蒼き雫に救われし者   作:マスターBT

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番外編は番外編と繋がってます。


番外編 バレンタイン

主人公SIDE

 

「なぁ、ファウスト 」

 

「なんだ?」

 

自室で本を読んでいると同じく、部屋にいる織斑に話しかけられる。

 

「大丈夫か?」

 

「ああ 」

 

『ちょっとセシリア‼︎ それは塩だって‼︎ 』

 

『へっ⁉︎ 違うんですの?』

 

『ああ‼︎今度は焼き過ぎだって。物凄い変な形になってるってば!』

 

『む、難しいですわ…… 』

 

聞こえてくる言葉通り、キッチンから焦げ臭い匂いがする。

………大丈夫だよな?チビも一緒だし。

 

「………ファウスト 」

 

「何も言うなよ織斑 」

 

明日がバレンタインらしく気合を入れるのは良いが、どう見ても空回りしてるよな。

頼むから、去年の様なチョコだけはやめてくれよ。

 

 

〜去年〜

 

「ファウスト、チョコをどうぞ 」

 

「有り難く頂きます。お嬢様 」

 

この時は、セシリアが料理下手だと全く知らなかった時だった。

日本の風習を面白いと言い、チョコを作ったというセシリアを無下には出来ず、貰ったのだが後で後悔した。

 

「食べてみて下さいな 」

 

「では、頂きます 」

 

歪な形ではあったが、気にせずに一口食べた。

チョコにしては、硬いのを気にせずに砕く。

全く甘くなく、かといって苦い訳ではなく、辛い。

喉が焼ける様な痛みを表情に出さない様に無表情を貫こうとするが、咀嚼すればするほど辛さが増していく。

 

「どうですか?」

 

「………お嬢様。他の人にこのチョコを渡しましたか?」

 

もし、俺以外の人に此れが渡っていたら、最悪死人が出るぞ。

 

「い、いえ。日本では、大切な人にだけあげるそうですから、ファウスト以外には渡していませんよ 」

 

俺以外には渡していない様だな。

そうと分かれば早く離脱しよう。このままでは、セシリアの前で意識を失ってしまう。

 

「それでは、私は仕事があるので失礼します 」

 

「あ、はい。仕事頑張って下さいね 」

 

失礼だが返事を返さずに、セシリアの視界から消える。

…………ここまで来れば大丈夫だな。

俺は意識を手放した。

 

〜終了〜

 

あんな事に成るのは御免だな。

結局あの後、チェルシーに発見されてセシリアの自室に放り込まれたんだよな。

目が覚めたら、セシリアが目の前に居るのだから驚いたな。

まぁ、涙目のセシリアを慰める方が大変だったがな。

 

「ファウスト。心配なのは、分かるけど少し落ち着いたらどうだ?」

 

「うん?俺そんなに動いてたか?」

 

「指が忙しなく動いてるぞ 」

 

織斑に指摘されて気付く。

本を置いて机の上を指で、突いていた様だ。

完全に無意識だったな。

 

「すまんな。気が散ったか?」

 

「いや、別に構わないぞ。

俺も千冬姉の時そうだったから 」

 

ヒヤヒヤするよなぁーと苦笑いしている織斑。

此奴もどうやら似たような体験をした事がある様だ。

 

「そうか。それより織斑、明日どうする気だ?」

 

明日は、バレンタインだ。

確実に此奴はチョコを貰うだろう。その辺りをどうする気なのだろうか?

 

「俺か?正直に言えば、鈴のチョコだけでいいんだよな。

他の女子からは一応断りを入れるつもりだ 」

 

「なるほど。さて、こんな会話をしている内に終わった様だぞ 」

 

俺が会話を終わらせると同時に、セシリア達が戻ってくる。

 

「上手くできたか?」

 

「それは明日のお楽しみよ 」

 

織斑の問いかけに笑いながらチビが答える。

 

「取り敢えず、あんた達は、明日覚悟しておきなさいよ。

IS学園は女の園、其処に男子が二人もいる。これだけ言えば、分かるでしょ?」

 

「面倒くさい…… 」

 

「俺は、鈴のチョコだけで良い 」

 

「ああ。俺も、セシリアのチョコだけで良い 」

 

はぁ、と織斑と同時にため息を吐く。

どうやって逃げ切るかを頭の中で考える。

 

「チョコは逃げませんから、他の方々のを貰っても問題ありませんわよ?…………ずるいですわ 」

 

「そうよ。セシリアの言う通りよ。……………顔が熱い 」

 

二人に注意される。

何か最後に言っていたような?

 

「じゃあ、俺たちはこれで失礼するぜ。

行こうぜ鈴 」

 

「え、うん。

また明日ね。セシリア 」

 

織斑とチビが部屋を出て行く。

 

「私達も、休みましょう 」

 

「ああ。そうするか 」

 

明日は、面倒な事に成らなければ良いけど。

そんな願った通りにはいかないだろうと思いつつも願わずにはいられなかった。

 

 

翌日 IS学園

 

「「「織斑君ーチョコを受け取ってー!!」」」

 

「「「ドラクレア様ーチョコを納めくださいー!!」」」

 

「チッ、此処もか逃げるぞ織斑!」

 

「ああ。分かってる!」

 

当たって欲しくない予想は、よく当たるなぁ本当に。

俺たちは、朝から女子達から逃げていた。

食堂に顔を出した時は、妙に大人しかったのだが、セシリア達と離れたら一気にこの状況になった。

 

「織斑が、チョコを受け取るからこうなるんだぞ 」

 

「お前だって、断って女子を喜ばしてたじゃないか 」

 

「アレは、そう云うダメな奴だ 」

 

変態の相手までしてられない。

何が悲しくて、あんな奴の相手をしなくてはならない。

 

「貴様ら、教室にとっとと戻れ!!!!」

 

織斑千冬が怒声をあげて、女子達の動きが止まる。

 

「全く、少しぐらい大人しくしてろ 」

 

頭を押さえながら、俺たちの首根っこを掴む。

ん?なんで俺たち?

 

「教室に居ろ 」

 

そのまま、引きづられ教室に投げ飛ばされる。

 

「痛っ!何しやがる 」

 

「教室を出るから煩いことになる。

そのままずっと、教室に居ろ 」

 

はぁ〜、と溜息を吐きながら織斑千冬が言う。

そのまま、教室の後ろの椅子に座る。

 

「それに、今日の授業は全て座学だ。

私がここに座っていれば、馬鹿みたいに騒ぐ奴はいないだろう?」

 

ニヤリと悪い笑みを浮かべながら此方を見る。

教育者のしていい顔じゃないぞ。

 

「織斑先生がずっといるんじゃ無理じゃない?」

 

「下手すれば殺されてしまうかも 」

 

効果はあった様で女子達が次々と逃げていく。

中には特攻しようという猛者もいたが、女子達の牽制と織斑千冬の眼光により逃げ出していった。

 

「………一夏 」

 

「ん?何千冬姉 」

 

「ほら 」

 

織斑千冬が何かを、織斑に投げる。

 

「チロルチョコ?」

 

どうやら、姉から弟へのバレンタインの贈り物だった様だ。

手作りでは無いのは、織斑千冬の手の絆創膏を見て察してあげよう。

 

「……バレンタインだからな 」

 

「ありがとう、千冬姉 」

 

顔が赤いと冷やせば、命が危ないので胸の内に閉まっておく。

 

「早く席に戻れ。授業を始めるぞ 」

 

照れ隠しの様に妙に俺たちを急かす織斑千冬だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は、これで終わりだ。

余計な寄り道や、騒ぎなどは起こすなよ 」

 

今日の授業が全て終わり、織斑千冬が出て行く。

織斑千冬がずっと教室にいたのと、昼食を弁当で済ましたので食堂で渡すというチャンスも潰れた。

 

「じゃあな、ファウスト 」

 

「ああ 」

 

織斑が教室を出て行く。

二組に寄って、チビと一緒に帰るのだろう。

ふー、今日1日は無駄に疲れた。

 

「帰りましょう?ファウスト 」

 

「分かりました。お嬢様 」

 

セシリアと教室を出る。

 

「くっ、オルコットさんと一緒に動かれたら、渡せない‼︎…… 」

 

「うう、最大のチャンスの一日を〜 」

 

後ろから悲嘆の声が聞こえるが、知った事では無いので無視する事にした。

 

 

 

 

「あ、ドラクレア君見っけ 」

 

「あ?更識か。俺に何か様か?」

 

部屋へと戻る途中に水色髪の奴を見つけたと思ったらやっぱり此奴だったか。

 

「はいこれ。バレンタインという事でいつものお礼も兼ねてね 」

 

渡されたのはチョコの様だが、此奴が素直にお礼の品を渡すか?

 

「楯無さんが、ファウストにお礼?頭でもぶつけたのですか?」

 

……セシリア。疑問なのは分かったが、その聞き方は失礼だぞ。

とは思ったものの俺も気にはなる。

 

「若しかして、チョコと見せかけて激辛なんてオチじゃないだろうな?」

 

「…………………そんな訳無いじゃない 」

 

「その間は何だ‼︎ 」

 

更識から渡されたチョコの外装を剥がし、一欠片更識の口に突っ込む。

 

「辛い!!!!水ー !!!! 」

 

凄まじい勢いで逃げていった。

 

「くだらない悪戯を良く考える奴だな 」

 

「それが楯無さんですから 」

 

何となく微妙な空気になりながら、部屋と戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、疲れた 」

 

「お疲れ様ですわ 」

 

部屋へと戻るなり、ベットに突っ伏す俺。

キッチンの方へ行き、何かをしているセシリア。気にはなるが疲れていてだるい。

 

「ファウスト。こっちを見てください 」

 

「ん?どうしーーー 」

 

どうしたと言いかけて、言葉が詰まる。

声をかけられて、その方向を見たら、

 

「に、似合いますか?」

 

顔を真っ赤にしながら、犬耳のカチューシャを付けたメイド服の様な物を着ているセシリアがいた。

………………………滅茶苦茶可愛い。

心配なのか少し、目に涙を浮かべながら上目遣いで此方を見ている。

犬耳は、機械なのかちょくちょくピコピコと動いている。

 

「………可愛い 」

 

「はぅ、か、可愛いですか。良かったですわ 」

 

「あ、ああ 」

 

「「…………… 」」

 

互いに顔を赤くしながら、沈黙が続く。

何だこの空気は‼︎ 思うように喋れないぞ。

 

「ふ、ファウスト 」

 

「な、何だ?」

 

「これをどうぞ 」

 

そう言って渡されたのは、赤い箱に入ったチョコだ。

 

「鈴さんに教えて貰いながら、作ったのですが少々変な形なってしまいましたわ… 」

 

箱を開けると、少し歪だがハートの形のチョコが入っていた。

 

「チョコにメッセージを書いてみましたわ 」

 

そう言われて、チョコを見ると白い文字で『貴方の事が大好きです。これからもずっと宜しくお願いします 』と書いてあった。

思わず、微笑んでしまう。

 

「俺は、此処まで愛されていたんだな 」

 

「食べてみて下さいな 」

 

「ああ。勿体無いが食べさして貰う 」

 

一口齧る。少し硬いが、チョコのしっかりとした甘さが美味しい。

二口、三口と止まる事なく俺は、チョコを平らげた。

 

「……ご馳走様。美味かった 」

 

「ふー、それは良かったですわ 」

 

安心した笑みを浮かべるセシリア。

 

「じゃあ、俺からはイギリス式のバレンタインだ 」

 

「へ?んぐっ‼︎ 」

 

セシリアとキスをする。

 

「ぷはっ、いきなりですわね 」

 

「どうだ?甘かったか?」

 

「ええ。甘かったですけど、それって私のチョコの 」

 

気付いたか。

 

「ああ。あいにく、チョコを作る暇が無かったからな。これで許してくれ 」

 

「何かが足りませんわよ?」

 

イギリスでは男から女へと愛を伝える日だ。

疑似的だが、チョコは渡した。

あとは、

 

「セシリア。俺の最愛の人で居てくれ 」

 

愛を伝えるだけ。

 

「ええ。勿論ですわ‼︎ 」

 

セシリアが抱きついてくる。

ベットに座り込んでいて、支えきれずベットに二人で横になる。

 

「ふふ。貴方のチョコをもう少し私に下さいな?」

 

俺の首に手を回すように引っ掛けるセシリア。

互いの顔はすぐそこだ。

 

「了解した。お姫様 」

 

互いの距離はゼロとなった。

 




…………チョコ欲しいなぁ。
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