主人公SIDE
右側から振られる剣をハルパーで、受け流しそのまま柄の部分で突きを放つが掴まれる。
一度粒子化し、距離を取りアサルトライフルを撃つ。
奴は、真紅の剣を盾代わりに構えて銃撃の中を掻い潜って来る。
近づいて来る奴に合わせてハルパーを上から振り下ろせる様に展開するふりをする。
気付かずに、防御体勢に入った奴のガラ空きの腹に蹴りを入れる。
「ぐっ!」
「織斑の真似事だが、騙されるだろうコレ?」
癪ではあるが、あの時の織斑の攻撃は完全に不意を突いていた。
それは、認めてやるさ。なんだか気に食わないがな。
「やっと一撃入ったな 」
挑発する様に、ニヤリと笑いながら言う。
「クハハハハ、割と効いたなぁ。
やっぱりお前は、俺たちと同じ闇側の人間だろう?」
闇側か、間違ってはいないな。
少なからず、この手は命を奪っている。
「……まぁ確かに命を奪った経験はある。
だからと言って好きで殺しているわけでは無い 」
あいつを護る為にした事だ。後悔などはしてい無いがな。
「クハハ、好きで殺したわけでは無い?
お前は、やっぱり同類だよ 」
「なに?」
「真っ当な人間が、人一人を殺しておいて、何の後悔も無くまた、人を殺せるわけ無いだろう。
そんな芸当が出来るのは、壊れた人間位だ 」
「クククッ、壊れた人間か。間違っては無い言葉だ 」
元々、全部の事柄に興味が無かったし、セシリアと会ってからはセシリア以外の人間がどうなろうが知った事では無かったしな。
ここ最近は、マシになってきたと思っていたが根本的な部分は変わらないな。
結局の所、俺はこういう生き方しかでき無いという訳か。
「まぁ、だから如何した?」
「あ?」
「壊れているから悪なのか?、まともなら正義か?
違うだろ。自分が如何だろうが自分次第だ。
他人の評価に左右されながら生きる気は無い。俺は、自分が大切だと感じた事に従って生きる 」
「クハハ、なんだそりゃあ。
自分の都合の良いように解釈しただけじゃねぇか 」
「それの何処が可笑しい?
人の解釈なんて人の数ほどある。お前にはお前の俺には俺の解釈がある様にな。
まぁ、だからこそ人が本当に理解し合える事は無いんだろうがな。
だから、俺がお前達と同じになる事は永遠に無い 」
セシリアと共に生きると決めた。
死ぬ気も無いし、セシリアから離れる気もない。
………俺なんかヤバイほどセシリアに依存してるな……
思わず笑ってしまう。
「フッ、ファウスト・ドラクレア。
貴様を捕まえろと云う命令だったが全力で貴様を潰したくなった 」
「最初からその気では無いのか?」
今までの狂気が、嘘の様に冷静に話しかけてくる姿に驚いていた。
「それは、俺の言ったことだろう。
私は、命令通りに動く気だった 」
「………お前は、二重人格者か?」
此奴の言った通りなら、今まで俺と戦っていたのは俺と言っていた奴で、今俺の目の前に居るのは私と言う奴か。
……どうも俺と関わる事になる人間は、変な奴しかいないのか…
「気付くのが早いな。
フッ、俺が気にいるのも理解できるな 」
ガキィィィン!!
「……奇襲にしては、詰めが甘いな 」
「なに唯のテストをしただけさ 」
急加速し、切りかかってきたのをハルパーで受け止めながら話しかける。
明らかに速度が今までとは段違いだ。
「タチが悪いな。二重人格で強さが変わるなんてな 」
「貴様には、言われたくないな。会話で時間稼ぎをしていたのだから 」
「気付いてたのか。冷静で強さもあって頭も回るか、面倒くさいな 」
シャルロットが言っていた追加武装は、いつ届くんだ?
俺が考えていた通りなら、戦闘中であろうが装備が可能なんだがな。
「考え事か?随分と余裕だな 」
顔面に拳がくる。
ギリギリで避けるが、力が緩んだ為にハルパーごと剣によって吹き飛ばされる。
空中で体制を整えるが、即座に距離を詰められ横薙ぎに振られた攻撃に反応出来ず、地面へ叩きつけられる。
「チッ、想像以上に面倒な相手だな 」
性格が変わるとISの性能まで上がるのか?
はぁ、何処かの天災が喜びそうな案件だなコレ。
首に手を当てながら起き上がる。
ご丁寧に俺が立ち上がるまで待っていたのか、空中で腕を組みながら此方を見ている。
「やっと起き上がったか 」
「わざわざ待っていたのかお前?」
「あれを見てみろ。中々面白い事が起きているぞ 」
奴が指差した方向を見ると、炎の塊が此方に向かってくる。
瞬きを数回し、取り敢えずぶつからない様に距離を取る。
「スコールか。思っていたより、苦戦しているらしいな 」
スコール……あの時の金色ISか。
炎の塊が先程まで俺が居た場所に落ちる。
その瞬間二機のISが炎の中から飛び出してきた。
「シャルロット?」
飛び出してきた一機はどう見てもシャルロットのラファールリヴァイヴだった。
「あ、ファウスト。
という事は、結構遠い距離を飛んできたんだね 」
「冷静だな。そこのISと戦ってたのか? 」
そう言いながら金色のISを指差す。
なにやら向こうは向こうで話をしている様だ。
「そうだよ。
いやー、何とか近接戦に持ち込んでパイルバンカーを撃ち込みまくったまでは良かったんだけど、どんどん縺れてね。
気が付いたら炎に包まれてて此処まで飛んで来ちゃった 」
「……シールドエネルギーは?」
「あと僅か。でも、此処に簡易エネルギーパックがあるからコレで回復できるよ 」
言うだけ言って簡易エネルギーパックで回復を始めるシャルロット。
説明は、受けたがどう戦ったら火の玉になるんだ?
……考えても無駄だな。此奴の無茶は今に始まった事では無いし。
「さてと、コレで二対二だが状況を見るにそちらの方が不利な様だが?」
シャルロットは、回復するし俺はまだ余裕がある。
向こうは、二重人格は俺と同じで余裕があるだろうが、金色ISの方は消耗しているだろうからこちらが有利だろう。
「……確かに此方が不利な様だな。スコール、貴女が其処まで消耗するとはね 」
「小娘だと侮っていたら案外やる子でね。
それに、途中で紅いISの妨害にもあったしね。色々と予想外だったのよ 」
紅いIS、篠ノ之か?
あいつが、この戦いに介入するとはな。織斑達の方へ行くと思ったが。
「篠ノ之さんがね、途中で助けてくれたんだ。
と言っても、遠距離から刃を飛ばしたあと、すぐ飛んで行ったけど 」
「ファウスト・ドラクレア。
貴方の大切なお姫様を放っておいて良いのかしら?
今頃、学園内部に潜入した部隊が確保に向かってるわよ 」
金色ISの操縦者が此方に笑いながら話しかける。
大方、セシリアの名前を出せば、俺がなりふり構わずそっちに向かうと思ったのだろう。
「悪いが、俺がセシリアに次いで信頼している人間に任せたから、問題ない 」
「随分と余裕ね 」
女が其処まで言うと通信が入ったようだ。
『スコール様…… 』
「如何したの?」
『全…部隊……壊滅しました……作戦は……失敗です…ぐぁっ!! 』
随分と暴れた様だなチェルシー。
『この人達のリーダーですか? 』
「……ええそうよ 」
『では、一つ申しておきたい事がございます。
私からお嬢様を拉致したければ、最低でも二百人は用意してください。
勿論、全員が特殊部隊で隊長をやる事が出来るレベルで 』
流石は、元イギリス軍特殊部隊で異例の戦績を叩き出しただけの事はあるな。
普段の丁寧な口調と態度では、全く強さを感じないけど一度スイッチが入ると、滅茶苦茶強いからな。
一度、なんでイギリスの特殊部隊からメイドに成ったのかと聞いたら、『逆です。お嬢様をお守りする為にイギリスの特殊部隊に入ったのです』って言ってたからな。
「……撤退するわよ 」
「させると思う?」
金色ISの後ろに更識が現れる。勿論、ISは展開済みだ。
色々と予想外な事が起きたおかげで、俺は大して疲れもせずに事が済みそうだ。
まぁ、そう思って楽に終わった事は無いのだが。
「いいえ。逃げさして貰うわ 」
何かのスイッチが押される。
その瞬間に学園の至る所で爆音が響いた。
爆弾か…いつの間に学園中に設置していたんだ?
「さぁ、貴女の大切な生徒達が危ないわよ?」
「くっ、卑怯な 」
更識が急いで爆音が聞こえた場所へ飛んでいく。
何もして無いな彼奴。
「俺たちが逃すと思うか?」
「私が殿を務める。スコール、貴女は逃げろ 」
二重人格が金色ISの前に立ち、武器を構える。
「任せたわ 」
…本来なら追い掛けるのが良いのだろうが、今此奴から僅かでも意識を逸らせば、一瞬でシールドエネルギーを奪われる自信がある。
「………シャルロット、援護を頼む 」
「え、うん 」
ハルパーを構え直す。
ふー、と息を吐く。気を抜けば、やられるのは自分だ。
「スコールを追わないのか?」
「そんな目に映るもの全部破壊するような殺気を出している人間から、意識を逸らすほど馬鹿では無いからな 」
「ふっ、そうか。やはり貴様は、私が全力で戦うに相応しい奴だ 」
その言葉を最後に沈黙が場を支配する。
互いに相手の出方を伺う。
睨みあうこと、1分程経ち奴が仕掛ける。
今まで、使ってこなかったハンドガンを展開し撃ってくる。
シールドビットで防ぎ、瞬間加速で距離を詰めてハルパーを振り下ろす。
しかし、その一撃は深紅の剣に防がれたため、距離を取りアサルトライフルを撃つ。
足下を狙ったが上空に移動され、回避される。
俺も、奴の後を追い上空に向かう。
ハンドガンを撃たれるが、互いに高機動で飛行し続けているので、当たらない。
奴が反転し、横薙ぎに振るわれたのを落下に近い急下降で避け、体勢を崩したところをアサルトライフルで狙う。
「ああ!!」
「冗談だろ… 」
体勢は整っていないはずなのに、俺を追尾する様に、向かってくる。
急いで、アサルトライフルを粒子化しハルパーを展開し、振るわれる剣と競り合う。
急下降しながら、互いに斬り合う。
右から振られたものを、ハルパーの肢で防ぎ、下から斜めに振り上げるがもう一本展開された黒い刀で防がれる。
武器を同時に、粒子化し拳をぶつけ合う。
真正面の攻撃を、横に流し腹部に右ストレートを打つが、相手の手のひらで受け止められる。
相手が、膝蹴りを打ってきたのに合わせて、同じく膝蹴りで対応する。
そんな事をしていたら、アリーナの地面が近づく。互いに相手を蹴り飛ばし、地面との直撃を避ける。
「チッ、殆どダメージを与えていない 」
「それは、此方も同じだ 」
立ち上がり、再び睨みあう。
「其処までだ!!大人しく投降しろ!」
「……ブリュンヒルデか 」
アリーナを取り囲む様に、教師達がISを展開し武器を向けている。
「大人しく捕まって貰うぞ。襲撃者 」
織斑千冬が、教師達の真ん中から声を出す。
「……悪いが大人しく捕まってやる程、行儀が良くないのでな。
ファウスト・ドラクレア、貴様とはいずれ決着をつける 」
「この状況から逃げる自信があるのか?」
俺は、アサルトライフルを向ける。
「見せてやろう。このISのもう一つの能力をな。
《リミット・ブレイク》発動 」
ブースターにエネルギーが集中していく。
『教師達逃げた方が良いと思うよ?』
「ブルーサーヴァント、どういう意味だ?」
『馬鹿げたエネルギーが、ブースターに集中してる。
多分、あのエネルギーを一度に放出した場合、光速に近づく 』
「……シャルロット、衝撃に備えろ 」
「え 」
ハルパーを地面に突き立てる。
この距離で光速に近い速度で動かれたら、衝撃波で吹き飛ぶどころの話じゃない。
「失せろ 」
ドン!!凄まじい音を立てて、俺の視界から消えた。
それと、同時に周りの教師達が吹き飛ばされる。
物凄い風圧を耐えながら、レーダーを確認するが既に、レーダーの索敵範囲から離脱していた様だ。
「織斑千冬!」
「すぐには、追えないぞ!此方もかなりの被害が出ている。
ISは無事だが、操縦者が全員気絶している 」
絶対防御と云っても衝撃を全て吸収出来る訳ではない。
光速に近い物体の衝撃を吸収し切れずに、気絶したか。
だが、跡形も無く消しとばされなかったのを見る限り、直接的な接触はしなかったか。
「ブルー『無理!』…何も言ってないぞ 」
索敵を広げてくれと言うつもりだったが、拒否するということは無理だという事だな。
「学園の方は?」
「火は消した。だが、すぐに復旧は無理だ。
更識の妹と所長と言ったかその二人が、全力でシステムの復旧に動いている 」
ISを待機状態に戻す。
「取り敢えず、戦闘は終わった。
面倒な事は後回しにして、休ませてくれ 」
セシリアの所へ行きたいしな。
「其処で、のびてるデュノアを回収して戻って来い 」
そう言われ、隣を見たらシャルロットが気絶していた。
……何してんだ此奴は……
箒さんどうしよう。