FAIRYTAIL 紺桔梗の道標 作:management
とある青年は"人間"によって頭に銃弾で撃ち抜かれ天へと昇るはずだった。
だが彼は一億万分の一と言われる運命のルーレットに当たり、天界と地獄の狭間に立つ神に出会う。
彼は第二の人生を歩む為、神の意見に背くことはなかった。
代償として記憶を奪われ、彼は第二の人生『魔法の世界』へと転生する。
一方、神は彼の名と特典を決め、薄く笑っていた。
が、その直後の出来事で緊張した趣で彼女は空間を操作したのであった。
群青髪が揺れ、膝丈まで伸びるワンピースが風に逆らわずに揺れ動く。
彼女の視線の先には、愛する我が子。
彼女と彼の、希望の子。
ーー
エレンが産まれて早一年。彼は順調に成長していった。
誰かの手を借りれば立つことができるようになり、近いうちに自身の足で立つこともできるであろう。
ウィーネは今日も彼に手を貸す。
母親という温もりを求めるエレンは、その丸々とした目で今日も彼女を見つめる。
「エレン、おいで」
とは言っても、まだ彼女の手を借りなければ容易に立つことはできない。
いずれ立つことを願い、彼女は今日も生きていく。
「ウィーネ」
彼女の愛する夫が帰ってきた。
オシリスは腰に短刀を指し、ガンマンのような格好をしている。一仕事を終えたオシリスは、戯れる家族の元へ近づいた。
ウィーネは頬を綻ばせ、エレンを抱き抱えて彼に走る。
「お帰り、オシリス。今日も討伐の依頼?」
「ああ、明日も討伐だが、遅くなるかもしれない」
「わかったわ。ねぇオシリス、エレンがあなたの元に行きたがっているわ」
「おっ、エレン!可愛いやつだなぁ!」
オシリスがエレンを高く抱き上げる。エレンは嬉しそうに鳴き、父親にその小さな腕を伸ばす。
そよそよと揺れる草むらは彼らを引き立たせ、そよ風は彼らを揺らす。
幸せな時間だった。
彼らは、幸せだったのだ。
このような笑顔が溢れる、この時間が。
人生は、呆気なく崩れていく。
ーー
オシリスはクエストボードを眺めていた。
一週間前くらいから討伐の依頼続きだったので、たまには違うものをやってみようという根端だった。
だがどれも討伐。人探しや落し物の捜索もあるが、報酬が安い。家計を安全にしたいので、今は高い報酬が望ましい。と何か他にないかと目を通していたところに。
「おーい、オシリスー!」
彼を呼ぶ声がした。
オシリスが振り返ると、こちらに走ってきたのは茶髪の男。オシリスと同じ歳と見える。
「シャグラ…」
シャグラは一枚の紙を持っていた。
その紙をオシリスに見せ、彼は迫るように言う。
「なぁオシリス!このクエスト一緒に行かねえか!?」
その黄金の目はオシリスを捉えており、キラキラと輝いていた。
その瞳を見てオシリスは押し黙り、突きつけられたクエスト用紙を手にとって見る。
内容は討伐。報酬も高く、討伐という点だけを除けば彼が望むクエストだった。
だが距離が遠く、このままでは一日では着かない。
「俺のチームだとこのクエストじゃあクリアできないと思ってさ。そこでお前に持ちかけたんだ。場所は遠いけど、報酬が高えから文句なしだぜ!」
「俺は討伐クエストは控えておこうと思っていたんだが…」
この瞳で見つめられると、つい了承してしまう。
シャグラとは長い付き合いで、たまにクエストを一緒に行う仲となっている。彼のチームメイトも心優しく、穏やかで喧嘩は勿論だが、仲が裂けることはない。
一度はチームに誘われたものの、オシリスは一度断っている。チームは有難いのだが、出来るだけ単身でクエストに行った方が何かとやりやすいからだ。
それでも色々なクエストに誘ってくれるシャグラに、オシリスは友として接し、互いに支え合った。
そんな友の願いを、オシリスは捨て切れなかった。
「え、まじでか…」
「少し、妻と話してオッケーだったら知らせるよ」
「お!イチャイチャ夫婦めぇ。ラブラブだな!」
「おい照れるじゃないか」
ウィーネと結婚して四年。仲も良好で、仲違いする心配もない。
シャグラはオシリスとウィーネの結婚式に招待しているので、ウィーネの事は知っている。もちろん彼のチームメイトも。
だから何か悩みがある時にはこうして相談する事もあったのだ。その度にシャグラは「イチャイチャしてるな」を必ず言うが。
今回はウィーネと良く話し合おう。我が子エレンの事もあるし、これ以上彼女に負担はかけられない。
オシリスはシャグラからクエスト用紙を受け取り、早急にギルドを出た。
家へと着いたオシリスは、早速ウィーネに討伐依頼の事を話した。
長旅になること。暫く帰ってこれなくなること。
それまで、エレンを事をよろしく頼む。
全てを話し合え、オシリスはウィーネを見る。
ウィーネは穏やかな顔で、オシリスを見ていた。
「オシリス」
ウィーネの透き通る声が、オシリスの音に残る。
ウィーネは髪を掻き上げ、その銀色の瞳を細めた。
「本音を言うわ。私は、あなたを遠いところに行かせたくない」
「……なら、このクエストは」
「でも」
オシリスの言葉を遮る。
ウィーネは置かれているオシリスの手を、そっと握った。
ほんのりと熱を帯びている彼女の体温に、オシリスは目を奪われる。
「あなたが私達の為に、必死に戦っている。それに、あなたは必ず帰ってきた。どんな事でも、あなたは必ず帰ってきたでしょう?私は、あなたを信じるわ。だからこれだけは約束して」
ウィーネは首に着けられていた青玉のネックレスを外し、それをオシリスに差し出した。
オシリスはネックレスとウィーネを交互に見る。
このネックレスは、ウィーネとオシリスが初めてデートした時に買った思い出の品。ウィーネは肌身離さず身につけていた、大切なものだ。
それを急に差し出されれば、当然混乱する。
ウィーネは薄く微笑み、オシリスの手にネックレスを置き、そっと握り締めた。
そして告げる。
「絶対、笑顔で帰って来て。それを私の元に届けて。私達の、愛の結晶を」
オシリスの首には、彼女と同じブランドの赤玉のネックレスが着けられている。
オシリスはウィーネのネックレスを握りしめ、赤玉のネックレスと同様、自身の首に着けた。
そしてクエスト用紙を手に取り、彼女に顔を寄せる。
「ああ、行ってくる」
そして、彼らは口付けを交わした。
ーー
オシリスとシャグラのチームは依頼主がいる【ヴァグザラード】という街に来ていた。
白い外壁を基調とした街。別名【スノウシティ】と呼ばれている。
オシリスとシャグラに依頼した者の家は、その上。つまり丘の方にある。
合計六人で向かい、彼らは真っ白な岩の道を歩き出した。
この旅は最低でも二日はかかるという。
電車で早めに着くとはいえ、自身の街とは程遠いのだ。これを考慮して彼らはここに来た。
改めて確認しよう。
今日彼らがここに来たのはモンスターの討伐。街に被害が出る前に倒してほしいという依頼だ。
その場所はまだわからないが、この街とは離れたところにあるのだろうと予測できる。
報酬金は1000万J。こんな大金貰っていいのかと心配になる報酬金だ。
とオシリスはクエスト用紙に再度目を通していた。
そしてウィーネに託された青玉のネックレスと自身の赤玉のネックレスを握りしめる。
絶対に帰ってみせる。
オシリスはそう誓い、依頼主の家の扉をノックした。
依頼主の名はアシックス・グレムドランという老人だった。
居間に通してもらい、細かな説明を受けていく。
彼の大まかな依頼はこうだ。
最近、モンスターの出現が多くなっており、深夜帯には雄叫びも響いて迷惑している。それに、いつかこの街を襲うのではないのかという恐怖に押し潰されそうで、息つく暇もないのだという。
せめて安眠できる環境にしてほしいとのことで、依頼したということらしい。
具体的なモンスターの名は知らないが、それが何体もいるということは群れで活動しているのが高い。
この六人しかいない中、不安が高まるがシャグラが大丈夫と後押ししてくれた。
かくして、彼らはこの依頼を完全に受け、雄叫びが上がる森林へと向かった。
「なぁ、オシリス」
その道中、シャグラが突然オシリスを呼んだ。
先頭を歩いていたオシリスはシャグラの方を振り返る。
シャグラは首の後ろで腕を組んで、空を見上げていた。
「夫婦って、どんな感じなんだ?」
この質問にオシリスは目を点とさせる。
いきなり何を聞いているんだこいつは。
シャグラは期待する眼差しでオシリスを見つめていた。
「いや、大切な人が側にいたらさ、人生って変わるもんなのか?」
「………そう、だな」
オシリスは青玉を手のひらに乗せ、愛おしく見つめる。
浮かべるは我が妻。最愛にして、世界でただ一人の自分の愛するもの。
オシリスはポツリとこぼした。
「とても、満たされる。彼女が、あの子がいてくれるだけで、私は笑える。笑い合える。彼女達のいない世界なんて、考えられない」
「おーおーお熱いねー。でも、そんなに大切なら…なんでこのクエスト受けたんだよ。誘った俺が言うことじゃないけど」
「言っただろう?俺は彼女と約束した。俺と彼女の結晶を届けるため、そして約束を守るために、俺はここにいるんだ」
「そんな死にフラグなこと言うなよ…壮大な約束までして」
身震いを感じたシャグラは自身を抱く。
すると彼の隣にいた男が、腹を抱えて笑い出した。
「ははは!おいシャグラ。お前は愛する人がいないからそう言えるんだぜ?そんな壮大な約束。ついやっちまうに決まってるだろうが!」
「……あー、そうか。お前もいたんだったな、ガゼフ」
「それは俺が最初からいないっていう意味か?ああ!?」
「恐らく嫁さんの事だと思うぞ」
冷静に訂正しておくオシリスに、ガゼフは頬を掻く。
逆立った赤髪に頬に大きな古傷をもつ大男は、彼ら屈指の盾だった。彼がいるからこそ今のこのチームがあっても過言ではない。
「いいよなーお前ら。幸せそうで」
「俺らなんてまだ彼女もいないんだぜ?」
「オシリスさーん。その幸せ分けてくださーい」
「それは無理な相談だ。なんならシャグラの幸せをわけてもらえ」
「いやシャグラはいいよ」
「だな」
「シャグラさんの貰うのはちょっと…」
「おいシュン!セイグラード!ミツ!テメェら好き勝手言いやがって…!」
「独身の幸せもらってもなんもならないだろ」
「一言多いぞオシリスゥ!」
思わず笑みが零れる。
このチームはいつもこんな風なのだ。
リーダーのシャグラを皆で弄り倒し、たまに喧嘩が勃発するのだが、最後は笑い合う。理想のチームだ。
オシリスは彼らの姿を見て、自分だけ歩き出す。
目的地は目の前だ。
オシリスは髪を掻き上げた。
ーー
金色の空の下、一人の女性が空間を操る。
手を横に逸れれば文字はなくなり、手を翳せば文字が浮き出てくる。
簡単には解くことのできない、『神』だけが読める文面。
その女性ーー神は浮き出てきた文字を読む。
「ーーーー『イロスタ・カーヴァー』。死因は背後からによる斬殺。死に場所は船。自身の船の甲板で生涯を終えたか。世界は『海賊』……あともう少しだったのにな」
文字を戻し横にスライドすると、また新たな文面が出てくる。
今度は長く、目を通すのにも時間がかかりそうだ。
「ーーーー『春日井冬夜』と『生田流奈』が激突。春日井冬夜は仲間を探し、生田流奈は使命の為降り立ち対面。春日井冬夜は生田流奈を仲間に手を出した敵と判断。生田流奈は相手が誰であろうと攻撃を開始。そのまま『決闘』。勝者は生田流奈。春日井冬夜は生田流奈によって、空間に封じ込められた。………死んではいないが、時間の問題か」
また戻し、スライドする。
休む暇もなく続くこの行程。
亡くなった者達の名を刻み、そしてその文面を消去する。
これが神の使命。
自分が受け持ったものは、自分で片をつけなくてはならない。
「……転生者の激突が増えたな」
ひと段落ついた神は、刻まれた名と死因を見る。
その殆どが『転生者』と『転生者』のぶつかり合いで天へと昇るものが多い。
『魔法』『海賊』『決闘』『バーチャル』『生物』…全ての世界を統合するこの場所に再度きた者は、誰一人いない。
いや、来れるはずがない。
そんな異例な事が起きたら、ここは滅んでしまうかもしれない。
その為にも阻止せねばならない。
この場所を安定させるために。
神は空間の音を聞き、また操作し始めた。
そして文面を見て、空間からステッキを取り出す。
コツ、と音を鳴らし、神は一瞥した。
「ーーーーさて、久しぶりだ。行くとするか」
神は新たな空間を作り出し、その空間へと身を任せた。
ーー
「おらぁ!その程度かモンスターァァああああああ!!」
シャグラの青く光る槍がバッファローのモンスターを次々と倒していく。
今回のモンスターは主にバッファロー、大熊、ゴリラのモンスターが占めていた。
それを散らばって倒していき、順調に数を減らしていっている。
オシリスも自身の魔法を使い、大熊のモンスターを倒していく。
「【
オシリスの腕に連なるように魔法陣が現れ、その腕を囲むように雷が包み込む。
やがてそれは稲妻とかわり、大熊の心臓を一喝する。
彼の魔法は『雷の造形魔法』。体内に眠る雷を創造する魔法だ。彼は腕を突き出し、その腕を支えるように右腕を掴んでいる。造形魔法は、両手で使わなければ安定しないのだ。
オシリスが一体仕留めた途端、大熊モンスターの群れが、一斉にオシリスに襲う。
「【
オシリスがそう唱えると、大熊モンスターの群れの頭上から雷が落ちる。
それらは全て直撃し、大熊モンスターの群れは次々に倒れ伏せる。
「へっ、皆終わったか。これで最後だ!換装、【
シャグラが握られていた青色の槍が消え、次に淡く光る花色の剣が現れる。
シャグラの魔法は『換装』。だが体全体が変わるわけではなく、彼の場合は武器のみが変更出来る。しかし数が限られているので、それらを見極めなければならない。
シャグラの蒼狼の剣がバッファローのモンスターを一突きにし、倒れる。
完全に息の根を止めたことを確認し、一息吐く。
これで討伐は終了、依頼達成だ。
森に入って六時間以上、予想以上に数が多かったので時間がかかり、さらに疲労も溜まって直ぐには動けない。
「っはーーーー!つっかれたぁ!」
「こんなにいるとは思わなかったな…ミツー。後で回復魔法掛けてー…」
「ちょ、俺も疲れてるんであまりコキ使わないで下さいよ…」
さすがの彼らも疲労が溜まり、その場に座り込んでしまった。
オシリスも近場の岩へと座り込み、腕を回す。
この一日は討伐、もう一日は観光して、その翌日に帰るという日程になっている。
しかしこうなると明日は寝るだけになりそうだ。
オシリスは髪を掻き上げ、湧き出た汗を拭き取る。
「一度森を抜けよう。宿に戻って回復した方が安全だ」
「だよなー…これで全部とは限らないし、ガゼフー、シュンー、セイグラードー。お前らある程度回復したら森抜けるぞー」
「あ?おいおいこんなにも疲れたってのに」
「ちなみに直ぐ抜ける。いや今抜ける」
「ふざけんなよシャグラァ!おい!」
シャグラは立ち上がりガゼフとセイグラードを引きづりながら先へと行った。
それを遠目で見ていたシュンとミツは苦笑し、オシリスは薄く笑う。
本当に彼らしい。
彼らも後を追うべく、重い腰を上げた。
その直後。
……………………………ォ。
「ん?」
オシリスは僅かな声を聞き、後ろを振り返った。
だがそこは森林が広がるだけで、何もない。
もうそろそろ暗くなるので影が出ており、その先の様子は伺えない。
少し気になったオシリスだが、シュンに呼ばれてその気は無くなっていった。
影が忍び寄り、いずれそれは覆い尽くす程の闇にと変化するであろう。
誰も止められぬ、ただ一つの増悪によって。
ーー
バンバン投稿しないと言っておきながら投稿する私。
今現在行き詰まっているから、書いてるんだけどね…。
基本はこの作品は5000文字以上です。それくらい目指しています。
そして描写がバンバン出て、オリジナルのも出て、一話二話で終わる人物の名前もあります。名前考えるの、大変なのよ…でも一度決めたことはやらなきゃね。
さて、第二話ですが今回はエレンの父『オシリス』とその友、仲間の『シャグラ』そしてチームの『ガゼフ』『シュン』『セイグラード』『ミツ』の軸の話となります。
彼らはオシリスがギルドに入った時に最初に声をかけてきた者達で、その事があってか、オシリスと良く絡むようになりました。良く飲みに行くこともあります。
ちなみにシャグラ達の方が長いです。
◾︎魔法
オシリス【
シャグラ【換装】
ガゼフ【魔法道具】
シュン【
セイグラード【氷の造形魔法】
ミツ【治癒魔法】
ルピを振るのは迷いましたがそちらの方がいいと思い降りました。
ガゼフ?えーと…ごめんね。