蒼き雫に救われし者   作:マスターBT

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曲を聴きながら、書いたらテンション上がって仕上がりました。


最善の一手と最悪の一手

主人公SIDE

 

「………化け物だろ…… 」

 

俺の横で一夏が呟いた。

同意をしよう。今、俺たちが向かい合っているアレはなんだ?

どう考えても、先程の機械とは形が違う。神話に語り継がれている化け物と云う言葉が適切だ。

一本の柱に、触手のように伸びているコード。スコールが入った頂上が赤く光り化け物感を更に醸し出している。

 

「一夏!無事だったのね!!」

 

「鈴!」

 

チビが一夏の元まで寄ってくる。

表情は、満面の笑みを浮かべて一夏を殴った。

ん?殴った?

 

「心配かけるんじゃないわよ!馬鹿!」

 

「わ、悪い。鈴 」

 

今度は、泣き顔になるチビ。

よほど、一夏の心配をしていたのだろう。こういうやり取りは、して貰って構わない。

ここが戦場じゃなければな!

一夏とチビに振るわれた触手を、シールドビットで防ぎハルパーで切り裂く。

 

「後でやれ」

 

「「りょ、了解です」」

 

チッ、今のでシールドビットが半分使えなくなったか。

周囲の状況を確認する。………全員、いるな。

 

「更識のダメージがかなり蓄積しているな 」

 

「楯無さん、アレに触手が出てきた時に不意をつかれた私達を守るために、囮を引き受けて触手の攻撃を食らっちゃったの 」

 

一番、損傷が激しいのが更識か。

 

「一夏とチビは、シャルロット達の救援。セシリアは、サイカとダイヤを頼む。

俺は更識の元へ向かう 」

 

姉妹のコンビーネーションでギリギリカバーしているが、これ以上戦闘が激しさを増せば、更識は危ない。

そうすれば、必然的に更識妹の危険性も増す。

 

「分かりましたわ。ただ、貴方も疲労しているのですから無茶はしない様に 」

 

「ああ。サイカ達を任せたぞ。まだ、連中には報酬を払っていないからな 」

 

「きゃあ!」

 

楯無が、吹き飛ばされ体勢を崩した。

そこに大量の触手が更識を潰そうと迫っている。

 

「おねぇちゃん!」

 

更識妹がミサイルを放つが、焼け石に水だ。

一本、二本破壊したところで結末は変わらない。

 

「ブースター全開だ 」

 

『了解 』

 

瞬間加速で、ブルーサーヴァントの手伝いもあり一瞬で距離を詰めていく。

しかし、それでも後少しが足りそうにない。

どうする?この状況を覆すためには……

更識妹が撃っているミサイルが視界に入る。

アレを利用するか。壊れかけのシールドビットを展開し、更識妹が撃っているミサイルの進路に入る。

 

「ドラクレア君⁉︎ 」

 

ミサイルとシールドビットが当たり、爆発する。

俺は、その爆風を利用し足りない分の加速を果たす。

触手が更識を押しつぶす直前に、更識の救出に成功する。

 

「ふー、無事か?更識 」

 

「え?ドラクレア君?」

 

やられると思っていたのか、目を閉じていた更識が俺の声に反応し、目を開け状況を理解する。

 

「……助けてくれたの?」

 

「それ以外の何がある?」

 

「あ、ありがとう 」

 

顔を赤くしながら、礼を言う更識。

 

「礼を言う必要はない。まだ、何も終わっていない。

それに、俺がお前を助ける理由なんて一つしか無い 」

 

「え?な、何? 」

 

何かを期待した目で、此方を見てくる更識。

何を期待してるんだ?この馬鹿は。

 

「シスコン駄会長とは言え、貴重な戦力を失う訳にはいかないからな 」

 

「……少しでも感謝していた私が馬鹿だったわよ!」

 

「はっ!百パーセント善意で誰がお前を助けるか 」

 

「少しは、優しくしてくれても良いんじゃないの?

結構、私ボロボロよ?」

 

「知るか。興味ない 」

 

更識の顔に青筋が立つ。

 

「へぇ、女の子にそんな事言うんだ。

犬執事は、やっぱり犬ね。人の気持ちが分からないようね〜 」

 

今度は俺の顔に青筋が立つのを感じる。

 

「…シスコンストーカーには言われたくないな 」

 

いつの間にか、更識と口喧嘩をしている。

そんな俺たちの周りに触手が集まってくる。

 

「「人の視界にうぞうぞと鬱陶しい!!」」

 

更識と同時に、武器を振り回し触手を切り裂く。

 

「話は後だ。更識 」

 

「ええ。そのようね 」

 

更識は、槍に搭載されているガトリングで俺の後ろを、俺はビットで更識の後ろの触手を破壊。

 

「あの赤く光っている所まで、行きたい。協力してくれ 」

 

「了解よ。一応、助けてくれたのお礼は返さないとね 」

 

俺はハルパーを、更識は蒼流旋を構え背中合わせになる。

 

「俺がやられなければ、お前の背中は守る 」

 

「私がやられなければ、君の背中は守るわ 」

 

互いに、笑いその瞬間上昇する。

俺はただ眼前の触手を破壊し、進む。後ろで更識が同じように戦っていると信じて。

背後の心配は、一切しない。何故なら、俺の背後で戦っているのは気に食わないが、実力を認めている奴だからだ。

そうして、進軍を進めると赤い光がかなり近くなる。

 

「まだ、やれるな更識!」

 

「当たり前よ!」

 

赤い光を守るように、伸びてきた触手を更識と同時に破壊する。

そして、視界にスコールを捉える。

 

「ゼロ!」

 

憎し気に放たれた俺のコードネーム。

今の言葉に、何処までの重みがあったのか俺には分からない。

ハルパーを振り下ろす。

 

「なっ!」

 

ハルパーが何かの壁に当たったように、動きを止める。

 

「無駄よ。高密度のエネルギーによる障壁。

コレは、貴方には破る事が出来ないわ 」

 

触手が俺と更識に伸びてくる。

咄嗟に、更識を突き飛ばし残された策を伝える。

 

「ーーーーー 」

 

「……分かったわ 」

 

更識が反転し、引き返していく。

良かった。俺の策は伝わっているようだ。

 

「私の駒になりなさい。ゼロ 」

 

触手が俺に絡みつき、何かが刺さる。

俺の意識はそこで、途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏SIDE

 

「楯無さん!」

 

上空から、楯無さんだけが戻ってくる。

ファウストと、一緒に向かったはずじゃ?

 

「みんな、いるわね。

ドラクレア君からの策を伝えるわ 」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!ファウストに何かあったのか⁉︎ 」

 

楯無さんが沈黙を貫く。

 

「……おそらく、この後出会うドラクレア君は敵よ 」

 

楯無さんの言葉に、全員が息を呑む。

ファウストが敵?どんな状況だよ。考えたくもない。

 

「楯無さん。ファウストの相手は、私がやりますわ 」

 

「似た者主従で助かるわね。

ドラクレア君の策もそうだったわ 」

 

「そうでしょうね。本気のファウストと戦えるのは私ぐらいでしょうし 」

 

「セシリア。大丈夫なの?」

 

シャルロットが、セシリアの肩に手を置き聞く。

 

「問題ありませんわ。それに、執事の躾は主人の役目。

それを放棄しては、私はファウストの主人を名乗れませんわ 」

 

目を瞑り、腕を組みながらセシリアが言う。

どう考えても、無理をしているのは感じられた。でも、俺を含め誰も口を開かない。

同時に感じているのだ。セシリアの覚悟を。

 

「……相手の唯一の弱点と思われる場所には、エネルギーの障壁が存在しているわ。

一夏君。貴方の零落白夜が私達がこの戦いに勝利する武器よ 」

 

「僕達は何をすれば良いですか?」

 

「セシリアちゃん以外は、一夏君が頂上に着くまでの敵の処理。

そして、可能な限り一夏君と共に進軍し、零落白夜を放つまでの時間稼ぎを頼むわ 」

 

楯無さんから、告げられたファウストの策。

それは、俺を頼るファウストらしからぬ策だった。

状況が状況なだけに、理解は出来るが何かが可笑しいと思う。

 

「一夏君 」

 

「なんですか?楯無さん 」

 

「ドラクレア君からの伝言よ。『俺は、動けない。俺に見せた覚悟が本物なら俺を殺してでも、スコールを倒せ。

今のお前なら、信じて頼る事が出来る。俺を失望させるなよ?』…以上が伝言よ 」

 

「ははっ!なんだよ……俺を信じて頼るって彼奴らしくない。

でも、嬉しいもんだな。何を考えての言葉かは分からないけど、信頼してくれるなら答えないとな 」

 

自然に口角が上がっていく。

雪片弐型を握る手に力が入る。

 

「良いわね?上昇を開始したら、脇目も振らず上を目指しなさい。

途中で障害となるドラクレア君はセシリアちゃんが担当して一夏君で敵の大将を討ち取るわ 」

 

全員が了解と返事をする。

ファウストが居ない初めての戦闘が始まった。

 

 

 

 

 

 

スコールSIDE

 

「作戦会議は、終わったようね 」

 

彼らの作戦を聞いた私は嗤う。

 

「最高の話ね。主従で殺しあうなんて!

そうは思わない?ゼロ 」

 

「………… 」

 

私の前で沈黙を貫くゼロ。

忘れてたわ。会話をする事も満足には出来ないのね。

 

「遠慮は要らないわ。容赦なく殺しなさいゼロ 」

 

「………了解。スコール様の意のままに 」

 

仰々しく礼をして連中を向かい打つために下がっていく。

 

「ふふっ!ハハハハハ!彼が簡単に私に頭を下げるなんてね。最高だわ。

彼がその手で、自分の大切な物を全て失った時に、元に戻してあげましょう。

彼の絶望する様が愉しみで仕方ないわ 」

 

鉛色の空に、その狂った嗤いは虚しく吸い込まれた。

 




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