いつもの明るい感じはなく、暗い印象を受ける感じだった。
「かつて町で英雄と呼ばれた男じゃ…」
タズナがそう言うとイナリが席を立った。
「イナリ! どこ行くの?」
ツナミがイナリに聞いたが、イナリはそれに答えずに部屋から出て言ってしまった。ツナミはそれを追いかけて部屋の扉を開けながら…
「父さん!!イナリの前ではあの人の話はしないでっていつも!!…もう!!」
そう言って出て行ってしまった…部屋には暗い雰囲気が広がる。俺こういうの慣れないな…まあ慣れたくもないけど。
「イナリ君。どうしたっていうの?」
ここまできて気づかないのか…どう考えてもその写真のこと言ったやつが原因だろうに…
「何か訳ありのようですね」
カカシが少し呆れながら言っていた。まあ、そうなるよな…こいつ本当に座学一位だったのかよ。それとも座学だけで人の気持ちは読めないとかそんなとこか。
「イナリには血の繋がらない父親がいた…超仲がよく、本当の親子のようじゃった。あの頃のイナリは本当によく笑う子じゃった。…しかし…」
タズナがそこで涙を流し始めた…まあ辛いよな…孫が一切笑わなくなってしまうほどの出来事なんて…
「…しかし、イナリは変わってしまったんじゃ。父親のあの事件以来…」
そうしてタズナはその父親と事件について話始めた。まあ俺も原作読んでたときはすごく悲惨な事件だと思った。多分イナリにとって自分の支えとなっていた人を一瞬で奪われてしまった。それも目の前で。でも今は少し違う。なんで少しでも自分達であの人の代わりになろうと思う人やどうにかして解決しようと思った人が少なかったのか。なぜすぐに諦めてしまったのか。いろいろ思ってしまう。確かに失ったことは辛いけどそのままだったら辛いまま何も変わらない。辛くても踏ん張って努力すれば少しは希望が見える。俺はこの世界にきてそれを強く実感した。原作知識知ってたからというのもあるだろうが、そうだったとしても俺が行動しなければ変わらなかったはずだし…変わるためにはまず行動しなきゃだめなんだよな。そんなことを考えていると話が終わったみたいだ。なんかよくわかんないけど精神が少し体の方に引っ張られたかな? なんだか無性にイナリを変えたくなった。原作どうのこうの関係なく…まあ、やりますか。そうして俺は席を立ち玄関の方に歩き出した。
「ナルっち。どこに行くの?」
「まあ、ちょっと修行でもしてこようかなと」
「やめとけナルト。こんな時間じゃ辺りも真っ暗だろう。明日からでもいいんじゃないか?」
カカシに止められた。けど関係ないね。
「いや、今からやるってばよ。今日は仕事やらなんやらで自分の修行はあんまり出来てないし…それにイナリに教えてやらねえとな。何もしなければ何も変わらないってことを…それには行動で見せることしか俺は知らないからね。じゃあ行ってくる」
そう言って俺は修行をしにタズナの家を出た。
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