主人公SIDE
Fとの決着はついた。
振り返る事はしない。それは、奴が望まない事だろうから。
ブルーサーヴァントの武装を確認。
シールドビッド、残数二機。
アサルトライフル、残弾ゼロ。
ハルパー、刀身に損傷ありまともに武器とぶつかり合えば折れる可能性大。
……徒手空拳で戦えと?
「取り敢えず、更識達と合流しないと 」
歩き出そうとしてよろける。
ダメージがかなり残っている様だ。
足に力が入らず、膝をついてしまう。
「大丈夫か!ファウスト!」
「下がれ一夏!!」
俺のいる位置はスコールの射程範囲だ!
警告はするが、遅かった。
「避けて!一夏君 」
「避けろ!織斑一夏 」
更識とマドカが叫ぶ。
しかし、一夏は反応しきれない。
瞬間加速をしようと力を込めるが、
「ぐっ!… 」
激痛が走り、思うように体が動かない。
不味い…此の儘では炎が一夏に当たってしまう。
一発如き、大した事ではないと思うかもしれない。
しかし、もし伏兵がいたら?あの炎が実は一夏を捕らえる為ならば?
相手がスコールである分、可能性はある。
「一夏!」
炎が当たる直前、深紅のISが白式の前に立ち塞がり、炎を防ぐ。
「篠ノ之?」
「ドラクレア、お前が居ながらなんだこの体たらくは 」
「お前は俺をなんだと思っていやがる?」
「面倒くさい捻くれ執事 」
此奴、俺に遠慮なさ過ぎじゃないか?
いくら、ラウラやシャルロット……あ、こうなるわな。
と云うか、俺は誰に対してもこう思われてるのか?
「更識!マドカ!損傷は?」
「「かなりきつい!!」」
二人同時にしかも、大声で答えるという事は相当不味いのだろう。
どうしたものかと思案し、視界に一夏を捕らえる。
一夏の目は真っ直ぐ俺を見つめている。
はぁ、賭けになるがコレが最良か。
「一夏 」
「ッッッ!なんだ?」
「行くぞ 」
それだけ言い、一夏に背を向ける。
まだ、体は痛むがそんな事を言っていられる状況じゃない。
「交代だ。更識、マドカ 」
スコールが振り下ろした尻尾を受け止め、更識とマドカに指示を出す。
「そんなボロボロな体で戦えるのかしら?」
「俺一人でならキツイな 」
更識とマドカが下がる。
全てを言わなくても伝わるから此奴らは楽で良い。
尻尾を掴む腕に力を込める。
「やれ。一夏 」
「ダリャァァ!」
「ッッッ!織斑一夏!」
尻尾を一夏が、零落白夜で斬り落とす。
そのまま、突撃しそうな一夏の首根っこを掴み下がる。
「ぐえっ 」
「間抜け。猪にしても限度はあるだろう 」
一夏と肩を並べる。
「まさか、お前と共闘することになるはな 」
「そのまま返してやるよ。俺を信じるとは思っていなかった 」
此奴の第一印象は、覚悟の無い甘ったれた奴と云う認識だった。
福音の時までその印象は変わらなかった。
だが、福音との戦いの後俺の所を訪れた此奴は変わっていた。
自分の弱さを理解した上で、己を変えようとした。
弱さを知った上で自分を変えようとするのはとても難しい。
それを此奴は簡単に乗り越えて俺に一撃入れるまで成長した。
「フッ、今のお前は好感を持てる。
そうでなくては、この重要な場面で頼らないさ 」
「じゃあ、期待に応えないとな!」
真っ直ぐな目だな。
俺には到底できない目だ。
目的の為なら、他者を切り捨てる事を厭わない俺ではな。
だが、だからこそ一夏と戦える。
「精々、俺を失望させるなよ?」
「ああ!」
俺は拳を、一夏は雪片弐型を構える。
「やってくれるわね 」
冷ややかに、しかし闘士の熱は熱いスコール。
尻尾が破壊されたのが、余程頭にきたのだろう。
「零落白夜はここぞという時まで温存しておけ 」
「分かった 」
「なら特に言うことはない。やるぞ 」
スコールが飛ばしてくる炎を一夏と逆方向に動き、避ける。
そのまま、加速しスコールと距離を詰める。
一夏と同時に、左右から仕掛けるが肩に装備されている鞭で回避を余儀なくされる。
「チッ、思っていたより機体のダメージが大きいな 」
加速が鈍い。
『ブースターは全開の三割程しか出せないね 』
ブルーサーヴァントの報告を聞き、戦術を組み立て直す。
強襲をコンセプトに造ったブルーサーヴァントの要とも呼べるブースターが不調。
高機動戦闘を行い、隙を見て攻撃と云う戦い方は出来ない。
ましてや、武装は大半が使用不可、一夏は戦闘慣れをしていない。
「思っていたより厳しい戦いだな 」
まぁ、こんな損傷で戦おうとするのが無理があったか。
「もう一度行こう!ファウスト 」
「結果は同じよ 」
一夏が突撃していく。
「待て!罠だ 」
忠告を送るが、遅く一夏は鞭に捕獲される。
あのバカ!何も考えず突撃しやがって。
体に走る痛みを無視し、瞬間加速で一夏めがけて突撃する。
「掛かったわね 」
視界に映る厭らしい笑みを浮かべるスコール。
下策を悟った時には遅く、俺は鞭によって吹き飛ばされた。
「ガハッ!」
肺から一気に空気が出る。
視界が揺らぐ。
ダメージが蓄積しすぎた……
「ゼロ、貴方は織斑一夏を助けるべきでは無かったわね 」
スコールが一夏を捕まえたまま、俺に近づいてくる。
厭らしい笑みを浮かべながら。
「あ?」
「貴方は所詮、飼い慣らされた犬に過ぎない。
飼い主の危機には目敏く反応するが、それ以外には鈍る。
貴方はそんな人間でしかないわ 」
未だに立ち上がれない俺をいたぶる様に蹴るスコール。
趣味が悪い。
いや、此奴の場合は性格が捻じ曲がっていると言う方が正解だろう。
身動きの取れない俺を攻撃し、その原因となってしまった一夏の心を折りにかかる。
ついでに、今まで溜まっているストレスを解消しようと云う魂胆か。
「……性格……悪いな……グフッ… 」
身体中ガタがきている。
『何もしないつもり?』
このボロボロな体でどうする?
『動かない限り、状況は変わらない 』
知ってる。
だが、体が言う事を聞かない。
『君のお姫様はどうなる?』
セシリア。
俺が此処で死ねば、セシリアも死ぬだろうな。
『どうする?』
それは、認めない。
俺が死のうともセシリアには生きて貰いたい。
『後少し、耐えて。
君の望んだ力が届く 』
分かった。
お前が言うなら信じるさ。ブルーサーヴァント。
スコールの足を掴む。
「あら?まだ、立つのかしら?」
「珍しく、心配されたからな 」
再び体の痛みを無視する。
立ち上がり、スコールと視線を介す。
拳を振り絞り、スコールに振るう。
「遅いわね 」
力が入らない拳ではマトモに当たらない。
代わりに、スコールの蹴りが腹にぶち当たる。
再び、地に転がる。
起き上がろうとするが、その瞬間に炎で吹き飛ばされる。
ああっくそっ!体が言う事を聞かない!
「そのまま、地を這っていたら?」
ハルパーを展開。
一撃が限界の武器だが、今は頼らせて貰う。
シールドビットを足元へ移動させる。
バリア部分を地面に向け展開。
「黙れ。性悪女 」
シールドビットに足を乗せる。
ハルパーを構える。
「何をする気かしら?そんな、ボロボロな武器で 」
「窮鼠猫を噛むって諺知っているか?」
バリア機能を限界以上の出力でエネルギーを送り込む。
足に力を込める。
瞬間、爆発するシールドビット。
「特攻⁉︎ 」
爆発で得られた加速は瞬間加速以上の加速。
ハルパーで切り裂いたのは一夏を捉える鞭。
ハルパーが砕け散る音が聞こえる。
砕けた刃の破片を掴み、鞭を射出する武装に突き刺した。
「距離を取れ!一夏!! 」
一夏を蹴り飛ばす。
そのまま、地面に叩きつけられる。
装甲が三割ほど砕け散る。
「やってくれたわね 」
スコールが近づいてくる。
手が震える。
足が震える。
全身の力が入らない。
目の前で止まるスコール。
「悪い癖だわ。自分の勝利を確信すると慢心するのは 」
「だろうよ……貴様は…慢心の塊だ… 」
駄目だ。
これ以上は策もなければ、武器も無い。
完全に万策尽きた。
「一思いに殺してあげる 」
破壊できなかった方の鞭が鋭くなっていく。
「本来の使用方法では無いけど、ゼロ貴方を殺す為に生み出した力よ 」
嬉しくないな。
「ヴァルキリー・システム 」
そんな声と共に、壁が吹き飛ぶ。
どんどんボロボロになるなこの学園。
穴が空いた所から、凄まじい加速でオレンジのISがスコールに衝突する。
「イタタ、これ本当に使う気?」
「シャルロット!ソレは 」
「お待たせ!グリモアを届けに来たよ 」
ブルーサーヴァントに武装データが送り込まれる。
同時に、シャルロットのラファール・リヴァイヴが見慣れた姿に戻る。
「蒼色に自動に戻る様にしといたから 」
武装入力コマンドを開く。
コンソールを開き、グリモアとブルーサーヴァントを同期させる。
「君が地に伏せているのは似合わないからね。
早くたちあがってよ 」
「時間は稼ぐ。お前は私が倒す。
だから、こんな奴に負けるなよ 」
シャルロットとラウラが武器を構える。
「来なさい 」
無人機が何処からとも無く現れる。
「何機か盗んでおいて正解だったわね 」
あの駄ウサギ。
何盗まれてんだ!
「私も協力するわ!」
「細かい説明は後だ 」
更識とマドカが応急処置を終えて、二人に合流する。
二人は、マドカがいる事に驚いたがすぐに持ち直した。
「さぁ、足掻きなさい 」
スコールと無人機対更識、マドカ、シャルロット、ラウラの戦いが始まった。
(後、10分持ちこたえてくれ)
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