とらなのVRMMO ~魔法はゲームの中だけなの~【改訂版】   作:戯言紳士

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第31話   6月20日 土曜日③

 

「凄く...、大きいね。」

「見た目通り、堅いんやろうな。」

 

「でも、外見はコロナのゴライアスの方が全然カッコいいね。」

 

 ヴィヴィオの発言で分ったとは思うが、扉の先で俺達を待ち受けていたのは、全長5メートル以

上の巨体を誇るゴーレムだった。

 

【種族】 スノー・ゴーレム Lv.25 【属性】氷・土 【性質】 アクティブ

【生命力】 15680 / 15680 【精神力】 50 / 50

【保有スキル】 鉄壁 硬化 貫通無効 障壁崩し無効 ???

【詳細】優れた耐久力に加え、非常に強力な物理攻撃を繰り出してくる。

    被撃時、稀に凍傷の状態異常に陥る場合がある。

 

 識別の結果はこの通り。

 スキルレベルも順調に上がっているので、開示される情報量がかなり多くなった。

 

 ちなみに、敵として登場した時のさくらの識別結果がこんな感じだった。

 

【名前】 さくら 【種族】 吸血鬼 Lv.20 / 人狼 Lv.20 【性質】 アクティブ

【生命力】 18500 / 18500 【精神力】 690 / 690

【詳細】自身の爪を自在に変化させ、剣や鉤爪に見立てて攻撃してくる。

    二種類の種族を持ち、固有名称を持つ特殊なモンスター。

 

 比較するモノではないが、総合的にこのゴーレムよりもさくらの方が高いステータスが設定され

ていたと推察する事が出来る。

 

 まあ、ステータスだけで強さを見極めるわけではないが、その様なイベントを序盤の序盤、最初

のフィールドに仕込んでいる辺り、開発陣の中になかなかイイ性格をした人物がいるのだと思う。

 

「やっぱり、これまでの相手とは違うみたいですね。」

「だね。生命力なんて、このダンジョンで出てきたモンスターの倍くらいあるもん。」

 

 しかし、おそらくこれが初のボスモンスターとの戦闘になる、俺以外のメンバーは識別して開示

された情報を見て、これまでの一般のモンスターとの違いを数値的に見せつけられ、僅かな不安を

抱いてしまった様子で、未だゴーレムの索敵範囲外からその姿を見ている。

 

なので俺は、

 

「それじゃあ、俺がちょっとアレと戯れてくるから、お前達はそれを見てアレの行動パターンとか

 覚えておけよ。」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

「その方が良いかもね。なのはちゃん達、ちょっと萎縮しちゃってるみたいだし。」

 

「それはヴィヴィオもだろ?」

「うっ...、ちょっとだけだもん。少しは年上の余裕ってのを見せたいじゃん。」

「そんなモノは知らん。」

「ひどっ!」

「そもそも、背格好だって同じくらいだし、一緒にいたら同級生と紹介しても、何の疑いもせずに

 信じると思うぞ。」

「うぅ。そんな事ないよ!背は...リオやコロナよりも......(小さい)、でも胸は......、えっと......。

 そう!アリシアちゃんよりあるんだからね!」

「...そうだな。きっと、なのは達には伝わったと思うぞ。年上の余裕ってやつが。」

「ちょっと!私をそんな生暖かい眼で見て言わないでっ!」

 

「「「「...プッ。アハハハハハッ!!!」」」」

 

「「どうした(の)?」」

 

「刻也さん。私達も行きます!」

「せや!確かに、今まで見た事もない数値見てもうたから「勝てるんかな?」って思うてもうたけ

 ど、」

「ゴーレムの目の前なのに、先輩とヴィヴィオさんのそんな余裕な姿を見てたら、そんな考えもど

 こかに消え去りました。」

「それに、私達には刻也さんがいますから、絶対に負ける事なんてありません。」

 

 俺としては、戦闘でゴーレムというモンスターの対応の仕方を見せ、不安を取り除くつもりだっ

たのだが、それを行動に移す前の俺とヴィヴィオの掛け合いで、なのは達が抱いていた不安はどこ

かへ消え去ってしまったようだ。

 

「なんでだろう...。素直に喜べない。」

「なら、その鬱憤はゴーレムにぶつければ良い。幸か不幸かアレは頑丈だから、本気でぶつかった

 ところで簡単には壊れないからな。」

「...そうだね。そうする!」

 

 ヴィヴィオの方もコレでモチベーションが回復し、俺単独で先行する事はなくなり、最初から全

員でゴーレムと対峙する事になった。

 

「それじゃあ、早速...と行きたいところだが、一応ゴーレムというモンスターについて知ってお

 くべき情報は共有しておいた方が良いだろう。

 それに相手は1体だけだ。ある程度陣形は整えて置いた方が、お互いに戦い易くなるだろう。」

 

「せやな。」

「今週、アタシ達は一緒に行動する事が多いけど、」

「刻也さんは先週の日曜日以降、今日までなかったし、ヴィヴィオさんと一緒にって言うのは、今

 日が初めてだもんね。」

「それに、ここまでちゃんとした陣形を組んで戦闘する機会なんてなかったから、ある程度の役割

 分担ははっきりさせておいた方が良いですね。」

「賛成。確かに、普段と勝手が違ってくるしね。」

 

 そもそも、部屋に入った瞬間にゴーレムが俺達を認識し攻撃をしてくるようであったなら、この

ような時間も確保出来なかった訳だが、未だゴーレムの索敵範囲に入っていないので、今の内に俺

が持っているゴーレムに関する情報を共有した上で、個々の役割を明確にする事にした。

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

「チワワ!挑発の効果切れてるぞ!」

「はいっ!あぁもう。普段より有効時間短すぎっ!」

 

「スバルちゃん、愚痴ってる場合じゃないよ。」

「ゴーレムが攻撃モーションに入っとるでっ!」

「わかってるっ! ヴィヴィオさん!スイッチ、まだですか?」

 

「あと少しだから、その攻撃はお願い!」

「わかりました!」

 

 メンバーの個々の役割を決め、ゴーレムとの戦いを始めて5分ほど経過した。

 

 前線でゴーレムの注意を引きつける囮兼盾役が、チワワとヴィヴィオになり、一定の間隔で交互

に入れ替わり、2人の頑張りでここまでゴーレムの攻撃は後衛まで届いていない。

 交代制なのは、ゴーレムの攻撃を防ぐ際に消耗した生命力や精神力を回復させ、交代した際に溜

めを必要とする砲撃魔法を放つための時間を確保するため。

 

 ゴーレムの所有する貫通・障壁崩し無効スキルだが、武技や魔法の効果に含まれる防御スキル無

効や貫通や障壁崩しのスキルと同じ効果を持つモノに対しては無効化されないため、精神力の消費

は激しくなるが確実にダメージを与えるために、2人には交代の際に砲撃魔法を使用する様に指示

をしていた。

 

「持っててよかった、先輩お手製装備と防御スキルの数々! ―― マックスキャリバー!重盾にモ

 ードチェンジ!ゴーレムの攻撃を防ぎきるよっ!」

 

―― ガキンッ!

 

「ウッ...。ダメージは大した事ないけど、この衝撃は慣れないよ。」

 

 多少ノックバックをされたものの、ゴーレムの攻撃を盾で防ぎ受けきったチワワ。

 

 本来なら、ゴーレムの攻撃は予備動作で何の攻撃か判断出来るため、回避するのが碇石なのだが

チワワはドワーフ族のため耐久力が自動で上がり易く、またダメージを軽減させる専用スキルを含

むスキルを多数所有している事、後は昨日強化した装備も影響し、ゴーレムの攻撃を受けても今回

の様に、大したダメージを負う事はなかった。

 まあ、これが分かったのは、チワワが一度攻撃を回避し損ねて、諸に攻撃を受けた時に発覚した

事なので、最初からこのスタイルだったわけではないし、俺も指示はしていない。

 

「お待たせ!スバルちゃんは下がって、なのはちゃんに回復してもらって!」

「はいっ!」

 

 そして、ゴーレムが硬直している間に、砲撃魔法の準備を整えたヴィヴィオと少ダメージを負っ

ているチワワが入れ替わった。

 

 ヴィヴィオはチワワに次ぐ耐久力だが、自身とゴーレムの立ち位置的に、回避した際に後衛陣に

被害が出るような場合に限り、相殺狙いでゴーレムの攻撃に合わせ打撃を繰り出す事もあるが、チ

ワワの様に真っ向から受け止める事はなく、基本的にはゴーレムの攻撃は碇石通り回避を選択して

いる。

 

「3度目の正直!―― ディバインバスタァァーー!!」

 

 スノー・ゴーレム 【生命力】 10448 / 15680 ⇒ 9307 / 15680

 

 これまで2回、ヴィヴィオは砲撃魔法を放ったが防御スキル貫通効果は乗らなかったのだが、今

回、ヴィヴィオが放った砲撃魔法のダメージを見るに防御スキル貫通効果が乗ったようだ。

 

それに、

 

「僅かだが、ゴーレムの耐性が崩れた。総攻撃を仕掛けるチャンスだ!」

 

 ノックバックをさせ難く、体制を崩させる事が難しいゴーレムの体勢を崩す事に成功した。

 

 このチャンスを逃す訳にはいかないので、俺は全員に指示を出していく。

 

「はやては、舞を中断し砲撃魔法の準備。フルチャージが出来次第発射しろ!」

「了解や!」

 

「すずか!今なら拘束魔法でしばらくゴーレムを捕捉する事が可能だ。」

「解りました。私は少しでも長くみんなが攻撃する時間を作れば良いんですね。」

「そうだ。余裕があれば基本攻撃力の高い魔法で攻撃に参加してくれ!」

 

「なのはは、チワワの治療が終わり次第、はやて同様砲撃準備。全精神力を使い切っても構わない

 から全力の砲撃をぶつけてやれ。」

「はーい!」

 

「チワワは狂化しても構わない。とにかく筋力値を底上げして、貫通効果がある武技を叩き込んで

 ここまでの受けたダメージを倍返し以上にして返してやれ!」

「わかりました!」

 

「ヴィヴィオ!ここまで指揮に徹してきたが、俺も攻撃に参加する。問題ないな!」

「OK。みんな経験は十分得られたし、せっかくのチャンスだもんね。ここでたたみかけよう!」

「なら、出来る限り俺の攻撃に合わせろ!それくらい出来るだろ?」

「それって全力?」

「当たり前だろ。手を抜く理由はない。」

「了解。私は全力で刻也に付いて行くよ!」

 

「指示は以上だ。ここであのゴーレムを仕留めて、このダンジョンを攻略するぞ!」

 

「「「「「はいっ!!」」」」」

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

「――てな感じで、あとは私らの攻撃を受けて崩れ落ちたゴーレムからアイテムを剥ぎ取った後、

 報酬部屋で人数分用意されとった宝箱からそれぞれ報酬を手に入れて、そっちが戻って来るのを

 待っとったわけや。」

 

 あの後、ゴーレムを倒しダンジョンを攻略した俺達は、アリシア達が先に戻って来ていない事を

確認してから、ダンジョンの入り口付近で今回の反省点を離したり、出現したモンスターを狩った

りと時間を潰していた。

 

 それから15分くらい後に、アリシア以外の疲労感が半端ない状態だったが、全員揃ってダンジ

ョンを攻略し出てきたので合流した。

 そして、次のダンジョンへ向け近場のポータルへ転移し、道中お互いにどんな事があったのかを

話し合う事になり、先に出てきていた俺達から大まかに話をしていた。

 

「まあ、罠を発動させたはやての話は自業自得だし、その後のモンスターハウスの事も良い教訓だ

 ったわね。」

「ゴーレム戦は、流石は刻也先輩って感じですね。はやての話だけでも的確な指示を出していたと

 思います。」

「だね。みんなに一番適したポジションに就かせてるし被害は最小限に抑えた。」

「その指示通りに行動出来てるなのはちゃん達も、この一週間でレベルだけじゃなく、プレイヤー

 スキルも上がってますね。」

 

「やっぱ、刻也に付いて行った方が楽だったんだね。」

 

「「「「同感(です)!」」」」

 

「みんな酷い。あたしのお陰で称号獲得出来たじゃん。」

「なに?あのダンジョンで称号出来たの?」

「アタシ達、特に称号は増えてないけど?」

 

「あのダンジョンに限らずに条件を満たせば取れるわよ。」

「結構過酷だったけど、盗賊職じゃない私達にはあって損はない効果なのは確かね。」

 

「それで、どんな称号なの?」

 

「じゃーん!これがその称号だよっ!」

 

【称号名】 罠愛好者(トラップマニア) 【習得条件】 ダンジョン内の罠を全て発動させる。

【効果】仕掛けられている罠が発見出来るようになる。 ※罠の種類の特定や破壊は出来ない。

 

 この称号の存在は知っていたが、俺自身には効果がないに等しく、なのは達は基本的に集団で

行動している様なので、ソロでダンジョンに行く事はないと考え、称号を獲得させる気はなかっ

たのでスルーした。

 

「確かに私らにはあって損はない効果やな。これがあん時あれば、モンスターハウスは回避出来た

 わけやし。」

「というか、この称号を見ただけで、そっちに何があったのか聞く前にわかった...というか想像

 出来ちゃったよ。」

 

 チワワのこの言葉は、俺に付いてきた俺を含むメンバー全員が思った。

 

「アリサちゃん、大変だったんだね。」

「分かってもらえて嬉しいわ。アリシアったら「タイムアタックじゃないんだったら、ダンジョン

 を堪能しないとね」とか言って、全ての罠を破壊じゃなくて、発動させたんだから。」

 

「だって、昨日最後にお母さんが「色々と情報は教えたけど、一度は自分で体験して見る事も大切

 よ。序盤のダンジョンなら即死級の罠は設定されてないしね。」って言ってたんだもん。」

「私、その話聞いてないよ。」

「その時、もうフェイトは眠ってたからね。当然だよ。」

 

「もう、この話は良いわ。思い出しただけで精神的に疲れて来るから。」

「だね。この手の体験は一度でいいよ。」

 

 プレシアさんの言う事も分かるが、実際に全ての罠を発動させたアリシアの行動力も凄いと逆に

関心する。

 付き合わされたメンバーには気の毒だが、罠解除のスキルを習得出来ない、盗賊職ではない者か

らしてみれば優秀な効果を持つ称号だからな。

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

「...と、次のダンジョンに着いたな。」

 

 アリシア達の具体的な話を聞く事が出来なかったが、2番目のダンジョンの入り口に到着した。

 

「それじゃあ、またPTメンバーを決めないとね。」

 

「なら、今回は刻也とアリシア以外のメンバーを入れ替えましょう。」

 

「「「「えっ!!」」」」

 

「この際だから、なのは達もこの称号手に入れなさい。良いわよね、アリシア?」

「オーケイ!このアリシアちゃんに任せなさい!」

 

「ちょっとアリサちゃん、それは、h「効果を見たでしょ。刻也とアリシア以外は持っておいて損

 はないわ。」......そうだけど。」

「あと、疲労が残ってる状態でアリシアとの2連続は正直キツイのよね。」

「そっちが本音やろ!」

 

「良いじゃん。何事も経験だよ。さっきの話じゃ、チームワークも完璧だし大丈夫。」

「頑張ってね。ヴィヴィオちゃん。」

「うぅ...。頑張ります。」

 

 こうして、2番目のダンジョンへ挑戦するメンバーの振り分けは、俺とアリシアが入れ替わった

だけとなった。

 

 

「さあいくぞ!降りかかる罠は全部アリシアちゃんに任せなさい!」

 




※登場人物SD化 第十三回"すずか"

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