とらなのVRMMO ~魔法はゲームの中だけなの~【改訂版】   作:戯言紳士

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第2話    6月13日 土曜日②

 

『あなたが刻也君?』

 

 俺が士郎さんの所から、なのは達が待っているテーブルまで戻って来たのだが、何の説明もなしに、どこかに繋がっている携帯電話を渡された。

 

 アリシアの携帯電話で、ディスプレイに表示されている女性の姿から想像するに、テスタロッサ姉妹の母親だと推測したのだが、俺は一体何を話せば良いのだろうか?

 そもそも、テスタロッサ家へは何回も訪れた事はあるが、毎回親が不在だったのでこれが初めての顔合わせでもある。

 

なので、イマイチこの状況がよく分からない。

電話を渡したアリシアも、他のメンバーも全員が何かを祈っているだけで、状況を説明してくれそうにもない。

 

 しかし、ディスプレイに映っている人物は、どうやら俺に話があるようだし、このまま無言で放置しているのも、相手側に失礼なので、とりあえず返事をする事にした。

 

「はい、俺..じゃなくて、私が鏡刻也です。」

 

『そう...。私はアリシアとフェイトの母親のプレシア・テスタロッサと言います。

 ごめんなさいね。その様子だと、ちゃんと説明もされてないんでしょ?』

「そうですね。ちょっと、状況が分からないです。」

『本当に仕方のない娘達だわ...。』

 

『それじゃあ、私と刻也君がこうして話をする事になった経緯から説明するわね。』

「すみません。お願いします。」

『いいのよ。今日帰ったらちゃんと、O・HA・NA・SHIするから。まずは ―――――』

 

 プレシアさんの口から、たまに桃子さんの口から発せられる、違った意味合いを含んでいそうなお話という言葉を聞いて、アリシアの身体がビクッとしたが気にせずに、この状況になった経緯を聞くことに意識を集中した。

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

『―――という訳で、こうして刻也君と話す事になったのよ。

 悪いわね。刻也君には、随分と迷惑を掛けて、お世話にもなってるみたいで。』

 

「いえ。こちらこそ、2人の御陰で退屈しない日々を送らせてもらってますから。」

 

 プレシアさんの説明で、今の状況がはっきりした。

 つまり俺が、プレシアさんにアリシアとフェイトを任せても良いと思われれば、なのは達はSLOを手に入れる事が出来るという事だ。

 

 世の手に入らなかった人達からすれば、物凄く反感を買う方法だが、たまたまSLOの開発者を親に持った2人だけが使える特別な方法だな。

 

 

『それにしても、高校2年生とは思えないくらい、しっかりしてるわね。』

「一応、幼少の頃から武道を嗜んでいまして、礼儀などは最初の頃からずっと叩き込まれているので、その御陰だと思います。」

 

『そう..。礼儀正しいし、外見も悪くない。武道を嗜んでいるのなら、あっちでもかなりレベルは高い戦闘が出来るでしょうし、変な考えでプレイしてる輩なんか相手にならないわよね。』

 

「刻也には、現実でもしつこくナンパしてくる変なヤツから、何度も助けてもらってるんだよ。」

「刻也さんが一緒だと、そう言う人達も声を掛けてこなくなったし。」

 

『本当にお世話になってるわね。ありがとう。娘達を助けてくれて。』

「いえ、ふざけた連中に傷付けさせる訳にはいきませんから。」

 

 プレシアさんが呟く内容に乗っかって、アリシアとフェイトが現実の話を持ち出して、さらに俺に対する印象を良くしようと試みた結果、良い方向へ傾いたみたいだ。

 

『アリシアとフェイトが勝手に美化して話してるんじゃないかと思って聞いていたのだけれど、どうやら、その通りの人物だったみたいね。』

「えっと...、ありがとうございます。」

 

 家でアリシアとフェイトが俺の事をどう言っているだろうか?

 2人の日頃の態度からだと、過大評価して尾鰭が付いている可能性の方が高そうだが、プレシアさんはここまでの会話で、聞いていた通りだと言った。

 

 俺が自意識過剰だっただけなのだろうか?

 

それからしばらくの時間を、他愛もない世間話を続けていたのだが、プレシアさんは多忙の身らしく、遠くの方でプレシアさんを呼ぶ声が聞こえて来た。

 

『ごめんなさいね。今も仕事中なのよ。』

「そうみたいですね。すみません、ご多忙のところを長々と。」

『良いの。私も娘達が話していた刻也君と、こうして話す事が出来なのだから。』

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

「それで?どうなの?」

「刻也さんと一緒だったら、大丈夫だって分かってくれた?」

 

 最後にこれだけは聞いておかないといけないという勢いで、プレシアさんに判決を仰いだ。

 

『そうね。刻也君になら娘達を任せても大丈夫だと思うわ。』

 

「それじゃあ!!」

 

『えぇ。認めてあげます。でも、貴方達もちゃんと責任を持ってプレイしなさい。』

「もちろん!」

「分かってます。」

『なら良いわ。』

 

『それで?何人分必要なの?』

「えっと...。アタシでしょ。フェイトでしょ。それに、なのはとアリサとすずかにはやてだから6人分だよ。」

 

『わかったわ。可愛い娘達の頼みだし、貴方達のためにお母さんが一肌脱ぎましょう。』

「わぁーー!ありがとう!お母さん!!」

 

 どうやら俺は、プレシアさんに2人を任せても良いと、思われる事が出来たらしい。

 そして役目を果たした俺は、電話をアリシアに返し、この後の成り行きを見守る事にした。

 

「みんな!お母さんが人数分用意してくれるって!」

 

「「「「本当に!?」」」」

 

「うん!」

 

「「「「プレシアさん!ありがとうございます!!」」」」

 

『如何致しまして。今日持って帰るから、プレイ出来るのは明日になるけど、問題ないわよね?』

 

「「「「「「問題ありません!!」」」」」

 

『それじゃあ、お母さん仕事に戻るから。貴方達も、これからも家の娘達と仲良くしてね。』

 

「「「「はい!!」」」」

 

 こうしてプレシアさんは電話を切り、仕事に戻ったのだと思う。

 

 

 一方こっちは、最後に翠屋店内である事を忘れ、全員が声を揃えて騒ぎ立てたので、店内にいた他のお客さんから、注目を浴びてしまっていたのだが、

 

「...コホン。これで私達もSLOが出来るのよね?」

 

 一番初めに落ち着きを取り戻したアリサが、周囲のお客さんに頭を下げ、1回咳ばらいをしてから、控えめなトーンで話を切り出した。

 

 それを見た他のメンバーも、同じように頭を下げてから、その話に乗っかり話し続けた。

 

「せやで。これで私らも、最先端のゲームが出来るんや!」

「気持ちは分かるけど、これ以上お店の迷惑にならないように、落ち着いて話そうね。」

「せやった。流石に3度目はあかんわ。」

 

「それに出来るのは明日になってからだよ。」

「私、今日は眠れないかもしれないよ!」

「それは私もや!」

 

「あと、アリシアちゃんは絶対に先にやったらあかんで!抜け駆けはなしや!」

「いくらアタシでもしないよ。最初はみんな一緒に始めたいもん。」

「そうね。やっぱり揃って始めたいわよね。」

 

 どうも、黙って始めていた俺に対して、責めている様にも聞こえるが、俺の方を見て言っている訳では無いので、気のし過ぎだろう。

 

 

「という事は、明日、刻也さんが翠屋のお手伝いが終わるまで、私達はおわずけだね。」

「おわずけじゃなくて、おあずけだよ、なのはちゃん。」

 

「今はそんな事どうでもいいでしょ!」

 

「いえ...。中学三年生にもなって、その間違いは問題よ。」

「なのはちゃん、現国とか古文の点数、毎回赤点ギリギリやもんな。」

 

「アタシと同じだね。テストの点数なんて気にする事ないよ!」

「アリシアちゃんは、気にしなさ過ぎだと思うけど...。」

 

「...だってアタシ、外国育ちだもん。日本語の文法なんて訳わかんないよ。」

「姉さん。私達が日本に来て3年目になるんだから、もうその良い訳は出来ないよ?」

「そうよ。フェイトは現国も古文も私と張り合えるくらいになったんだから。」

「漢文は、まだ分からない事も多いけどね。」

 

「もう!良いでしょ!今は明日の事を話そうよ!」

「そうだよ!明日の事だよ!」

 

 

 なのはの些細な言い間違いから、話が脱線してしまったが、これ以上この事に触れられたくない2人が少々強引に、話を本筋に戻した。

 

「そうね。確かに2人の学力について、私達がアレコレ言う事じゃなかったわ。」

 

「刻也さん。明日は何時に終わるんですか?」

「いつも通りなら16時間際だと思うぞ。今日だってそうだったろ?」

「そうやったけど...。」

 

「一日くらい、融通を聞かせる事は出来ないんですか?」

「俺にそれを言われても困るんだけど...。

 士郎さんと桃子さんに相談しない事には、どうしようもない事だし。」

「そうだよね。」

 

 

「トキ君。明日、休んでも良いわよ。」

 

 すずかの問いに、俺が勝手に決められる事ではないと言った直後、桃子さんから許可が下りた。

 

「あれだけ大きな声で騒いでいれば、私達にも聞こえたわ。」

 

「「「「「「ごめんなさい。」」」」」」

 

「その事はいいの。ちゃんと謝ったみたいだしね。」

 

 まあ、あのボリュームだったら、店内全員に聞こえていても不思議ではないだろう。

 

「それで話を戻すけど、トキ君、これまで休日はずっと頑張ってお手伝いしてくれていたから、

 明日休むくらい問題ないわ。寧ろ、もっと遊びに時間を使いなさい。」

 

「僕も前に言ったはずだよ。今しかない大切な時間を好きなように過ごしなさいって。

 確かに、刻也君にこうして手伝ってもらうようになって、僕達はとても助かっているけど、もっと、年相応に遊んでいても良いんじゃないかい?」

 

 桃子さんに続き、士郎さんにまでそう言われてしまったら、休むと言う選択肢しか選べない。

 

「そう言って頂けるのでしたら、明日はお休みさせて頂きます。」

 

 失礼のないように、丁寧に言ったのだが、どうやら気に召さなかったようで、

 

「もう、硬すぎるわよトキ君。こういう時は「ありがとう、お義母さん」でしょ♪」

「それじゃあ、僕にも「ありがとう、お義父さん」って言って貰おうかな。」

 

 士郎さんも桃子さんも、実質育ての親と言って間違いないので、言うこと事態は何の抵抗もないのだが、何か当てている字が違う気がする。

 

「ほらほら♪」

「さあ、言ってみなさい。」

 

「ありがとう。士郎父さん、桃子母さん。明日は手伝えないけど、また来週は頑張るから。」

 

 言い方は変えたが、その方が気持ちが伝わるだろう。

 

「本当にいい子に育ったわね、士郎さん。」

「そうだね、桃子。」

 

 その証拠に、言った後の2人の反応を見れば、ちゃんと気持ちが伝わった事が見て取れる。

 

 

「私ら放っといて、3人でめちゃ親子しとるやないか!あれで血縁関係がないなんて嘘やろ?」

「血の繋がりなんて関係ないよ。どれだけ一緒に過ごしてきたかが重要なの。」

 

「「「「そんな!?さっき言い間違えたなのは(ちゃん)が、良い事を言ってる..だと。」」」」

 

「みんな酷いよ!!」

 

 

 そんな2人とは対照的に、なのは達はミニコントを繰り広げていた。

 何をやっているんだか...。

 

 それと士郎さんと桃子さんだが、あの後すぐに満足げな顔で、接客に戻っていった。

 

「まあこれで、明日はオフになったから、早速、明日の予定を決めないか?

 お前達も一緒にプレイするとなると、今日中にあっちでやっておきたい事もあるし。」

 

「そうなんですか?」

 

「SLOで落ち着いて話しが出来る所を確保しないと、さっきのプレシアさんの言ったみたいに、面倒な連中に絡まれるかもしれないからな。」

 

「それは嫌だね。」

「匿名で活動出来る環境下だと、態度が大きくなる人もいるみたいですからね。」

 

「そう言う事なら、早く決めてしまいましょう。」

「そうだね。その方が刻也さんも、多く時間が確保出来て、助かるみたいだし。」

 

 こう言った事に対する理解が早いメンバーで、本当に助かる。

 

 

そしてこうしている間にも、アリサの仕切りで、明日の予定が次々と決まっていく。

 

「それじゃあ、集合場所だけど、そこはアリシアとフェイトの家で良いわよね?」

 

「必要なモンは、プレシアさんが用意してくれる訳やから、私らが出向くのが筋やろな。」

「うん。アタシの家で大丈夫だよ。」

「それに人気ゲームを、外に複数持ち出して歩いてたら、大変な事になりそうだし。」

 

 これで、明日の集合場所は、アリシアとフェイトの家と決まった。

 それに、フェイトの言う通り、6人分のヘッドギアとソフトを持っていたら、碌でもない奴に

100%絡まれるだろう。

 

「次は時間ね。私は10時くらいで良いと思うのだけど、どうかしら?」

 

「私は、もっと早くても大丈夫やで。」

「はやてちゃんが大丈夫でも、早すぎると2人やプレシアさんが困ると思うよ。」

 

「ん~。家だったら、9時くらいでも大丈夫だと思うけど?」

「姉さん、日曜日はいつもお昼頃まで寝てるのに、大丈夫なの?。」

「心配いならいよ。ちゃんと目的があれば、アタシは起きられる!やれば出来る女だから!」

 

「アリシアが寝ていたら、私達だけでやりましょうか。」

「ちょっと!さっきまでの、みんなで一緒にって話はどうなったの!」

「有言実行。アリシアちゃんが自分で言ったんだから、ちゃんと起きればいいだけだよ。」

「こうなったら意地でも、起きてやるんだから!」

 

「じゃあ、明日は9時に、アリシアとフェイトの家に集合で良いわね。」

 

 という事で、明日は9時から、2人の家でSLOを始める事になった。

 ここまで決まれば、後は当日に細かな話をすればいいと思い、席を立とうとしたのだが、

 

「お昼ご飯はどうするの? 時間的に、午後も一緒にやるんだよね?」

 

 俺は明日決めればいいと思っていたのだが、アリシアは今決めたいようで、最後に昼飯の事を

決めてから、今日は解散する事になった。

 

「お昼は、みんなで作って食べればいいんじゃない?」

「そうね。少なくても、刻也とはやてが要れば、ちゃんとした料理が出来るし。」

 

「それは聞き捨てならないよ。私だって、花嫁修業の一環として料理の勉強してるんだから。」

「私も、お母さんや刻也さんの様にはいかないけど、料理は出来るよ。」

「フェイトだって、お母さんが遅くなる時は、アタシに料理作ってくれるんだからね。」

 

「それって、アリシアちゃんは作られへん言うとるのと同じやで?」

「アタシは食べる専門だもん。試食くらいは役に立てるよ!」

「惚れ惚れするくらいの開き直りだよね。」

「でも、姉さんがキッチンに立つと、片づけが大変になるから、その方が助かるんだよね。」

 

「「「「「あぁ...。」」」」」

 

 そう言われて、アリシア以外のメンバーが納得してしまった。

 

「いいよ!そこまで言うなら、アタシだって料理が出来る事を証明してみせるから。」

「いや...、姉さんは大人しく味見役に徹して欲しいんだけど。」

「やるって言ったら、やるの!」

 

「アリサもやるんだからね!」

「い..良いわよ。少なくとも、アリシアには負けないんだから。」

 

 

 何であれ、これで明日の予定は全て決まったので、俺はなのは達に別れを告げ、いち早く翠屋を後にして、SLOへログインして明日の準備をする事にした。

 

 なのは達はまだ翠屋に残り、どの職業にするかとか、タブレット端末から今ネット上に載ってい

る情報を見ながら、話し合いをするらしい。

 あの6人でパーティー(以後PT)を組む事になると思うので、色々話のネタは尽きないだろう。

 

 

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