とらなのVRMMO ~魔法はゲームの中だけなの~【改訂版】   作:戯言紳士

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第30話   6月20日 土曜日②

 

―― ゴロゴロゴロゴロゴロゴロッ!

 

「なんで私達、こんな典型的なトラップに追いかけられてるんやろうなっ!」

「それは、はやてちゃんがこのトラップのスイッチを押したからでしょ!」

 

―― ゴロゴロゴロゴロッ!

 

「そない言うても、あないあからさまなボタンがあったら、押してまうやろっ!」

「確かに、はやてが押してなかったら、アタシが押してたかも...。」

「スバルちゃんも同意しないでよ!」

 

―― ゴロゴロッ!

 

「ちょっ!もう音がすぐそこまで迫ってるよ!」

「あかんっ!後ろを振り向いたら終わる気がする!」

 

「ごめんね。アタシ潰されたくないから、ペースを上げるね。」

「「待ってよ!スバルちゃん。」」

 

 

「敏捷値だけなら、スバルちゃんが一番低いのにね。」

「現実の身体能力も反映されてるって、今分かりました。」

「確かに、チワワは現実では早い方だからな。」

 

「すずかちゃんは見かけによらず、運動が得意だったんだね。」

「はい。良く言われます。」

「すずかの運動神経は、ギルド内でもトップクラスだと思うぞ。」

 

「ヴィヴィオさんは、普段から走ったりしてるんですか?」

「現状を維持するために、たまに走る程度かな。」

「やっぱり、気になりますよね。スタイル。」

「女の子ならね。すずかちゃんもでしょ?」

「はい。」

 

 

「何を呑気に話とんねん!仲間のピンチやでっ!助けてぇな!」

「はやてちゃんのせいでしょ!自業自得のはやてちゃんはほっといて、私は助けてよ。刻也お兄

 ちゃん!」

 

 

「なのはちゃん。呼び方が昔に戻ってますし、そうとう追い詰められてるみたいですよ?」

「そうみたいだな。ぶっちゃけ、アレに潰されたところで30~40の固定ダメージを受けるだけ

 で大した事はないんだけどな。」

「うわぁ...。ぶっちゃけちゃったよ。けど、精神的なダメージは大きいよね。」

「そうですね。」

 

「はぁ...。はぁ..。やっと先輩達に追いついた。」

「「「お疲れ(さま)、チワワ(スバルちゃん)。」」」

 

「けど、いい加減に先に進みたいし、さっさとアレをただの鉄塊にするか。」

「追い駆けっこは終わりですね。」

「これであんなあからさまなトラップのスイッチを押した、はやてちゃんも懲りたでしょ。」

「はぁ..。はぁ..。なんでもいいから、終わりにするなら、早くして下さい!」

 

 時間にすれば5分くらいだが、はやてがあからさまなトラップだったのでスルーしたのスイッチ

を押したため始まった、迫って来る鉄球から10分間ひたすら逃げるという、地味な嫌がらせのト

ラップだが、普段から運動はあまりせず、運動神経も並か以下の2人が限界に近いようなので、鉄

球を破壊して、探索を再開する事にした。

 

「罠解除のスキルさえ有れば、理不尽だがどんな武器でも壊せるんだよな。」

 

 俺はそう呟きながら、懐かしの初心者用ナイフを取り出し、後ろを振り返り、今にも2人を押し

潰ぶそうとしていた鉄球に向かって、ナイフを投げた。

 

―― サクッ.........ピキピキッ!...... パッカーーンッ!

 

 現実ではありえない光景。鉄球にナイフが突き刺さり、その後全体に罅が入り、最後は内側から

砕け散った。

 

 あんなにも自分達を追い詰めていたモノが、こんなにあっけなく破壊された事への戸惑いや憤り

と脅威が去った安堵感がひしめき合い、2人はその後も少しの間、ただ茫然と鉄塊になり果てた鉄

球の欠片を見つめていた。

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

「あない簡単に壊せるんやったら、追いかけまわされる事なかったやん。」

「人間、少しくらい痛い目を見ないと同じ過ちを繰り返す生き物だからな。」

 

「でも、あのトラップを破壊したら、原因のスイッチの目の前にいたのにはびっくりしたよ。」

「結構走ってたのにね。」

「あの時は必至だったから、考える余裕なんてなかったけど、来た道を戻ってるんだったら曲がり

 角とか、別の部屋とか、色々と逃げ込める所があったはずなのに、追い駆けられてる時はただの

 一本道しかなかったんだよね。」

「そういえば、モンスターも全く出てこなかったね。」

「はやてちゃんがスイッチを押した時には、私達全員が別の空間に転移させられてたんですね。」

 

「あからさまなモノほど、発動後は無駄に力の籠ったトラップのモノが多いから、今後は気を付け

 ろよ。」

 

「「「「はーい!」」」」

「先に言うて欲しかったわぁ。」

 

 ―― カチッ!

 

「......なんか変な音が聞こえへんかった?」

 

「懲りないな、はやては。地面に少し盛り上がっていた所があっただろ。」

「また、はやてちゃんがやらかしたの?」

「今回はワザとじゃないで。偶発的に起きたんやっ!」

 

「それで、今度のトラップは何なんですか?」

「ん~。今回のダンジョンだとある意味、ショートカットになるトラップだな。」

「どういう事?」

「次に起こる事を擬音で表すと"パカッ"だな。」

 

「「「「「あぁ~。成程。」」」」」

 

「んで、その後は"ひゅ~"やろ。芸人やったら美味しい展開やけど、私は一般人やねん。笑いの神

 様が私の事を見取るんやったら、どっか行ってや!」

「はやてちゃん、今回は結構余裕があるね。」

 

「それで?どうして今回はショートカットになるの?」

「このダンジョンは地下に降りていくタイプだからな。落ちたら確実にモンスターハウスの部屋が

 なんだが、下降する手段の一つとして、β版では有効活用されていたトラップなんだ。」

「だから、これの事もスルーしてたんですね。」

 

「もし、誰も踏み抜かなかったらどうしてたの?」

「その時は正規のルートで下の層に降りるだけだったな。」

「それじゃあ、今回ははやてちゃんのファインプレイ?」

「ポジティブに捉えればその通りだ。」

 

「その当事者ほっといて、そっちだけで話進めんといて。」

「そうだったね。」

「それで何時になったら"パカッ"ってなるんですか?」

「確かに、はやてちゃんが踏んでから時間は経ってるけど、全然発動しないね。」

 

「今の状態はオンにするスイッチを押し続けている状態だからな。その足を少しでも浮かせれば、

 すぐにでも"パカッ"っとなるぞ。」

 

「そっかぁ~。この足を離した途端、私は落ちるんやなぁ。ってなんで自分で自分が落ちるタイミ

 ングを計らなあかんねん!」

「普通、踏み抜いたらすぐに足をどかして即ストンと逝くからな。」

 

「今日のはやてちゃん、笑い神様に愛されてるね。」

「さあ、勇気をもってその足を浮かせよう。」

「はやてちゃんが落ちたら、私達もすぐに後に続くからね。」

「先はモンスターハウスだが、序盤は徐々に湧くタイプだから、いきなり大多数に襲われる事はな

 いぞ。」

 

「......あぁぁもう。八神はやて特攻隊員、先行突撃してくるでっ!」

 

「「「「「逝ってらっしゃいっ!」」」」」

 

 ―― パカッ!

 ―― ひゅ~っ!

 ―― ストンッ!

 ――「イタッ!!」

 

 意を決して足を動かしたはやては、先にネタバレした通り、突然足場が消え、下の階層へ落下し

て行った。最後に声を荒げたようだが、着地に失敗したのだろう。

 

「それじゃあ、俺達も続くぞ。」

「早くしないと、はやてちゃんがモンスターに囲まれちゃうんだもんね。」

「はやてちゃんは行ったんだもん。私も覚悟を決めないと。」

「大丈夫だよ、なのはちゃん。はやてちゃんが落下してから直ぐに「イタッ!!」って声が聞こえ

 たから、全然深くないはずだよ。」

「重盾を下敷きにすれば、下にモンスターがいても蹴散らせるし問題ないよ。」

 

「そこに運悪くはやてちゃんがいたら...。」

「今のはやてならありえるが展開だが、味方にダメージ判定はないから大丈夫だろ。」

 

 

「―― 早く来てや!なに話とるかは聞き取れへんけど、こっちはぞくぞくとモンスター湧いて来

 とんねんで。」

 

「だそうだ。先に俺が降りて落下地点の周りの敵は排除する。後はチワワがマックスキャリバーを

 重盾モードで落とすなりして、覚悟の出来た者から降りて来るんだ。」

 

「「「「はい。」」」」

 

 そして一通りの指示を出し終えた俺は、すぐにポカンと空いた穴に飛び込み、アイオーンを槍モ

ードに変更し、着地するなり周囲の敵を薙ぎ払った。

 

 ブラックウルフ  【生命力】 7240 / 7240 ⇒ 0 / 7240

 カーズスネイク  【生命力】 6970 / 6970 ⇒ 0 / 6970

 ブラックウィプス 【生命力】 5360 / 5360 ⇒ 0 / 5360

 ハンドマン    【生命力】 8400 / 8400 ⇒ 0 / 8400

 バット・バット  【生命力】 4520 / 4520 ⇒ 0 / 4520

 

「おぉ、流石やな。瞬殺やんか。」

「俺の装備も強化しておいたからな、その影響だろう。」

 

 このダンジョンで出現するモンスターのレベルは18~24。推奨レベルが20に対して俺のレ

ベルは推奨レベルの2倍以上あるので、この場に出現するモンスターを瞬殺出来るくらいの火力は

あって当然だ。

 

 ―― ガシャンッ!

 

「お待たせっ!」

「はやてちゃんは大丈夫?」

 

「私は大丈夫やで。」

 

 そして、タイミング良く、落下地点付近のモンスターが一時的に排除された時に、戦闘準備万端

でなのは達が降りてきた。

 

「うわぁ...。出現してるモンスターに統一性が全くないよ。」

「どんなモンスターが相手でも排除するだけです!」

 

 こうしてPTメンバーが全員集まり、はやての身の安全も確認出来たところで、残すはこの部屋

に湧き出てくるモンスター達を殲滅するだけとなった。

 

その戦闘だが ―――

 

 チワワは重盾モードで先に落としたマックスキャリバーを回収後、敵の密集地帯に突入し射程の

広い重斧モードを片手で軽々と振り回し敵を薙ぎ払い。

 

 ヴィヴィオも負けじとセイクリッドハートを通常モードと砲撃モードを要所要所で適度に切り替

え、周囲に敵が集まってきた時には比較的溜め時間の少ないショートバスタ―で、一気に敵を蹴散

らしていた。

 

 すずかはこの様な戦闘ではポジションとか関係ないので、攻撃魔法と蛇腹剣モードのナイトウォ

ーカーを器用に操り、接近を許した時には即座にトライデント形状の槍モードに移行し、槍術です

ぐさま接近してきた敵を排除し。

 

 はやては比較的モンスターがいない場所を転々としながら、今回の強化で新たに追加したビット

の形状"(ダガー)ビット"2基と(シールド)ビット1基、計3基のビットを操りながら、何の効果があるか分か

らないが舞で、俺達のサポートをしていた。

 

そしてなのははと言うと、

 

「"ショートバスターッ!" "ショートバスターッ!" "ショートバスターッ!"」

 

 と、砲撃魔導師だから出来る芸当、ほぼ溜め時間なしのショートバスターの連続使用で、1人だ

けFPSゲームをしている感じで、射線にいる全ての敵を砲撃で倒していた。

 

 余談だが、なのはのその姿を見て、俺は何故だか「やっぱり、なのはも高町家の住人(戦闘民族)だったんだ

な。」と思った。

 

 結果は言うまでもなく、誰一人致命傷を負う事なく完勝し、モンスターハウスへ転落する罠を全

員無事に突破した。

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

「もう、絶対罠にはかからへん!あんな思いするんはもういややっ!」

「あはは...。お疲れ様。はやてちゃん。」

「安心しろ、はやて。このダンジョンここが最下層のエリアだから、もうあの罠はない。」

「良かったね、はやてちゃん。」

 

「と言うか、後はこの一本道の先にあるボス部屋だけだ。」

 

「はやっ」

「モンスターハウスからここまで、大して探索してないですよ、先輩。」

「はやてのおかげでかなり時間短縮出来たみたいだな。」

「そないな事言われても、全然うれしくないで。」

 

「もう少し探索したいって言うなら他の部屋も回ってもいいが、どうする?」

「ボスに行って良いんじゃない?」

「アリシアちゃん達の方もどうなってるか気になるし、」

「それに私達の目的はクエストの達成と、」

「ダンジョンの攻略です!」

 

「それじゃあ、このままボス部屋に行くとするか。戦闘の準備は出来てるな?」

「「「「「はいっ!」」」」」

 

そして、俺達は万全の状態でボス部屋の前までやって来て、勢い良くその扉を開け放った。

 




※登場人物SD化 第十二回"アリサ"

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