FAIRYTAIL 紺桔梗の道標 作:management
クエストが終わったが、何かの違和感を感じたオシリスは、シャグラ、ガゼフ、セイグラード、シュン、ミツと共に再度森に訪れる。
何事もなかったかのように思えた。
だが彼らの前に、一体の『赤い竜』が立ち塞がる。
『グォォォォオオオオオオオオォォオオオオオオオアアアアアアアアアアアアッ!!』
『赤い竜』が、咆哮を上げて地面から現れる。
竜自体を飲み込みそうなほどの翼。鋭く尖った爪。そして何よりも、この広場を覆い尽くすほどの大きさだった。
オシリス、シャグラ、ガゼフ、シュン、セイグラード、ミツはその咆哮に、その巨体に怯み、目を見開かせていた。
「おいおいおいおい…なんだよありゃあ!!」
シャグラはそう叫ぶ。
唸りを上げている赤い竜は、オシリス達の方を見た。
そして、赤い竜の開かれた口から、黒い炎が渦巻く。
「ッ来るぞォ!!」
ガゼフが皆の前に立ち、魔法道具を発動させた。
シュンは風魔法で空へ飛び上がり、ミツは武器を立て代わりにする。
セイグラードは氷の盾を創り出し、少しでも被害を抑えようとする。
シャグラは換装で炎に耐えられる剣を出し、オシリスはギリギリの所で横に避けようとする。
そして、放たれた。
黒い息吹は真っ直ぐに彼らの元へ放たれる。
「ツァアッ!!」
炎に対抗できる剣を換装させたシャグラが、その息吹に突っ込む。そしてその黒い息吹を裂いた。
だがまた息吹が放たれ、シャグラはその黒い炎に巻き込まれる。
「シャグラァ!」
「くっそ!」
オシリスは横に避け、ガゼフは魔法道具で受け止めようと構える。
ズァアッ!と、黒い炎が魔法道具にもろに当たる。グチャ、グチ、と、魔法道具が溶けていく。
「なっ…!」
「ガゼフ避けろ!そいつは無理だぁ!」
シュンが上空からそう叫ぶ。
ガゼフは舌打ちし、魔法道具を手放した。そしてガゼフが離れた時、黒い炎は一直線に洟たれる。
その先にはーーーー街が。
「っあ」
ミツが気づいたも遅し。
街は、炎により焼かれ、爆発した。
そしてその余波が彼らにも届き、彼らは吹き飛ばされる。
「ぐっ、う!」
特に上空にいたシュンは空を舞い、不安定になり落下していく。
だが寸前で体勢を立て直し、シュンは赤い竜の真上に移動した。
ミツは一瞬で惨状となった街を、ただ呆然と見つめていた。
真っ白だった街並みが、焼け野原となっていく。ここからでも、人々の悲鳴はつん裂くほどに聞こえていた。
「っ助けないと…!」
ミツは街にへと駆け出そうとする。
そんなミツを見つけたセイグラードは、シュンにも向かって叫ぶ。
「ミツ!シュン!街の方に行って、皆を避難させてくれっ!」
「セイグラードは!?」
「この竜を食い止める…!」
セイグラードは地面に手をつき、その手に魔力を注ぎ込み、そして。
「凍れ…竜!」
魔法陣を発動させて、地面を凍らせた。
セイグラードは『氷の造形魔導士』。
あらゆるものを凍らせて戦う、戦闘系魔導士である。
セイグラードは地面に手をつき、凍らせる。
徐々に赤い竜に向かい、そして、赤い竜の足を凍らせた。
だが。
『グオォォがアアアア!!』
その氷は、湯気を立ててあっさりと消えてしまった。
「何…ッ!?」
セイグラードが驚き、動きが固まった時。
赤い竜の尾が、セイグラードに直撃する。
真横に薙ぎ払われたセイグラードは、数々の木をなぎ倒していく。
「セイグラードォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」
シュンの悲痛の叫びが、響く。
ミツは、涙を溜めながらも、セイグラードの意思は無駄にはできない。
あの人は、街の人を救えと言った。
本当は直ぐに助けに行きたい。だけど自分は、回復しかできない。
だから、この場では足手纏い。
だから、だから!
「シュン!俺達は街の方に行くっすよ!!」
「はぁっ!?何言ってんだ!!今セイグラードが…ッ!」
「セイグラードの意思を無駄にする気っすか!?あいつは、俺達の為に時間を稼いでくれたっす!なら俺達も、その意思を無駄にしたら!セイグラードの思いは、どうするんすか!?」
「……くっそ!!お前ら!後で助けに行く!!」
シュンは魔法陣を展開させ、風の速力を上げた。
向かう先は、未だ悲鳴が木霊する街。
ミツはそのシュンを見て、ホッと安心する。
自分も向かおう。そう足を街に向けた時だった。
『グォオオオッッ!!』
「ーーーー……え?」
ミツは、黒い光に思わず振り返ってしまう。
そして、見てしまった。
目の前に迫る、黒い炎を。
ミツはその黒い炎に、飲まれた。
「!?み、ミツッ!?」
街の方に向かっていたシュンは、黒い炎が上がったことにより動きを止める。
そしてそこには、黒い炎の延長線上には、ミツが立っていたはずだ。
シュンは最悪のことを思い浮かべる。
大丈夫だ、あいつは無事だ。無事なんだ。
そう思って、信じて街の方に向かおうとするのに、足は逆の方に行ってしまう。
気づけば、先程のところに魔法を使って全速力で向かっていた。
距離は離れてはいない。だから、直ぐに行ける。
最悪の事態を想像できなかったシュンは、その場に着いた時。
最悪の事態を、その目で見ることになる。
シュンの真下には、ところどころ焼け焦げた『人間』がいた。
その人間はピクリとも体を動かさず、うつ伏せに倒れている。
ジュッと、何かが焼ける音が、何故か鮮明に聞こえる。
シュンはゆっくりとその場に行く。
赤い竜が、誰かの相手をしている、その時間に。
シュンは、その人間の傍で、膝をついた。
まだ焼け焦げているその人間を、抱き抱える。
ダラリと、腕が垂れ下がる。
まだ熱い体を、シュンは大事そうに抱きかかえた。
認めたくなかった。
脳では認めてはいないのに、体は、この人間のことを誰か、知っている。
自然と、目はあるものへと移る。
この体から、唯一被害が少ないもの。
かつて、あの時。
『シュン!これ、お揃いにするっす!』
あの時、一緒に買った。
『はぁ?おっ前、これ女物じゃねーか』
『いいじゃないっすか!女物でも、強い繋がりっていうのはあるんすよ!』
あの時、笑いあって買った。
『わかったわかった。買ってやるよ』
『よっしゃ!俺の勝ちっす!』
『勝ちってなんだよ。言っておくがな、これは俺達がギルドに入る記念品だからな?今後一切、こんなファンシーなのは買わねえよ』
『そんなの、百も承知っすよ!』
色取り取りの小さな花で施されていた、その腕輪は。
シュンとーーーミツでしかない、それは。
この人間は。
『シュン!』
紛れもない、ミツだった。
「…ぁ、ぐ」
シュンは涙を流す。
一生に一度の友を。
ただ一人しかいない、友を。
それは、悲しみの叫びへと変貌する。
「ミツゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッッッ!!!!」
その叫びは、あの男にも届いていた。
「セイグラードッ!!」
オシリスの叫びは届かない。
吹き飛ばされたセイグラードを尻目に、オシリスは赤い竜と対峙する。
赤い竜はその真っ赤な眼をオシリスに向け、咆哮を上げ威嚇した。
オシリスは魔法陣を展開する。
「【
オシリスの腕を纏うように雷が走り、やがてそれは稲妻に変わる。
その稲妻は赤い竜の眼に向かって行った。そして、赤い竜の眼に直撃する。
だが赤い竜は、当たったのに何も堪えていなかった。
オシリスは舌打ちをする。
赤い竜が咆哮を上げ、その口から禍々しい黒い炎を作れ上げた。
オシリスは反射的にやばいっと感じ、直ぐに退避する。
赤い竜が放った黒い炎は、一直線に街の方へ向かって行った。
さらに炎上する、ヴァグザラード。
あの時の美しい風景など微塵も思い出させないほどに、酷く、醜く、崩壊されていた。
「くっそ!」
オシリスは飛ぶことは出来ないものの、赤い竜の体に乗ることはできる。
オシリスは素早く、赤い竜が地についている間に、その尾から乗り出す。
今まで出したこともない俊速で、赤い竜の頭部まで移動できた。
そこから、次の魔法を繰り出す。
「【ラディオランス】ッ!」
雷の槍を作り出し、そこから一気に飛び上がる。
そして、雷の槍を構えた。
「ッつらぁッ!!!」
上空から、雷の槍を赤い竜の頭部に突き刺す。
赤い竜はこれには効いたようで、今まで聞いたこともない咆哮を上げながら、オシリスを振り落とそうとした。
「ッぐっ!」
オシリスはそれに耐え切れず、雷の槍から手を離して、地面に落下する。
その瞬間、スッ…と雷の槍は分散して消えた。
そして、赤い竜の視界に入ってしまったオシリスは、赤い竜の標的と再度化してしまう。
赤い竜は、その鉤爪をオシリスに向かって薙ぎはらう。
「ぐっ、くそ」
空中で身動きが制限されているオシリスは、ダメージを軽減させるために、防御の体制をとる。
その時だった。
「オシリスゥゥ!!」
彼の目の前に、屈強な男の体が遮った。
その男は自分よりもひとまわりでかい盾を、その鉤爪に向ける。
オシリスはその男の名を呼ぶ前に、赤い竜の鉤爪により共に薙飛ばされた。
数々の木をなぎ倒し、やっとのことで動きが止まる。
自分を庇ってくれた男の盾は粉々に砕け散り、またその男も、血だらけで、意識が朦朧としている。
「ガゼフッ!てめぇ…!!」
オシリスは痛む背中を歯を食いしばりながら耐え、ガゼフを起き上がらせる。
ガゼフが血を吐く。恐らく、体の内側はボロボロになっているであろう。
たったの鉤爪だけで、致命傷のダメージを負った。
オシリスは恐怖し、同時に怒りを感じた。
あの赤い竜に。
友達を傷つけた、あの忌まわしきあの赤い竜に。
「ミツゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッッ!!!!」
街に行ったと思われるシュンの悲鳴が、オシリスの耳にも届く。
ガゼフは、もう意識を失っていた。
オシリスは、顔を上げる。
空は真っ赤に染めあがっており、もはや森は焼け野原と化している。
赤い竜が咆哮を上げながら、黒い炎を放つ。
四方八方、誰彼構わず、赤い竜は攻撃を続ける。
攻撃の音が聞こえる。
良く目を凝らして見ると、そこには。
「【エヴァ・ストーム】ッ!」
シュンが、赤い竜の足元から、凄まじい竜巻を上げる。
その竜巻は赤い竜を無理やり直撃させ、赤い竜の攻撃を防いだ。
「【サイクロン・ショット】!」
そして次は、竜巻を作り上げた弾を乱射させる。
その弾は竜巻に巻き込まれることなく、竜巻を貫通させて、赤い竜に直撃させた。
まだ、追撃が続く。
「まだだァッ!!ああああああああああああああああああああああッッ!!!」
数々の魔法陣を展開させながら、シュンは風邪を取り込む。
そして、竜巻が晴れた時。
「ミツを、ミツを殺しやがって…ッ!!このクソ野郎ォォオオオオオオオオオオオ!!!!」
それは、放たれる。
「砕け散れェッ!!
【トゥアリアスド・ゼロ】ォォ!!」
シュンによって作られた、計り知れない風の力は、圧縮され、赤い竜に向かって放たれる。
赤い竜はそれをまともに受け、悲鳴の咆哮を上げる。
だがシュンはそんなもの、ただの小鳥の囀りでしか思えなかった。
友を、この忌々しい生物によって失われた。
仲間は、こいつによって傷つけられている。
それが、彼の力を極限まで引き出されたのだ。
「うおォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああああああああああああッッッ!!!」
もはや怒号でしか聞こえないその叫びは、森に響く。
たった数秒の攻撃が、長く感じた。
シュンは魔力切れなのか、ふわりと人形のように力なく落ちていく。
ドサ、と地面に体を強く打ち付けるものの、魔力切れで思うように体が動かなかった。
シュンは、顔を上げる。
恐らく倒れ伏している、赤い竜を見るために。
だが。
『グルル…』
赤い竜は、先程の攻撃を受けても、尚佇んでいた。
シュンはその姿を見て、目を見開く。
あの攻撃でも、ダメだった?
赤い竜が再び、黒い炎を作り上げる。
徐々に球体になって行く。
標的はーーーーーシュン。
「シュンッ!!」
オシリスはガゼフを降ろし、駆け寄ろうとする。
だが、距離がありすぎる。
赤い竜は、その黒い炎を。
「ぁ」
シュンに向かって、放った。
黒い炎はシュン共々、森をさらに焼けさせる。
爆炎が上がり、それは数々の木に着火していった。
「シュンッッ!!!!」
オシリスがその名を呼ぶも。
当人は、既にいなかった。
「ぁ…あ、ああああああああ!!」
オシリスが、怒りの目で赤い竜を睨む。
動くと同時に、カキン、と胸の辺りから、何かがぶつかるのが聞こえた。
それを手探りで探ってみると、そこには二つの玉。
赤と青の玉石。
オシリスはその二つを握りしめる。
生きて帰って欲しい。
それが、彼女の願い。
オシリスは、心の中で謝る。
「すまない、ウィーネ」
そして、オシリスは雷を纏わせながら、また対峙する。
その竜と。
オシリスはその竜の背後を見る。
赤い竜の背後には、一つの影。
それを見て、オシリスは全ての魔力を注ぎ込んだ。
手に集中して、全ての魔力を。この中に。
魔法陣が展開される。
それを見た赤い竜は、今度はオシリスに向かって黒い炎を放とうとした。
だが。
「【天ノ川ノリュウボシ】!!」
それは、上空から降っていた、色鮮やかな槍によって止められる。
オシリスはそれを見て、笑った。
オシリスが見る先にはーーーー紫色の鮮やかな衣を纏った、シャグラの姿。
換装【リュウキザンゲン】。彼の中で、最も強いものに分類される換装だった。
シャグラはオシリスを見て、さらに攻撃をしようと魔力を集める。
オシリスは、準備が整った。
何個もの魔法陣が彼を囲む。
シャグラは槍を回転させ、槍の矛先を赤い竜に向ける。
そして、放つ。
「【ジャッジメント・クラック】ッ!!!」
「【流星ノソナタ】ァァ!!!」
彼らの、最大の魔法を。
その魔法は赤い竜に直撃し。
眩い光を放った。
『報告書
北東にて、壊滅した街や焼け野原と化した森を発見。
その街は【ヴァグザラード】と判明。
死亡者多数。恐らく、町民全員が死亡と思われるであろう。
森では、森の中で四人の亡骸を発見。
一人は出血多量で死亡。
一人は体の内側が潰れており死亡。
もう二人は、体の判別が出来ない程の損傷だった。
さらに、広場には何かと交戦した跡が残っている。
そこに、二人の亡骸を発見。
一人は体の内側の損傷が激しく、長い時間をしないうちに死亡したと思われる。
もう一人は、身体中に火傷を負っておっていたが、この中では損傷はマシだと思える。
恐らく、魔力切れの際に、計り知れない攻撃を受けたことにより死亡と思われる。
その人物には、細かい傷がつけられている、二つの玉石のネックレスが付けられていた。
身元が判明した時、彼らの持ち物は親族に送られる』
今回は『赤い竜』とオシリス達の戦闘です。
この作品で二回目の戦闘描写でしたが、いかがでしょうか?
技名などは問題なかったでしょうか?結構考えて付けたんですが、気に入らなかったらすみません。
ここで、彼らのことを少しだけお話しします。
◆シュンとミツについて
この二人はギルドに入る前には既に友です。幼馴染というわけではありませんが、一番関係の深いのはこの二人かもしれません。
◆ミツの敬語について
ミツはいつも語尾に「〜っす」と付けますよね。
あれは癖ではなくて、そう身についてしまったからです。
ミツは良く目上の人には恵まれてはいませんでした。
だから自分を守るために、そして嫌われないために、敬語をしているんです。
完全に抜け切れてはいませんので「〜っす」とやっております。
◆シャグラの換装について
シャグラは主に槍で戦います。
そして姿の換装は、鎧ではなく着物です。
鎧は動きにくいから、ということで着物で戦っているとか。
このくらいですかね。
次回はまだ赤ん坊の主人公エレンと、大切な人を失ったウィーネが主軸になると思います。