鈴SIDE
「まだ起きないのねセシリア?」
IS学園の病室に私は来ていた。
あの襲撃事件の時、私と一夏はいつまで経っても戻って来ない二人を探して学園内を走り回っていた。
シャルロットとラウラが気絶していたし、二人のIS反応が凄く弱く探知が出来ない状態だった。
途中で生徒会の人達や、織斑先生にも手伝って貰い学園の一番端のエリアに二人を見つけた。
ボロボロのセシリアに手を伸ばす様な姿でドラクレアが気絶していた。
一夏達に連絡をし、二人を病室に運んだのが二日前なのだ。
「ドラクレアが別人の様に成ってるわよ。早く起きないと廃人になっちやうわよ 」
昨日ドラクレアが目を覚ました。
〜昨日〜
「んっ…… 」
「ファウスト‼︎起きたのか‼︎ 」
「一夏落ち着いて!」
ドラクレアが唸り声を上げると同時に一夏が、飛びかかりそうな勢いで反応する。
はぁ、心配なのは分かるけどアンタが其処まで焦る必要ないでしょ。
「織斑とチビか、セシリアは何処にいる?」
焦点の定まっていない目で此方を見る。
その目は、まるで僅かな希望の光に縋っている人の目のような感じがした。
少なくとも、何時もの人を馬鹿にしている様な人間がする目では無かった。
ドラクレアよね?別の人間じゃ無いわよね?
「………オルコットは、隣の集中治療室にいる 」
一夏が言いにくそうに真実を口にする。
「……………………………そうか 」
一瞬目を大きく開きその後、顔を俯いてしまう。
その姿は触れれば壊れてしまいそうな雰囲気が漂う。
部屋を沈黙が支配する。この状況で言葉を発するほど私も一夏も馬鹿では無かった。
「ツツッ‼︎動いちゃ駄目だってドラクレア‼︎ 」
ドラクレアが、少しづづ体を動かそうとしていた。
意識が戻ったとはいえ、傷は全くと言っていいほど回復していない。
今のドラクレアの体は、筋肉繊維が殆ど破壊されているし、太ももを貫かれているのに動こうとしている。
「自分の体ぐらいどんな状態か分かるでしょ‼︎ 」
ベットから足を下ろして立とうとしている。
「知った事じゃない‼︎ 俺は大切な人を守りきれなかった。ならせめて、その人の側に居たい‼︎ 」
ぐぅぅと唸り声を上げながら、ゆっくりと立ち上がる。
太ももの傷が開いたのか出血し始めている。それでも、一歩づづゆっくりと進んでいく。
私も一夏も、ドラクレアの気迫を前に動けなくなっていた。
「無茶は駄目よ。ドラクレア君 」
「更識…… 」
病室の扉に寄りかかる様に更識先輩が立っていた。
「退け…お前に割く時間は無い… 」
「立つのもやっとの人が何言ってんのよ。
取り敢えず休んでなさい 」
「…退け 」
「聞く気なしね。じゃあ仕方がないわよね?」
更識先輩が、ドラクレアの首に注射を刺す。
って、何してんのよあの人は⁉︎
「更識……貴様……くそっ…… 」
ドラクレアが倒れる直前に更識先輩が支える。
「楯無さん何を? 」
「ただの麻酔薬よ。まぁ、ちょっとばかし強いのを使ったけど 」
麻酔薬って大丈夫なの?
「こうでもしないと動き続けるでしょっと 」
更識先輩がドラクレアをベットに戻す。
「織斑先生が面倒をみるらしいからあなた達も、休みなさい。特に一夏君ね 」
「で、でも… 」
「でもじゃないの。ほとんど此処に来ていて休んでないでしょ?
だから、休む!良いわね?」
「………分かりました 」
一夏が病室を出て行く。
それを見送ってから更識先輩が神妙な顔で私を見た。
「鈴ちゃん 」
「はい。なんでしょうか?」
「ドラクレア君の体が今、どんな状態か知ってる?」
「凄くボロボロという事しか知りませんが、他にも何かあったんですか?」
これ以上酷い状態なんだろうか?
「体はその通りよ。でも、酷いのは精神の方よ 」
「精神?」
「ええ。ドラクレア君は、依存と言っていいほどにセシリアちゃんに頼ってるわ。
何故かは、今調べているけど明らかに異常よ 」
言われてみれば最近は、まともになったけどちょっと前までは他人と関わる気が無かったもんね。
「それでね鈴ちゃん。今の様子で気付いたけど、今はまだあの程度で済んでるけどこれ以上日数が経って仕舞えば、彼の心は確実に壊れるわ 」
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「ねぇ、セシリア。あんたとドラクレアは、どうやって今の関係を構築したのよ 」
他人を信用せずに、他人に頼らず、ただの一人の為だけにその全ての命と時間を費やす様な人間は、簡単に見つかっていいものじゃない。
「自分の命よりも、他人の命が大切なんて可笑しいよ…… 」
「それがファウスト・ドラクレアと云う人間だからな 」
私の後ろに白衣を着ている三十代ぐらいの男が立っていた。
…IS学園に男が何で?
「貴方は?」
「私か?博士でも所長でも好きな名で呼びたまえ 」
そう言って博士?はセシリアに近づいていく。
「ブルーティアーズは?」
「ダメージレベルがCを超えたからイギリスから、技術者を呼ぶらしいけど 」
「それを聞いたつもりはないのだが、待機状態はイヤーカフスだったのか 」
そう言ってセシリアの耳から取った。
「何してんのよ‼︎ 」
「私が技術者だ 」
IS学園の入場証を見せられる。
あ、本物だ。
「失礼させて貰う。ドラクレア君の様子も見に行かなくてはならないのでね 」
病室を出ようとした所で立ち止まり此方を見る。
「まだ何か?」
「いや、ドラクレア君の病室は何処だ?」
………………………大丈夫かなこの人。
「すぐ隣です 」
「そうか。ありがとう 」
今度こそ出て行った。
博士SIDE
病室の説明は受けたが、興味が無くて忘れていたよ。
「さてと、これはどう云う状況だ?」
「離せぇぇぇぇ!!」
「大人しくしろドラクレア‼︎ 」
…私が一瞬でも言葉を発せられなくなる事態があり得るとはな。
「ドラクレア君。起きていたのならちょうどいい 」
「あ?所長… 」
「ふー、やっと静かになったか 」
この女性の疲れ具合を見る限り、相当暴れていたのだろうな。
「全く君は、オルコット代表候補生の事となると必死だな 」
「そう思うんなら………織斑教諭を足止めしてくれ…… 」
織斑?ああ、ブリュンヒルデの事か。
「ん?如何したブリュンヒルデ。何を不思議そうな顔で見ている?」
「いえ、ドラクレアと親しく話しているのを見るのは、オルコット以外で初めてでしたので 」
なるほど、其れなら目を丸くしているのが分かる。
此奴は、野生の獣の様に警戒心が高いからな。
「まぁ、ドラクレア君。私にブリュンヒルデをどうにかして出来る筈が無いだろう。
それよりも、随分とボロボロじゃないか 」
「はい。ドラクレアの体は「ああ、そっちの事ではない。心の方だ 」…心ですか?」
「敬語が慣れていないのなら、素の口調で構わんよ。
オルコット代表候補生を守りきれなかったのが其処まで悔しいのか?」
そうでは無いだろうが、こう聞いた方が面白そうだ。
「性格悪いな………全てにおいて悔しい。
…セシリアが傷付いてしまった事、それで今苦しんでいる事。何より、きっとあいつは、俺を見ても笑顔を浮かべる 」
「それは良いことではないのか?」
自分の姿を見て笑顔に成ってくれる何て良いことだろう。
少なくとも、もう私は見ることが出来ない。
「違う。……セシリアは弱さを見せるのが苦手で、優しいんだ。
だから、俺が会いに行った時に自分が笑っていなかったら、俺が悲しい思いをするって考えてる。
自分がどんなに辛くてもそれを笑顔で覆い隠してしまう。俺が、無茶をした理由が自分の所為だと考えてしまう。
自分が弱くて、その所為で周りの人が傷つくって思う。でも、それをあいつは見せてくれないんだ… 」
支離滅裂な言葉に成りかけているが、それはドラクレア君が本心から想っているからだろう。
つくづく人間という生物は想うように生きていけないようだな。
互いを想い合うが故に、相手に心配されてしまうとはな。
「そうか。ならば、余計にその体を治してから会ったらどうだ?
君の言う通りなら動くのも儘ならない体で会いに行けば、心配されるか、傷付くかもしれんぞ?」
「…………そうか。なら、此奴の修理を頼む 」
そう言って投げ渡してきたのは、腕輪だ。
「これは、ブルーサーヴァントの待機状態 」
「お前になら、そいつを預けられる。
俺が、動ける様になるまでに修理をしておいてくれ 」
「ブルーティアーズの修理もあるのだが?」
「お前なら出来るだろう?」
此奴は、私に二つのISの修理を同時にやれと言うのか。
全く、面倒な友人を得たものだな。
「ふー、友人のよしみでその依頼を受けてやろう。
ただし、修理が終わるまでに動ける様になるのが条件だ 」
「余計なお世話だ。
……頼んだぞ 」
「引き受けた 」
言いたいことだけ言って眠った様だ。
此奴の事だ、とっとと回復して動ける様に成るだろう。急いで、修理をしなくてはな。
「失礼させて貰うよ。ブリュンヒルデ 」
「あ、ああ 」
驚いた様に返事を返す。
「さてと、急ぎ修理を終わらせるとしよう。
オルコット代表候補生もいつ目を覚ますか分からないしな 」
私は、地図を開きISの修理が可能な、整備室に向かった。
重い話は苦手です。
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