とらなのVRMMO ~魔法はゲームの中だけなの~【改訂版】   作:戯言紳士

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第51話   6月22日 月曜日⑩

 

 

「来たね。それじゃあ、次の対戦に行ってみよぉー!」

 

 広場の中心に戻ると、そこにはアリシアがいた。どうやら、審判..いや、次の進行役はアリシアが担当らしい。進行役の必要性を感じないが、最初の掛け声ぐらいは合った方が良いのかな?

 

 2戦目という事もありアリシアからのルール確認はなく、PTリーダーである俺がユーリに決闘の申し込みを行い、ユーリがそれを承諾すると秒読みが始まった。

 

 

 

『 ―― 3 』

 

 

 

『 ―― 2 』

 

 

 

『 ―― 1 』

 

 

 

決闘(デュエル)開始(スタート)!』

 

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

 ―― ブースト・サモン アトラ&カンナ

 ―― オーラ

 ―― ブースト・ウェポン

 ―― ブースト・アーマー

 ―― エンチャント・フレイム

 ―― エンチャント・ソニック

 ―― エンチャント・シャドウ

 ―― ブースト・エレメント

 

 クロノス 【精神力】 361 / 361 ⇒ 90 / 361 (-271)

 

 2戦目が始まったが訳だが、最初に俺がやる事は1戦目と変わらない。召喚モンスターの召喚と戦闘終了まで効果が持続する強化用武技・付与魔法等の発動だ。

 前回の模擬戦で再確認したが、俺は対プレイヤー戦だと魔法の発動が極端に少ない。尚且つ、狙い目以外では武技の使用はないと言っても良い。その結果が1戦目を終えた段階での残り精神力に反映されていた。

 そう言ったわけで、1戦目よりも強化・付与に消費精神力のリソースを割いてみた。

 

これで俺は戦闘終了まで、以下の効果が継続される。

 

 筋力値+10%

 敏捷値+10%

 

 武器物理攻撃力+50%

 武器魔法攻撃力+5%、

 防具物理防御力+5%

 防具魔法防御力+5%

 

 物理攻撃に火属性付与

 物理攻撃に風属性付与

 物理攻撃に闇属性付与

 

 火属性による与ダメージ+25%

 風属性による与ダメージ+25%

 闇属性による与ダメージ+25%

 

 これも、エンチャント・○○がブースト・エレメントの効果で継続時間が戦闘終了までに引き伸ばされた事が大きい。消費は50と大きいが、2度目の重ね掛けをする可能性を考慮すると、こっちの方が燃費も良い。

 やり過ぎかも知れないが、ユーリ達を相手にするのであれば保険としてこれ位の補強はしておいた方が良い。何かあってからでは遅いからな。

 

 プレイヤースキルはシグナムさん達の方が上回っているだろうが、装備性能は俺に及ばないまでもユーリが担当しているのだから一般に流通している物よりも性能は高い。

 それにβ時代からやっているので、俺の思考パターンや情報、SLOの知識量も豊富。

 そして何よりも怖いのが、チームとしての結束力。1人1人の歯車が噛み合えばシグナムさん達でも圧倒する位の可能性は秘めているPTだと、過去の戦闘から言い切れる。

 

 

 その歯車を狂わせる要員がアトラ。

 単純な火力こそ、現召喚モンスターの中では一番低いアトラだが、毒・麻痺・魅了攻撃に呪術魔法といった状態異常を誘発する攻撃法や、捕縛といった妨害、吸血で精神力の回復も図れるなど、豊富な行動パターンが戦闘では最大の強みになっている。

 

 そんなアトラの主な役割は、レヴィのスピードを殺す事。

 ユーリ達の中で一番調子に乗せてはいけないのがレヴィ。テンション次第で想定外の機動力を見せ戦況を一変させて来た姿を俺は見ている。

 アトラの【捕縛】スキルは、周囲に蜘蛛の巣を形成し対象を捉える形式なので、レヴィの機動を限定する事が出来る。何より拘束魔法よりも燃費が良いのが大きなメリットでもある。

 

 そして、カンナはアトラが狂わせた歯車を破壊する事。

 カンナもさくらと同様に、戦場を選ばずに安定した力を発揮出来る汎用性の高いモンスターというのは言うまでもなく、【竜化】スキル発動後の戦闘力は他を圧倒する力を有している。

 それに、カンナが装備している龍神のアミュレットに付与した【竜化消費精神力軽減】のスキルは決闘でも有効なので、さくらの真祖化よりも有効時間が長くなる。これほど大きなアドバンテージはない。

 

 ただし、今回は回復手段がないので、被弾には十分に注意する必要がある。

 

 

「畏まりました。誠心誠意尽くさせて頂きます。」

「わかりました。こうげきはよけて、クロノスさまのあいずがあったら、りゅうかします。」

 

 今回も戦いまでの経緯は無視して、アトラとカンナにはこの戦いにおける役割だけを簡潔に伝えた。さくらと知佳もそうだったが、どの召喚モンスターも物分かりと適応力が高くて助かる。

 

 

 これで俺達は臨戦態勢に入る。

 前方を見ると、すでに隊列を組んだユーリ達が臨戦態勢で構えていた。

 

 前衛にはレヴィとシリウスというユーリの召喚モンスター。種族はレブルドルで2頭1身の姿が最大の特徴の獣型モンスターで、最終的には3頭1身のケルベロスへとクラスチェンジする。ステータスもオートの方は筋力値と敏捷値が上昇し易かったと記憶している。

 少なくとも種族的に盾役には向かないシリウスとレヴィを前線に並べたという事は、スピードで撹乱するつもりなのだろう。

 

 続いて、中衛にはシュテルと王様。それぞれ手にしているのが、シュテルは鋼拳、王様が短槍と盾。これが意味しているのは、レヴィ達前衛が最初から抜かれる事を前提と考え不測の事態にもすぐに対応出来る態勢を整えていると言う事。王様が最初から中衛で杖以外の武器を構えているのは、最初からかなり警戒している証拠だ。

 

 そして、後衛にはエニフというパラディンホースに騎乗するユーリ。この姿のユーリが炎の紋章に登場したらクラスは間違いなくヴァルキュリアである。

 ユーリは回復魔法こそ使えないが、数多くの魔法を習得している。魔法方面に特化しつつあるため物理的な耐久面や敏捷値は高くはないが、それを補うのがエニフなのだろう。ユーリの足代わりとなる事で敏捷値の低さをカバーし、騎乗者のステータスを強化する類のスキルは習得しているはずだからな。

 

 

 一見隙のない隊列ではあるが、どこまで維持出来るかな?

 悪いが、今のPTメンバーは長期戦には向かないので、短期決戦思考でガンガン攻めていくぞ!

 

 

◇◆◇◆◇◆                                ◇◆◇◆◇◆

 

 

 お互いの準備が整った後、最初に動いたのは俺達だった。

 てっきり、レヴィ辺りが突っ込んで来るモノだと思っていたが、最初は俺達の出方を伺う方針だったようだ。

 

「アトラ。捕縛はその程度で良い。次は呪術魔法でシュテルにサイレントで沈黙状態にしてくれ。回復ラインを潰しておく。」

 

 しかしその選択は間違いだった。

 様子見の結果、ユーリ達は容易にアトラに捕縛を複数発動する時間を与えた。

 

「ふふ..畏まりました。―― サイレント。」

 

 アトラ 【精神力】 324 / 338 ⇒ 313 / 338 (-11)

 

「………………っ!」

 

 まだそれだけだったらマシだっただろう。だが、たった今、アトラの呪術魔法でシュテルが沈黙状態に陥った。これで時間経過で回復するまでの間、シュテルの魔法は封じられた。

 

「馬鹿な。シュテルは装飾品で沈黙に対する抵抗力を上げているのだぞ!」

「抵抗力を上げていると言っても100%とじゃありません。ありませんが、それでも1回で掛かってしまうなんて、運が悪かったとしか言えません。」

「くっ...。回復アイテムが使えず、我らでは回復する手立てがない以上、自然回復を待つしかない。」

 

 ここまでは予定調和に物事が運ばれている。逆に順調すぎて怖いくらいだ。

 

 

 

「うわぁぁぁーーーー!!!」

 

「今度は何事だ!?」

「レヴィちゃんが、アトラさんの蜘蛛の巣に引っかかったみたいです。」

「虚けが!レヴィ何をしておる!事前にこうなる可能性を教えて置いたではないか!」

 

 シュテルが沈黙状態に陥って間もなく、不測の事態に行動を起こそうとしたレヴィがアトラの捕縛により各所に配置された蜘蛛の巣に引っかかった。

 

「そんな事言ったって、数が多いし、何か透明感あり過ぎて、全部把握出来ないよ。」

 

 捕縛により製糸される糸の強度や精度・密度はアトラの器用度が影響するらしい。今製糸されている糸は肌理が細かく透明感のあるその糸は、光の反射具合から視認し難くなっている。

 レヴィはそれを見切れず、巣に囚われてしまったと言う事だ。

 

「アトラ。レヴィが絡まっている間に、ブラインドで暗闇状態。その後、物理攻撃で他の状態異常もおまけしてやれ。」

 

 そんなレヴィに追い打ちを与えるように指示する俺。

 

「畏まりました♪いつもよりご主人様が命令して下さるのでテンションが上がって来ましたわ。

 ―― ブラインド。」

 

 アトラ 【精神力】 313 / 338 ⇒ 302 / 338 (-11)

 

 レヴィ 【状態】 なし ⇒ 暗闇

 

「何コレ!!急に真っ暗になっちゃった!何にも見えないよ!!!」

 

「さあ、どんどん行きますわ。 ―― 爪撃×8」

 

 アトラ 【精神力】 302 / 338 ⇒ 174 / 338 (-128)

 

 レヴィ 【生命力】 290 / 290 ⇒ 258 / 290 (-32)

     【状態】 暗闇  ⇒ 毒 麻痺 暗闇

 

「う..。ダメージは少ないのに、手先も動かなくなっちゃったし、何か段々生命力が減っていってる気がするんだけど。」

 

「あら、残念。魅了までは掛かりませんでしたか。」

 

 それをノリノリで実行するテンションの高いアトラ。

 

 そして、これでレヴィは捕縛された状態で、毒・麻痺・暗闇の状態異常が発生してる状態になり、一切身動きが取れず毒によるダメージがじわじわと蓄積されていく。

 

 状態異常攻撃による一方的な展開に、今まで状態異常対策を怠っていた聖祥・風芽丘のPTというか、現ギルドメンバーが状態異常の危険性を重要視してくれれば、犠牲となったシュテルとレヴィは報われるだろう。

 一応、俺と召喚モンスター達は、装飾品に付与した耐性スキルでかかり難くはしているが100%ではないので、今はレベルは低いがユーリの呪術魔法には注意する必要はある。

 

 

「大変!早くレヴィちゃんを助けないと!」

「しかし、迂闊に近づけばレヴィの二の舞になり「―― エスナ」...。」

 

 シュテル 【精神力】 293 / 293 ⇒ 285 / 293 (-8)

 

 レヴィ 【状態】 毒 麻痺 暗闇 ⇒ 毒

 

「申し訳ありません。不覚を取りました。」

「あれはシュテルちゃんの責任ではありません。運が悪かったんです。」

「それに回復したのなら問題ない。二度目はないようにアトラの行動には注意せねばな。」

 

 レヴィを追い込んでいる間にシュテルの沈黙が解けてしまったらしい。

 もっと長い時間効果が継続されると思ったが、この短時間で解けるという事はかなり沈黙に対する耐性を上げていたのだろう。その中で一発で沈黙状態に陥ったのは本当に運が良かったみたいだ。

 

「ちょっとぉ!ボクはまだ捕まったままなんだけど!それに毒が残ってるよ!!」

 

「そうでした!シリウス、レヴィちゃんの救出をお願い出来るかな?」

「がぅ!!」

 

 ユーリの命でレヴィの救出のために駆けてくるシリウス。道中のアトラが設置した蜘蛛の巣は、シリウスが前方に火属性の吐息(ブレス)を吐き焼却しているので、シリウスが巣に捕らわれる事はなかった。

 

「今は何のコーティングもしていない糸ですから、火属性の攻撃に弱いのは仕方ありません。」

 

 自分が設置した巣が燃やされている光景を見ながら、アトラは自分を納得させる様にこう言っていた。

 ()はと言う事はアトラのレベルや器用度が高くなれば、そう言った事も可能と言う事だよな。そうなるとアトラの工作員としての働きも今以上になるよな...。

 

 やばいな。明日はやる事が山積みなのだが、アトラと他のまだ最後のクラスチェンジをしていないメンバーのレベリングがしたくて仕方なくなってきた。

 

 

「全く手間が掛かりますね。―― エスナ」

 

 シュテル 【精神力】 293 / 293 ⇒ 285 / 293 (-8)

 

 と..いけない。まだ模擬戦は決着が着いていないんだった。

 シュテルがレヴィに残っている毒を解くために発動させた魔法で、脱線しかけていた意識が模擬戦へと向き直す。

 

 レヴィ 【状態】 毒 ⇒ 毒

 

「ちょっと!治ってないよ!」

「………………。」

 

 回復魔法"エスナ"は対象の状態異常を50%の確立で回復させるので、1回目の様に2つ同時に回復させる事もあれば、今回の様に回復しない時もある。

 

 そんな微妙な雰囲気の中、蜘蛛の巣を焼却してきたシリウスがレヴィの下に辿り着き、道中と同じ様に吐息でレヴィを捕らえている糸を焼却し、解放されたレヴィを口で加えユーリの下に戻っていった。

 そして、再びシュテルがエスナを発動し無事にレヴィの毒は解毒され、消耗した生命力もヒールで回復されてしまったのだが、良い感じに相手を消耗させる事が出来たので、最初の攻防は俺達の完勝と言った所だろう。。

 

 ちなみにそれをアトラは深追いせず、シリウスがユーリの所に戻ったのを見届けると、焼却された箇所に再び蜘蛛の巣を設置していた。

 捕縛と吐息のコストを考えれば、どちらが先にガス欠になるかは目に見えているので、それを見越しての行動なのだろう。

 

 

それでは、第二幕はここまで姿を完全に消しているカンナに活躍してもらうとしよう。

 

 

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