とらなのVRMMO ~魔法はゲームの中だけなの~【改訂版】 作:戯言紳士
―― ゴロゴロゴロゴロゴロゴロッ!
「なんで私達、こんな典型的なトラップに追いかけられてるんやろうなっ!」
「それは、はやてちゃんがこのトラップのスイッチを押したからでしょ!」
―― ゴロゴロゴロゴロッ!
「そない言うても、あないあからさまなボタンがあったら、押してまうやろっ!」
「確かに、はやてが押してなかったら、アタシが押してたかも...。」
「スバルちゃんも同意しないでよ!」
―― ゴロゴロッ!
「ちょっ!もう音がすぐそこまで迫ってるよ!」
「あかんっ!後ろを振り向いたら終わる気がする!」
「ごめんね。アタシ潰されたくないから、ペースを上げるね。」
「「待ってよ!スバルちゃん。」」
「敏捷値だけなら、スバルちゃんが一番低いのにね。」
「現実の身体能力も反映されてるって、今分かりました。」
「確かに、チワワは現実では早い方だからな。」
「すずかちゃんは見かけによらず、運動が得意だったんだね。」
「はい。良く言われます。」
「すずかの運動神経は、ギルド内でもトップクラスだと思うぞ。」
「ヴィヴィオさんは、普段から走ったりしてるんですか?」
「現状を維持するために、たまに走る程度かな。」
「やっぱり、気になりますよね。スタイル。」
「女の子ならね。すずかちゃんもでしょ?」
「はい。」
「何を呑気に話とんねん!仲間のピンチやでっ!助けてぇな!」
「はやてちゃんのせいでしょ!自業自得のはやてちゃんはほっといて、私は助けてよ。刻也お兄
ちゃん!」
「なのはちゃん。呼び方が昔に戻ってますし、そうとう追い詰められてるみたいですよ?」
「そうみたいだな。ぶっちゃけ、アレに潰されたところで30~40の固定ダメージを受けるだけ
で大した事はないんだけどな。」
「うわぁ...。ぶっちゃけちゃったよ。けど、精神的なダメージは大きいよね。」
「そうですね。」
「はぁ...。はぁ..。やっと先輩達に追いついた。」
「「「お疲れ(さま)、チワワ(スバルちゃん)。」」」
「けど、いい加減に先に進みたいし、さっさとアレをただの鉄塊にするか。」
「追い駆けっこは終わりですね。」
「これであんなあからさまなトラップのスイッチを押した、はやてちゃんも懲りたでしょ。」
「はぁ..。はぁ..。なんでもいいから、終わりにするなら、早くして下さい!」
時間にすれば5分くらいだが、はやてがあからさまなトラップだったのでスルーしたのスイッチ
を押したため始まった、迫って来る鉄球から10分間ひたすら逃げるという、地味な嫌がらせのト
ラップだが、普段から運動はあまりせず、運動神経も並か以下の2人が限界に近いようなので、鉄
球を破壊して、探索を再開する事にした。
「罠解除のスキルさえ有れば、理不尽だがどんな武器でも壊せるんだよな。」
俺はそう呟きながら、懐かしの初心者用ナイフを取り出し、後ろを振り返り、今にも2人を押し
潰ぶそうとしていた鉄球に向かって、ナイフを投げた。
―― サクッ.........ピキピキッ!...... パッカーーンッ!
現実ではありえない光景。鉄球にナイフが突き刺さり、その後全体に罅が入り、最後は内側から
砕け散った。
あんなにも自分達を追い詰めていたモノが、こんなにあっけなく破壊された事への戸惑いや憤り
と脅威が去った安堵感がひしめき合い、2人はその後も少しの間、ただ茫然と鉄塊になり果てた鉄
球の欠片を見つめていた。
◇◆◇◆◇◆ ◇◆◇◆◇◆
「あない簡単に壊せるんやったら、追いかけまわされる事なかったやん。」
「人間、少しくらい痛い目を見ないと同じ過ちを繰り返す生き物だからな。」
「でも、あのトラップを破壊したら、原因のスイッチの目の前にいたのにはびっくりしたよ。」
「結構走ってたのにね。」
「あの時は必至だったから、考える余裕なんてなかったけど、来た道を戻ってるんだったら曲がり
角とか、別の部屋とか、色々と逃げ込める所があったはずなのに、追い駆けられてる時はただの
一本道しかなかったんだよね。」
「そういえば、モンスターも全く出てこなかったね。」
「はやてちゃんがスイッチを押した時には、私達全員が別の空間に転移させられてたんですね。」
「あからさまなモノほど、発動後は無駄に力の籠ったトラップのモノが多いから、今後は気を付け
ろよ。」
「「「「はーい!」」」」
「先に言うて欲しかったわぁ。」
―― カチッ!
「......なんか変な音が聞こえへんかった?」
「懲りないな、はやては。地面に少し盛り上がっていた所があっただろ。」
「また、はやてちゃんがやらかしたの?」
「今回はワザとじゃないで。偶発的に起きたんやっ!」
「それで、今度のトラップは何なんですか?」
「ん~。今回のダンジョンだとある意味、ショートカットになるトラップだな。」
「どういう事?」
「次に起こる事を擬音で表すと"パカッ"だな。」
「「「「「あぁ~。成程。」」」」」
「んで、その後は"ひゅ~"やろ。芸人やったら美味しい展開やけど、私は一般人やねん。笑いの神
様が私の事を見取るんやったら、どっか行ってや!」
「はやてちゃん、今回は結構余裕があるね。」
「それで?どうして今回はショートカットになるの?」
「このダンジョンは地下に降りていくタイプだからな。落ちたら確実にモンスターハウスの部屋が
なんだが、下降する手段の一つとして、β版では有効活用されていたトラップなんだ。」
「だから、これの事もスルーしてたんですね。」
「もし、誰も踏み抜かなかったらどうしてたの?」
「その時は正規のルートで下の層に降りるだけだったな。」
「それじゃあ、今回ははやてちゃんのファインプレイ?」
「ポジティブに捉えればその通りだ。」
「その当事者ほっといて、そっちだけで話進めんといて。」
「そうだったね。」
「それで何時になったら"パカッ"ってなるんですか?」
「確かに、はやてちゃんが踏んでから時間は経ってるけど、全然発動しないね。」
「今の状態はオンにするスイッチを押し続けている状態だからな。その足を少しでも浮かせれば、
すぐにでも"パカッ"っとなるぞ。」
「そっかぁ~。この足を離した途端、私は落ちるんやなぁ。ってなんで自分で自分が落ちるタイミ
ングを計らなあかんねん!」
「普通、踏み抜いたらすぐに足をどかして即ストンと逝くからな。」
「今日のはやてちゃん、笑い神様に愛されてるね。」
「さあ、勇気をもってその足を浮かせよう。」
「はやてちゃんが落ちたら、私達もすぐに後に続くからね。」
「先はモンスターハウスだが、序盤は徐々に湧くタイプだから、いきなり大多数に襲われる事はな
いぞ。」
「......あぁぁもう。八神はやて特攻隊員、先行突撃してくるでっ!」
「「「「「逝ってらっしゃいっ!」」」」」
―― パカッ!
―― ひゅ~っ!
―― ストンッ!
――「イタッ!!」
意を決して足を動かしたはやては、先にネタバレした通り、突然足場が消え、下の階層へ落下し
て行った。最後に声を荒げたようだが、着地に失敗したのだろう。
「それじゃあ、俺達も続くぞ。」
「早くしないと、はやてちゃんがモンスターに囲まれちゃうんだもんね。」
「はやてちゃんは行ったんだもん。私も覚悟を決めないと。」
「大丈夫だよ、なのはちゃん。はやてちゃんが落下してから直ぐに「イタッ!!」って声が聞こえ
たから、全然深くないはずだよ。」
「重盾を下敷きにすれば、下にモンスターがいても蹴散らせるし問題ないよ。」
「そこに運悪くはやてちゃんがいたら...。」
「今のはやてならありえるが展開だが、味方にダメージ判定はないから大丈夫だろ。」
「―― 早く来てや!なに話とるかは聞き取れへんけど、こっちはぞくぞくとモンスター湧いて来
とんねんで。」
「だそうだ。先に俺が降りて落下地点の周りの敵は排除する。後はチワワがマックスキャリバーを
重盾モードで落とすなりして、覚悟の出来た者から降りて来るんだ。」
「「「「はい。」」」」
そして一通りの指示を出し終えた俺は、すぐにポカンと空いた穴に飛び込み、アイオーンを槍モ
ードに変更し、着地するなり周囲の敵を薙ぎ払った。
ブラックウルフ 【生命力】 7240 / 7240 ⇒ 0 / 7240
カーズスネイク 【生命力】 6970 / 6970 ⇒ 0 / 6970
ブラックウィプス 【生命力】 5360 / 5360 ⇒ 0 / 5360
ハンドマン 【生命力】 8400 / 8400 ⇒ 0 / 8400
バット・バット 【生命力】 4520 / 4520 ⇒ 0 / 4520
「おぉ、流石やな。瞬殺やんか。」
「俺の装備も強化しておいたからな、その影響だろう。」
このダンジョンで出現するモンスターのレベルは18~24。推奨レベルが20に対して俺のレ
ベルは推奨レベルの2倍以上あるので、この場に出現するモンスターを瞬殺出来るくらいの火力は
あって当然だ。
―― ガシャンッ!
「お待たせっ!」
「はやてちゃんは大丈夫?」
「私は大丈夫やで。」
そして、タイミング良く、落下地点付近のモンスターが一時的に排除された時に、戦闘準備万端
でなのは達が降りてきた。
「うわぁ...。出現してるモンスターに統一性が全くないよ。」
「どんなモンスターが相手でも排除するだけです!」
こうしてPTメンバーが全員集まり、はやての身の安全も確認出来たところで、残すはこの部屋
に湧き出てくるモンスター達を殲滅するだけとなった。
その戦闘だが ―――
チワワは重盾モードで先に落としたマックスキャリバーを回収後、敵の密集地帯に突入し射程の
広い重斧モードを片手で軽々と振り回し敵を薙ぎ払い。
ヴィヴィオも負けじとセイクリッドハートを通常モードと砲撃モードを要所要所で適度に切り替
え、周囲に敵が集まってきた時には比較的溜め時間の少ないショートバスタ―で、一気に敵を蹴散
らしていた。
すずかはこの様な戦闘ではポジションとか関係ないので、攻撃魔法と蛇腹剣モードのナイトウォ
ーカーを器用に操り、接近を許した時には即座にトライデント形状の槍モードに移行し、槍術です
ぐさま接近してきた敵を排除し。
はやては比較的モンスターがいない場所を転々としながら、今回の強化で新たに追加したビット
の形状"
らないが舞で、俺達のサポートをしていた。
そしてなのははと言うと、
「"ショートバスターッ!" "ショートバスターッ!" "ショートバスターッ!"」
と、砲撃魔導師だから出来る芸当、ほぼ溜め時間なしのショートバスターの連続使用で、1人だ
けFPSゲームをしている感じで、射線にいる全ての敵を砲撃で倒していた。
余談だが、なのはのその姿を見て、俺は何故だか「やっぱり、なのはも
な。」と思った。
結果は言うまでもなく、誰一人致命傷を負う事なく完勝し、モンスターハウスへ転落する罠を全
員無事に突破した。
◇◆◇◆◇◆ ◇◆◇◆◇◆
「もう、絶対罠にはかからへん!あんな思いするんはもういややっ!」
「あはは...。お疲れ様。はやてちゃん。」
「安心しろ、はやて。このダンジョンここが最下層のエリアだから、もうあの罠はない。」
「良かったね、はやてちゃん。」
「と言うか、後はこの一本道の先にあるボス部屋だけだ。」
「はやっ」
「モンスターハウスからここまで、大して探索してないですよ、先輩。」
「はやてのおかげでかなり時間短縮出来たみたいだな。」
「そないな事言われても、全然うれしくないで。」
「もう少し探索したいって言うなら他の部屋も回ってもいいが、どうする?」
「ボスに行って良いんじゃない?」
「アリシアちゃん達の方もどうなってるか気になるし、」
「それに私達の目的はクエストの達成と、」
「ダンジョンの攻略です!」
「それじゃあ、このままボス部屋に行くとするか。戦闘の準備は出来てるな?」
「「「「「はいっ!」」」」」
そして、俺達は万全の状態でボス部屋の前までやって来て、勢い良くその扉を開け放った。