とらなのVRMMO ~魔法はゲームの中だけなの~【改訂版】   作:戯言紳士

37 / 62
第26話   6月19日 金曜日②

 

―― スパンッッ!!

 

「一本!これで、刻也くんが2本連取になるわ。」

 

 体育の授業ながらも真剣勝負の雰囲気の中始まったリインさんとのスポーツチャンバラだが、リインさんがエアーソフト剣を振るった後の隙をつき、俺が連続で有効打を打ち込むという展開で2本とも終わった。

 

「やっぱり、剣の道を極めんとしている人相手だと、私は歯が立たないみたいだね。」

「剣の扱いは、リインさんにとっては専門外の事なので仕方ない事ですが、リインさんの体捌きは流石だと思います。」

 

これはお世辞や社交辞令ではなく、俺の本心。

 

 リインさんが自己紹介の時に言っていたサバットという格闘技だが、蹴り技が主体で基本肉弾戦が主流、離れた間合いの場合には杖を使う事はあれど剣を使うという資料を俺は見た事がない。にもかかわらず、対峙したリインさんは型通りの綺麗なフォームで剣を振えていたのは、おそらくシグナムさんの鍛錬に付き合う内に身に付けたからだと思う。

 まあ、綺麗なフォーム故に剣筋が読みやすいので、比較的容易に回避も出来て、その後に一撃入れる事が出来るのだが、リインさんがその一撃を振るうまでの間合いの取り方や足運び、それとあえて隙を見せ俺に打ち込ませようとする技術は高いレベルを有している。

 

「ありがとう。お世辞でも刻也くんほどの相手に言われると嬉しいね。」

「お世辞ではなく、本心から言ってます。機会があれば、次はリインさんの土俵で御手合わせ願いたいと思っているくらいです。」

 

「......どうやら、私はシグナムの事を責められないみたいだ。その言葉を聞いて私は武芸者として喜びを感じている。」

 

 武を嗜む者は個人差はあれど、大なり小なり強者を求める戦闘狂的な部分を胸に秘めているモノだが、リインの胸に秘めらえれていたその気持ちが表面に出て来たようだ。

 1本目・2本目とリインさんは真剣だったが、どうやら先の言葉で枷が一つ外れたらしい。その眼には俺しか映っておらず、リインさんから感じる気迫は倍以上に膨れ上がったように感じた。

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

「リインったら自分の世界に入っちゃってるわね。」

「まったくだ。心地良い気迫と剣気を感じ、他の生徒の指導を早急に終わらせ見に来てみれば、リインのやつは私が来ている事にも気づかずに、鏡しか見ていないではないか。」

「講師として色々と問題発言があったような感じがしたけど、確かに今のリインには刻也くんしか見えていないみたいね。」

 

「私が講師と言う立場でこの場にいなければ代わりを任せる事もなかったのだが......。」

「さっきから問題発言しかしていないけど、そもそもシグナムがその講師を引き受けなければ、この光景も目に出来ずに、刻也くんと出会う事もなかったんじゃないかしら?」

「まあ、そうだな。今は鏡刻也という剣士に出会えたという事で自分を納得させるが、今後のリインとの鍛錬は多少厳しくなるかもしれないがな。」

 

「リイン、ご愁傷さま。恋愛感情からではない物騒なシグナムの嫉妬で、貴方はまた強くなれるみたいよ。」

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

―― ぶるっ!

 

「どうかしましたか?」

「大丈夫、ちょっとした武者震いだと思うから。それよりも3本目を始めよう。私達の所為で授業の始まりも遅くなってしまって、残りの時間も余り残っていないから。」

 

 何かを感じ震えた様に見えたリインさんだが、そう言うと再びエアーソフト剣を構え、本当に何事もなかった様子で3本目を始める姿勢をとった。

 3本目の打ち合いを始めんとするリインさんの雰囲気を感じた審判を務めてくれているシャマルさんが、2本目の途中から見に来ていたシグナムさんとの会話を止め、開始の合図をするべくこちらに向かってきた。

 

 ただシグナムさんとどのような会話をしていたのか分からなかったが、向かってくる時にリインさんの方を慈悲深い眼差しで見ていた気がした。

 

 

「時間的にこれが最後になるわ。それじゃあ、始め!!」

 

 

 2本目終了から多少のインターバルを挟んで始まった3本目。シグナムさんも3本目は最後まで見届けていくようで他のペアの指導に向かう様子もなく、また、シグナムさんの動向ばかりを気にしているクラスのほとんどの男子もその雰囲気を何となく察し、ほぼ全員がこの俺とリインさんの対戦に注目しているのを感じた。

 その事は当然リインさんも感じてはいるだろうが完全に集中しており、ただ俺が向かってくるのを待っている感じで俺だけを見ていた。

 

 どうやら、2本とも自分から攻勢に出て有効打を喰らった事をふまえ、今回はカウンター主体の待ち構える姿勢で対抗するらしい。

 このままどちらかが仕掛けていかなければ、4限目の終了を告げるチャイムが鳴り、時間切れとなってしまうだろう。そうなると、半ば授業をサボりこちらを見ているクラスの男子はどうでもいいが、熱視線で見ているシグナムさんやここまで審判を務めてくれているシャマルさん。何よりも今対峙しているリインさんに悪いので、今回は俺が本気で攻勢に出る事にする。

 

さて、リインさんは俺の本気の攻撃にどう対応してくるのだろうか?

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

「ふーん。それでどうなれば、この状況になるの?」

「武術に精通した女子大学生。昨日、先生から話を聞いたけど、男女で授業が別れるから私達には関係ないかなと思っていたけど、」

「刻也君がその授業を受ける地点で、どこかでこのような状況になるんじゃないかと想定していた私達がいました。」

 

 その証拠にと言ってコロナが昨夜、3人のLIMEでの会話の一部を見せてくれたのだが、そこには確かに、この状況に限りなく近い推測が記載されていた。

 

 

さて、あの後何があり、現在どのような状況なのかという事を順を追って大雑把に説明していくと

 

 攻勢に出て行った俺に対し、リインさんに反撃の意思はなく全力で回避に専念していた。まずは敵の情報を少しでも多く得る。言ってしまえば基本中の基本だが、体育の授業としてやっていたわけで、そこまでする必要もなかったのだが、これが最後という事と少しでも長く戦いたいという想いも含め、真剣モードとなったリインさん。

 当然、回避に専念されるとリインさんの剣の技量は関係なく、今まで培ってきた体術が発揮され見物人であるクラスの男子達であれば簡単に引っかかるであろうフェイント等には一切引っかからず、有効打を与えられるだけの隙はそう簡単に生まれなかった。

 

 それが2、3分くらい続いた頃、以前とリインさんは全力回避を続け、俺も有効打を与えられずにいたのだが、相手の動きを見て情報を得ようと観察していたのは俺も同じで、リインさんの回避パターンや癖が何となく把握でき、使うつもりはなかったのだが、相手の攻撃や防御の癖を見切り相手の防御をすり抜けるように攻撃を通す御神流の技の1つ"貫"をリインさんに感づかれない様に使い、有効打とはならないまでも少しずつ身体に当てる事が増えた。

 リインさんにしてみれば、何故今まで避けられていた攻撃が当たるのか原因は理解出来ないが、このままではあと1分足らずで自分は有効打を受けるという状況になった。

 

 そんな状況を打開したいリインさんだが、如何せん何故回避出来なくなったのか原因が解らないし、解ったところで、何年間もかけて身に付け昇華させてきた自分のスタイルを急に変える事は困難なので、その想いもむなしく、むしろその事が気になり強く打ち込めるだけの隙を意図せず晒してしまい、対戦が始まってから4分30秒位経過したところで俺が有効打を与え勝敗が決した。

 

 

 それからの展開は余りにも早かったので、俺も全てを把握出来てはいないのだが、まず決着が着いてからシグナムさんが「良い試合だったな。それにまだ授業終了まで3分もある。どうだ、鏡?私とも1本。」と熱の籠った眼で言われたのだが、

「ダメでしょ。まだ3分()。じゃなくて、後3分()()ないんだから、この後はクールダウンして終わりでしょ。」とシグナムさんはシャマルさんに指摘されてしまい、

「仕方ない。しかし、この後は昼休み。鏡、少しでもいいから私に君の時間をくれないか?」

と残りの授業時間での打ち合いは諦めたようだが、次にこの様に言われたので、「大丈夫です。」と了承した。

 

 その後はクラス全体がシグナムさんの指導のもとクールダウンをし4限目の終わり・昼休み開始を告げるチャイムが鳴り4限目が終わった。

 

 ここで本来ならば、弁当持参組ではない男子は即着替えて食堂や購買に駆け込むところだが、授業中は大して絡む事の出来なかった女子大生3人に、ここぞとばかりに駆け寄り少しでもお近づきになりたいと企てた男子が群がり、話が出来る感じではなかった。

 しかし、そんな男子達を3人はどこかうんざりしながらも慣れた感じであしらい、囲っていた男子達が帰っていくと、俺の下に申し訳なさそうにやってきてたのだが、俺のこの後の事も考慮してとりあえず着替えを先にする事になり、何故か一緒に俺の教室の前まで着いて来て、俺の着替えが終わるまで廊下で待っていた。

 

 そんな訳で、早々に着替えを済ませた俺は廊下で待たせてしまっているシグナムさん達の下に戻ったのだが、いざ話をしようとした所で、今度は更衣室で着替えを済ませたヴィヴィオ達三人が教室に戻って来た。

 

それだけの事だったのだが、俺とヴィヴィオ達を見てシャマルさんは何を感じとったのか、

「刻也くんはこの子達とお昼を一緒に食べてるの?だったら、今日だけ私達も混ぜてくれないかしら?」と言うシャマルさん。

 

 この発言後、気が付けば、教室で一緒に弁当を広げ昼食を食べる事になっていた。

 

とまあ、ヴィヴィオ達も推測はしていたとはいえ、まさか3人もいるとは思ってもいなかったのとまったく関わりのない見知らぬ年上の3人と食事を共にする事に対する躊躇い。そして、この教室内及び野次馬根性を丸出しで廊下でこの光景を見ている他の生徒が多数いる事でかなり困惑している様子だった。......が、彼女達の人としての器の大きさと言うべきだろう、そんな状況であったにも関わらず、シグナムさん達と一緒に昼食を食べる事を同意した。

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

「それじゃあ、シャマルさん達もSLOをやってるんだ!」

「私達もやってるんですよ!」

 

「そうなのね!私達は今いるシグナムとリイン、あと後輩なんだけど、アインハルトちゃんと言う子と4人で大概プレイしているのよ。

 生憎、そのアインハルトちゃんは真面目な娘で「受講している講義は先生に申し訳ないのでサボる事は出来ません。」って言われちゃったから、無理矢理連れてくるのも憚られてね。」

 

「アインハルトさんですか。」

「どうせだったら会ってみたかったね。」

 

「それで、シャマルさん達はどんな職業を選んだの?」

 

 そんな訳で昼食を一緒に食べ始め、俺はシグナムさんとリインさんから「何時から鍛え始めているんだ?」とか「徒手格闘も出来るのかな?」と言って武術関係の質問に答えている間、その会話に入る事のなかったシャマルさんとヴィヴィオ達は共通の話題を見つけたようで、声のヴォリュームが上がり、俺まではっきりとその会話が聞こえた。

 

 どうやら、シグナムさん達もSLOをやっているらしい。なのは達は特例だが、未だ1万本しか流通していないSLOをプレイしている人達が、自分の周りにも結構いる事に驚いた。

 

「――― って、刻也、聞いているのか?」

「...っあ。すみません。ちょっとあっちの会話が耳に入ってしまって。」

「と言う事は、刻也くんも?」

「えぇ。やってますよ。召喚士系と盗賊系、今は暗殺者ですけど、それでプレイしてます。」

 

 ここまでの会話でシグナムさんは俺の事を刻也と呼ぶようになった事はさておき、同じようにあちら側の会話が聞こえていたリインさんの質問に答えた。

 

「そうなんだ。刻也くんが職業を言ってくれたから、私達のも言うけど、私が銃騎士と賢者でポジションは主にCG。シグナムが剣聖と守護騎士のFW。シャマルは獣調教師と神官でFBって言うのが妥当かな。最後にこの場にいないアインハルトは剣闘士と大騎士でシグナムより1歩半ほど下がったWGかな。」

「私はリインとシャマルに誘われてやる事になったが、実際に身体を動かしてるのと同じように違和感なくい動け、最新技術の凄さを体感したよ。」

 

 そして、リインさんは自分達の事について話してくれ「そっちもSLOの話?だったら――」とあちらにもこちらの会話が聞こえたようで、武術方面の話からSLOの話にシフトしたと分かり、シグナムさんとリインさんとの武術談はお開きとなり、結局昼食を食べ終えても解散とはならず、昼休み5分前の予鈴がなるまでSLOの話をする事となった。

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

「それじゃあ、今度はSLOで会いましょうね。」

「この際SLO内でも構わない。刻也、その時は私と決闘して欲しい。」

「その時はアインハルトもいるだろうから、私達と同じく仲良くしてあげて。」

 

と、教室から出て行く別れ際にお互いの連絡先を交換し、ついでにLINEのIDも登録したので今日だけの付き合いとはならず、シグナムさん、シャマルさん、リインさんとの繋がりが出来た。近いうちにSLO内でアインハルトさんという女性も加わって再会する事になるだろう。

 

「こうして、また刻也と関わりのある女性が増えたのであった。」

「とりあえず、なのはちゃん達にはシグナムさん達の事、メッセージ送っておくね。」

「そして、これからも増えていくんですね。解ります。」

 

今後SLOで、シグナムさん達との交流はあるだろうからなのは達に知らせておくのは分るが、何故かその言葉には裏があるような気がしてならなかった......っと最後に言っておく。

 




※登場人物SD化 第八回"なのは"

【挿絵表示】
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告