とらなのVRMMO ~魔法はゲームの中だけなの~【改訂版】   作:戯言紳士

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第50話   6月22日 月曜日⑨

 

 

「刻也、お前の期待に沿えるか分からないが、これが..今の私の持ち得る全てだ。」

 

 

 ―― 紫電、一閃っ!!(スプライトザンバー)

 

 

 シグナム 【精神力】 25 / 144 ⇒ 1 / 144 (-24)

 

 シグナムさんが花菱(八点衝)に対抗するために取った行動は、回避でも防御でもなく残りの力を一刀に込めた一振りの斬撃だった。

 

 "紫電一閃"。消費精神力から剣術のスプライトザンバーに違いないのだが、付与魔法のエンチャント・ファイア、ウィンド、ダークの影響がエフェクトにも影響し、剣身が赤黒い炎に覆われ、周囲を取り巻く風が炎を揺らめかせている。

 

 ―― ガキンッ!

 

 炎に覆われている影響で、剣身の幅を見誤り小太刀と両手剣が交錯する。

 

 クロノス 【生命力】 236 / 249 ⇒ 153 / 249 (-83)

 

 完全に打ち負け、俺は相殺しきれなかったダメージを負う。

 さらに、紫電一閃で八点衝自体が一撃目で強制終了となり硬直時間が生じてしまった。

 ここにきて、威力を上乗せするために武技を併用した事が裏目に出てしまった。

 

 当然、シグナムさんがそれに気づかないはずがなく追撃が襲う。

 

「はぁぁぁっっっ!!」

 

 紫電一閃でシグナムさんの精神力は武技の発動に必要な数値を満たしていない。そのため、追撃は武技の威力が加算されない通常の剣技だった。

 

 クロノス 【生命力】 153 / 249 ⇒ 126 / 249 (-27)

 

 この攻撃を受けた所で硬直時間は解け、身体に自由が戻った。

 本当に危ない所だった。シグナムさんの種族レベルがもう少し高く、精神力に余力があったら討たれていたかもしれない。

 

「お兄ちゃんっ!!」

「クロノス様!無事..ですか?」

 

 さくらと知佳にも心配をさせてしまったな。

 俺の力を示すだけだと言っておきながら、この様では全く格好がつかない。

 

「大丈夫だ。久しぶりに良いモノを貰ってしまったな。」

 

 まだ戦闘中という事もあり、邪魔にならないよう上空から話しかけてきた、さくらと知佳に返事をする。

 

 それにしても、敢えて攻撃を受ける事はあったが、このような形で攻撃を受けてのは何時以来だろうか?

 さくらとの戦闘でも、掠める事はあっても直撃は最初に敢えて受けた攻撃だけだったし...あれ?もしかして、正規サービスが始まってから初めてか?

 

 

 

 ―― ブンッ!

 

 さくらと知佳に返事をしてからすぐに、シグナムさんの斬撃が襲った。俺が2人と話す姿を見て仕掛けて来たのだろうが、この短期間で同じ手を2度も受けるわけにはいかない。

 ただでさえ、疑似再現とはいえ花菱を打ち破られてしまっているのだから。

 

 シグナムさんの剣を左手に持った一刀で受け流し、右手に持つ一刀でカウンターを放つ。

 

 シグナム 【生命力】 175 / 316 ⇒ 156 / 316 (-19)

 

 そのまま小太刀はシグナムさんに直撃しダメージを与えた。

 

 ―― ブンッ! ブンッ! ブンッ! ブンッ! ブンッ! ブンッ!

 

 それでもシグナムさんは攻撃の手を止めない、止める気配がない。精神力を使い果たしても、何回も攻撃を回避されて反撃を受けても、チームの負けが確定していても、シグナムさんは自分から降参する気はないらしい。

 

 シグナム 【生命力】 156 / 316 ⇒ 50 / 316 (-106)

 

そして、攻撃の手を止めず、その都度カウンターを受け、ダメージが蓄積していったシグナムさんの残り生命力が、次の俺の攻撃を受ければリタイアというラインに迫った。

 

 最後(フィニッシュ)は、ここまで戦ってきたシグナムさんに敬意を込めて、俺の中で一番練度の高い技で決着をつけよう。

 

 ―― 御神流奥義之六・薙旋

 

 クロノス 【精神力】 242 / 361 ⇒ 224 / 361 (-18)

 

 薙旋は超高速で放つ4連続の抜刀斬撃。併用する武技は二刀流剣術のテトラスラッシュ。

 花菱が潰された事で安易に武技を併用するのは憚られたが、今のシグナムさんに同じ事が出来るほどの余力は残されていないので併用する事にした。

 

 暗殺術"七夜"の時と同じように、シグナムさんに突進しすれ違いざまに右肩・左脇・腹部・右肋を斬り抜いた。

 

 シグナム 【生命力】 50 / 316 ⇒ 1 / 316 (-147)

 

 結果、シグナムさんの生命力は最大値の10%を下回り、この戦いに終止符が打たれた。

 

「刻也、最後まで私に付き合ってくれてありがとう。本来なら紫電一閃で刻也を倒せなかった段階で私の敗北は決まっていた。」

 

 戦いに敗れたシグナムさんは、最後満足気な表情をしながら俺に対して感謝の言葉を述べ終えると、フィールド外へ転移されるよりも早く、自らの足で先に敗れていったリインさん達のいる所に戻っていった。

 

『プレイヤー"シグナム"の生命力が最大値の10%以下になったため、バトルフィールド外に転移されます。』

 

『 WIN!! 相手の残存プレイヤー数が0となりました。決闘を終了します。』

 

 その数秒後、シグナムさんが倒されたというログと共に、俺達の勝利と模擬戦の終了を伝えるウィンドウが表示され模擬戦が終わった。

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

 フィールドやダンジョンでの戦闘とは異なり、対プレイヤー戦はプレイヤースキルが浮き彫りになると改めて実感させられた、そんな模擬戦だったな。

 

 それに、模擬戦が終わった後、空から降りてきたさくらと知佳の残り生命力と精神力はこんな具合で、精神力の方は大体予測通りの結果だったので驚きはなかったのだが、知佳はリタイア寸前の所まで消耗していた。

 

 さくら 【生命力】 133 / 328 【精神力】 2 / 202

 知佳  【生命力】 23 / 226 【精神力】 3 / 344

 

 それから知佳とさくらの戦闘内容を聞いたのだが、シャマルさんとその使役モンスター達には悪い事をしたな。俺らとしては、決闘では念動衝撃波がチートスキルになると確証出来たので良かったが、せめて見せ場らしい見せ場を作ってあげれば良かったと終わった後になって思う。

 まあ、知佳は俺に言われた以上の戦果を上げてくれたので咎める事はしないが。

 

 それから想定外だったのは、アインハルトさんは真祖化したさくらに対応出来るレベルだったという事だ。さらに、知佳がここまで消耗しているのはさくらを庇った時の一撃だけという事。

 流石はシグナムさんの後輩と称賛するべきなんだろうな。仮にその一撃で知佳とさくらが討たれて、シグナムさんと合流されていたらと思うとぞっとする。

 

 ただでさえ、俺はシグナムさん一人の相手をするのに手一杯だったのだから。

 

 

 

「今回の..戦いで、色々と..課題が..見つかりました。」

「それは私も同じ。お兄ちゃんの戦いは見ている事しか出来なかったし、危ない時に駆け寄る事も出来ないのは悔しかった。」

 

 しかしこれは勝ったPTの雰囲気ではないな。自分の反省点を見据え課題を見出しているのは良い事だが...、この辺りのケアは召喚主である俺の役目か。

 

「言うのが遅くなったが、お疲れ様。さくらも知佳も良くやってくれた。今回見付けた課題はこれから一緒にクリアして行こう。これからも頼りにしている。」

 

 ―― なでなで... なでなで...

 

 労い、撫でる。

 

 この場で出来る事など限られているので、今はこの位の事しか出来ないが、後でさくらには誠心誠意ブラッシングをして、知佳は明日一緒に採掘しよう。

 

「はぅ......。クロノス..さま..どこまでも..共に。」

「..はぃ。よろしくお願いひまふ.....。」

 

 それに、俺の所見では知佳もさくらも満更でもなさそうな反応をしている。

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

さくらと知佳を撫で始めて30秒くらい経ったくらいで、何時までも皆の所に戻らない俺達の下に全員揃ってやって来た。

 

「はーい、ストップ!」

「ご褒美タイムは終了y..って、そない、見ただけで人を殺せるような目で私を睨まんといて!」

 

 まだ残り3戦あるし、インターバルにあまり時間を掛けるのも後々響いて来る可能性があるから、この後の段取りの確認をしたいと言った所だろう。

 全体の模擬戦の反省会は、明日俺とユーリが生産活動をしている時に通信しながらする事になっているしな。

 

「さくらちゃんも、知佳ちゃんもズルい。最近私は刻也さんに撫でてもらってないのに!!」

「なのはちゃん、そんな羨ましいからって理由で止めているわけじゃないからね?」

 

「そうだよ!アタシだって昨日頑張ったのに!っていうか、ここ最近糖分が足りてないよ!」

「姉さん、昨日の夜にチョコレートケーキ食べてたよ?」

「フェイト。アリシアが言ってる糖分って、そういう意味じゃないから。」

 

 シグナムさん達との模擬戦が真剣過ぎて殺伐とした感じだったが、これがいつもの雰囲気なんだよな。

 

 

「それはそうと。次はボク達と戦うんだからね!」

「あの戦いを見た後ですと、気後れしてしまう所もありますが、」

「我らには関係のない事だ。」

「私達も全力でお相手するので、クロノスさんもさっきみたいに本気で来てください。」

 

 ほのぼのとした雰囲気が戻り、その光景を眺めていたら、次の対戦相手であるユーリ達が宣戦布告しに来た。

 ユーリ達は現実では普通の中学生で、シグナムさん達のように何かしらの武術を修めてはいないのだが、あの戦いを見たすぐ後にそう言えるとは面白い奴らだ。

 

 

 

 それじゃあ、次の対戦の準備をするか。

 

 ユーリ達も言う事を言って、その後は無駄に話す事はせず、少し輪から離れてミーティングを始めているし、俺達の生命力・精神力も模擬戦の終了と共にリジェネート系のスキルも有効化されたので全回復している。それに非戦闘状態なのでデバイス化の自動修復機能が働き、アイオーンの耐久値も最大まで修復された事だしな。

 

 手始めに、眼光鋭くはやてを睨みつけ、某モンスター育成ゲームならグーンと防御力を低下させているさくらと知佳に、もう一度、労いと感謝の言葉を伝え帰還させた。その際に、さくらにはブラッシング、知佳には一緒に採掘に行く事を伝える事も忘れてはいない。

 

 次に必要な事は..と考えたのだが、武器・防具共に修復は必要ない状態なので、後はユーリ達と戦わせる召喚モンスターの選考くらいしかやる事がない。それも、すでに構想は出来ていたので1分も掛からない間に次の模擬戦のPTメンバーは決まった。

 

 思っていた以上に、このインターバルでやる事がなく、俺の準備は終わってしまったらしい。

 

 

 一方、ユーリ達のミーティングはまだ終わっていなかったので、模擬戦が終わってからまだ絡んでいないシグナムさん達の様子を見に行く事にした。

 これから協力してイベントに挑む以上、親交を深めていく必要はある。それと忘れないうちに士郎さんと一緒に鍛錬しないかと打診しておきたかったしな。

 

 シグナムさん達も一緒に来ている事は視認しているので近くにはいるはず。

 

 周囲を見回すとPT毎に纏まっていて、近い所から、俺達に呼びかけをして場をいつもの雰囲気

に戻した聖祥PT。次にその光景を目の当たりにして「あんな戦いを見た後で、どうしてそんな様子でいられるの?」と先の模擬戦を見て気後れした感じの風芽丘PT。

 このテンションの格差だが、なのは達は、過去の俺と士郎さん、恭也さんや美由希さんとの真剣勝負を目の当たりにした事があるからだと思う。この3人との真剣勝負となると俺もなりふり構っていられないからな。ステータスで補強されているとはいえ、下手をすると今の模擬戦以上の動きをしている可能性もある。

 少々余談が過ぎてしまったが、次に目に映ったのがユーリ達がミーティングをしている姿。その表情は真剣そのもの。

 

 そして、最後に目に映ったのがユーリ達から5、6メートル左に離れた所にいたシグナムさん達だった。

 その様子は落ち込んだ感じではなく、シグナムさん・リインさん・アインハルトさんに関しては模擬戦前よりも闘気が満ちている。

 その中で、先ほどいなかった使役モンスターも交えてシャマルさんだけが装備の修復をしている姿を見て、俺はシャマルさんの下へ駆け寄る事にした。

 

「誰か来たですよ?」

「あっ!てめぇ!何しに来やがった!」

「止めなさいヴィータちゃん。それで、どうしたの?刻也君。準備とかで忙しいんじゃないの?」

 

 俺が近づいて来ている事に最初に気が付いたのは、先の模擬戦では見なかったシャマルさんの顔より一回り小さなサイズの妖精だった。それと何処となくリインさんに似ている気がする。

 

ちなみに名前と種族は...。

 

【名前】 ツヴァイ 【種族】 スノーフェアリー

【詳細】調教師シャマルの使役モンスター。

 

 見た目通り妖精だった。スノーという冠が付いているから、氷魔法に特化しているんだろう。

 

 色々とこのツヴァイを含めてシャマルさんの使役モンスターについても知りたい所だが、流石に今はそこまで時間に余裕があるわけではないので、俺はシャマルさんにここに来た目的を伝えた。

 シグナムさん達に俺が師事している人を紹介したいという事と、装備の修復なら明日、シャマルさん達の全員の武器・防具は新調するから必要ないと言う事を。

 

「そうだったわ。いつも時間がある時は修復してたから、ついやっちゃっていたわ。」

 

 そう言って、シャマルさんは修復作業をしていた手を止めた。

 

その後すぐに、

 

「ユーリ達の準備が整ったって!刻也も準備出来てるなら、2戦目を始めるって言っているよ!」

 

 もう少し時間が掛かると思っていたのだが、どうやら見通しが甘かったらしい。あれから大して時間は経っていないのだが、ユーリ達の準備(ミーティング)整い(終わり)、早速2戦目を始めたいとの事だ。

 

「行って来なさい、刻也君。さっきの事は私から伝えておくから。」

「さっさと行けよ!それと、アタシ達に勝ったんだからゼッテー負けんじゃねーぞ!」

『応援している。』

「頑張って下さい!」

 

 まだ話したい事はあったのだが、後がつかえているのでお言葉に甘え、シャマルさんとその使役モンスター達に見送られる形で、俺は再びバトルフィールドとなる広場の中心へ戻っていった。

 

 

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