FAIRYTAIL 紺桔梗の道標   作:management

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前回

愛する夫を亡くしたウィーネは、真実を知るために、息子を誰かに託して旅に出る。
ウィーネから託された赤ん坊、エレンを、ロジックとマグカは強い決意を持ちながら育てることにした。



ハプニングもつきもの

 

 

私達は、離れ離れになっても。

あなたが、私達を覚えていなくても。

私達は、あなたを愛しています。

 

ーー

 

 

翌日。

哺乳瓶を早朝にすぐ買ってきたロジックは、早速赤子のエレンに飲ませていた。

飲ませ方がよくわからないので、慎重にやっているが。

コクコクと飲んでおり、一先ずはこれで良さそうだ。

と、安心していると、薄い雑誌を持ったマグカが、ロジックを呼びながら来た。

 

「ロジック。どうやら赤ん坊は、離乳食というものがあるらしい」

 

「りにゅうしょく?」

 

「うん。たぶん、母親のミルクから徐々に離れることだと思う。その離乳食は、もうこの時期なら始めてもいいらしいよ」

 

「ほー。そのりにゅうしょく?っていうのは、どう作るんだ」

 

その問いに、ペラペラとページを捲り、あるページを見てマグカは読む。

 

「赤ん坊が食べやすいものなら。簡単なものだと、お粥だね」

 

「粥か…。粥は、作ったことねえな」

 

「そんなことだろうと思って、レトルトの粥を買ってきたぞ」

 

「でかしたマグカ、グッジョブ」

 

マグカが取り出した、調理済みの食品のお粥を机の上に置き、ロジックはそれを取って裏面を見る。

その裏には、このお粥の説明が載っていた。

 

「……おい、マグカ」

 

「何?」

 

その説明を読んだロジックが、マグカに見えるように説明欄を見せる。

マグカは順番に飲んで行き、そしてあるところで目線を止めた。

ロジックが溜息を吐きながら言う。

 

「……お前ん家、レンジねえだろ」

 

「………忘れてた」

 

「お前の家だろうがッ!」

 

レトルトのお粥をマグカの顔に投げつけたのは言うまでもない。

 

 

ーー

 

 

 

ブゥン、と。魔法陣で出来た空間から、金髪の少女が現れる。

その少女は真っ白な服に包まれており、そして純白のステッキを手にしていた。

髪を弄りながら、少女は空間を操る。

ある項目に、大きく『×』とつけた。

 

「……これで、122人目。ふっ…たとえ規格外の世界に行ったとしても、所詮は人間か」

 

その項目は、拡散するように粒子となり、そして空にへと昇った。

それを見た少女は、ステッキを空間に仕舞い、そして三つの項目を映し出す。

そこには文字と、写真が載っていた。

一人は、何処にでもいる成人男性。

一人は、ある程度成長している少女。

そして、まだ成長途中の赤ん坊。

少女は空間に手を翳し、それをスライドしながら流し見する。

 

「……ふむ。一人は問題ない。が…」

 

成人男性の項目を飛ばして、少女と赤ん坊を映した。

その項目を読んでいく内に、だんだんと少女の顔が歪んでいく。

少女は、空を仰げながら、吐き出すように言った。

 

「……天は、彼らの幸せを願わぬか」

 

それは皮肉にも、彼女にしか、聞こえなかった。

彼女は三人の項目をズラし、そして一息つく。

 

「……少し、休むか」

 

そう言った途端、彼女の体は、ゆっくりと『消えていった』。

 

 

ーー

 

 

「…………」

 

恐る恐ると言った状態で、エレンの口にゆっくりと、粥を入れる。

エレンはそれを、ゆっくりと噛み始めた。

ロジックとマグカはそれぞれ顔を見合わせ、体を震わせ、そして。

 

「ッシャァ!!」

 

「よっしゃ食ったァ!」

 

思わずガッツポーズをした。

赤ん坊の相手をした事がない彼らにとって、『赤ん坊が自分達が用意した食べ物を食べてくれた』事は、何よりの喜びだった。因みにレトルトの粥はお湯で沸かしてなんとか食べられる状態にした。

ロジックはエレンに粥を与えながら、どっと疲れが出たのか、ソファに座り込んでいるマグカに話しかける。

 

「マグカ。そろそろクエスト行ったらどうだ。お前ここ最近行ってねえだろ」

 

「あー……そう、だな。今はエレンもいるし。じゃあ行ってくるよ。討伐クエはなるべく避ける」

 

「じゃあバイトか落し物みたいなクエか?」

 

「うん。支度してくる」

 

ロジックにある程度の事を話して、マグカは身支度を整える為に部屋を出た。

その間、ロジックはエレンの様子を見ることになったのだが。

ロジックはここ二日で、エレンについて薄々わかっていることがある。

それが本当なのかはまだ断定できないか、ほぼ確定と言ってはいいであろう。

それは。

 

「……こいつ、全然泣かねえよな」

 

まだ成長期の赤ん坊なのに、『泣かない』ことだった。

 

 

ーー

 

 

マグカは最低限の荷物を持って、幽霊の支配者(ファントムロード)に訪れていた。

相変わらず、皆は酒でガヤガヤ楽しんでいるし、今日のクエであれやこれやと話している。もちろん、いい話ではない。

それを尻目にして、マグカはクエストボードに立つ。

……やはりここのギルドの評判のせいなのか、クエストが討伐クエくらいしかない。

しかし、こういう時は小さく、小さなクエがある事をマグカは知っている。ウィーネのクエも、それで見つけたのだ。

必死に目を凝らしてクエストを探していると。

 

「よぉマグカ!久しぶりじゃねえか!」

 

「!……ダルド」

 

後ろから、声をかけられた。

振り向けば、そこには酒の瓶を持った、顔を真っ赤にさせている太ぶりの男と、その男の周りにいる二人の小ぶりの男達だった。

太ぶりの男の名はダルド。

良くマグカに絡む、マグカにとって大嫌いランキングベスト5に入る男である。

彼の顔が赤く火照っているのは、恐らく酒の飲み過ぎで酔っているからであろう。

ダルドは酒を一気飲みしながらマグカに近づいた。

 

「ゲハハ。んだよ、久しぶりに会った友達に、そんな嫌そうな顔浮かべやがってよぉ」

 

「……俺はお前と友達になった覚えはない」

 

「あぁ…?…テメェ。久しぶりに俺に会ったからって、いい気になってんじゃねえぞ」

 

「はぁ?お前に会っていい気になった?冗談は顔だけにしとけ。今後一切永久に会いたくないやつと会って、嫌そうな顔を浮かべるのは当然の事だろ?それとも何か。お前は金輪際会いたくないやつに尻尾振って近づくか?うわデブの尻尾振りとか気持ち悪くて見てらんねぇ」

 

「テメェ!舐めてんのかぁ!!」

 

ダルドが空になった酒の瓶を、マグカに向かって投げつける。

マグカはそれを軽々と受け止め、一瞬顔を歪めたが、それを見る余儀も無くその酒瓶をダルドに投げ返す。

ダルドは真正面から瓶に当たった為か、顔からは細かい切り傷が何個も出来ていた。

マグカは鼻で笑う。

 

「雑魚すぎ。酒の飲み過ぎで弛んだな」

 

「ーーーッテメェええええ!!!」

 

ダルドは激怒しながら、魔法陣を発動させる。そこから察するにこの男は、今、ここで、マグカを『殺す』為に、魔法を使おうとしていた。

「おい、ダルド!流石にそれはマズイ!」と仲間が止めようにも、もはやダルドの耳には届いてはいない。

マグカもこれは予想外だったのか、思わず後ずさりをしていた。

ダルドは不気味に笑いながら言う。

 

「う、ウヘヘヘへ…ッ!ここ何年か我慢したが、もう限界だァ…!マグカ。テメェは今、ここで殺すゥ!!」

 

「はぁ!?そもそも俺をここまで嫌いにさせたのは、お前の日頃の行いだろ!?完全に八つ当たりじゃないか!」

 

「うるせぇ!!ゼッテェぶっ殺す!うおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」

 

徐々に力が大きくなっていく。

ついには、周りの机と椅子が吹き飛ぶ程に。

ダルドは日頃の行いが悪いとはいえ、ここのギルドには強いに分類されてもいい強さを持っている。

そんな奴が大暴れでもしたら、このギルドはただでは済まないであろう。

こうなっては仕方がない、とマグカは自身の魔法の中心となる武器【フェンレスのフルート】を構えた。

例え完全に防げないとしても、被害を抑えることが出来れば。それだけ出来ればいい。

マグカがフルートに口を付けた時だった。

 

 

「何事ですか」

 

 

カツリ、と音とともに、低く、静かな威厳のある声が、ギルド内に浸透した。

ダルドも魔法を中断し、マグカもフルートを口から遠ざける。

扉は大きく開かれており、そこにいたのは、赤髪で、口髭を備えた男。

彼は。

 

「……マスター、ジョゼ…」

 

誰かがその名を呟いた。

マスター・ジョゼ。本名『ジョゼ・ポーラ』

このギルド『幽霊の支配者(ファントムロード)』の『マスター』であり、『聖十大魔道』の『一人』である。

ジョゼはギルドを端から端まで見渡し、呆然としているマグカとダルドに視線を固定した。

 

「……おや、あなた方は何をしてらっしゃるのでしょうか」

 

「こ、これはこれはマスター・ジョゼ…お早いご到着で。会議は終わったのですかな…?」

 

ダルドが恐る恐るといった様子でジョゼに聞く。

ジョゼはその態度が気に入らなかったのか、露骨に顔を歪め、ダルドに近づいた。

ダルドはその威厳に恐れたのは、哀れにも腰を抜かして、尻餅をつく。

そばに砕け散っていた酒瓶の欠片が手に刺さっても、今のダルドには関係なかった。

ジョゼはダルドを見下しながら、言う。

 

「私は『あなた方は何をしていらっしゃるのか』という質問をしているのです。他の質問を返す権限など、あなたにはありません」

 

「ひっ…!あ、す、すいやせん。いや実は、この馬鹿野郎が変なこと抜かしやがるから、ちょーっと俺が叩き直してやろうと」

 

ダルドは笑っているが、それもヒクついた笑い。

完全に、怯える子羊。

ジョゼはそのダルドの答えに、興味もなしにマグカの方を向いた。

 

「マグカさん。あなたは?」

 

「……確かに、俺がダルドを煽ったのは認める。だがな。それはこいつの日頃の行いが悪いからこんな事が起きるんだ。あまつさえ、ギルドの中で魔法を使うんなんて、常識的にありえない。殴るとか蹴るとかの方法があったはずなのに。それに、最初にやったのはお前の方で、俺は正当防衛をしただけだ。俺が非難される立場じゃない。……煽ったのは謝るけどな」

 

マグカは言い返したのは認めるが、魔法の行使直前については『正当防衛』として認めてほしいようだ。

ジョゼは二人の証言を聞いて、ふぅと息を吐く。

 

「やれやれ、困った人達です…。……ダルド」

 

「!…はい」

 

敬称のない呼び名で、彼はダルドを呼ぶ。

ダルドは恐る恐る立ち上がり、ジョゼの真正面から向き合った。

ジョゼはダルドに、にっこりと笑いながら言う。

 

 

 

「ついてきてもらいますよ。

 

 

あなた一人だけ(・・・・・・・)、ね?」

 

 

 

ーー

 

 

 

 

「………マグカ、おっせえな」

 

夜。帰ってこないマグカを心配しながら、お湯でなんとか食べれるようにした粥をエレンに食べさせていたロジックが、虚しくそう呟いていたのは言うまでもない。

 




エレンの成長期と言ったな、あれは嘘だ。
どうも、卒業式の二日前にインフルエンザを起こした馬鹿野郎です。因みに今日でした卒業式(2016/3/4)……出たかったです…。卒業される側なのに…。でも、同じ境遇の人がいるんですもの!寂しくないもん!……寂しくないもん…。
ではお決まりのコーナーに参りましょう。

■何故ウィーネはクエストを発注したのか。
別に友達がいないとかそういうのではないんですが、その友達の負荷にさせたくはないし、その友達を信用していなかった訳ではありませんが、お金を悪用されたくなかった、という風ですかね。それにお年寄りの方もいたし、そういう方達の配慮も兼ねて、子育てを出来る方を募集しました。
……どっちかっていうと、後者の方が金を悪用されるようなされなき いような。
ちなみにウィーネ達の親は、オシリスの方は他界、ウィーネの方は年寄りヨボヨボです。

(ただ他の人に託したかったなんて言えない)


■ダルドについて
ただこういうキャラを入れてみたかっただけ。特に意味はない。多分今後出ないであろう(フラグ)

■ジョゼとマグカ
説明文を見たら「ガジルには信頼を寄せているので「ガジルさん」と敬称で呼んでいる」と書いてあるんですが、これ別にどうでもよくね?と思ってしまった私って…。

■フェンレスのフルートとマグカの魔法
フェンリルの元とした狼の素材を使ったフルートです。え、それだと革製のフルートになるって?何言ってんだ誰も『皮』とは言ってねえじゃねえか!
そしてお察しの通り、マグカの魔法は『音』です。これ以上の事は教えない、絶対に。

このくらいですかね。
ていうか名前が行き詰まってきました。オリキャラの名前と魔法考えるの辛い。でも俺は考えるんだよ!
次回もよろしくお願いします。

そろそろオリキャラの女性キャラを登場させたいな。
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