主人公SIDE
「お嬢様、偏向射撃を試してみましょうか 」
俺は、パネルを操作し複数の的を出す。
「ええ。稼働率の確認は任せましたよ 」
夏休み最後の一日は、イギリスに居た間ブルーティアーズの開発主任に散々言われた偏向射撃の特訓に使う事にした。
俺が、お嬢様と呼んでいるのは、この場所にもう一人いるからだ。
「織斑は、妨害の為に展開している俺のシールドビットを回避しろ。
お前の動きは、直線的過ぎる。戦い慣れている相手やお前の動きを観察した人間には容易く進路が読まれる。
だから、お前には兎に角回避を覚えてもらう 」
「分かった 」
何故、織斑を訓練しているのかと云うとセシリアにサイレントゼフィルスの一件を伝えたところ、自身が偏向射撃を習得と同時に織斑も強化した方が良いかもしれないと言ったのだ。
亡国の連中が織斑を狙う可能性はゼロじゃ無い。
セシリアの話を聞き、そう判断した俺は、今日を訓練に使う事にした。
「お嬢様、もっとブルーティアーズを意識して下さい 」
所長から、理論上の偏向射撃のコツを聞いているが、此ればっかりは自分で気付いた方がモノにしやすいし何より、
(他人から聞いた方法で出来ても嬉しくないと、言いそうだしな )
「ん?、稼働率が上昇しだしたな。
一日で此れなら、一月もあれば習得できるか? 」
セシリアの方は案外、上達が早そうだが、問題は…
「何回シールドビットに当たれば気がすむんだ織斑‼︎ 」
「ぐっ、だってコレ動き回るし 」
「其れを避けるのがお前の訓練だ。
其れとも、実戦形式の方が避けられるか?」
此奴は、そっちの方が向いてそうだしな。
「い、いや。遠慮しとく 」
織斑の顔が引きつっているのが確認できる。
其処まで、酷な事は言ってないのだがな。
「お嬢様は一旦休んで下さい。
脳にかなりの負荷がかかってます。このままだと危険ですので休んで下さい 」
「わかり…ましたわ…… 」
フラフラとセシリアが戻って来る。
ビットはその性質上、脳を使う。
普通に扱うには、問題ないが高稼働率を長時間、維持しようとすれば其れだけ脳を酷使するという事だ。
此ればっかりは脳の酷使に慣れ、キャパシティーを上げなければならない為一長一短で出来るものでは無い。
「現在の最高稼働率は、四十%です。
維持可能時間は5分前後と云ったところでしょうかね 」
「まだ……まだ…ですわね… 」
「このまま順調に稼働率が上がれば、一月で偏向射撃を行えるでしょう。
しかし、其処からが試練ですよお嬢様?」
仮に偏向射撃が扱える様に成っても自身の動きが止まってしまえば良い的になる。
そうなって仕舞えば、実戦では使えない。
「思っていたよりきついですわ… 」
「緩やかにやる訓練の方にしますか?」
今行っているのは、ひたすらに脳を使い休み、そしてまた酷使する。
自分が考えておきながらスパルタだな。
まぁ、俺も訓練を兼ねてセシリアのブルーティアーズの稼働率の確認、其れと並行しシールドビットの操作ついでに、
『チェックメイト〜 』
此奴とチェスをしている。
チッ、また俺の負けか。
「馬鹿を言わないで下さいな。貴方だってそこまでしているのに私自らが、選んだ事を撤回するつもりはありませんわ 」
セシリアが俺の目を見て力強く答えた。
俺が、やっていた事をバレてたのか。
「後10分程休憩したら、再開しますよ?」
「ええ。分かりましたわ 」
ふぅ、とセシリアが一息つく。
さてと、俺は問題児の相手でもするか。
「織斑‼︎10分程実戦形式をやるぞ 」
「げ、まじかよ… 」
シールドビットを織斑が回避しそうな位置に、シールドビットを配置する。
「それじゃあ行くぞ?」
アサルトライフルを展開し一斉射撃する。
無論、右と左で僅かに狙う位置を変える。右手のアサルトライフルは、頭部を狙いつつ左手は、首を狙う。
人間いや生物にとって急所を狙われるとそこを一番守ろうとする。
織斑が雪羅をシールドモードに切り替えて防ぐ。
狙い通りだな。急所を守ると云うならそれ以外が疎かになる。
此処までの行動は全てがフェイクだ。
織斑の背中にシールドビットを突撃させる。
反応出来なかった織斑は、地面に叩きつけられた。
「シールドビットは妨害じゃ無かったのか?」
予想通りの返答だな。
「実戦形式と言っただろう?
お前は敵の言うことを一々信じるのか?」
「信じないけど… 」
織斑が不満が有ると云う顔をしている。
「平和ボケしているようだから言わせて貰うがお前は、自分がどの様な状況にあるか分かっているのか?」
「状況?」
アホな顔をして疑問を口にする。
理解していなかったか……
「はぁ、馬鹿は馬鹿のままか。
まぁいい、お前は男性でISを動かした。これは俺にも言えるな。
だがな織斑、もし俺たちを欲している様な組織がいたとしよう。
その時、俺とお前のどちらを狙うと思う? 」
「……分からん 」
「じゃあ、想像してみろ。
お前が狩人で目の前に獲物が二匹居たとする。
片方は呑気に寝ていて、もう片方が周りを警戒している。
お前なら、どちらを取る? 」
「そりゃあ寝てる方ってまさか‼︎ 」
「気付いた様だな。其れが今のお前の状況だ 」
馬鹿に物を教えるのは面倒くさいな。
だが、此奴を馬鹿のまま放置していればめんどくさい事に成るのは確実だしな。
「はぁ、俺も随分と甘くなったな 」
「なんか言ったか? 」
「いや、何でも無い。
さて、10分経ったし再開するぞ 」
数日経ち、全校集会が行われた。
「眠い」
ここ最近は、ブルーティアーズの状況報告そして、どういう訓練がより効果的なのかを考えたりなどしていて碌に寝ていない。
生活サイクルが昔に戻れば、一、二時間寝れれば二日ぐらいは寝なくても良いのだがIS学園に来てからは、セシリアが『しっかりと休むのも仕事の内ですわ。というか、ほとんど寝てなくて心配になるのでしっかり寝て下さい‼︎ 』
と言うから、五時間は寝るようになってから体の調子が狂ったな。
「やあみんな。おはよう 」
壇上に水色髪の女子が上がる。
と云うか彼奴は、更識楯無じゃねーか。
お決まりの挨拶をした後イベントの説明が始まった。
「名付けて、『各部対抗男子争奪戦 』!」
何時の間にか手にしていた扇子を開くと同時にディスプレイに俺と織斑が映し出される。
……は?
「ファウスト?彼女は何を言っていますの? 」
「いえ、私も理解が追い付いていません 」
ここ数日の記憶を遡ってみるが承認した記憶はない。
ならばと思い、織斑を見るがポカーンと口を開けて固まっている。
…織斑も心当たり無しか。
「よしっ‼︎盛り上がってきたぁぁ!」
「今日の放課後から集会するわよ!意見の出し合いで多数決を取るから!」
考える事を放棄した俺たちを尻目に周りはどんどん盛り上がる。
「あ、言い忘れてたけど一位が自由に選べるわよ。
特に、ドラクレア君は執事らしいし女子の夢を叶えられるかもしれないわよ?」
は?何て言いやがった彼奴⁉︎
「オルコットさんが独占しているドラクレア様の御奉仕を私達が受けられる⁉︎ 」
「あんな事や、こんな事グフッ 」
「何を想像したの⁉︎凄い鼻血だよ⁉︎ 」
聞き間違いでは無かったようだ。
「お嬢様?」
先程から妙に静かなセシリアを見る。
「……ふふふ、ファウストは私の執事ですわ。
他の誰にも渡しませんわ… 」
あ、やばい。セシリアの目が死んでる。
「ふふふ……一位になりそうな所をピックアップしておきませんと 」
殺気がただ漏れになってる。
だが、そんなセシリアに気づく事なく集会は終わった。
「…取り敢えず次会ったら更識楯無を殴ろう 」
これからの苦労を考えたら妥当だろうと密かに思った。
訓練と珍事件?でした。
なんかセシリアにヤンデレ属性が付き始めた?
ま、まぁ大丈夫だよね。
感想・批判お待ちしています。
今更ですが、感想・評価をつけてくれる方々ありがとうございますm(_ _)m