とらなのVRMMO ~魔法はゲームの中だけなの~【改訂版】   作:戯言紳士

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第46話   6月22日 月曜日⑤

 

 

 ―― ブースト・サモン さくら&知佳

 ―― オーラ発動

 

 クロノス 【精神力】 361 / 361 ⇒ 303 / 361 (-58)

 

 模擬戦が開始されると共に、俺は出し惜しみする事なく僅かにステータスが強化された状態で、さくらと知佳を召喚した。

 数では圧倒的に振りなので、少しでもステータスを強化しようと思っての判断だ。回復の手立てがない精神力を最初から約15%消耗してしまったが無駄な消費ではない。

 

 その中で、今回さくらと知佳を選んだ理由だが、お互いに手を内が明らかでない相手に有効な策というモノは存在しない。だったら、純粋な戦闘力と汎用性を備えた仲間を召喚するのがベストな選択だろう。

 さくらは言う間でもなく、場所や相手を選ばずに戦う事の出来る汎用性と火力が。知佳は火力は平凡だが、それを補う安定した支援力を買っての事だ。

 

「2人とも、状況説明は必要か?」

 

「いえ..。理由は..分かりませんが、敵対..している以上、相手を..倒すだけ..です。」

「さくらお姉ちゃんの言う通りです。私はいつも通り、お兄ちゃんのサポートをするだけです。」

 

「頼もしいな。じゃあ今回は人数差がある分、2人の負担も大きくなるが頼むな。」

 

 

「「はい!!」」

 

 

 これで、俺の方の準備は整ったわけだが、この間にシグナムさん達からの攻撃はなかった。その事が気になり視線を向けると、後方にポジショニングしているシャマルさんの周りにさっきまでいなかったシャマルさんの使役モンスターと思われる、赤毛でゴスロリファッションをし手にはハンマーを持っている少女型のモンスターと、青白く輝くタフそうな狼型のモンスターが控えてはいた。

 どうやら俺の召喚が終わるのを待つと同時に向こうも準備を整えていたようだ。

 

 シャマル 【精神力】 256 / 317

 

 現にこの段階でさっきまで全快状態だったシャマルさんの精神力が減っている。それに消耗具合から俺と同じように使役モンスターを強化している可能性が非常に高い。

 それにシグナムさん達も僅かに精神力が減っているので、同じように最低限の強化を施していたらしい。

 

ちなみにだが、シャマルさんの使役モンスターを見たその瞬間に反射的に識別を使用したようで、今そのモンスターの名前と種族が表示されている。

 

【名前】 ヴィータ 【種族】 レッドブラウニー

【詳細】調教師シャマルの使役モンスター。

 

【名前】 ザフィーラ 【種族】 ガーディアンウルフ

【詳細】調教師シャマルの使役モンスター。

 

 残念ながら解析は無効。コロナのゴライアス同様、使役モンスターの詳細なステータスはその主にしか見えない仕様らしい。

 

 

「準備は良いな? では、行くぞ!」

 

 そして、こちらの準備が終わったと見ると、シグナムさん達の方から先に動きを見せた。

 

 前衛に構えていたシグナムさんはほぼ完璧な縮地で一気に距離を詰め、その後ろから決して遅くはないスピードで俺達を目掛けて走ってくるアインハルトさん。

 

「シグナム、先行し過ぎよ。」

「全くだぜ。どんだけクロノスってやつと戦いたかったって話だよな。」

 

 一番後方で控えているシャマルさんと、それを守るように身構えているシャマルさんの使役モンスターであるヴィータに注意されるが、シグナムさんは気に掛ける素振りもなく挨拶だと言わんばかりに、手にした両手剣を振るってきた。

 

「せいっ! ―― スラッシュ 」

 

 シグナム 【精神力】 134 / 144 ⇒ 130 / 144 (-4)

 

 ―― ガキンッ!

 

 俺は普段通り、初見の相手の最初の攻撃には回避行動を取らずあえて一撃を受け止める。それは、相手の攻撃力におおよその見当を付けるために行っているのだが、まだ様子見だと思われるシグナムさんの一撃はダメージこそ負う事はなかったが威力は凄まじかった。この威力でダメージを負わなかったのは、装備性能の差だとしか思えない。

 

「覇ッ! ―― ストレート 」

 

 アインハルト 【精神力】 135 / 145 ⇒ 130 / 145 (-5)

 

 一連の攻防の最中、シグナムさんに追い付いたアインハルトさんが、シグナムさんと同じように俺目掛けて攻撃を撃ってきた。

 

 やはり、シグナムさん達のターゲットは俺に絞られているらしい。

 召喚士を倒せば場にいる召喚モンスターも敗北となるルールでは正攻法であり、仕方のない事だが、俺の召喚モンスターはアリサが言うほどではないにしろ、無視するのは少々無理があるぞ?

 

 ―― ガシッ!

 

 さくら 【生命力】 344 / 328 ⇒ 341 / 328 (-3)

 

 ―― パシュッ!

 

 知佳 【精神力】 361 / 344 ⇒ 355 / 344 (-6)

 

「これ以上..クロノス様への..攻撃は、許しま..せん。」

「私がいるのに、お兄ちゃんに魔法攻撃が届くなんて思わないでよ。」

 

 俺に迫っていたアインハルトさんの拳は、庇うように間に入ったさくらに受け止められ、いつの間にか放たれた中衛の位置から動いていないリインさんの魔力弾を知佳が今日の前半で新しく習得したスキル【飛翼(フィン)】、簡単に言うと翼に見立てた魔力弾を放ち、リインさんの魔力弾を相殺した。

 

 前半は久遠と赤兎のクラスチェンジに目を取られがちだったが、他の召喚モンスター達も確実に力を身に付けていた。

 

 それにしても、完璧にアインハルトさんの攻撃を受け止めたさくらが、知佳の【天使の聖域】の加護の下で3とはいえダメージを受けるとは...。

 召喚モンスター達は防具を装備出来ない分、最終的な耐久力は俺よりも劣ってしまうのは仕方のない事だが、それほど基本攻撃力の高くない武技を受け止めてダメージを受けるという事は、直撃した場合は、それなりのダメージを受ける事と言う事だ。

 

「さくら、今ので分かったと思うが。」

「..はい。本気で..いきます。決して、隙は..見せません。」

 

「知佳も、今回は精神力が無限じゃないという事を頭に入れて支援してくれ。」

「分かりました。」

 

 一応、言葉にして念押ししておく。普段から自動回復系スキルが発動している事が当たり前となった環境で戦ってきたため、生命力・精神力の管理を頭に入れておく必要があるからだ。

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

「初撃は完全に防がれてしまったな。」

「はい。鏡さんのお話はシグナム先輩達から聞いていた通りでしたが、召喚モンスター達も今まで見て来たか中ではすでにトップだと言い切れます。」

「リインの魔力弾も決して弱くはないはずだが、あの様な小さな魔力弾で相殺されてしまってはな。」

 

 刻也が自身の召喚モンスター達に声を掛けている間に、私達もまた、一連の攻撃を呆気なく防がれた事で刻也以外の召喚モンスター達の認識を改めた上で、今後の対応の相談をしていた。

 

「これからどうしますか?」

「なに、私達のやる事は変わらん。この戦い、刻也を倒せば我らの勝ちなんだからな。」

 

「でも、流石にあの召喚モンスター達は無視出来ないよ。」

 

 刻也達から距離を置いた所でアインハルトと話をしていたのだが、そこにリインが加わった。

 

「リイン先輩、もう合流ですか?」

「魔法戦だと、知佳って子には敵わないから。それなら前線に加わった方が勝率は高くなるって、さっきシャマルと話をしてね。一応、シャマルの護衛はヴィータとザフィーラが継続中だよ。」

 

 どうやら、あの飛翼と撃ち合っても先に追い込まれるのは自分だと冷静に判断した上で、シャマルと話し合ったのだろう。

 本来の作戦では、リインが魔力弾で召喚モンスター達を牽制し私とアインハルトが刻也に集中攻撃をする予定だった。しかし、想定していたよりも遥かに刻也の召喚モンスター達が力を秘めていたせいで、我々の当初の作戦は早くも崩れ落ちた。

 

 最初は3対6などと思っていたが、バニングスの言ったようにこれが6対6だったら、早々に決着が着いていた可能性は否定出来ない。

 

「シャマルは我らのライフラインだからな。」

「これから何があるか分からない以上、序盤で倒されてしまっては困りますからね。」

 

 だからと言って、戦いはまだ始まったばかりなのだ。折角、刻也と戦える機会が巡ってきたというのに、そう簡単に負けるわけにはいかない。それに、まだ私も全力を出した訳でもなければ、刻也の全力を引き出した訳でもない。

 

 今の唯一の懸念事項は、武器の耐久値だ。さっきの一撃を受け止められただけで、耐久値が20も減少している。決闘上のルールでは、武器の耐久値も10%未満になると自動でイベントリに収納されるらしいので壊れる危険はないが、最後まで持つのだろうか?

 

「今の段階で後の事を考えるのは愚問か。」

 

「何が愚問なの?」

「いや、ただの独り言だ。それよりも、今度は私達が刻也達を待たせてしまっているらしい。」

「その様ですね。」

 

「それで、どうするの? 変わらずに刻也君一人に絞って、召喚モンスターの方は放置する?」

「いや。予想よりも遥かに力が上回っていた以上、分散して各個撃破を狙う。刻也の相手は私が、アインハルトとリインは人狼..いや、さくらの相手を任せたい。」

 

「それは良いけど、知佳はどうするの?」

「知佳は今滞空状態だ。リインの魔力弾を相殺するほどだから、我々はもちろんシャマルでも魔法戦を挑むには分が悪いし、それ以外の攻撃方法となると私の弓しかないが...。」

「シグナム先輩は鏡さんの相手を一人でなされるわけですから、他にリソースは割けませんね。」

「そういう事だ。シャマルの精神力に余裕がある内は回復も間に合うだろうから、多少の飛翼による被弾は覚悟しよう。それに、向こうの精神力も無尽蔵ではないから乱発する事もあるまい。」

 

「分かった。とりあえず、シグナムは存分に刻也君と戦って来てよ。」

「今日まで楽しみにしてましたもんね。さくらさんの相手は私達に任せて下さい。」

 

 2人はそう言って、私の返事を聞かずに再び刻也達の下へ駆けだして行った。

 

「..私はそこまで態度に出ていたのだろうか?」

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

 俺達は先ほどシグナムさん達が俺達の準備が整うのを待ってくれていた様に、向こうの話がまとまるまで待機していた。

 

 それから数分後、これからの方針が決まったようで、一足先にリインさんとアインハルトさんが俺..ではなく、さくらをターゲットに定め攻撃を仕掛けてきた。

 どうやら、俺の一点狙いは無理だと判断し、戦力を分散し各個撃破する事にしたようだ。知佳をターゲットに選ばなかったのは、滞空状態の知佳に対する有効な攻撃方法がなかったからだろう。

 シャマルさんはここでも攻撃参加しないという事は、完全に回復役に徹すると見て良いだろう。シャマルさんの存在が、シグナムさん達は多少のダメージは顧みずに戦う事が出来る安心感を与えているわけだ。

 

「さくら。リインさんとアインハルトさん2人の相手を同時に出来るか?」

「倒す..となると、厳しい..です。ですが、引き..つけて、時間..稼ぎであれば。」

「それで十分だ。でも、手に負えなくなって来たら、無理をせずに引くんだぞ。」

「分かり..ました。ですが、そう..ならないよう..に、私も..本気で..挑みます。」

 

 この調子であれば、リインさんとアインハルトさんを同時に相手をしても、しばらくの間は大丈夫だろう。

 

「それから知佳。知佳には、シグナムさん達の注意が俺とさくらに集中したら、シャマルさんとその使役モンスター達を頼みたい。」

「それは、倒すという事でしょうか?」

「いや、そこまでは難しいだろうから、多少の負荷を与えて来て欲しいんだ。」

 

「クロノス様は、そうする..事で、前衛に..心理的な..負荷を..かける事が、目的..ですよね?」

「さくらの言った通りだ。知佳、大変な役目だがやってくれるか?」

「もちろんです。私の役目はお兄ちゃんとさくらお姉ちゃんのサポートですから!」

 

「それじゃあ、2人とも頼むぞ。」

 

 俺はそう言って、さくらと知佳の頭を猶予がないのでサッと撫で、臨戦態勢に入った。

 

 さくらと知佳も一瞬気が抜けていた様子だったが、さくらはすぐ側まで迫って来ていた2人を迎え撃つ形で飛び出し、知佳も再び上空へ飛び立ち、そのタイミングを窺い始めた。

 

 

「待たせたな。では、お互い思う存分、試合おうか!!」

 

 ワンテンポ遅れて、俺の下に現れたシグナムさんの言葉が引き金となり、各々が勝利するための役割を果たすために動きだし、バトルフィールド全体のボルテージが急上昇した。

 

 

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