とらなのVRMMO ~魔法はゲームの中だけなの~【改訂版】 作:戯言紳士
「あっ!刻也、お帰り!」
「悪い、戦闘後に召喚モンスターンのクラスチェンジがあって、少し時間がかかった。」
「大丈夫ですよ。」
「そうね。話している間に来たし、待ったって感じじゃないわ。」
アルハザードに戻り、エントランスに入ると、アリシアが俺を発見し、少々予定より遅れた事を謝罪したのだが、どうやら、その辺りは緩いらしい。
実際に、ロビーまで喋り声が聞こえていたので、ただ待っていたわけではなさそうなので、社交辞令という事でもないだろう。
「あれ?今日は久遠ちゃんとか連れてないの?」
「さっきまで召喚してたけど、後はポータル巡りだけだと思って還したんだ。」
「そうなんだ。」
「別に連れて歩いてもいいし、呼んでほしいなら呼ぶけど?」
「大丈夫。ただ、召喚モンスターを連れてない時もあるんだなって思っただけだから。」
「確かに、刻也くんの肩には久遠ちゃんがいるって印象があります。」
「まあ、久遠とさくらは俺が呼ばなくても、何故だか自分で出てこれるからな。ブースト・サモンが使えるようになってからは、何故か強化された状態で出てくるし。」
「不思議だねぇ。」
―― パンッ! パンッ!
「刻也も、ヴィヴィオさん達も話したい事があるのは分かるけど、先にみんなが登録しているポータルを巡りに行きましょう。」
そして、気付けば話し込んでいたようで、アリサの指摘がなければ、しばらくは雑談に時間を費やしてしまう所だった。
一緒に行動している分には、必要以上の事はあまり話す事もないが、夕方から今の時間まで行動を共にしなかっただけで、どうでも良い事まで話題になってしまうのが、本当に不思議だ。
俺はともかく、知り合って間もない年上のヴィヴィオ達も含んで、指摘したアリサに、心の中で感心して、本来の目的である、ポータル巡りへと向かう事にしよう。
「それと、刻也。」
「まだ、何かあるのか?」
「そんな顔しなくても良いわよ。」
「ただ、私達の分まで、この杖を作ってくれた事のお礼を言いたいだけですから。」
「今回の提案やて、刻也さんがこの杖を用意してくれんかったら、起きんかったで。」
「そうそう。ポータルって登録しても、転移出来ないと、ただの休憩所としてしか使えないし、」
「刻也が転移の杖を作ってくれたから、私達の行動範囲が広がって、」
「移動時間が短縮出来て、レベルを上げる時間がいっぱい取れるようになったんだから。」
アリサが呼び止めた後に、聖祥組がそのチームワークを発揮して、全員でフォローを入れてきたのだが、そこまで、違い表情をしたのだろうか?
「先輩の悪い癖、まだ治ってなかったんだね。」
「どういう事だ?」
「私も刻也先輩の事を言えないんですけど、刻也先輩の場合、どうでも良い事に限って、色々と考え過ぎです。」
「今だって、自分の行動で、なのはちゃん達がアリサちゃんのフォローしてるんじゃないかって思ったでしょ?」
「確かに思ったが、何故チワワにまでそれが分かるんだ。」
「それは、みんな、刻也の事をよく見てるって事でしょ。」
「あたしだって、ヴィヴィオやコロナはもちろん、刻也の事も、それなりに見て分かるもん。」
「そういう事です。刻也くんは、素直に、私達からの感謝の言葉を受け止めて下さい。」
どうすれば1日で、この結束力が出来上がるのかが分からないが、彼女達から言わせれば、こう思う事自体が、俺の悪い癖なのだろう。
とりあえず、今は言われた通り、余計な事を考えずに、彼女達の言葉をそのまま受け止めよう。
「そういう事だから、刻也は気にせず受け取りなさない。」
「「「「「「「「「「「ありがとう(ございました)!」」」」」」」」」」」
「どういたしまして。」
正面から、この人数にお礼を言われ、少々小恥ずかしいが、素直に言葉を受け取り、まずは、姫とスバルの先導で、ミッドチルダから3街離れたところに設置されたポータルから巡り始めた。
◇◆◇◆◇◆ ◇◆◇◆◇◆
「これで、私達が登録してあるポータルは終わりです。」
「先週回った所だから、6街以上離れたところを全部、とは行かなかったけどね。」
「それでも十分だろ。俺となのは達に限っては、登録してないポータルばかりだったし。」
「むしろ、刻也は登録してなさすぎでしょ。」
「折角、何度でも転移できる方法があるのに、勿体ないよ。」
「優先させる事があったとはいえ、3街以内のポータルは一通り、登録しているモノだと思ってました。」
確かに、先週の大半は、拠点作りと生産素材集めに集中していたし、週末はなのは達がSLOを始めて、今週に入ってからは、ヴィヴィオ達と行動を共にする事が多かったから、普通にプレイしているプレイヤーより、レベルに反して、極端に少なかっただろう。
今日に至っては、一ヶ所から動かず、淡々と敵を倒し続けていただけだからな。
「まあ、第2回目を開催する時は、刻也に期待しようよ。」
「そうね。今日の事で、刻也も色んな場所を放浪するだろうし、1人で行動する分には、赤兎がいるし、私達とは移動速度が違うでしょうしね。」
今日でカンナを含め、俺の召喚出来るモンスター達であれば、9街程度離れたフィールドでも、初見の敵でも多少時間はかかるかもしれないが、問題なく敵を倒す事は出来ると確信を持てたので、言われずとも、色んな場所を巡るつもりなので、
「任せておけ。」
と、短く簡潔に返答をした。
「おぉ!これは期待できそうだよ!」
「先輩が本気になったら、どこまで行けるか気になるよね!」
「では、刻也先輩には、次回活躍してもらうとして、」
「次は、私達の出番だね。」
「それじゃあ、ティアちゃんに引き続き、まだ登録が済んでない、6街分離れたポータルから巡って行こうか!」
「9街分は、昨日、刻也くんと行った場所と、今日の夕方からその近くの2箇所を登録してあるだけだけど、敵も強くなってるから、行く時には十分注意してね。」
「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」
◇◆◇◆◇◆ ◇◆◇◆◇◆
その後、先導者がヴィヴィオとコロナとリオに代わり、全員の登録されているポータルの数が同じ
になったところで、アルハザードに戻って来た。
時刻は、話をしていた事もあり、22時20分。
まあ、ログアウトするには、少し早いが、ちょうどいい時間帯ではあった。
だが、こうして全員が集まっている状態なので、すぐに解散という事にはならず、あらためて、お互いの状態を確認する事になった。
昨日は、戦闘スタイルだけ確認して、どんなスキルを持っているかとかは、話していなかったので、昨日の続きみないな感じだ。
「「「「「「「「「「「…………。」」」」」」」」」」」
そして、SLOにログインしている時間が短く、それほど変化はないと思われる、中学生組から現在のステータスを公開していき、最後に俺がステータスを表示したところで、全員が沈黙した。
順番に、全員のレベルを確認して分かったのだが、今日だけで、俺は頭1つ以上、飛びぬけているようだ。
全員が沈黙したのも、それが原因だろう。
昨日まで、ほぼ同じレベルだったヴィヴィオ達とも、種族レベルの差が10以上出てしまったのが、また衝撃を与えている。
ちなみに、なのは達だが、月曜日から今日までで、このようにレベルが上がっていた。
【名前】 なのは 【種族】 エルフ族 Lv.13 ⇒ 20
【職業】 魔術師 Lv.4 ⇒ 11 / 僧侶 Lv.4 ⇒ 11
【名前】 フェイト 【種族】 獣人族 Lv.13 ⇒ 20
【職業】 剣士 Lv.4 ⇒ 11 / 隠者 Lv.4 ⇒ 11
【名前】 アリシア 【種族】 獣人族 Lv.13 ⇒ 20
【職業】 拳闘士 Lv.4 ⇒ 11 / 盗賊 Lv.4 ⇒ 11
【名前】 はやて 【種族】 人族 Lv.13 ⇒ 20
【職業】 魔術師 Lv.4 ⇒ 11 / 踊り子 Lv.4 ⇒ 11
【名前】 アリサ 【種族】 人族 Lv.13 ⇒ 20
【職業】 騎士 Lv.4 ⇒ 11 / 僧侶 Lv.4 ⇒ 11
【名前】 すずか 【種族】 魔人族 Lv.13 ⇒ 20
【職業】 弓兵 Lv.4 ⇒ 11 / 呪術師 Lv.4 ⇒ 11
【名前】 スバル 【種族】 ドワーフ族 Lv.16 ⇒ 22
【職業】 拳闘士 Lv.7 ⇒ 13 / 重騎士 Lv.7 ⇒ 13
【名前】 ティアナ 【種族】 人族 Lv.16 ⇒ 22
【職業】 銃士 Lv.7 ⇒ 13 / 幻術師 Lv.7 ⇒ 13
細かな所は省略させてもらうが、限りない時間内で、よくレベルを上げている方だと思う。
成長の伸びを見る限り、チワワと姫も一緒に行動しているのだろう。
そして、なのは達よりはプレイ時間が長いヴィヴィオ達は、昨日と比較するとこんな感じだ。
【名前】 ヴィヴィオ 【種族】 人族 Lv.25 ⇒ 28
【職業】 騎士 Lv.16 ⇒ 19 / 拳闘士 Lv.16 ⇒ 19
【名前】 コロナ 【種族】 エルフ族 Lv.25 ⇒ 28
【職業】 人形遣い Lv.16 ⇒ 19 / 僧侶 Lv.16 ⇒ 19
【名前】 リオ 【種族】 獣人族 Lv.25 ⇒ 28
【職業】 拳闘士 Lv.16 ⇒ 19 / 剣士 Lv.16 ⇒ 19
こちらも3人揃って行動しているレベル差はなく、クラスチェンジまで、後1レベルというところまで上昇していた。
今日は移動しながらという事だが、それでもいい感じに上がっていると思う。
以上の結果から、俺はひたすら敵を倒し続けていたという事もあるが、取得経験値2倍という、女神の祝福Ⅴのスキル効果が大きく影響している事が、数値で表れたな。
「俺はひたすらレベリングをしてたし、ちょっと特殊なスキルも付加してるからな。」
「...それを踏まえても、短時間でここまで差が出ると、言葉を失います。」
「だね。私達でこれだから、刻也は2度目のクラスチェンジまではしてると思ってたけど、」
「クラスチェンジ後は、レベルを上げるのに必要な経験値が3倍になるって言われてるのに、それを4レベルまで上げてるし。」
「まあ、これでこその刻也さんって感じやけどな。」
「本当よね。」
「これで、ポータルまで制覇してたら、刻也だけ別のゲームをプレイしてる感じだったよね。」
全員が最初の衝撃から落ち着きを取り戻すと、それ以上、俺のレベルやステータスに関して追及する事はなかった。
「でも、プレイ時間って、かなり影響が大きいよね。」
「そうだね。ヴィヴィオさん達のステータスや、さっきのポータル巡りで、それは分かったよ。」
「これも、私らの学校の課題多すぎるせいやな。」
「だよね。どうして、毎日毎日、あんな量をやらせるか、訳わかんないよ。」
「私達の学校は、基本的にお金持ちが集まる場所だから、それなりに知識を詰め込まないといけないのよ。」
「教養に関しては、徹底してるし、仕方のない事だよ。」
「じゃあ、ティアとスバルは?」
「私達は、聖祥みたいにエスカレーターって訳じゃなくて、高校受験しないといけない学年だから、この時期から、もう色々と準備が始まってるのよ。」
「それさえなければ、先輩と同じ時間帯にログイン出来るけど、家族で食べる夕飯の時間も決まってるし、やっぱり厳しいよね。」
「それを考えてみると、あたし達ってラッキーだよね。」
「確かに、受験も無ければ、課題もないしね。」
「部活動も強制参加じゃないから、放課後になれば、帰宅部の私達は自由ですからね。」
最終的に、受験も、学力向上にも大して力を注いでいない、極々一般的な偏差値を誇る、風芽丘高校に通う俺達が、一番自由な時間が確保出来て、その結果、現在の状態が出来上がったという、結論で、現状の確認は終了し、各々ログアウトする流れとなった。
「あっ!ログアウトする前に聞いてくれるか。
明日、ナイフの生産と装備の強化しようと思っているだが、お前達の装備の強化はどうする?
俺としては、一度にまとめてやった方が、楽なんだが。」
「そうなの?」
「でも、私達は今のところ、強化が必要なほどレベルも上がってないし大丈夫だよ。」
「そうですね。そんな深いフィールドに立ち入る事もないと思うので、このままで十分です。」
「じゃあ、私達はお願いしようかしら。」
「そうだね。制限レベルより10くらいは上がったし、」
「今日で、明日からは、今までより遠くに行けるようになった事やし、」
「それに、私達はログインする時間も遅いし、刻也さんの都合が良いなら、是非お願いします。」
という訳で、なのは達、中学組は装備を渡した時から、比較的にレベルが上昇していた事もあり、明日一緒に装備の強化をする事になり、昨日渡したばかりで、強化するほどではないと言うヴィヴィオ達、高校組の強化は、今回は見送る事になった。
そして、強化をするために、初期装備に戻ったなのは達から、着用していた装備を預かり、イベントリへと収め、
「それじゃあ、明日、強化が終わったら、共有倉庫に入れておくから。」
「「「「「「「「はーい。」」」」」」」」
こうして、伝える事を伝え、装備も預かり、今日のやるべき事をやり終えた俺は、全員がログアウトするのを見届けてから、明日、作業する事になる工房に入り、ログアウトした。
『クロノス様がログアウトしました。』