とらなのVRMMO ~魔法はゲームの中だけなの~【改訂版】   作:戯言紳士

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第38話   6月21日 日曜日③

 

「ようやく、10階のボス部屋まで来れたね。」

「1階から昨日のダンジョンよりも複雑な構造だし、出てくるモンスターのレベルも高いしで、思

 いの外、時間が掛かっちゃったけど。」

「とりあえず、ここのボスを倒せば一区切りだね。時間もお昼時だし、倒したら一度ログアウトで

 良いんじゃないかな。」

 

 無限図書館の地下ダンジョンに挑み始めてから3時間。

 

 昨日のアリシアの頑張りで、俺を除く全員が"罠愛好者"という称号を得た事で、全員が仕掛けら

れている罠を見破る事が出来るようになったので、ここに来るまでの道中に仕掛けられた罠が発動

する事はなかった。

 それと高難易度のダンジョンに挑む時に、スキルレベルが低いままでは罠を破壊出来ないので、

こういう機会に少しでもスキルレベルを上げておかないといけないので、目に付いた罠は全て破壊

していった事も、ここまで安全にこれた事に多少の影響を与えているだろう。

 

 おまけに、アリシアとはどちらが多く罠を破壊出来るか、という競争もしていたので、ここまで

罠を破壊する事に対する疲労感は全くなかった。

 

 そして、この競争の結果だが、

 

「まだ先はあるもん。10階から20階までは絶対に刻也に勝つんだから。」

 

 という事で、一回戦目は俺の勝利で幕を閉じた。

 とは言っても、まだまだ罠破壊のスキルレベルに関しては、アリシアに敵わないので2回戦目も

手を抜く事はしない。

 

 

 こんな感じで、ダンジョンに挑む前には色々とドタバタしたが、道中はスムーズに進行出来てい

たわけだが、それでも3時間かかった。

 

「これじゃあ、平日に挑むのは無理だったな。」

「そうですね。今、昨日4つ攻略した後にへとへとになったダンジョンのクリアが、このダンジョ

 ンの前提だった意味が解りました。」

「だね。昨日は3時間くらいで4つのダンジョンを回れちゃったわけだし。」

「刻也さんの言う通り、今日は地下20階までにしておいて正解やったな。」

 

 それだけに、ここに来るまでのメンバーの疲労感は昨日程ではないが、それなりに溜まっている

様子だ。

 

 俺と俺の召喚モンスター達を除けばだけど......。

 

「う~ん。昨日戦ったモンスターの方が全然強かったよね。」

「それにフィールドで戦うよりも戦域が狭いから、注意する範囲も限られてるね。」

 

「そのぶん、ここではりゅうかすることができないので、じゅうぶんにちからをはっきできません

 でした。」

「そんな事..ありません。カンナは..もう十分に..主のお役に立てています。」

 

「ほんとうですか?わたし、クロノスさまのおやくにたてていますか?」

「くぅ!カンナ、もっとじしんをもって。」

「久遠の..言う通り..です。」

 

 皆、逞しく成長していた。

 それに召喚モンスター達の絆も。

 

「これが普通の召喚モンスターだと思っちゃいけないんだよね?」

「なのはちゃん達と一緒にプレイする様になる前に、多少は他の召喚士の戦闘を見た事があるから

 言える事なんだけど、もっと搭載されているAIのレベルが低い感じがしたよ。」

「そうだった、そうだった。久遠ちゃん達は自分で考えて行動してる感じだけど、前に見た召喚モ

 ンスターは行動毎に召喚士の人の指示を待ってる感じだったね。」

 

「今、この娘達が改めて刻也先輩の召喚モンスターだって再認識したわ。」

「一体、どんな鍛え方をしたら、こんな感じに育つんだろうね。」

 

 全員の視線が俺に集まっている事を感じたので、

 

「そう言われてもな。最初に戦闘を見て戦い方を学ばせて、ある程度の力が身に付いたら、俺から

 は最低限の指示だけだして、後は自由に戦わせているだけだぞ。」

 

「本当にそれだけ?」

 

「それ以外に特別な事はしてないよな?」

 

「はい。でも、最初に見せてもらったお兄様の戦っている姿は、今も鮮麗に覚えています。」

「お兄ちゃんの戦闘時間はとても短いんだけど、その一瞬の中に私達に刺激を与える何かがありま

 した。」

 

 俺の召喚モンスターだから悪く言う事はないだろうけど、べた褒めだな。

 

 未だに俺、本気の士郎さん相手に、一太刀も入れる事が出来ないんだけど...。ていうか、今日

の鍛錬の最後に、ようやく本当の士郎さんの本気を見せてもらえる様になったばかりなんだけど。

 

「つまり、どういう事?」

「刻也の戦闘を見た事で、何かの枷が外れたんじゃない? 実際にそう言った枷が設定されている

 のかは分からないけどね。」

「納得できるような...、出来ないような...。」

 

「ま、まあ。何であれ、強いに越した事はない。で良いんじゃない?」

「結局、分らずじまいやな。てか、ボス部屋の前でいつまでこうしてるんや?」

 

 このはやての発言で全員が「あっ...。」と言う表情になり、気を入れ直してから部屋の扉を開

け、扉の奥で待ちくたびれているであろう地下ダンジョン10階のボスを倒すべく突入した。

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

 ボス部屋に入った俺達は、ここのボスの探索範囲に入らない様に気を付けながら、その姿を確認

したのが......。

 

【種族】 ユーノ Lv.35 【属性】無 【性質】 アクティブ

【生命力】 12500 / 12500 【精神力】 9540 / 9540

【保有スキル】 魔法知識 支援の極意 拘束の極み 障壁崩し ???

【詳細】優れた知識を持つ無限図書館の館長。膨大な精神力を武器に無数の強化された拘束魔法を

    展開し捕らえた所を容赦なく魔法攻撃を放ってくる。

 

「あれって、私の見間違えじゃなかったら、ユーノさんじゃない?」

「私にも同じ様に見えてるから、見間違えじゃないわよ。」

 

「刻也さん。どういう事なの?」

「確証がなかったから言わなかったが、ここの最初のボスはユーノの姿をしているんだ。」

「じゃあ、あれはユーノじゃないんだね。」

 

 その姿は、3時間前に会ったばかりのユーノだった。

 

「ユーノ本人は今も地上で情報の整理に追われているはずだからな。

 あれはユーノのコピー体みたいな感じだ。ステータスはボス仕様になってるが、思考レベルは本

 人とさほど変わらないから、この辺に出現するモンスターはもちろん、昨日のゴーレムよりも高

 度な思考をするし、搦め手も使ってくるから、一筋縄ではいかない相手だな。」

 

 とはいっても、目の前にいるユーノは本物ではない。

 通常業務に加えて、こうしてボスまでやっていてはユーノの身がまず持たない。

 

「参考までに、ユーノさんってどんな職業で、どんな戦闘スタイルなんですか?」

「前に見せてもらった時になるが、職業は運営員限定の"無限図書の館長"とこっちは普通に"支援

 魔導師"だったな。

 戦闘スタイルだが、魔法攻撃が主流で、特に強化された拘束魔法に要注意だな。プレイヤーが使

 用する拘束魔法より発動が早く拘束時間がかなり長くなっている。

 その間に、状態異常を発生させる魔法であったり、発動までに大して時間の掛からない初級に準

 じる魔法を多数同時に発動させてくる。」

 

 ユーノは攻撃力こそ低いが、無策で突っ込む様な戦い方では集団でも勝てないだろう。

 拘束魔法に捕まり、毒や衰弱状態にされた上でじわじわと生命力を削られるだけだ。

 特に現段階では、毒攻撃をしてくるモンスターは多くいるので毒対策はしている事はあっても、

衰弱攻撃をしてくるモンスターは出現していないので、無対策の場合が多い。

 

 今回は知佳の天使の聖域が発動しているので、なのは達も一応対策は出来ているが、毒状態の上

に生命力と精神力が半減される衰弱になると、かなりキツイ状況となる。

 

「完全な魔導師タイプって事やな。」

「接近さえ出来れば押し切れそうだね。」

「確かに、接近できればかなりのアドバンテージだが、そのためには無数の拘束魔法を潜り抜ける

 必要があるから、簡単に近づく事は出来ないと思った方がいい。仮にも最大3ユニオンを想定し

 たボス仕様だからな。」

 

 しかし、ボス仕様だからと言っても、ユーノ自身の耐久力はそれほど高くないので、射程圏内に

捉えれば、後は攻撃が途切れないように連携して攻撃をしていけば倒す事が出来る。

 

「それじゃあ、第一に考える事は如何にしてユーノさんに近づくかですね。」

「そういう事だな。」

 

「あの、遠距離から魔法攻撃はダメなの?」

「ユーノ自身の抵抗力の高さと遠距離だとシールドを展開されるから、砲撃魔法でもない限り、ダ

 メージを与える事は難しいだろう。」

「砲撃魔法ならダメージを与えられるんだ。」

「でも、チャージ時間が必要やし、その間に拘束されたらもともこうもないやん。」

「...っあ!そうだよね。」

 

 ユーノは耐久力が低い反面、抵抗力は高いので、半端な魔法攻撃ではダメージが見込めない。

 

「じゃあ、私は何をすればいいの?」

「それh「ちょっと待って。確かに刻也の指示に従えば問題なく倒せるわ。でも、まずは私達だけ

 で挑ませて欲しいの。」...... 了解。とりあえず、危なくなるまで俺は口出しも手出しも控え

 る事にするよ。」

 

「ありがとう。みんなもそれで良いわよね?」

 

「それで良いんじゃない。」

「最初から刻也さんに甘えっぱなしじゃあね。」

 

 これと言って、反対意見が出なかったので、とりあえず俺のPTは戦況を見守る事になった。

 

 さて、今伝えた情報でなのは達はどのような作戦で、ユーノを倒しに行くのだろうか?

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

「はぅっ!そこはダメなの。」

「なのは!って...ひゃぃっ!ゴメン。私も捕まっちゃった...。」

「ちょっ!これはあかん!」

「これ、全然解けないよ!」

「アリシア!暴れれば暴れるほど締め付けられるわよ!」

「ふふ。ユーノさん...いえ、もうユーノで良いわよね。絶対に許さないんだから。」

「ティアナちゃん、落ち着いて。姿は同じだけどあれは本人じゃないんだよ。」

「頭では理解出来るけど、次に本人を目の前にして、態度を変えない自信はないよね。」

「うわぁ!何かまた強く食い込んで来たんだけど!」

「何でだろう。同じ構図で捕まってるからかな、フェイトちゃんやすずかちゃんから精神的なダメ

 ージを受けてるんだけど。」

「それは...個人差が大きいからヴィヴィオもまだ諦めちゃいけないよ。」

 

 

「「「「「「「「「「「刻也(君)(さん)!助けて(下さい)!!」」」」」」」」」」」

 

 

 なのは達がユーノと戦闘を開始してから10分くらい経過した所で、案の定というか、俺と召喚

モンスターを除くメンバーが全員ユーノの拘束魔法の餌食となっていた。

 

「β時代、このユーノは初見殺しと呼ばれていたからな、むしろ初見で10分は持ちこたえた方だ

 ぞ。」

「そういう事は、戦う前に教えて欲しかったよ!」

「言う前にアリサが止めたんだから仕方がないだろ。」

「私の所為じゃないわよ!」

 

 拘束されながらも、このような会話が成り立つなら大丈夫だな。

 

 しかし、年頃の複数の女の子が、見た目ショタの青年に鎖で縛られている画というのは、情操教

育上良くないよな。

 普段は意識しない様にしている部位も色々と強調されているし、完全にボディラインが露わにな

ってる。

 

 ユーノ本人がこの場面をみたら赤面して攻撃の手を緩めるだろうが、残念ながらコピー体である

ユーノは感情がないのか、この間も手を緩めることなく拘束魔法を設置したり、状態異常を発生さ

せる魔法攻撃をしている。

 

「でも、天使の聖域だけだと、お姉ちゃん達の状態異常発生率を100%防げるわけじゃないから

 早く助けた方がいいです。」

「知佳の..言う通り。助けを..求められた以上..早い所、救出した方が..良いと思います。」

「くぅ!」

 

「そうだな。それじゃあ、早い所ユーノを倒すとするか。」

 

「さきに、おねえさまたちをたすけるのではないのですか?」

「流石にこれだけの人数を救出しようと思ったら、途中で俺達も捕まる可能性があるからな。」

 

「私達はともかく、お兄様が捕まるとは思えないよ?」

「ありがとう。でも、万が一という事もあるからな。それにユーノを倒せば拘束魔法も消失するか

 ら、単純にユーノを倒した方が楽なんだ。」

 

「そういう事..であれば、最初から..全力で..いきましょう。」

「くぅ!くおんも、ほんきでいくよ!」

 

 召喚モンスター達の意志も統一した所で、各々に指示を出した。

 

 最初に久遠が、部屋全体に魔法を乱れ撃ち、設置されている拘束魔法を誘発させる。

 次に、フィアッセと知佳は、俺・さくら・カンナの周囲に念動障壁を展開して、残っている拘束

魔法とユーノ自身が発動する魔法を防いでもらう。

 その間に、さくらは真祖化、カンナは竜化して俺と共にユーノを強襲する。

 

「後はユーノに逃走・反撃の隙を与える事なく攻撃を続けるだけだ。」

 

「「「「「はーい!(了解..です。)」」」」」

 

 

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