とらなのVRMMO ~魔法はゲームの中だけなの~【改訂版】   作:戯言紳士

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第33話   6月20日 土曜日⑤

 

えっと...。前回に引き、私、フェイト・テスタロッサが語らせて頂きます。(ペコ)

 

 

―― ガチンッ!

 

 スノー・ゴーレム 【生命力】 13517 / 14950 ⇒ 12550 / 14950

 

―― ドスンッ!!!

 

「......凄いわね。」

「これが魔導人形遣いの創生魔法......。」

「うわぁ。見た目の凝ってるし、こっちの方が相手よりカッコいいね!」

「刻也先輩の召喚魔法もどこか常軌を逸脱している節があると思っていたけど、この戦闘力をPT

 枠を消費しないで行使出来るっていうのは......、チート(クラス)ですね。」

 

「ていうかさ、昨日見たときよりも、ゴライアスの大きさも造形も変わってない?」

「そうだよ。上級職にクラスチェンジしてから、少しずつ調整してきて、昨日ログアウト前にやっ

 と私の思い描いていた姿にする事が出来たんだから。」

 

「なるほど。調整とかはまったくわからないけど、これがコロナの思い描いていた姿だったんだ。

 やったね!コロナ!おめでとう!」

「うん。ありがとう、リオ。」

 

 今の状況を説明すると、作戦が第二段階に移すと同時にコロナさんは創生魔法を発動させて、ゴ

ーレム"ゴライアス"を創生しました。

 そして、創生されたゴライアスは敵のゴーレムよりも素早い動きで、すぐにアリサとリオさんが

いる前線まで駆けていき、その勢いを殺す事なくゴーレムにタックルで攻撃したんだけど、自分よ

りも大きな相手を吹き飛ばして、その攻撃だけで相手の生命力を1/16以上削ったんです。

 

 今、こうして思うと追撃のチャンスだったのですが、私達は初見だった事もあり驚きを隠せず、

吹き飛ばされたゴーレムが立ち上がろうとする動きをするまでの少しの間、呆然とゴライアスの姿

を見ている事しか出来ませんでした。

 一方、リオさんとコロナさんは、ようやく理想形のゴーレムに創生出来る様になった事を祝福し

て、ゴーレムの事は眼中にない様子でした。当然、創生されたゴライアスもコロナさんが操作して

いないので、タックルした状態から身動きをしていませんでした。

 

 

 

「......っ! 全員、相手のゴーレムが体勢を立て直す前に少しでもダメージを与えるのよ!」

「精神力は後からでも回復できるので、今は消費が大きくても威力の高い方を優先!準備が出来次

 第、すぐに攻撃して下さい。」

 

 その状態からいち早く回復したアリサとティアナの掛け声で、ようやくみんなの意識が再び敵の

ゴーレムに向きました。

 そして私は、私が呆けている間にチャージが終わっていた砲撃魔法を、ふたりの声を聞いてから

すぐに立て直そうとしているゴーレムに向かって放ちました。

 

「撃ち抜いて! ―― サンダースマッシャー!!」

 

 スノー・ゴーレム 【生命力】 12550 / 14950 ⇒ 12066 / 14950

 

 少しだけ解説すると、私がサンダースマッシャーと言って放った砲撃魔法は、エンチャント・サ

ンダーの効果で、物理攻撃に雷属性が付与された状態で放つディバインバスターの事です。

 魔法攻撃なのでこの攻撃事態に雷属性は付与されていないのですが、この状態だとディバインバ

スターのエフェクトが変化する事を姉さんが発見し、それぞれの属性が付与された時に放つ砲撃魔

法にオリジナルの名前を付けました。

 それから、いくつもの属性が同時に付与されている場合は、通常のディバインバスターのエフェ

クトと同じになるみたいなので、その場合の名前は普通にディバインバスターという事になるみた

いです。

 

 これはあくまでも、私達の間で決めたローカルルールみたいな感じなので、他のプレイヤーさん

はそのままの名前や別の名前を呼んでいるかも知れません。

                                    解説は以上です。

 

 ともあれ、私の攻撃はゴライアスのタックルには及ばなかったけど、確実にゴーレムにダメージ

を与える事が出来、立て直そうとしていたゴーレムの体勢を少しだけ崩す事が出来ました。

 

「良くやったわ、流石フェイトね。」

「フェイトのお陰で、私達が攻撃する時間が延びたわ。」

 

 2人が指示を出してすぐに攻撃した私を称賛すると、アリサはリオさんと一緒に吹き飛ばされた

ゴーレムの下へと駆け出し、コロナさんが操るゴライアスもその後に続いて聞きました。

 ティアナと姉さんは揃って銃を構え砲撃魔法を発動させる準備を始め、それを見て私も第2射目

を発動する準備を開始しました。

 

 

「よーし!それじゃあ、次はあたしの番だよ!くらえぇーー!! ―― デュアル・ディバインバス

 タァァァーーー!!!」

 

「はぁ...。確かに、残りの精神力は気にしなくても良いって言ったけど......。まあ、今日のア

 リシアには暖簾に腕押しね。良いわ。私の砲撃も一緒に喰らいなさい! ―― ディバインバスタ

 ー!」

 

 私が第2射のチャージをしていると、二丁拳銃の銃口から砲撃魔法を2つ同時に発動させた姉さ

んと、消費精神力を全く考えなくなった姉さんを見て何を言っても無駄だって悟ったティアナがほ

とんど同じタイミングでディバインバスターを放ったんですけど......。

 

「えっ!! ......今度は何が起きたのよ。こんな事、今までなかったのに。」

「おぉぉ!!! あたしの砲撃とティアナの砲撃が合体したよ!」

 

 ほとんど同時に放たれた3つのディバインバスターが、ゴーレムに当たる前に1つの凄く太い光

線に集結されたんです。

 

 そして、その砲撃はゴーレムの下に駆け出していったアリサ達をすぐに追い抜いてゴーレムに直

撃したんですけど、

 

 スノー・ゴーレム 【生命力】 12066 / 14950 ⇒ 10130 / 14950

 

 その威力はさっきの私の攻撃はもちろんですが、私達に衝撃を与えたゴライアスのダメージすら

大きく上回っていました。

 

 遠くからその光景を見ていた私がこんな事を思ったので、当然、攻撃判定はないとは言っても、

その攻撃が後ろから通り過ぎていって、直撃するまでを間近で見る事になったアリサとリオさんは

 

「アリシア!...だけじゃないわね。ティアナも!砲撃するのは良いけど、あんな攻撃するんだっ

 たら、私達に一声掛けなさいよ!!」

「そうだよ!いきなり後ろからあんな極太レーザーが迫ってきたからビックリするじゃん!」

 

 ゴーレムに与えたダメージの事よりも、前触れもなくあの砲撃が迫ってきた事に対しての驚きが

上回っているみたいで、2人に注意?文句?を言ってから、今度は壁際まで飛ばされたゴーレムの

下にまた駆け出していきました。

 

 それと、私と同じような位置でさっきの砲撃を見ていたコロナさんなんですが、

 

「仕様なんだけど、あの砲撃に巻き込まれちゃったゴライアスが無傷って事に違和感があるね。」

 

 残念な事に、1つに集結されたディバインバスターの射線域に入ってしまい、光に飲み込まれて

しまったゴライアスの無事な姿を確認するとほっとした表情になって、近くにいた私にこのような

言葉をもらしました。

 

 その言葉に私は「そうですね。」という言葉しか返せなかったんですけど、コロナさんは私の返

答を聞くと、

 

「だよね。けど、修復する必要もないし続けていればこの違和感にも慣れちゃうんだろうな。」

 

 と言って、今度は私の返答を待つ事はなく、アリサやリオさんに後れを取らない様にとゴライア

スの操作に集中し始めました。

 その姿を見て、私も注意をゴーレムに戻して砲撃魔法のチャージが終わるのを待ちながら、ゴー

レムの下に着いた二人の戦いを眺める事にしました。

 

 

 

 結果から言うと、ゴライアスのタックルから始まったこのチャンスでは敵のゴーレムの生命力を

削り切る事は出来ませんでした。

 それからの戦闘も基本的に方針は変わらず「こういったボス戦だと一定の生命力を下回ると行動

パターンが変化する場合があるから ――」という事で考えていた作戦の第3段階に移行する事も

なくて、2回・3回とゴーレムの体勢が崩れる度に、みんなで総攻撃を繰り返している内に敵のゴ

ーレムの生命力が0になって、全員無事にゴーレムを倒す事が出来ました。

 

 

 そして、このダンジョンのボスであるゴーレムを倒して、ゴーレムからアイテムを剥ぎ取り、そ

の姿が消滅すると、宝箱が6つ用意された部屋に転移されて、

 

「色々と反省点はあるけど、今はさっさと宝箱から報酬を手に入れて外で待ってる刻也達と合流し

 ましょう。」

「そうね。戦ってる最中は時間なんて気にしなかったけど、15分以上ゴーレムと戦ってたみたい

 だし、大分待たせちゃってると思うし。」

 

 戦いの余韻を感じながらも、今も待たせてしまっている刻也さん達の事を第一に考えて、宝箱を

目の前にして「ねえ、ねえ。私が一番最初に選んでもいい?」と全く疲れを見せない姉さんを皮切

りに、私達は宝箱からダンジョンクリアの報酬アイテムを手に入れて、ダンジョンから脱出して、

ダンジョンの近くでモンスターを相手に狩りをしていた刻也さん達と合流しました。

 

 

 えっと...。以上、フェイト・テスタロッサが刻也さんの代わりにお伝えしました。

 次にこの様な機会があれば、今回よりも上手く伝えられるように頑張ります。(ペコッ)

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

「報酬アイテムは、武器だったり、装飾品だったり色々あったけど、刻也の作ったモノと比較する

 とどうしてもパッとしなかったわね。多分、一番良かったは、中級ポーション類と一時的にステ

 ータスを上昇させるお店で売ってない強化アイテムだったんじゃないかしら。」

 

 俺は、主にアリサと姫から戦闘の様子を聞き、今は報酬アイテムの話を聞いている。

 

 そして、この感想には概ね同じ気持ちだった。

 俺達もボスを倒した後、報酬アイテムを手に入れてもイマイチ盛り上がらずにダンジョンを脱出

したからな。

 

「刻也の作る装備の性能が高いから、生半可な装備じゃあ控えにもならないんだよね。」

「それはそれで贅沢な話なんですけどね。」

「ですね。前回手に入れた装備を狙ってダンジョンに挑むプレイヤーだっているはずですから。」

 

「それに、その刻也先輩の装備を身に付けてあれだけ時間が掛かったわけだから、並の装備で挑む

 プレイヤーって私達以上の難易度って事ですよね?」

「そう考えると、推奨レベル25って結構ハードな話よね。」

 

「あの、刻也さんってβ版だと今みたいに最初から自在に生産出来たわけじゃあないんですよね?

 その時はどうやって戦ってたんですか?」

 

 今度はアイテムの話から一変し、装備が充実していないプレイヤーはどう対処するかという話に

なり、フェイトが俺にβ時代の話を聞いてきた。

 

「そうだな。確かに今みたいな装備をしてたわけじゃないから、多少時間も掛かったし、準備にも

 時間が掛かったな。」

 

「準備ですか?」

 

「ゴーレムと接近戦をしたなら体験しただろうが、武器の消耗が激しい。それに、β版にはデバイ

 スなんてモノもなかったから、今みたいに魔法攻撃も杖なんかを装備しないと底上げ出来なかっ

 たから、ほとんど物量作戦だったな。」

 

「つまり、高性能な武器を作るよりも平凡な武器を大量生産する必要があったわけね。」

 

 フェイトに聞かれて答えていたわけだが、気付けばこの場にいる全員が俺の言葉を聞いていたら

しい。

 

「そういう事だな。それに俺はほとんどソロプレイ同然だったからな、その時も召喚モンスター達

 はいたが、やっぱり決定力が足りなかったから手数で勝負するしかなかったな。」

 

「そっか。刻也くんはその時も召喚士だったんですよね。流石にソロじゃあ厳しいですよね。」

「なんか刻也なら不可能じゃなさそうだけどね。」

 

「それで、実際の戦いの方はどうだったんですか?」

 

「あぁ。戦い方自体は単純だ。召喚モンスターは魔導師タイプで固めて後方支援。俺は前線でヒッ

 ト&アウェイの繰り返しで、戦闘時間は30分くらいだったんじゃないか?」

 

「そのタイムが早いのかわからないんだけど、それでどれくらい消耗したの?

「ダメージ自体は0。行動は遅いし攻撃は読みやすいから回避するのは容易だったからな。しかし

 用意しておいた剣は10本も砕け散った。」

 

「凄いです。」

「まあ...、刻也先輩ですから、ノーダメージ勝利くらいは余裕ですよね。」

 

 β時代の話はこの辺りでいいだろう。

 話を聞いた5人の反応は、フェイトが純粋に真紅の瞳を輝かせて称賛して、姫とリオ、コロナ辺

りは称賛と呆れが半々くらいで「やっぱり」という表情がぴったりな顔をしていた。

 

「でも、これでさっきのダンジョンの難易度が見えたわね。刻也を普通のプレイヤーの3倍の機動

 力と攻撃力を有していると考えられるから、探索を含めて普通は大体2時間~3時間って所でし

 ょうね。」

 

 唯一、俺に称賛も呆れもせずに、いつもと同じような態d....いや俺をどこかの宇宙戦争で真っ

赤なカラーリングをしたロボットに騎乗する仮面を身に付けたパイロットのように扱い、前回のダ

ンジョンの一般的な評価をしていた。

 

 しかし、これが的を得ていたようで、4つのダンジョンを攻略した後にログアウトしてから、は

やてがネットで調べたところ、SLOの攻略サイトではアリサが言ったように「2時間から3時間

程度は覚悟しておくように」と記載されていたらしい。

 

 

 何にせよ、こんな話をしている間に俺達の視界にはこのダンジョンのボスがいる部屋が映り、一

気に場の雰囲気は引き締まった。

 

 この気持ちの切り替えは流石だな。

 

 全員の意識がすでに先の部屋にいるボスに向けられている事を察した俺は、そのまま無言で塞が

っている扉を開き、ボスの姿を確認した。

 

 

「「「「「えっ!!」」」」」

 

【種族】 ウィンド・ゴーレム Lv.25 【属性】風・土 【性質】 アクティブ

【生命力】 13450 / 13450 【精神力】 76 / 76

【保有スキル】 鉄壁 硬化 貫通無効 障壁崩し無効 ???

【詳細】優れた耐久力に加え、非常に強力な物理攻撃を繰り出してくる。

    風を操り鎌鼬のような遠距離攻撃をする場合もある。

 

「って!なんでまたゴーレムが相手なのよ!!」

 

 残念ながら、この調子だと配置されているボスはβ版から変わっていないようだ。つまり、俺達

はこいつを含めてあと3体、属性の違うゴーレムを相手にする事が確定した。

 




※登場人物SD化 第十五回"ティアナ"

【挿絵表示】
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