蒼き雫に救われし者   作:マスターBT

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お待たせしました!
一夏の話が思っていたより難しくここまで時間が空きました。

一夏対千冬です。どうぞ〜


一の夏と千の冬

千冬SIDE

 

仕事がひと段落つき休んでいたら寮長室の扉が勢いよく開かれ、一夏が入ってくる。

 

「何を慌てているんだ一夏? 」

 

「ハァハァ………千冬姉…今暇? 」

 

「ああ。ちょうどひと段落ついた所だ 」

 

息を整えることも無く一夏が話しかけてくる。

何を急いでいるんだこいつは?

 

「なら良かった。ちょっと俺と戦ってくれないか? 」

 

「随分といきなりだな、何があった? 」

 

一夏からドラクレアと凰から言われた事の説明を受けた。

 

「ククッ、ハハハハハ! 」

 

思わず私は笑い出してしまった。

一夏がびっくりする様な顔でこちらを見ているが構わず笑ってしまう。

 

「笑う所じゃないだろう千冬姉 」

 

「ああ、すまんすまん。お前が他人に言われた事を真剣に悩むのは面白くてな 」

 

一夏は、昔から自分がそう思ったらそれ一直線な所があった。

それが今の一夏は考えて動いている。他人の考えを受け、自分を変えようとする姿は成長を感じられどこか面白かったのだ。

 

「戦ってくれるのか? 」

 

「ああ。だが何で戦うんだ? 」

 

「道場で昔みたいに剣で戦いたい 」

 

「………本気なんだな? 」

 

威圧をかけるように言う。

 

「ああ 」

 

怯みもせずに一夏が答える。

 

「フッ、先に行ってろ 」

 

「ありがとう!千冬姉 」

 

入ってきた時と同じ様に走って出て行く。

 

「偶には、弟とも向き合わなければな 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏SIDE

 

道場に行き千冬姉を待つ。

 

「ふー、勝てるとは思ってない。でも、ファウストと戦って朧げに感じた物を掴んで見せる 」

 

口に出して目的を再確認する。

ファウストに理想を問いかけられ鈴にヒントを貰った。

ならば、答えを得る為に憧れと向かい合うしかないと思った。

 

「待たせたな、一夏 」

 

白いジャージを着た千冬姉がやって来た。

 

「いや、そんなに待ってないよ 」

 

「そうか 」

 

千冬姉が俺の前に立ち木刀を構える。

それを確認した俺も木刀を構え千冬姉と向き合う。

 

「覚悟はいいな? 」

 

「当たり前だ千冬姉 」

 

「なら、行くぞ! 」

 

その言葉を合図に千冬姉が上段から木刀を振り下ろす。

振り下ろされる木刀に向けて勢い良く下段からぶつけた。

 

カァン!!!!

 

小気味好い音を立てて千冬姉と距離を取る。

手が少し痺れたがこれぐらいで千冬姉の攻撃を防ぐことが出来たのなら安い方だ。

千冬姉が一気に近付き繰り出した突きを半歩ずれる事により回避しガラ空きの胴体に向け木刀を横薙ぎにするが千冬姉はしゃがんで躱し、逆に俺の胴体に千冬姉の蹴りが入って飛ばされた。

 

「以前に比べればましになったな 」

 

「やっぱり強いなぁ千冬姉 」

 

「フッ、まだお前には負けないさ 」

 

「もう一戦お願いしてもいいか? 」

 

「かかってこい 」

 

俺は立ち上がり再び千冬姉に突撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局、一撃も入れることが出来なかった…… 」

 

「私を甘く見るなよ 」

 

千冬姉が寝っ転がっている俺の横に座る。

日は落ち辺りは薄暗くなっている。

 

「何か掴めたか? 」

 

「ああ。千冬姉、俺は千冬姉の様に成ろうとするのはやめるよ 」

 

千冬は黙って俺の独白を聞いている。

 

「俺は今まで千冬姉の様に誰かを守れるように成りたいと思っていた。

でも、それは独りよがりだと気付いたんだ。自分が空っぽの時に感じた物に憧れただけだった 」

 

「それでお前はどうしたいんだ? 」

 

千冬姉が問いかけてくる。

 

「俺は、自分の意志で大切な人達を守る 」

 

「今までのお前とどう違うんだ? 」

 

「今までは自分というのをしっかり認識していなかったと思んだ。

だから、目の前の事に固執して大切な物が見えていなかった。

福音の時がいい例だろ?

あの時の俺は、密漁船を守ろうとしたけど墜とされてしまった。あの時ファウストが死ぬ気で福音を抑えてくれていなかったら旅館にいたみんなに被害が出ていただろうな 」

 

「そこまで分かってるなら大丈夫だ 」

 

千冬姉が笑う。

 

「オルコットが言っていたことだがお前とドラクレアの違いは覚悟があるかないかだとさ 」

 

「覚悟…… 」

 

「ドラクレアは、まぁ見て分かるだろうがオルコット以外の人間がどうなろうが知った事では無いだろう? 」

 

「確かに分かるけど… 」

 

ファウストがオルコット以外の人間が死んでも悲しむ姿が連想できない。

それどころか『死んだ人間の事を何時まで引きずっているつもりだ? 』とでも言いそうだ。

 

「だがお前はどうだ? 何時までも引きずるだろう? 」

 

「あ、ああ。否定はできないな 」

 

「それが、覚悟の差というやつだ 」

 

「え? 」

 

千冬姉が面白そうな顔をする。

 

「私からも一つ教えてやろう。

守るという行動にはどう足掻いても何時か犠牲が伴う。

その時、自分を強く持つことが出来るかどうかが次に繋がる 」

 

そう言って千冬姉は立ち上がり道場から出て行った。

 

「………犠牲か 」

 

千冬姉に言われた事を考えてみる。

俺は自分の大切な人達を守ると決めた。きっと千冬姉は、その先にあり得る未来を言ってくれたんだ。

俺が今その時の覚悟を持つために。

そう思った時俺の頭の中で全部が繋がった。

 

「みんな、お節介なんだな 」

 

ファウストも鈴も千冬姉も俺の理想を反対していた訳じゃなくて俺に覚悟を持って欲しかったのか。

 

「それにしても、ファウストのやつ回りくどい事をしたもんだな 。

彼奴がそこまでして聞きたかった答えかは分からないけど行くか、ファウストの所に 」

 

立ち上がって歩き出そうとしたが体のあっちこっちが痛い。

 

「うん。明日にしよう 」

 

体が痛いのだからしょうがないさ。

 




次はファウスト対一夏です。
少しずつ成長していく一夏を楽しみにしてください。

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