主人公SIDE
手に握る中華鍋を大きく振るう。
豆板醤に唐辛子の粉末を加え、全体に行き渡る様に混ぜる。
刺激的な匂いを感じる。
大皿に素早く盛り付け、完成だ。
「麻婆豆腐完成だ!」
食堂の受け渡し口に置く。
「ありがとね〜 」
それをチビが器用に跳ねながら持っていく。
………何故、俺がこんな事をしなければならないんだ。
「次は、和食でお願いねぇー 」
更識。
…腹が立つからこいつを食わしてやるか。
壺の中から、何と無くで作っていた漬物を取り出す。
それを丁寧に並べ、更識の元へ持っていく。
「ほらよ 」
「お刺身?鈴ちゃんのに比べれば随分と手抜きね 」
作ってやったのに。
まぁ、良い。この後の面白い光景を楽しみにしよう。
「食え。それとも、頼んだ飯も食えない奴か?」
「相変わらず、ムカつくわね。
食べればいいんでしょう!食べれば! 」
更識が刺身を食べる。
「〜〜!!!! 」
その瞬間口を押さえて転げ回る。
「クククッ、ハハハハハ 」
「にゃにをひれたにょよ?」
何言ってるかさっぱり分からない(笑)
此奴に食わせたのは、山葵に漬けた刺身。
結構手を加えたので食べるまで山葵だと気付かない。
「山葵刺身」
いやいや、かなり面白い結果だ。
「み、水ぅぅ〜 」
水道目掛けて、走り出す更識。
ふむ。更識相手にムカついたら、使える手段だな。
「ファウスト?」
背筋に悪寒が走る。
…………シマッタ。ヤリスギタ。
「ナンデショウカ?オジョウサマ 」
「ふふっ 」
可笑しい。
質問をした筈なのに、返事が笑い声だぞ?
「何をしているのですか?」
底冷えする様な声が返ってくる。
後ろを向きたくない。
「………刺身を食べさせました 」
「そう。私の聞き間違いで無ければ、山葵刺身と聞こえましたが?
それに、何故私の方を見ないのですか?やましい事が無ければ見れるはずですわ 」
ギギギとブリキの様に動き、セシリアの方を向く。
「目を合わせなさい 」
「はい 」
セシリアと目を合わせる。
…怖い。
「真面目にやりなさい 」
「イエスマイロード 」
踵を返し、キッチンに戻る。
「デザートくれる?」
「私もだ 」
シャルロットとラウラがデザートの注文をしてくる。
「何が良い?」
「「何でも 」」
それが一番、面倒なんだが。
ふむ。何が良いか?
調理台に並ぶ、食品を見る。
デザートの定番だが、パフェでも作るか。
「1分待っていろ 」
冷蔵庫から、イチゴとブルーベリーを取り出す。
ブルーベリーはミキサーにかけ、ソースに。
イチゴは適度は大きさに切り分ける。
器に、スコーンとバニラアイスを入れ、ブルーベリーソースを少しかける。
生クリームを入れ、アイスとイチゴを並べる。
最後にブルーベリーソースをかけて完成だ。
「ダブルベリーパフェだ 」
「ありがとう 」
「頂くぞ 」
二人ともパフェも持って近くの席に座る。
「ファウスト。お腹すいてない?」
注文がひと段落し、暇を持て合わせているとシャルロットが質問してくる。
「そう言われれば減ったな 」
作ってばっかで自分で食べてないな。
「じゃあ、僕とセシリアに任せて!」
そう言い、セシリアの元に走っていくシャルロット。
二人で作るのか?
セシリアの料理の腕は、上がっていたしシャルロットと一緒なら大丈夫だろう。
「じゃあ待っててね 」
「美味しいものを作ってみせますわ 」
妙に気合いの入ってるセシリア。
………なんだろう?嫌な予感がする。
キッチンを追い出され、チビ達がいる場所まで移動する。
「あれ?セシリアと一緒じゃないの?」
「今、料理をしている 」
大丈夫だろうか?
妙に気合いをいれた時は大抵失敗するんだがな。
「へぇ、セシリアちゃん料理出来たんだ 」
「現状、普通に食える程度のレベルだがな 」
更識が固まる。
恐らく察しがついたのだろう。
「オルコット代表候補生のアレは、食べ物では無く劇物だからな 」
背後から、怠そうな声が聞こえる。
「なんだ所長。まだ、此処にいたのか?」
「弟子にしても良いと思える人物に出逢えたのでな。
彼女に私の持ち得る全てを教えるまでは、此処を離れる気はない 」
栄養ドリンクを飲みながら、カロリーメイトを頬張る所長。
相変わらず、偏った食事だな。
「…先生。コレ食べてみてくれませんか?」
「これは……シフォンケーキか。
私の為に作ったのか?」
「は、はい!
先生に少しでも、恩返しがしたくて…… 」
顔を赤らめ、照れ臭そうに前髪を弄る更識妹。
……洗脳か何かか?
そんな事を考えたら、頭に痛みが走る。
「何すんだ?」
所長が俺を殴ったようだ。
「ふむ。何か失礼な事を思われた気がしたのでね 」
「それで人を殴るか?」
「他の人ならしないが、君なら話は別だ。
……さて、頂くよ簪君 」
シフォンケーキを食べ始める所長。
一度も手を止めないという事は結構気に入ったのだろう。
「美味しいですか?」
「ああ。美味しいよ、簪君 」
「良かった 」
嬉しそうに笑う更識妹。
そして、その光景を……
「………… 」
血の涙でも流しそうな表情の更識が見ている。
「はぁ、シスコン駄会長は変わらずか 」
「ぷっ……駄会長って… 」
俺の独り言を聞き取ったチビが笑いを堪えている。
ツボに入ったのだろう。プルプルと震えている。
「出来たよ〜 」
シャルロットが料理を運んでくる。
これは……
「牛肉の赤ワイン煮か?」
「良く見ただけで分かったね!
どうやら、学食で使うつもりだったらしくて残ってたから使ってみたんだ 」
なるほど。
だから、煮込み料理がこの短時間で届いたのか。
「頂くぞ 」
「どうぞ〜」
一口牛肉を食べる。
……美味いな。
と云うか、コレは……
「学食の残りってのは嘘だろ?」
この味は、直前までに調理をしていなければ出せない。
「よく分かったね 」
驚いた様な顔をするシャルロット。
気付くさ。これぐらいならな。
「前の俺なら、気づかなかっただろうが、この味は俺がお前に教えた味だ。
殆ど、料理をしていなかった俺がお前に作った初めての料理だ 」
フランスに行っている間に、覚えた料理のテクニックで作った味と同じだ。
あの時は、如何しても作ってくれとせがまれたんだったけか。
「……本当にズルイよ。そういう所 」
「ズルイって何がだ?」
ボソッとシャルロットがズルイって言ったな。
何だろうかズルイって?
「な、何でもないよ!
ほら、早く食べないとセシリアのが来ちゃうよ?」
???
まぁ、良いや。
残りを食べてしまおう。
なんだが、顔の赤いシャルロットを放置して、食べ終わった。
「ご馳走様 」
「お粗末様 」
そう言って皿を片付ける。
普段は、自分でやってるから慣れないな。
「出来ましたわ!」
今度は、セシリアが料理を運んできた。
……頼む。食えるものであってくれ!
「ミートパイを作ってみましたわ 」
見た目はいつも通り完全な品が届く。
臭いも別段おかしな所は無い。
「頂きます 」
ミートパイを一切れ食べる。
しっかりとしたパイの感触。
噛めば噛む程、広がる肉の旨味とハーブの香り。
「美味いな。料理の勉強をしてたのか? 」
俺が教えていたとはいえ、簡単なものが限界だったはず。
とても、こんな品を作れる程レベルアップはしていなかったぞ?
「スコールさん達の所に、いた時余りにも暇だったので、料理の勉強をしていましたの。
オータムさんでしたっけ?彼女、以外に料理が出来て教わっていましたわ 」
オータム⁉︎
また、予想外な奴が出てきたな。
あのガサツレズ女がしっかりとした料理が出来るとは……世界は広いな。
「もぐもぐ 」
「フフッ、美味しそうに食べますわね 」
「そうか?まぁ、実際に美味しいしな 」
随分と腕を上げた様だ。
チェルシーも食べたら驚くだろうな。
いや、あいつの場合は感動で打ち震えるかもしれないな。
不意に背中に暖かくなる。
「ファウスト 」
セシリアが背後から抱きついてきた様だ。
「無理はしないで下さいね?
今度は、私も一緒に戦います 」
ブルーティアーズの待機状態を見せてくる。
いつの間に渡していたんだ?所長。
「スコールの企みを潰して、一夏を救出する。
目標は変わったが、結果は変わらない 」
セシリアの手を握る。
暖かい。俺はこの暖かさに救われた。
「今度こそ、全員でIS学園に戻ろう。セシリア 」
「はい!」
もう一度、固く誓った。
面倒だが、一夏。お前を助けに行ってやる。
それが、俺の目的にも繋がる。
スコールSIDE
「フフフッ、これで夢が叶う。
ブレイン。貴方と私の夢が!」
画面に映し出された、白式を起点に幾重にも広がる線。
それを見て、思わず笑ってしまう。
「亡国機業の大半は、私の手中に収まった。
反乱勢力は潰しておきたかったけど、何故が支部のあった政府に保護された。
面倒な事をしてくれるわゼロ?」
でも、関係ないわ。
完全なる戦力差で潰してあげる。
「ゼロ。貴方は、私の創る新世界で私の下僕にしてあげる。
何もかも忘れ、私の為の駒にね 」
その前に貴方の大切な物を全て壊して絶望させる。
そうでなければ、愉しく無いわ。
「……ファウスト。絶対に来るなよ…… 」
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