とらなのVRMMO ~魔法はゲームの中だけなの~【改訂版】   作:戯言紳士

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第45話   6月22日 月曜日④

 

「それでは、今から刻也さん&召喚モンスターPT vs 海鳴大学PTの模擬戦を開始します。」

 

 

 ......... 何故だろう、俺はシグナムさん達とユーリ達をアルハザードに招いたはずなのに、今は表の広場と言えるスペースで模擬戦が行われようとしている。

 

「その前に良いか?」

「はい。何ですか? 刻也さん。」

 

 未だに事の成り行きに追い付けない俺は、この戦いの見届け人の1人で進行役になったすずかに待ったを掛け、少し時間をもらい事の成り行きを振り返る事にした。

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

 まずレヴィが止まった所で、俺はシグナムさん達とフレンド登録を済ませた。その上で7人を引き連れアルハザードへ転移し、外観を一通り案内したのちにギルドホーム内へ招き入れた。

 

そこで、

 

「「「「「「「「「「「ようこそ!時の狭間の庭園。アルハザードへ!」」」」」」」」」」

 

 ようこそ実力至上主義の教s..じゃなく、エントランスの入り口で俺を除くギルドメンバー全員が横一列に整列し、一言一句、一切タイミングの狂いもなく声を揃えて出迎えた。

 

「あら。でも、メイド服じゃないのが残念ね。」

「初対面の者もいるんだ、いい加減その残念な思考をどうにかしろ。」

 

 この時、もうこれがシャマルさんの平常運転状態なんだと、俺は無理矢理納得する事にした。

 

 その後は、揃ってエントランスのテーブルを囲い、各々おふざけなしに自己紹介をしていき、イベントを協力して一緒にクリアする事が決まった。

 

 それからの時間は各自、親睦を深めようとフリートークをしていた。そこでは、シュテル・レヴィ・王様の容姿が、なのは・フェイト&アリシア・はやてに似ている事の話題も上がり、嫌がる王様ははやての良い玩具となり、一応懸念だった口調もユニークなキャラ付けという認識で、問題なく受け入れられていた。

 

 その後も、あれこれと話題が尽きる事はなかったのだが、顔合わせをして30分くらいした所で、突拍子もなく某鉄道のCM風なノリでレヴィがこう言った。

 

「そうだ!模擬戦をしよう!」

 

 これが、冒頭で俺が置かれていた状況へ引き金となった。

 

 

「何故、今模擬戦をするんですか?」

「だって、もうみんなの人柄は分ったもん。だったら次は、SLOでの戦闘力を確かめないと。それに、ここって戦うには十分なスペースもあったし。」

 

「珍しく、レヴィが的を得た事を言っていますね。」

「確かに協力する以上、お互いの戦い方なり見ておいた方が良いわよね。」

「一応、ステータスは協力関係を結んだので公開したけど、それが全てじゃないしね。」

 

「私は賛成だ。やはり戦ってみないと分からない事も多い。なにより..。」

「シグナムは刻也君と戦いたいんでしょ。」

 

 シュテル・アリサ・姫・シグナムさん。各グループのリーダー格の認識が共通した地点で避けられなかった。

 それにこの時は、まさかこうなるとは思っていなかった訳だし。

 

「じゃあ、模擬戦をするのは決定だね。」

 

「チーム分けはどうしましょうか?」

「慣れ親しんだ組み合わせで良いでしょ。私達はギルドメンバーだったらどんな組み合わせでも問題ないけど、シグナムさん達もユーリ達も即席のPTじゃ、実力を十分に発揮出来ないかもしれないし。」

 

「そうしてもらえると私達は助かります。」

「私は即席PTでも構わないが、普段の戦闘スタイルでという事であれば、いつも通りのPTでやる方が良いのだろうな。」

 

「それじゃあ、シグナムさんとユーリちゃん達はいつも通り、私達は昨日の組み合わせで行きましょう。」

「OK。」

 

 時間を掛けずに模擬戦をする事が決まり、PTの振り分けも決まり、ここまで何の問題もなく順調に段取りが決まっていく様を俺は眺めていた。

 

「じゃあ、後は組み合わせ..だよね?」

 

「平日だし夜も深くなってきたから今から総当たり戦は止めておいた方が良いよ。」

「そうですね。私は午前中の講義に出席しないといけませんし。」

 

「そうなると、一組ごと戦って、戦っていないメンバーはそれを観戦って事にしない?」

「それが現実的ですね。」

「てか、それしかあらへんやろ。」

 

「それじゃあ、皆さん、戦いたい希望のPTはありますか?」

 

 

「「「「刻也(さん)(クロノん)と戦いたい。」」」」

 

 

 今思えば、ここが分岐点だったのだろう。

 

 シグナムさんはもう予測するまでもなく俺を指名。さらに、この様な場では珍しくフェイトも俺と戦いたいと声を出し、続けてヴィヴィオ・レヴィも俺の名前を挙げた。

 

「だ..大人気じゃない、刻也君。」

「そうみたいですね。」

 

 それから俺以外の名前が出ないかと少し時間を置いてみたが、俺以外の名前が挙がる事はなく、結局全員が俺と戦いたいという事が浮き彫りとなるだけだった。

 

「まあ、ここにいる全員が刻也繋がりで集まったから、こうなる可能性もあったわけだけど、」

「本当にこうなるなんてね。それにみんな引く気はないみたいだよ。どうするの?」

「指名されてるのは刻也なんだから、刻也が決めれば良いでしょ。それなら後腐れもないし、みんな納得するわ。」

 

 その言葉で俺に集まる19人の視線。どれも自分達を選んで欲しいと懇願している事がひしひしと伝わって来る。

 

 この状況で1つのPTだけを選べるか?

 俺には出来ない。この場においては優柔不断だと罵られようが一向に構わない。

 

 しかし、そうなると残された道は一つだけ。

 俺は意を決して口を開いた。

 

「全員が俺と戦いたいという事なら、俺が全員の相手を務めよう。」

 

 そう。俺が全員と戦えば良いという話だ。ここで長考するよりも良い判断だろう。

 昨日の疲れはないし、一度ログアウトした事で以前の疲労感はない。

 

「まあ、そうなりますよね。」

「刻也さんがこの状況でどこかのPTを選ぶわけないもんね。」

「アリサが刻也に判断を任せた地点でこうなると思ってたわ。」

 

 付き合いの長い、現ギルドメンバーは俺の回答を予測していたらしい。

 

「でも、大丈夫なの?」

「刻也の負担が大きいと思うんだけど。」

「それを決断させたのは私達なのですが...。」

「なに。刻也自身がやるといったんだ。問題ないのだろう。」

 

 逆に日の浅いシグナムさんを除く大学生組は、全員の相手を受け入れた俺を気に掛ける発言が。

 

「無理を聞いてもらってありがとうございます。」

「やはり、クロノスは面白いな。」

「だねぇ♪」

「今日は存分に胸を借りましょう。」

 

 そしてβ時代の俺を知るユーリ達は、返答を聞くなり作戦会議?を始めたようだ。ユーリはお礼を言ってからその輪に加わった辺りが俺に好印象を与えた。

 

 

 

その後、ジャンケンで対戦順が決まり、

 

 1戦目がシグナムさんがリーダーの海鳴大学PT。

 2戦目がユーリがリーダーの天央PT。

 3戦目が姫がリーダーの風芽丘PT

 4戦目がアリサがリーダーの聖祥PT

 

となった。

 

これで、PT分け・相手・順番が決まり、実際に模擬戦を行う場所に行こうとしたのだが、

 

「ちょっと待って。最後に刻也にお願いがあるの。」

 

 シグナムさんやユーリ達が加わっても、終始場を仕切っていたアリサが、外に出ようとした俺を呼び止め、こんな事を言ってきた。

 

「お願いとは何だ?」

「刻也のPTなんだけど、刻也と残り5枠を召喚モンスターで埋めちゃうと、模擬戦として成立しなくなると思うのよ。だから、刻也を含めて3枠までにしてくれないかしら。」

 

 アリサのお願いとは、俺のPTを半数にして欲しいという事だった。

 昨日のアリサ達の戦い振りを見た限り、フルPTでも善戦出来ると思うのだが。

 

「どういう事なの?」

 

 すると、アリサの言葉を聞いた第三者であるシャマルさんが、その言葉に疑問を抱いたのか会話に入り質問を投げかけてきた。

 

「シャマルさん達は、刻也の秘めている力については感づいているとは思いますが、刻也の召喚モンスターも、刻也に引きを取らないほど、私達よりも頭一つ飛びぬけている所があるんです。」

 

「そうなの?」

「俺は普通だと思っているんですけど、どうやらアリサ達にはそう見えているみたいですね。」

 

 みんな良く戦ってくれるが、アリサが言うほどだろうか?

 そもそも俺自身の実力が士郎さんに遠く及ばないので、まだまだだと思うのだが。

 

「そんな訳で、シャマルさん達の力は分りませんが、半数ぐらいで丁度良い戦力差になると思って、刻也にお願いしたんです。」

 

「むしろ、私としてはその状態で戦ってみたいのだが。」

「その結果、すぐに決着がついちゃって、シグナムは刻也君とまともに戦えなく終わっちゃってもてもいいのね?」

「それは嫌だ。」

「だったら、今日の所は、刻也君の力を良く知るアリサちゃんの提案に従いましょう。」

「むぅ..。」

 

 まだ返答していないのだが、すでに俺が受け入れている事を前提として話が進められている気がする。

 

 

「それで、どうかしら?」

「俺自身はそう思えないが、一先ずその通りにやってみよう。」

 

 結局、俺はアリサのお願いを聞き入れ、3対6形式での模擬戦を受けれたのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

 振り返って分かったのは、それは俺の優柔不断振りが招きこの結果に至った事だった。

 このルールに付き合わせてしまっている召喚モンスター達には悪い事をしたと思う。

 

「あの..。刻也さん、もう始めても良いですか?」

「あぁ。悪かったな、途中で中断させて。」

 

 さて、現状に至るまでの成り行きを振り返った今、その事を過去の出来事を悔やむ事はもう止めにして、現状をポジティブに考える事にしよう。

 

 こうして全員と一度に戦える機会なんて滅多にないだろうし、初戦の相手は戦力が未知数のシグナムさん達だ。

 それに数的な不利だって、今後その様な状況になった時のシミュレーションだと想定すれば、良いだけの話じゃないか。

 

 

「あらためて今から刻也さん&召喚モンスターPT vs 海鳴大学PTの模擬戦を開始しますが、

 その前に初戦なので、これから行われる模擬戦闘でのルールを確認してからです。―― 」

 

 そしていよいよすずかの掛け声で模擬戦が始まると思っていたのだが、初戦だからという理由と模擬戦と名を称しているがシステム的には決闘だから、対戦形式や敗北条件などの設定が出来るので、それの確認が先らしい。

 

 まあ、この模擬戦で定められた対戦形式は総力戦。同じバトルフィールドで同時に戦い、現在の生命力が己の最大生命力の10%以下になったら敗北となり、バトルフィールド外に自動で外される。そして、チームメンバーが全員フィールド外に飛ばされた地点で勝敗が決まる。

 ただ、今回の俺のメンバーは全員が召喚モンスターとなるので、俺がフィールド外に出た地点で生命力が尽きたという判定になり召喚モンスター達は強制帰還させられてしまう。つまり、俺の敗北=チームの敗北となるわけだ。

 

「―― 以上が今回の模擬戦のルールです。それでは、模擬戦開始のインフォメーションが出てから戦いを始めて下さい。」

 

 

 

『 ―― 3 』

 

 

 

『 ―― 2 』

 

 

 

『 ―― 1 』

 

 

 

決闘(デュエル)開始(スタート)!』

 

 

 

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