主人公SIDE
「それでは、これより織斑千冬対ファウスト・ドラクレアの対決を始めます 」
俺は剣道場で、織斑千冬と向かい合っている。
奴は、刀を手に持ち俺は何も持っていない。
俺は大体の武器を扱えるので、これと言った武器を持たずに戦う事にした。
一応、ある程度の距離に色々な武器が置いてある。
使いたければそれを取れという事らしい。
「……… 」
刀を正面に構え、殺気立つ織斑千冬。
籠手を着けているとはいえ、無手だぞ?
そんな相手に此処までの殺意をぶつけてくるなよ。
「参ったと言った方の負けで良いんだな?」
「ああ 」
会話にすらならない。
この場には、俺と織斑千冬、審判役の更識以外はいない。
織斑千冬の希望により、完全に見学者を無くした。
「両者準備は宜しいですね?」
「「ああ」」
同時に返事を返す。
「それでは、始め!」
更識が手を振り下ろす。
同時に駆ける。
刀の範囲に入る。
瞬間、顔を左にそらす。その場所に刀の突きが抜ける。
……殺しにかかってないか?
引き戻した刀が、振り下ろされる。
右手の籠手で力を流す。
そのまま、距離を詰めようとして後ろに下がる。
「ふむ、下がったか 」
背筋に氷でも当たったかの様な寒気が走った。
それに従って撤退したが成功だった。
何をするつもりだったかは分からないが、確実に流れを引き寄せる一撃だったのだろう。
「何を笑っている?」
笑ってる?俺がか?
もし、そうだとしたらーー
「面白いから 」
そう言い、俺は織斑千冬との距離を再び詰める。
驚きながら刀を振るう織斑千冬。
間合いに入る直前に、体勢を極端に低くする。
刀が頭の上を通過していく。
地面に手を突き、足払いをする。
織斑千冬が飛び退いて回避する。
俺は、手に力を込め勢いよく飛び上がり再び距離を詰めた。
織斑千冬が握る刀の鍔の部分を蹴り上げ刀を飛ばす。
「強引な!」
刀を飛ばされた織斑千冬は、俺の顎目掛けて蹴り上げてくる。
それを、半歩ズレることで避け、鳩尾に拳を当てる。
一瞬、怯んだが俺の首に手を通して押し倒す。
「ぐっ…… 」
首を動かし、呼吸をしようとする。
……無理だ。呼吸が出来ない。
「降参しろ… 」
勝ちを確信した顔をしていやがる。
ふざけんなよ。
俺は、手を使いブリッジの要領で体を持ち上げる。
空いた隙間に無理矢理、膝を入れ蹴り上げる。
一瞬だが拘束が弱まる。
手と首の間に、右手を突っ込み左手で顎を勝ち挙げる。
「がはっ…… 」
織斑千冬の上半身が起き上がった時に、拘束から完全に抜け出す。
直ぐに起き上がり、距離を取る。
「……今のは不味かった 」
呼吸を整える。
後、1分でもあのままなら確実に落ちていた。
「今のを避けるのか 」
「流石に不味かったがな。
体術では負ける気は無い 」
「なら、次はこれで行こう 」
足元に落ちていた刀を蹴り上げ掴む織斑千冬。
その後、俺に背を向け武器の中から、刀を取り出し俺の足元に投げる。
「剣術も出来るんだろう?」
「はぁ、我流だけどな 」
刀を拾い、腰の真横で刀の先端を下げる様に構える。
足を開き、腰を落とす。
「………ふぅ…… 」
一度深呼吸をして集中する。
相手は、紛いなりにも刀一本で世界最強になった奴だ。
決して気を抜くな。俺の土俵では無く相手の土俵として認識して戦え。
「「…………… 」」
互いに沈黙したまま時間が過ぎる。
隙が見当たらない。
自身が刀を持っていなければ、隙を作れるが俺も刀の間合を意識しなければならないから迂闊には動けない。
ピチャン!
蛇口から漏れた水滴の音だろう。
しかし、俺たちを動かすには十分過ぎた。
「「はぁ!!」」
上段と下段から振るわれた刀がぶつかる。
互いに弾き、俺は左から織斑千冬は右から刀を振るう。
当たる直前に顔を逸らし避ける。
奴も同じ様に避けた。
……頬を少し切ったか。
右足を使い、蹴りを繰り出す。
同じ様に動いた織斑千冬とぶつかり、再び距離が離れる。
何度目かは分からないが、距離を詰め斬り結ぶ。
「教師の顔じゃないな 」
「唯の執事がして良い顔じゃない 」
突き出された刀を、切り上げで弾く。
弾いた威力をそのままに振り下ろす。
刀で受け止められ、力が流され横に移動する。
鳩尾に飛んできた拳を掌で受け止め、刀の持ち手で米神に向けて振り下ろす。
「ふん!」
おいおい、態と避けなかったな。
米神に直撃しても尚、鬼神の如く目で此方を睨む織斑千冬。
「この人外が!」
振り下ろされた刀を受け止める。
なんつう力で振り下ろして来やがる。
全力で支え、耐える。
バキッ
嫌な音が刀から聞こえる。
音の発信源は俺の持つ刀から聞こえた。
………ほんの数度斬り結んだだけで、刀が限界を向けている?
「冗談キツイぞ…… 」
こうしている間にも悲鳴をあげ続ける刀。
如何する?
思考に気を割く。
だが、答えが出るまで刀は耐えてはくれなかった。
バキン!!
金属の破壊音が響く。
……気が付いた時に俺は、柔道の要領で振り下ろされる力を受け流し、織斑千冬を地面に叩きつけていた。
「………私の負けだ 」
織斑千冬が妙に清々しい表情で負けを宣言する。
「そこまで!勝者は、ファウスト・ドラクレア!!」
俺が勝ったようだ。
だけど、この釈然としない気持ちは何処にぶつければ良いか?
「なんだかな。
この運勝利は 」
「最後のは、全く読めなかった。
体が勝手に動いたという事か?」
「ああ。お陰で、なんか微妙な気持ちになってる 」
「ふっ、これでは完全に私の負けだな 」
なんで嬉しそうなんだ?
まぁ、良いか。
気持ちに整理は着いたのだろう。
「俺はこれで失礼するぞ 」
「セシリアちゃんなら、食堂でみんなといるわよ 」
ニヤニヤしている更識に腹が立ったので、剣道場を出た所にあった小石を額に向けて投げておいた。
……食堂か。ここからなら近いな。
俺は、少し早足で食堂に向かった。
千冬SIDE
「負けたな…… 」
最後の一撃は何が起きたのかが分からなかった。
ドラクレアも無意識の様だし、才能の差か。
「織斑先生。
これで、ドラクレア君は…… 」
「心配するな更識。
私もそんな愚かな人間ではない 」
身体が鈍ってるな。
ランニングなどはしていたが、実際の戦闘とは訳が違うな。
「あいつの目は変わらず、一人の人間しか見ていない。
そいつが居る限り、私達にとって害になることは無いだろう 」
「ではーー!」
「ああ。IS学園への滞在を認める。
だから、早く食堂に行ってこい 」
ウズウズしてるが伝わってくる。
全く、生徒会長としての職務を優先しすぎだ。
「少しは、学生として過ごしてこい 」
「失礼します!」
頭を下げ、勢い良く立ち去る更識。
素直になれ。
「オルコットはあんな狂犬をよく飼っているな 」
私では到底無理だと思いながら、刀を振った。
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