とらなのVRMMO ~魔法はゲームの中だけなの~【改訂版】 作:戯言紳士
『クロノス様がログインしました。』
えっと、現在の時刻は14時20分。
俺は、気が付いたらアリサの家のリビングでSLOにログインしていた。
少々時を遡るが、土曜日という事で学校は休み。なので、早朝から高町家へ行き、なのはが呼び
に来るまで、士郎さんに稽古をつけてもらっていた。
朝食を食べた後は、翠屋へ行き開店の準備を手伝い、翠屋が開店してからは主に厨房で昼のピー
クが過ぎるまで働いていた。
ここまではいつもと変わらない、いつもと同じ土曜日だった。
そんな日常に変化が起きたのは、ピークが過ぎ、昼食を食べ終えてフロントへ出た時、
「桃子さん。そこの執事をテイクアウトで。あとおまけでこのウェイトレスも付けて下さい。」
「私はおまけなの!?」
という、忙しくて来ていた事に気付かなかったが、翠屋にギルドメンバーが全員集合していて、
俺の姿を現したタイミングで、アリサが冗談めいた注文をした。
思い返せば、桃子さんがノリノリでその注文を受け入れ、士郎さんがそれを止めようとしなかっ
たのは、あの時間で俺を帰す事は決まっていたのだろう。
そういえば昨日、なのはが今日の事を話したというメッセージを送っていた。
そんなこんなで、後は着替えを済ませ、促されるまま車に乗り込み、一度家の前で下りヘッドギ
アを回収してから、アリサの家まで連れて来られたというわけである。
◇◆◇◆◇◆ ◇◆◇◆◇◆
「迎えに来るとは聞いていたが、集まってやる必要はなかったんじゃないか?」
道中に聞けば良かったのだが、SLOにログインした後、ギルドホームのエントランスに集まり
今日の予定の確認をしているところで聞いてみた。
「何言ってるんですか先輩。今日はこのままアリサちゃんの家でお泊り会ですよ?」
「初耳なんだが。」
「金曜日の朝には、LIMEのグループの一言メッセージの部分に書いてありましたよ。」
「刻也の事だから、内容までは全部把握しないと思ってそこに書き込んだんだけど、意味はなかっ
たみたいね。」
「昨日、私達に返信した時に見なかったんですか?」
「......完璧に見逃していたらしい。」
「刻也先輩でも、そういうミスをするんですね。」
ダメだな。あまり携帯に束縛されたくはないのだが、一日の終わりにはしっかりと確認する様に
しよう。
「俺も人間だからな。しかし、道中に聞いておけば良かったな。俺、着替えも何も持ってきてない
ぞ...。」
「安心しなさい。そんな事もあると思って、ママに何着か刻也の服を用意してもらってるから。」
「流石、アリサちゃんやな。」
「でも、それって刻也がちゃんと今日の事を把握してたら無駄になったんじゃないの?」
「確かにそうだよね。」
「それは大丈夫です。刻也が家に来るって話したら「それじゃあ、夏服と秋の新作の服をいっぱい
持って帰るわ」って言ってたので。」
「という事は、俺はまたモデル紛いの事をするんだな?」
「構わないでしょ?それで服も貰えるんだし。誰も損をしない話よ。」
「まあな。」
これまでも何度か、アリサのお母さんにはこのような事をお願いされているし、その度に用意さ
れた服を頂いている。
今回は幸い?な事に、着替えを持って来ていない状況なので、アリサのお母さんに感謝しよう。
「これは、また書店からファッション誌がなくなるね。」
「私達はアリサちゃん経由で手に入るから大丈夫だよ!」
「それってアタシも貰えるかな?」
「アリサちゃんにお願いすれば大丈夫だよ。」
「ホントにっ!やったねティア。SLOで先輩と再会してから良い事ばっかりだよ!」
「そうね。」
「それじゃあ、私達もお願いしちゃおうか。」
「そうだね。」
「それにこの事前情報は使えるよ。」
なのは達の身内贔屓の発言はもう慣れたので、書店から雑誌が消えるという事は良い。
それに、チワワと姫の発言も、俺自身は照れくさいが喜んでいる様なので良い。
だが、最後のリオの発言には引っかかる所はある。こんな情報が何に使えると言うのだろうか?
何故か聞いてはいけないような気がするので、この話はここで打ち切り、今日の予定の確認も準
備も整ったようなので、俺達は全員でクエストを受けるためにミッドチルダの役所へと移動した。
◇◆◇◆◇◆ ◇◆◇◆◇◆
「原則としてクエストは、最大で5個までしか同時に進行出来ません。また、クエストのクリア条
件を達成されてもこちらに報告に来て頂かなければ、クエスト達成とはなりません。以上の2点
にご注意下さい。」
役所のクエストカウンターで、担当のNPCからテンプレート通りの台詞を聞き終えた俺達は、
無限図書に立ち入りるための前提クエストを受けた事を確認したところで、今度は転移で今日の目
的地である1つ目のダンジョンに一番近いポータルまでやって来た。
「ここからの移動は歩きになるんですよね?」
「そうだな。道中の戦闘を含めてもそんなに時間はかからないだろう。」
「それじゃあ、移動中にでもダンジョンに関しての基礎知識のおさらいでもしようよ。」
「賛成。ここで出る敵のレベルなら余裕だし。」
「間違った知識のままだと、みんなにも迷惑かけちゃうかもしれないからね。」
「ほなら、ここは昨日から張り切っとるアリシアちゃん。頼んだでっ!」
「ふふふ。やっとこの時が来た!こんな事もあろうかと、お母さんから話を聞いていたのだ!
残念だったね、はやて。今日の私は本気だよ!!」
「......なんやと。」
はやてに振られて、勢いよく詰め込んだ知識を口にし始めたアリシア。
「凄い。アリシアちゃんからオーラが見える。」
「それは、無駄にアリシアがバトルオーラを纏ってるからよ。」
「精神力の無駄遣いね。」
「姉さん...。クラスチェンジで多少精神力が増えたと言っても、高い方じゃないのに。」
メンバーから精神力の無駄遣いに呆れられているが、気にする素振りも見せず、マシンガントー
クを続ける。
「でも、言ってる事は正しいよ。」
「本当に勉強してきたみたいだから、そこは評価して上げても良いんじゃないかな?」
「でしょ!でしょ!アリサ達も、先輩達みたいに私を素直に褒めても良いんだよ。それから――」
しかし、こちらの話している声はちゃんと届いていたようで、自分を褒める言葉には話を中断し
てまで反応を見せた。
結局、アリシアの話を聞き終え、補足事項を話ている間に目的地に到着してしまった。
「――と、これだけ覚えておけば大丈夫だな。」
最後に、アリシアと俺の補足を付け加えた事をまとめるとこの様になった。
・ダンジョンのクリア条件は、最奥で待ち受けるボスを倒す事。
・ダンジョン内には、様々なトラップが仕掛けられている。トラップを事前に解除するには、専用
スキル、もしくは専用スキルが付与されている道具を使用するしかない。
・ダンジョンでしか出現しないモンスターもいる。また、状態異常を発生させる攻撃をするモンス
ターが非常に多い。
・ダンジョンには、一度に入場出来る人数が設定されており、中でのPT・ユニオンの変更は出来
ないため、入場前に編成しておく必要がある。また、ダンジョン内でPT・ユニオンを組んでい
るメンバー以外のプレイヤーと遭遇する事はない。メンバー以外との通信も不可能。
・ダンジョンの階層は個々で異なり、構成も入場する度に変化するダンジョンもある。無限図書が
この入場毎に構成が変化するダンジョンに該当する。
・ダンジョンボス討伐後には、報酬部屋と呼ばれる宝箱だけが置かれた場所に転移され、中のアイ
テムを入手するとダンジョンの外へ出るための扉が現れる。
・ダンジョン内でログアウトした場合、再ログイン時の開地点はダンジョン入り口。残されたメン
バーは、人数が減った状態で攻略を継続する事になる。
・ダンジョンを途中で脱出したい場合は、入り口まで戻るか脱出用のアイテムを使う。脱出用アイ
テムは生産、またはアイテムショップで入手可能。
「それじゃあまずは、このダンジョンの入場人数の確認って事ね。」
「入り口に立て札があるから、それに書いてあるはずだよ。」
今更だが俺達が最初にやって来たのは、N5E2のフィールドにある古びた遺跡のダンジョン。
クエスト内容にも北の古代遺跡1としか記述されていないから、固有名称は設定されていない、一
般的な遺跡型のダンジョンという事だ。
推奨レベルも20からなので、危険度も低い。
「えっと、ここの入場人数は6人(1PT)だって。」
「アタシ達は全員で12人だから、2つのPTに分けないといけないね。」
「その場合、刻也さんは召喚モンスター抜きになりますけど...。」
「久遠達には悪いが仕方ないだろ。」
この状況を久遠達が把握しているとは思えないが、自由時間があれば召喚して好きにさせてやろ
う。
「それじゃあ、初めてって事もあるし、探検者のアリシアと経験者の刻也を分けてPTを組みま
しょう。」
「異議を申し立てたいところだけど、アリサの言ってる事も最もだって私にも解るから、ここはそ
の案を受け入れるよ。」
「アリシアちゃんが大人しく受け入れるなんて意外やったな。」
「私だって日々成長してるんだよ。ここでゴネたところで、ダンジョンに挑む時間が遅くなるだけ
だもん。」
「はいはい。不安分子だったアリシアも異論はないみたいだし、私達も早く分かれてダンジョンに
挑むわよ。」
ダンジョンに早く挑みたいからと、聞き分けの良いアリシアが納得したところで、アリサが中心
となり、メンバー分けを始めた。
「それじゃあ、私はアリシアちゃんのところに行きますね。知識はちゃんとしてたけど、落ち着い
て見て上げられる人がいないとね。」
「お願いします。コロナさんがアリシアのPTにいてくれるなら安心出来ます。それと、なのは。
タイプは
さい。」
「いいの?アリサちゃんも回復役出来るのに。」
「今回だけよ。私も今回はアリシアのPTに行くつもりだったから。」
「わかりました。高町なのは、刻也さんのPTで頑張ります!」
「後は、前衛ポジションと後衛ポジションに分かれて、グッパーで決めましょう。」
「ええやろ。前衛はヴィヴィオさん・リオさん・フェイトちゃん・スバるん。後衛が私(はやて)・
すずかちゃん・ティアやな。」
「前衛は2:2に分れたあとどっちにつくか決めて、私達後衛は2:1で2の方が刻也先輩の方に
つくわけね。」
「バランス的に考えるとそれがいいわね。」
「それじゃあ、サクっと決めちゃおうか。」
―― せーのっ!
前・後衛に分れてグッパーをした結果、このようなPT構成となった。
俺(刻也)・なのは・はやて・すずか・チワワ(スバル)・ヴィヴィオ
アリシア・フェイト・アリサ・姫(ティアナ)・リオ・コロナ
アリシアの方には、アリサに姫にコロナの3人がいるので、たとえアリシアが暴走したとしても
どうにかなるだろう。
俺の方だが、チワワは基本忠実なので大丈夫。はやても初見で馬鹿な真似をするタイプではない
ので問題はない。
「それじゃあ、どっちが先にクリアするか競争だね。」
「タイムアタックじゃないんだから、今回は時間をかけてでも慎重に行くのよ。」
「そうだよ姉さん。」
「アリサとコロナさんが一緒で良かった。」
「うーん。ここはアタシも真面目に取り掛かりますかっ!」
「そんなに気を張らなくても大丈夫だよ。」
そして、水を得た魚のように、目をキラキラさせながら、我先にと特攻していったアリシアを
追って、アリシアのPTとなったメンバーも続いて、先にダンジョン内に入って行った。
「それじゃあ、俺達もいくか。」
「「「「「はーい!」」」」」
こうして俺達は、万全の状態でダンジョン"北の古代遺跡1"の攻略を開始した。