俺は今船内の大部屋にいる。カカシが全員を集めたのだ。小雪は意識を失ってしまったらしく別の部屋で寝ているが。正直俺も寝ていたい…戦闘中はアドレナリン出てて何も感じず戦えていたが今になって体に反動が来たらしい。めちゃくちゃ気分が悪くなった…それに吐き気まで…話が短めだと助かるな。
「全員集まったようですね…いきなりですが三太夫さん。あなた知っていたんですね?」
「…はい」
「彼女が雪の国に帰ってきたらどんな自体になるか予想できたはずだ」
「姫に…この国に帰ってきてもらうためにはこうするしかなかったのです」
本当にそうなのかな? 先に今支配してる奴らをどっかの里に依頼して倒してからなら安心して連れ戻せたんじゃないのかな? 自分たちの手で取り戻したいんだろうけどさ…
「雪絵さんは風雲姫を演じてるだけであって本物のお姫様じゃないですよね?」
「…本物なんだってばよ」
「え!?」
「…ナルト。お前知ってたの?」
「知ってたってばよ。船に乗る前から」
Barで本人から聞いたしね…
「なんで俺に教えてくれないのさ…」
「こっちが苦労してんのにくつろいでた仕返しだってばよ」
「あ、そう…ま、ナルトの言う通り女優富士風雪絵とは仮の名で本当は雪の国のお世継ぎ風花小雪姫様なんだ」
「な!?」
「ええ!?」
サスケとサクラが驚いている。驚くのも当たり前か。本物のお姫様を護衛してたなんてな。
「私がお側におりましたのは…」
三太夫が雪の国に起きた事件について話し始めた。知ってるから聞き流してもいいだろう。それにしてもどうすっかな…このあと雪の国に着いたらすぐに戦闘だよな…二日酔いどうにかしなきゃまずいんだけど。二日酔いに効く食べ物ってなんだっけ…ウコンだっけか。ターメリックってウコンだよね。調味料として持ってきてあるから…それをなんとかドリンクにして飲むか。少しでも楽になれば儲けもんだな。この話終わったら俺の部屋行って作ろう。そんなこと考えていると…
「あの時死んでいればよかったのよ」
小雪がそう言いながら入ってきた。
「そんなことおっしゃらないでください。私達にとって姫様が生きておられたのが何よりの希望だったのです」
「生きてはいるけどもう心は死んでいる…あの時以来私の涙は枯れてしまった…」
…涙の演技ができないのはそういうことだというわけか。
「その後私は何とか富士風雪絵のマネージャーとなりずっと姫様を雪の国にお連れする機会を待っていたのです」
「え? それじゃあ俺達はあんたに利用されたってこと?」
「騙していたことはお詫びします。しかしこれも雪の国の民のため…小雪姫様!!ドトウを打ち倒しどうかこの国の新しい主君となってくだされ!!この三太夫命に変えても姫様をお守りいたします!!どうか我らと共に立ち上がってくだされ!!」
三太夫が小雪に向かって土下座している。雪の国の民のためって言ってるけど…小雪の気持ちが考えられてない気がする。元当主の娘だからといって一方的に押し付けるのは良くないと思うんだよなあ。
「嫌よ…冗談じゃないわよ」
「しかし…雪の国の民は…」
「そんなの関係ないわ。お断り!!」
「…姫様」
「いい加減諦めなさいよ!!馬鹿じゃないの? あんたがいくら頑張ったってドトウに勝てるわけじゃないじゃない!!」
小雪がそう言い放つと三太夫は言い返せなかった。歯を食いしばり拳を強く握っているのが見えた。少し文句は言いたいけど助け舟を出してやるか…
「じゃあ、俺達が一緒ならどうだ? さっき襲撃してきたやつら程度の集まりなら敵じゃない。ドトウに勝つのだって難しいことじゃない。諦めるには早いと思うってばよ」
「…ナルト殿」
「三太夫さん、あなたにも言いたいことがある。雪の国の民のためっていうのはわかるけど小雪さんの気持ちも考えてやれよ。小雪さんには思い出しただけで気を失ってしまう程のトラウマがこの地にある。君主を務めるのだって大変なことのはずだ。一方的に押し付けてもそれは駄目だってばよ。そこらへんを他の雪の国の民達ともう一回考えてみてくれ」
「!?…そうですね。わかりました…」
三太夫がなにかハッとなった。今まで連れ戻そうとすることに必死でそこまで気が回らなかったんだろうけど…言っておかないといけない気がしたからね。
「私はまだドトウに勝てるって信用してないんだけど…」
「小雪さん、どちらにしてももう逃げるという選択肢はないですよ。さっきの襲撃で確信した…おそらくドトウはあなたがどこにいても襲ってくるでしょう。なら戦力のいる今勝負を仕掛けた方がいいと思いますよ」
「……」
小雪が無言で佇んでいる。まあじっくり考えてくれればいいよな…そろそろ俺の体調がまずい。早くウコンドリンク作って飲まなきゃ…俺は席を立ち自分の部屋に向かおうとした。
「待て、ナルト。どこに行く?」
サスケに止められた。何も言わずには無理だったか…
「…次の戦闘に備えて体調を整えてくる。このままじゃそのうち戦闘に支障をきたしそうだからな」
そう言って部屋に向かっていった。
その日の夜、いつも小雪の酒の相手に呼ばれる時間になってもなにもなかった。今日飲まなければ明日なんとかなりそうだ。ウコンも結構効き目あったし寝る前にもう一杯飲んでおけば明日には全快になるな。そんなことを考えていると…
“トントン”
ドアをノックする音が聞こえた。あれ…小雪きちゃったのか? でもいつもとノックする感じが違うな…いつもなら思いっきりドンドンってかなりの力でドア叩いてくるのに…そう思いながらドアを開けると…
「…ちょっと話いいかしら?」
「小雪さん…いいですよ。そっちの部屋行けばいいですか?」
「あんたの部屋でいいわよ…それとそろそろ敬語使うのはやめにしない? 何回も飲んでる仲じゃない…女優だとか姫だとかは気にして欲しくないわ」
敬語じゃなくていいのね。一応気を使ってたつもりだったんだけど…少しは信頼してくれたってことなのかな?
「わかったってばよ。じゃあどうぞ」
俺はそう言って部屋の中に小雪を案内した。小雪には椅子に座ってもらい俺はベッドに座っている。
「…話ってなんなんだ? 小雪さん」
「あんたは決められた運命ってどう思う?」
いきなり凄いこと聞いてくるな…どう答えた方がいいんだろうか…
「私は確かに雪の国の長の娘として生まれてきたわ…けどそれだけで世継ぎに決められるなんて…」
「運命なんて誰かが決めるもんじゃねえ」
「え!?」
「諦めずに自分の決めた道をまっすぐ進んで行くんだ。そうすれば運命は変えられる」
原作のナルトが常に言ってたことを言った。俺もこっちの世界にきてそれを目標にやってきたつもりなんだけど…俺はその通りにできているんだろううか?
「…たとえどんな運命でも?」
「ああ、諦めずに進み続ければな。俺も…決められた運命みたいなものを持ってるしな…」
「…九尾が封印されてるんだったわね。あんた」
ちゃんと覚えてくれていたみたいだね。
「そう…俺には九尾が封印されている。そのおかげで里の人に迫害されてきた…たくさん悪口を言われたり、暴力を振るわれたりした。最初は俺だって運命のせいにしたかった。けどそこで俺が運命のせいにして諦めちまったら何も変わらない。そう思った。そして俺は人に何を言われようと自分の決めた道を進んできた。そうしたら周りの人が少しずつ認めてくれるようになった。こんな俺にも繋がりができた。仲間ができた。そして運命が変わったと思った。だから俺は運命は絶対に変えられると思う。どんな運命でも」
「そう…でも私は…」
「大丈夫だって。小雪さんは一人じゃない。諦めそうになっても励ましたり手を貸してくれたりする人がいる。もちろん俺もその一人のつもりだ。今から起きることが避けられない運命なら仲間と一緒に乗り越えればいい。後のことなんてその時自分できめればいいんだってばよ。無理に君主になんてならなきゃいいじゃねえか。女優続けたいんならそうすればいい」
俺の思ったことは全部言った。これをどう受け止めるかは小雪次第…
「…避けられないなら一緒にやってくれる仲間と一緒にやってしまえ。その後は私の自由にしろ…か。フフフ…そうね。わかったわ、あんたを信用する。私の運命は私が決めていくわ」
「おう!!手伝うってばよ」
「…ありがとね。話聞いてくれて、じゃ私は戻るわ」
「どういたしまして」
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみだってばよ」
そうして小雪は俺の部屋から去っていった。いい方向に向かったからよかったかな? 明日には雪の国に着く予定だ。しっかり休んで明日に備えよう。そうして俺はベッドに入り眠りについた…
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