俺は今サスケ達のところに飛雷神で飛んできたところだ。見失ってはいないみたいだな。
「ナルトか。そっちはどうなったんだ?」
「全員捕まえたんだけどね…なんか明日の任務の関係者だったっぽい。あの後カカシ先生がきて説明されたってばよ」
「え…じゃあ私達はどうすればいいの?」
なんかBarに入ったみたいだしこのままの人数で行くのはまずいか…
「雪絵さんを連れ戻さなきゃいけないらしいからとりあえずあの店から出ないように俺が時間稼ぎしておくから依頼人とカカシ先生を連れてきてくんねえか? 二人共あんなところ入るのは嫌だろ? 酔っぱらいがいるかも知んねえし」
「…確かに酔っぱらいはゴメンだぜ。あの時のお前の苦労はすごく辛そうだったしな…」
「まあナルトに任せるわ。カカシ先生はどこにいるの?」
「映画館の近くにいるってばよ。じゃあ頼むぜ」
「わかった」
「任せて」
そう言って二人はカカシのところに向かっていった。とりあえずBarに入るなら大人に変化して言った方がいいよな。波狐の時の姿を大人にした感じでいいだろ。俺はその場で変化を行い店に入っていった。
「いらっしゃいませ、一名様ですか?」
「ああ」
「では、カウンターの空いてるお好きな席にお座りください」
そうしてすんなり店に入ることができた。特に変化を警戒してる感じはなかったな…まあいいやとりあえず雪絵の近くに座ればいいだろう。そうして一席分空けて雪絵の右隣に座った。
「ご注文はなににいたしますか?」
…Barに入った以上お酒頼まないと駄目か。転生前は飲んだことあるけどこっちに来てからは飲んだことないしな。しかもこの体が酒に強いかどうかもわかんない上に未成年だし。酔って変なことにならないようにしなきゃな…
「梅酒を一つ」
「梅酒ですね。かしこまりました」
そうすると店員は離れていった。梅酒ならちびちび飲んでいけば大丈夫だろう。さて、声を掛けてみるか。
「…昼間から一人酒ですか? 女性でいらっしゃるのに…」
「…女性とか男性とかは関係ないと思うわ。それにあなたも一人酒でしょう? あなたも人のこと言える義理じゃないわ」
「ハハハ…そうですね」
そんな会話をしていると店員が寄ってきて…
「梅酒になります」
「ああ、どうも」
俺はそう言って梅酒を一口飲んでみた。やばいかも…体が子供だからかアルコールが強く感じる。これは俺が酔うかもしれない…そんなことを考えていると…
「そういえば、私のこと知ってる?」
雪絵が問いかけてきた。ストレートに知ってるとは言わない方がいいかな。
「どっかで見たような気もしますが…有名な方なんですか?」
「一応これでも名前は知られている方なのよ? 映画とかテレビとかは見ないの?」
「ほとんど見る機会はないですね…いろいろと忙しい身でして。今日は久しぶりに休暇が取れたのでここにいますが…」
とりあえずそう言っておけば怪しまれないだろう。一応本当に休暇中だし…嘘は言ってないぞ。
「そうなのね…これでも私女優やってるのよ。自分で言うのもなんだけど人気はある方なのよ」
「女優さんでいらしたんですか。美しい方だとは思いましたがそれなら納得できますね」
「ふふふ…今のは口説き文句かしら?」
「べ、別にそういうわけでは…」
「ふふっ、冗談よ冗談。あなたがそういうことしようとしてないことぐらい見ればわかるわよ。あなた、からかいがいがあるわね」
なんだっていうんだ…俺ってそんなにわかりやすい顔してるかな? 少し気を付けよう…
「…そういえばあなたって珍しい髪の色してるわね。不思議な感じがするわ」
「母譲りの髪の色なんだそうです」
波狐の時の髪の色は母ちゃんを参考にしてるからこう言ってもいいだろう。
「なんだそうですってあなた母親を見たことないの?」
「ええ、生まれた時に両親とも亡くなってしまったと聞いています」
「そう…なんか嫌なこと思い出させちゃったわね。ごめんなさいね」
「気にしないで大丈夫ですよ。ところであなたは女優でいらっしゃるのになぜ昼間からお酒を飲んでいるんですか? 嫌なことがあったり悩みでもあるんですか?」
いろいろ聞いて時間稼いでるけど…それにしてもサスケ達遅いな…なにしてるんだあいつら。グラスの梅酒が空になってしまうよ…二杯も飲みたくはない。
「そうね…次の仕事が決まったんだけど撮影する場所を聞かされてそこに行きたくないのよ。だからここに隠れてるっていう方が正しいわね」
「そうなんですか…嫌な思い出のある場所なんですか?」
「…まあ、そうね。故郷であり父を殺されてしまった場所であるわね」
「そうですか…それは行きたくはない場所ですね。でも仕事はお受けになっているのでしょう?」
「そうね。最初は行くなんて聞かされてなかったからね。雪の国に行くなんて」
三太夫が勧めたからそこになったんだっけか。劇場版はそこまで何回も見てたわけじゃねえからあんまり確証はないんだけど…
「雪の国…私は行ったことはないですが一年中冬だとか」
「そうね。その通りよ。でも父は信じていればいつか春がくると言っていたわ。結局春なんて一度もこないまま父は殺され私は国外に逃げたわ。もう十年になるわね」
確かカカシが助け出したんだっけ…十年か…俺が九喇嘛と話して和解しようとしてた頃か…
「私はその間一度も帰ってないわ。なんだか嫌な夢を見たのよ…私が氷漬けになってて次には周りが火に包まれて…そして」
「死んでしまう?」
「恐らくね。火に包まれてそこで途切れてしまうんだけど…おそらくそうなってしまう場所が…」
「雪の国であるということですか…」
「そういうこと。だから行く気はないの…私を連れて行こうとしても無駄よ。あなたは三太夫に雇われてるんでしょう?」
「なんのことでしょうか?」
この人…まさか気づいてるのか? 変なところはなかったはず…
「ふふふ…隠しても無駄よ。あなた今一瞬だけど目が泳いだもの」
な!?マジかよ…この人に演技していてもこれ以上は無理か。というかなんであいつらこないんだ…カカシがなんか言ったのか? とりあえず今の状況をどうにかしないといけないな。
「…いつから気づいていたんです?」
「あなたが梅酒を飲んだ時からかしらね。お酒を飲み慣れてない感じがしたわ。なんだか驚いてる感じもあったし」
「よく見てるんですね…隠していたつもりだったんですが…」
「これでも女優なのよ。素人の演技ぐらいは見抜けるわよ。まああなたは上手い方だったわよ」
この人は騙せなかったのか…結構演技には自信あったんだけどな。
「まあ、職業柄演技することもありましたからね…あなたには意味をなさなかったようですが」
「なんの仕事をしてるの?」
「木の葉の里の忍者です。あなたの言う通り三太夫さんに雇われたね」
「へえ…忍者だったのね。どうりで演技が上手いわけね。梅酒飲んだときの違和感がなかったらそこまで注意して見なかったわ」
「普段というか今まで飲んだことがなかったので…」
普段飲んでたら怒られるよ…主に年齢のことで。
「そこが失敗した点ということね。飲み慣らさなくちゃ駄目よ」
「ハハハ…そういえばなんで俺が雇われてるってわかったのにいろいろ話してくれたんです?」
すごく気になる。気づいた時点で俺のことを無視してもよかったはずなのに…
「そうね…なんとなくだけどあなたなら話してもいいかもと思ったのよ。理由はそんなところよ。不思議な感じがしたのは確かなのよ」
「不思議な感じですか…まあその感覚は間違いじゃないですね。俺は普通の人間ではないと思いますし」
「普通の人間じゃない? どういうことなの?」
話しちゃってもいいかな…ん? なんか怪しい気配の奴が入ってきたな…雪絵の方を観察してるような感じだ。雪忍の奴か…そろそろ外に出た方がいいかもしれないな。俺の話もあんまり多くの人には聞かせるべきものじゃないしね。今は。
「話すのはいいんですが…ちょっと外に出ませんか? ここだと気分が暗くなりますし」
「そうね…いいわよ」
「まあ、見破ったのに話してくれたお礼ではありませんが…ここの会計は俺が支払わせてもらいますよ」
「あら、気が利くのね。ならお言葉に甘えるわ」
そうして二人で外に出た。少し歩いて行くと…
「ねえ、そろそろはなしてくれてもいいんじゃない?」
「そうですね。その前に…」
俺は変化を解くことにした。いつまでもこのままは辛いし隠してるのもあれだしね。
「これが俺の本当の姿です」
「あんた…まだ子供だったのね。髪の色も目の色も変えていたのね。お酒飲んだことないのも当然だったのね。納得だわ」
「まあ、話すにも隠したままじゃあれですしね。それで俺の秘密というのはですね…九尾ってご存知ですか?」
「聞いたことあるわ。たしか十二年前に木の葉の里を襲ったってやつでしょ? 映画撮影の現場で木の葉出身の俳優が言っていたわ。それがなにか関係あるの?」
なるほど…雪の国事態には知られてないのか。
「ええ、その九尾はですね…俺に封印されたんですよ」
「そうなのね。確かに普通の人間じゃないわね」
「…そこまで驚かないんですね」
もっと引かれたりするかと思ったんだけど…
「さっきまで話してて別に恐怖もなにも感じなかったしね。それとも驚いて欲しかった?」
「いえ、そういうわけじゃありませんけど…大抵の人は驚くことが多かったので。まあそういうことです」
雪忍の気配はもうついてきてはいないな…
「まあいいわ。それに外に出たのはこの話をするだけじゃないんでしょう?」
「…本当に鋭いですね。そうです。あなたのことを観察するような目をしていた者がいました。気配の感じからして忍者ですね。特にあなたのしているペンダントを見ていました。なにか関係がありますか?」
「…あなたになら話そうかしら。このペンダントは六角水晶というものなの。父からもらったわ。父は雪の国の主君だった。そして私の本当の名前は風花小雪。雪の国の跡取りってとこかしら。まあ今は雪の国は父の弟に支配されてるんだけど」
「なるほど…ということはさっきの忍者はその弟の手先の可能性が高いですね…雪忍というのは噂でしか聞いたことないですが。となるとこのまま逃げてても危険ですよ? 隙を見計らってあなたを誘拐しようとするんじゃないですか?」
まあ映画監督が雇ったボディーガード程度じゃいてもいなくてもあんまりかわらないけど…
「そうね…」
「だったら俺達と一緒に雪の国に行ってしまってその弟達を倒してしまいませんか? その方がいいと思いますよ。どうせやるなら強い味方がいた方が心強いでしょ?」
「確かにね…どうせなら一緒に来てもらった方がいいかもね。あなたも来てくれるみたいだし…わかったわ行くわ。そういえばあなたの名前を聞いてなかったわね」
確かにこんなに話したのに名乗ってなかったよ…
「俺の名前はうずまきナルト。よろしくお願いしますね」
「ナルトね。覚えたわ。じゃあ護衛よろしくね」
「はい、あなたのことは死んでも守りましょう。ではみんなのいる場所に行きましょうか。俺の肩に手を置いてください」
「? わかったわ。これでいいかしら?」
「ええ、では行きます」
そして俺はカカシのところに飛んだ…
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