博士SIDE
私が亡国に来てから、三年が経った。
この三年の間に、色々な物を開発した。
中でも、上手くできたのはISの計測システムを狂わせる特殊なガスを開発できた事だ。
これを研究していけば、ISを行動不能に出来るかもしれん。
「博士 」
「スコールか。何か用か?」
いつの間にか、部屋に入ってきていたスコール。
スペアキーを渡したのは良いが、気付かずに入ってくる事が増えた。
「お昼まだでしょ?お弁当作ったから一緒に食べましょう?」
「私はコレでも良いのだが…… 」
カロリーメイトを手に持つ。
「身体を壊すと何度行ったら分かるのかしら?」
何か逆らってはいけない物を感じる。
仕事を止めて、スコールの所まで移動する。
「スコールさんの手作り弁当ですかい?」
「愛されてますねぇ〜 」
「全く、毎度の如く其れを言わないと気が済まないのか?」
暇人どもめ。
私とスコールがその様な関係である訳が無いだろう。
そもそも、スコールが私如きに好意を持っている訳が無いだろうに。
「はい。今日のは自信作よ 」
「毎度ありがとうな 」
弁当を受け取る。
ふむ。唐揚げ弁当か。
「頂きます 」
「どうぞ 」
唐揚げを一つ食べる。
相変わらず美味い。
「美味しい?」
「ああ 」
「ふふっ、良かったわ 」
殊勝な奴だ。
私みたいな人として何かが、欠落した人間に飯を作るなんて。
「何を笑っているのかしら?」
「ん?誰かと食べる飯というのは此処まで美味しいとは思ってもいなくてな。
いや、スコールだから美味しく感じるのかもしれん 」
こいつ以外と飯を食べた事は無いが、恐らくこいつと食べるのが一番美味しいだろう。
此処まで、気を張らずに居られる相手はスコールだけだしな。
「そ、そう 」
「顔が赤いぞ?風邪でも引いたか 」
全く他人に身体を壊すとか言っておきながら、自分自身が壊していたら世話が無いぞ。
そう思いながら、スコールの額に手を当てる。
「熱は無いようだな。
無理はするなよ、身体を壊しては元も子もない 」
そう言ってスコールに視線を合わせるが、顔が赤いまま下を向いてしまう。
何かあったか?
「「「「…………鈍い。博士、鈍いよ 」」」」
やたらとブラックコーヒーを飲んでいる研究員にボソッと言われた。
鈍い?何がだろうか。
こんな風に、私は心休まる日々が続くものだと思っていた。
そう、あの日が来るまでは。
『基地の格納庫が爆発しました。
急いで、避難してください 』
繰り返しますーーと、放送は続く。
大事な武器や、弾薬を保管していた格納庫が爆発したようだ。
私の様な研究員は、逃げるしかない。
そう思って、研究所から出ようとしたらスコールが飛び込んでくる。
「戦闘員がここにいて良いのか?」
「………反乱よ。反対側から出た方が、生き延びられるわ 」
反乱か。
あの厳重な格納庫が爆発するなんて可笑しいとは思っていたが、内部からなら納得がいく。
「しかし、誰が反乱を?」
この時、スコールは答えなかった。
答えるより先に、私を引っ張り壁を壊しながら進んでいく。
……別に構わないが、微妙に息苦しいんだけど?
「おい、そこは右に行け 」
「どうしてかしら?」
「暇つぶしもとい、こんな事もあろうかと造っておいた脱出艇がある 」
ISの索敵網を潜り抜ける程度のステルス性はある。
「分かったわ 」
右に進路を変更し、脱出艇に向かう。
ちょっと仕掛けをしながら、スコールに引き摺られていく。
「此処だ 」
パスワードを打ち込み、脱出艇を起動させる。
…スコール一人ぐらいなら乗れるな。
「乗れ。スコール 」
「先に行きなさい。
悪いけど、私は乗れないわ 」
近くの壁が吹き飛ぶ。
そこから、ISが一機飛び出してくる。
装甲がダメージを負っている所を見た限り、トラップはしっかり発動した様だな。
「……行きなさい 」
「死ぬなよ。スコール 」
脱出艇に乗り込み、海の中に潜る。
目的地は、ランダム。潮の流れの赴くままという奴だ。
私は、イギリスの北端に漂着した。
そのまま、イギリスの支部に止まりスコールが来るのを待った。
待ち続ける事、一年。
遂に、スコールが私の前に姿を現した。
「スコール!生きていたか 」
私は、柄にも無く喜んだ。
スコールが居ない一年はとても退屈で寂しいと感じていた。
そんな思いがあったから、私はスコールの元へ駆け出していた。
「ええ。私が死ぬ訳無いでしょう 」
今までと変わらない。
いや、当時の私は気付かなかったが、今思えばあの時ほど影のある笑顔は見た事が無かった。
「これを見てくれ!
ISのコアネットワークを擬似的に再現する方法を考え付いた。
これを利用すれば、お前の夢は叶えられる 」
子供の様にはしゃぎながら私はスコールに研究成果を見せた。
私は、スコールが好きなのだろう。
此処まで、感情を揺さぶられる相手は、他には居ない。
スコールの夢が叶った時に告白しようと思っていた。
「フフフハハハハハハ 」
だから、驚いた。
今まで見た事が無い高笑いをしたから。
驚く程に濁った目をしていたから。
「スコール?…… 」
「これで、世界を壊せる。
この腐った世界を壊せる!」
私はこの時、自らが愛した女性は居なくなってしまったと悟った。
スコールの夢が歪んでいくのを感じた。
それでも、私は擬似コアネットワークの研究を続けた。
これが、成功すればあのスコールが帰ってくると。
私と共に笑いあったスコールは帰ってきてくれると信じて。
しかし、それは儚い幻想だった。
「フフフハハハ 」
研究も最終段階。
あとは、擬似コアネットワークを使ってみるだけとなっていた。
そのデーターを嗤いながら見るスコールを見て、私は幻想を悟った。
「彼女は壊れてしまった…… 」
そう気付いて、涙が止まらなかった。
研究の結果を見るまでも無く、私は亡国を抜けた。
研究データーの大半を抹消して。
スコールさんに何があったのかは、後の話で。
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