蒼き雫に救われし者   作:マスターBT

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えー、前話の投稿で後2話ぐらいと言いましたが、これで完結とします。
この話を二つに分けようと思っていたのですが、一つに繋げるかと思いました。


生き方

主人公SIDE

 

着慣れた執事服に袖を通す。

IS学園では改造して、執事服に近い物を着ていたがやはり、此方の方がしっくりくるな。

俺は今、イギリスのオルコット邸にいる。いつも通り、唯の執事として。

事の発端は全てが解決して、一ヶ月後の事だった。

 

 

 

 

 

〜一ヶ月前〜

 

「おい。更識 」

 

「な、何?ドラクレア君?」

 

「妹と仲直りできて、嬉しいのは分かる。だが、この書類の量はなんだ?」

 

俺は生徒会室で、雑用として働かせられていた。

そして、気が付いたがやっぱり更識は駄会長だった。生徒会室に入って、初めての感想が驚愕だった。

誰が二メートルぐらいに積み重なった書類の山を予想できる?

 

「えーと、簪ちゃんの所に遊びに行っていたり、簪ちゃんの手伝いに行ったり、簪ちゃんの所に遊びに行っていたり…… 」

 

「布仏先輩。この駄会長はいつも、こんな感じなのですか?」

 

「はい。残念ながら 」

 

はぁと布仏先輩と同時に溜息を吐く。

 

「暫くは貯めてても良いじゃない。どうせ、学園がちゃんと稼働するのには後、三ヶ月ぐらいにあるんだし 」

 

「「それとこれとは話が別だ(別です)」」

 

「二人揃って言わなくても良いじゃない!」

 

生徒会室の端で体操座りをし始める更識。

現実から逃げ出しやがった。

そんな時に、扉をノックする音が聞こえた。

 

「どうぞ 」

 

「失礼しますわ。……これはどういう状況ですの?」

 

セシリアが、何かしらの書類を手にして入ってくる。

 

「現実から逃げてる駄目人間の図 」

 

「あらら。それはそれは、大変ですわね。

楯無さん、これを見てくれますか?」

 

セシリアが適当に反応しながら、更識に手に持っていた書類を渡す。

それを目に通した更識の目が面白いものを見つけたと言わんばかりに輝き始めた。

 

「良いわ。生徒会権限で可能にしましょう!

それに、あの戦いに参加した皆んなには楽しみを設けないとね 」

 

「ファウスト。忙しくなりますわよ?」

 

そう言いながら、近づいてきたセシリアから書類を受け取る。

そこには大きく『セシリア・オルコット主催!慰労会 』と書かれていた。

 

「お嬢様。これは?」

 

「字面通りですわ。みなさんを招待して、オルコット邸でパーティを開こうというものです。

あ、ちゃんとチェルシーには話が通っていますよ 」

 

「何故、俺には連絡を?」

 

「ドッキリです♪ 」

 

ウィンクをしながら言うセシリア。

はぁ、これは疲れそうだなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在、俺とセシリアはオルコット邸で歓迎の準備をしていた。

今日の為にセシリアの仕事を全て片付けた。その都合上、時間帯は夜となっていた。

事前に話を聞いていたチェルシーが殆ど終わらせていたので、簡単な掃除をした。

今頃は、空港に着いた一夏達をチェルシーが迎えている頃だろう。

俺は連中が到着する前に、邸の前で迎えなければならない。

邸の入り口に到着する。執事服に乱れがないか確認する。

車のエンジン音が聞こえた。今日は、一夏達以外に来客の予定は無い。

扉が開かれ、チェルシーが一歩下がった。

 

「お待ちしておりました。IS学園の皆様方 」

 

どうせ、オルコット邸で行うなら俺は執事として仕事をしろという事だった。

だから、こんなに丁寧な言葉を使っている。

 

「プフッ……これは……予想以上に…ツボる…プフッ… 」

 

「ダメだよ。鈴、そんなに笑ったら 」

 

「そう言うシャルロットも口角が上がってるぞ 」

 

「ラウラだって 」

 

こいつら、殴ってやろうか?

 

「ふぅ。……念のため招待状を確認させて宜しいですか?」

 

全員の招待状を受け取り、確認する。

 

「織斑一夏様 」

 

「お、おう。慣れなぇなそういう呼ばれ方 」

 

「篠ノ之箒様 」

 

「うむ 」

 

「……凰 鈴音様 」

 

「その空白は何よ!」

 

普段通りチビと呼ぶところだった。

 

「シャルロット・デュノア様 」

 

「はい 」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ様 」

 

「なんか、今日のファウストは変だな 」

 

ラウラ、お前状況を理解していない訳では無いよな?

 

「更識簪様 」

 

「……疲れた。帰りたい 」

 

それは俺も同意する。

 

「…………………………………………更識楯無……………さ………ま……… 」

 

「どんだけ呼びたくないのよ!!」

 

誰が好き好んでお前を様付けで呼ぶか!

招待状を確認して、予想外な名前を見つけた。

 

「織斑マドカ様、ダイヤ様、ハート様、ジョーカー様、スペード様、クローバー様 」

 

こいつらまで呼んでいたのか。

マドカはあの戦闘の後、色々とゴタついて一夏と戦う事になったんだが、結果だけ言えば一夏の勝利で終わり織斑家の一員となった。

スペードとクローバーはスペードが上手くやったらしく、恋人同士となっていた。

 

「邪魔するぞ 」

 

「「「「「お久しぶりです。隊長」」」」」

 

ぶっきらぼうなマドカの発言の後に、ダイヤ達の言葉が続く。

ダイヤ達は、正式にイギリス軍人となり、直接俺と会う機会は減っていた。

それでも、以前と変わらずに俺の事を隊長と呼ぶ。

 

「全員の確認が終わりました。それでは当主、セシリア・オルコット様がお待ちです。

こちらへどうぞ 」

 

俺が先導する形で歩き出す。

 

「そう言えば、お前って執事だっだな。改めて、思い出したよ 」

 

セシリアの元に着くまでの間、一夏がそう言ってくる。

 

「言われてみれば、あんたみたいに失礼な奴によく執事なんて仕事が出来てるわね 」

 

チビが一夏の言葉に反応し、聞いてくる。

 

「私が担当しているのは、お嬢様の身辺警護と送迎、邸の掃除だけですので外のお客様はメイド長のチェルシーの仕事です 」

 

「あら?私は、貴方にも来客の応対をお願いした筈ですよ?」

 

チッ、何時の間に戻りやがった。

チビの言葉に返したセリフを回収したくなった。俺が、セシリアを除いて頭が全く上がらないのはチェルシーなのだ。

 

「チェルシー… 」

 

「ふふっ。貴方が、そうやって人に面倒事は放り投げるから、私が仕方なく引き受けているのですよ?

それをその様に言うのであれば、私の仕事を貴方がしてくれるという事ですよね?」

 

目以外が笑ってる笑顔で言う。

 

「すみません。チェルシーさんがいるお陰です。今まで、通りお願いします 」

 

マシになってきてるとは言え、俺がセシリア以外にマトモな敬語が使えるとは思えない。

ましてや、相手が更識の様な人間ならすぐにボロが出るだろう。うざいから。

 

「ねぇ、ドラクレア君。心の中で私を馬鹿にしなかった?」

 

「……… 」

 

沈黙を返しておく。

チェルシーの前で、下手に口を開く訳にはいかない。

どう考えても面倒な事しか待っていない。

 

「お嬢様の元へしっかり連れて行って下さいね 」

 

それでは失礼しますと一礼して俺たちを通り過ぎていく。

再び、歩き出してセシリアの元へ向かう。

後でチェルシーの説教が待ってるな。ああ、めんどくさ。

なんて、事を考えていたら会場となる広間に到着した。

扉の前でノックを四回する。

 

「失礼しますお嬢様。御客様をお連れしました 」

 

部屋に入り、一礼する。

 

「ご苦労様です。ファウスト。

皆さんを中に 」

 

セシリアの言葉を聞き、一夏達を中に入れ扉の横に立つ。

一夏達で無ければ、セシリアの右後ろに立つのだが心配はないだろう。

 

「皆さんようこそおいでくださいました。

この度は、当家主催のパーティーご参加いただき有難うございます 」

 

どうやら、セシリアもこのスタンスは守る様だ。

ある程度経てば、普段の様に振舞うことが出来るだろう。

 

「あはは、ファウストもセシリアも今日はそんな感じでいくの?」

 

堪え切れないと言った感じで、笑い出すシャルロット。

余程ツボにハマったのだろう腹を抱えて笑っている。

 

「ふふっ。今日は私が主催のパーティーですわ。

当主としての礼儀、皆さんが忘れてる執事としてのファウストを見てもらおうと思いまして 」

 

思わず苦笑してしまう。まぁ、IS学園にいる時はお世辞でも執事らしいとは言えないからな。

 

「では、そろそろ始めましょうか。ファウスト 」

 

「イエスマイロード 」

 

礼をして扉を開ける。

そこには、料理を運ぶメイドと執事が揃っていた。

本当にチェルシーによって精錬されてるよなぁ、うちの連中。

一夏達の前にどんどん、料理が並んでいく。

礼儀とかしっかりする場でないから、バイキング方式だが。

 

「時間の許す限り、歓談を楽しみましょう。

堅っ苦しいのはここまでですわ。皆さん、楽にして宜しいですわよ?」

 

この部屋に入ってから、ずっと背筋を伸ばしていた一夏とチビ、篠ノ之が一気に猫背になる。

 

「ガチガチに緊張し過ぎだろお前ら 」

 

「ファウストが真面目に執事やってる時点で緊張する 」

 

「それはあるわね。ドラクレアが真面目とか笑えるし 」

 

「おい、お前ら。後で覚えとけよ?」

 

「「ひっ!」」

 

少し、殺気を出しながら言うと二人揃ってビビる。

全く失礼な連中だ。セシリア限定だが、しっかり執事として仕事をしていたはずだ。

そんな事を考えながら、料理を取りに動く。

 

「……美味しい 」

 

「簪ちゃん。せめて、席に戻ってから食べましょう?行儀が悪いわよ 」

 

「……だって、美味しいんだもん 」

 

「もう。そんなにがっつかなくても、無くなりはしないわよ 」

 

更識妹が食べていたハーブをふんだんに使った鶏肉のトマトソース煮込みを自分の皿に大量に盛り、妹と共に戻る更識。

その表情は完全に緩んでいる。

 

「ねぇ、ファウスト 」

 

「気配を消して、隣に立つなよ。シャルロット 」

 

「ファウストは何か作ったの?」

 

「俺が作ったのは、お前の目の前にあるピザとその奥にあるパスタだ。

どうせ、食べるんだろう?そこに取り分けといてある。持っていけ 」

 

視線で、少し離れたところにある皿を示す。

デュノア社でこいつの面倒を見ていた時も、俺の料理を必ず食べたがっていたから今回も分かりやすいように分けておいた。

と言うよりは完全にクセとなっていて、気が付いたら取り分けていたが正解だが。

 

「………一夏とは違う人たらしだよね 」

 

「は?俺が人たらし?一番あり得ない言葉だな 」

 

「まぁ、いいや。ありがとうね!取り分けといてくれて 」

 

皿を取って嬉しそうに戻っていく。

偶にあいつの考えてることがわからなくなる。

目の前のステーキとサラダ、パンを手に取り俺も戻る。

 

「もぐもぐ 」

 

頬いっぱいに料理を詰め込んでいるラウラ。どう見ても、リスか何かにしか見えない。

触れないでおいてラウラの正面に座る。

 

「ん?はんだファフストか 」

 

「口の中無くなってからしゃべろ 」

 

近くにあったふきんを取り、ラウラの口周りについたソースを拭いてやる。

 

「んっ、すまないな 」

 

「余りにも見てられなかっただけだ 」

 

「ふむ。これがツンデレというやつか 」

 

「……本当に何処で覚えて来るんだ?その知識 」

 

「我が優秀なる副官だ!」

 

どんな副官だよ……、明らかに間違った知識を植え込んでるだろ。

 

「はぁ、否定するのも面倒くさい 」

 

ステーキを一口大に切り取り食べる。

………ん?少し焼き過ぎだな。充分に美味しいと呼べるが、肉の柔らかさが失われている。

後で、担当者には話をして置くとしよう。

 

「こういう時ぐらい、難しい顔を辞めたらどうですか?」

 

「こればっかりは癖だ。すまんな、セシリア 」

 

両手にグラスを持って、席にやって来るセシリア。何時の間にか、席から消えているラウラ。

いや、シャルロットに引きずられているな。

 

「一杯、如何ですか?」

 

「…ありがとう 」

 

グラスを置いて、席に着くセシリア。

 

「「乾杯」」

 

チンっとガラスの音が響く。

周りの音が不思議と聞こえない。一夏達が居る筈なのにまるで居ないようだ。

 

「如何ですか?今日のパーティーは?」

 

「そうだな。思っていたより、悪くない。」

 

「ふふっ。貴方や、チェルシーが準備したのです。悪くない訳がありません 」

 

そうドヤ顔で言うセシリア。

 

「ふっ、それはお前がドヤ顔する事か?」

 

「あら?自分の部下が有能であれば、喜ぶのが主人でしょう?」

 

「それを言われたら敵わないな 」

 

持って来て貰ったグラスに口をつける。

オレンジジュースだな。この味は。

 

「…ねぇ?ファウスト 」

 

「なんだ?」

 

「今夜は、一緒に寝てくれませんか?」

 

「ブフッ!」

 

セシリアの言葉に咳き込む。

あぶねぇ、ジュースを飲んでいたら噴き出すところだった。

 

「きゅ、急にどうした?」

 

「…今日、チェルシーに言われまして 」

 

チェルシー、あんたは何を考えてるんだ?

 

「御二人は、彼氏彼女の関係なのでしょう?

それなら、そういう事をしても問題はなと思いますよ?ヘタレファウスト 」

 

「最終的に悪口に持っていくなチェルシー 」

 

チェルシーが俺の近くで、しゃがんで耳打ちしてくる。

 

「お嬢様の飲み物に、少々お酒を混ぜました。後は、貴方の好きなように 」

 

それだけ言って、パーティー会場から出て行く。

………道理でセシリアがらしくない事を言い出す訳だ。

 

「ファウストが私を大切にしてくれている事は、わかっています。

貴方が、私の元を離れないという事もわかっています。ですが、心配になる事はあるんですよ?」

 

目をウルウルさせながら、上目遣いのセシリア。

ヤバいこれは破壊力がある。理性を総動員させなければ、容易く決壊する。

 

「ねぇ?ファウスト 」

 

更に首をコテンと傾けてくる。

……ああ、これは無理だ。

酒が回ってきて、少しフラフラし始めたセシリアを抱える。

 

「んっ、嬉しいですわ。ファウスト 」

 

一夏達になんと伝えようかと思って、周りを見たときにある事に気がついた。

 

「お嬢様がお疲れなので、皆様方はお連れするお部屋まで移動願います 」

 

チェルシーと彼女が率いるメイド達が、一夏達を移動させて行く。

はぁ、全て計画通りという事か。

この後、俺はセシリアと一つになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜翌日〜

 

オルコット邸でのパーティーが終わり、IS学園に戻る日だ。

本来、俺たち専用機持ちはこうしてIS学園外に出る事は許されていない。

襲撃を受け、ボロボロになったIS学園のISをいざという時に防衛する役目があるからだ。

だが、更識が教師たちを説得しこの二日間は自由としてくれた。まぁ、どう考えても遊ぶのが目的だったのだろうが。

 

「大丈夫か?セシリア 」

 

昨日の事で足が覚束無いセシリア。腕を掴んで支えながら玄関へと向かう。

 

「ええ。大丈夫ですわ。これは、嬉しい痛みですから 」

 

顔が熱くなるのを感じる。全く、相変わらず恥ずかしい事を言ってくれる。

きっと、俺たちはこうして生きていくのだろう。

互いに愛し、慈しみ大切想う。

障害は必ず起きるだろう。だが、セシリアと共になら乗り越えられる。

それにーー

 

「遅かったな。ファウストにセシリア 」

 

「相変わらずくっついてるわね〜あんたら 」

 

「私も招いてくれて感謝する 」

 

「鈴、それは今更じゃない?」

 

「シャルロットの言う通りだな 」

 

「…………料理美味しかった。ありがとう 」

 

「簪ちゃん。このパーティーが成立したのはおねぇちゃんが頑張ったからよ。

だから、私にもお礼を言って欲しいなぁ 」

 

それに、こいつらもいる。

大概如何にか成るだろう。

 

「……ありがとう 」

 

「ん?何か言ったか、ファウスト?」

 

「なんでもない。とっとと、車に乗れ 」

 

「ふふっ 」

 

セシリアには聞かれた様だ。

大切な人と、頼ることのできる仲間と俺は生きていく。

 

 

 

〜完〜

 

 

 




読んでくれた皆様方、ありがとうございました。
これで蒼き雫に救われし者は完結となります。
感想をくれた皆様方、ありがとうございました。続きを書くモチベーションに繋がりました。

ちなみに、活動報告でアンケート中です。
話は完結しましたが、番外編を投稿していきます。
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