スノコの雪さん!ありがとうございます。
主人公SIDE
「どうした?今日こそは、俺を倒すんじゃ無かったのかジャック? 」
「くそっ!強すぎないか⁉︎親父!」
右から振るわれた木刀を弾いて、ジャックとの距離を詰め首に木刀を当てる。
「ふっ、未だ息子に負けてやる訳にはいかない 」
とは言え、齢10歳でこの才能は凄いな。
IS学園にいた頃の一夏なら、もう超えているんじゃないか?
「だぁ!また負けたーー!」
ジャックが木刀を持ちながら、地面を叩いて悔しがっている。
三十代後半だが、まだ動けるな。
「俺も腕が鈍らないように訓練は欠かしていないんだ。デスクワークが増えたがお前に負けるほど弱くない 」
IS学園を卒業した後、セシリアの執事として働きつつ、会社を設立した。
基本的には、ISの武器を開発している。そして、イギリス政府から要請があれば亡国機業の様な裏組織を潰す役割も担っている。
まぁ、簡単に言えばイギリス政府の猟犬の様なものだ。
「執事として母様を支えて、会社の社長をやってて何処にそんな暇があるんだよ?」
「暇が無いなら作れば良い 」
「それが出来るのは親父ぐらいだって…… 」
そうか?丸二日ぐらい、休まず仕事を片付ければ一日、暇な時間を作れるだろう。
「父様〜 」
「ん?ソフィアか 」
セシリア譲りの蒼い目をした娘、ソフィアが俺目掛けて走ってくる。
ソフィアを受け止めて、抱き上げる。
「母様と勉強は終わったのか?」
「うん!だから、父様に会いに来たの!」
満面の笑みで言う。全く、セシリアに似てる可愛らしい笑顔だ。
……俺も随分と甘くなったものだな。
「父様〜?」
「親父?」
「…どうかしたか? 」
「お顔が怖いよ?」
「疲れてるのか?顔が怖いぞ?」
どうやら、考え事が表情に出てしまった様だ。
子供達に心配されるとはな。
「少々、昔を思い出していただけだ。気にするな 」
「え、でも「ソフィア〜、何処に行ったのですか?ソフィア〜 」あ、母様の声だ 」
「母様〜!」
「ソフィア、俺の所に来るとは伝えなかったのか?」
セシリアの声を聞く限り、絶対伝えて無いだろうが一応聞いておく。
「テヘ 」
舌を出しながら、笑うソフィア。
はぁ、言っていないなこれは。
「あ、ソフィア見つけましたよ!全く、政治の話となったら逃げるのはおやめなさい 」
「ソフィア? 」
「ち、違うよ父様、ちゃんとお話しは聞いてたもん 」
「あの状態を聞いていると捉えるには無理がありますわ 」
セシリアが額に手を当てて、溜息を吐く。
ソフィアを下ろし、セシリアの近くまで行く。
「セシリア、次の講義からは俺が参加しよう 」
自惚れで無ければ、ソフィアはかなり俺に懐いている。
俺が参加すれば逃走防止にもなるし、真面目に受けるだろう。
「えっ?ファウストも参加するのですか?」
「何か不都合でもあるのか?」
「い、いえ、ただファウストが参加するなら、恥ずかしいものを見せる訳にはいかないかと思いまして 」
「セシリアが講義するんだろう?凄く楽しみだ 」
「も、もう……これは頑張らないといけませんね 」
セシリアが顔を赤くしながら、握りこぶしを作って気合を入れている。
悪いなソフィア。どうやら、セシリアのスイッチを押してしまった様だ。
視界の端で、頬を可愛らしく膨らませているソフィアに心の中で謝る。
ジャックSIDE
「では、準備をしませんと 」
そう言って母様が動いた瞬間、母様がフラついた。
やばいっと思ったけど、親父がいつの間にか母様の正面に移動してて、抱きしめる様に受け止めた。
あーー、これは何時ものが始まるな。俺はそう思った。
「休息は大切だぞ?セシリア 」
「貴方には言われたく無い言葉ですわね 」
「ふっ、それもそうだが、お前が倒れれば子供達が悲しむぞ?」
「貴方は悲しんでくれないのですか?」
母様の目が潤む。その表情は息子の俺が見ても、十分に可愛い。
そんな母様を見て困った様に笑いながら親父の顔が母様に近づく。
「もちろん、悲しむさ。セシリアは俺の光だからな 」
そう言って母様とキスをする親父。
俺の両親、セシリア・オルコットとファウスト・オルコットこの二人に唯一文句を言いたいことが、あるなら俺は間違いなくこの一つをあげる。
頼むから、所構わずイチャイチャしないでくれ。
二人とも、本当に三十代?って聞きたくなる見た目だけど、それでも両親がイチャイチャしているのを見るのはなんか、言い難い気分になる。
でも、こうして見ると親父は本当に母様の事が大切なんだって事がわかる。
俺や、ソフィアに向ける笑顔とは暖かさが違う。
まぁ俺の場合は、訓練の時に見せられる冷ややかな笑顔を見慣れてるだけかもしれないけど。
「んっ……しっかり休むのも大切ですわね。久々に家族水入らずといきましょう?」
「ジャック、ソフィア、母様と一緒に庭園に行ってくれ。準備をしてから向かう 」
親父が指示を出すだけ出して、屋敷の厨房がある所に向かった。
俺の親父ながら、スペック高すぎだろ。
腕っ節が強く、頭も良い更に料理まで出来る。
「行きますよ。ジャック 」
ソフィアと手を繋いでいる母様に呼ばれる。
ーー俺もいつか、親父の様に成れる日が来るのだろうか?
こう思ってしまうあたり、俺が親父を超えられるのはまだ先だろうなーー
そんなことを思いながら、俺は母様とソフィアに追いつくため走り出した。
主人公SIDE
暇を作って、休日にした一日が終わる時、俺はセシリアの部屋にいた。
「ジャックは貴方から見て、素養はありますか?」
ベットに腰掛けているセシリアに質問される。
ジャックの素養か。
「問題ないな。戦闘能力に関しては、このまま伸びれば俺を超えるだろう 」
「まぁ!それは、本当ですの?」
「ああ。まぁ、当分負けてやるつもりは無いがな 」
いくら、息子と言えど負けてやる訳にはいかない。
「ふふっ、大人気ないですよ?」
セシリアがしょうがないなぁと言った感じで笑う。
悪いな。これは、父親として一人の男として譲れないものだ。
「ソフィアはどうだ?」
俺たちが、こうして互いに子供の成長具合を聞くのには、理由がある。
ソフィアはセシリアの後継者になる為、ジャックはオルコット家の男として直接的な脅威を払う役目がある。
最初は、ジャックがオルコット家を継ぐ予定だったのだが、政治や交渉事より戦闘の方が才能があったのだ。
ソフィアが生まれるまでは、並行して学ばせていたがソフィアは交渉事の才能がある事が判明した。
それから、政治や交渉事に関する学習はセシリアがソフィアに教え、戦闘術を俺がジャックに教えている。
その為、どちらがどの様な状況か全く分からないのだ。
「ええ。十分すぎるほどに育ってますわ。私が休憩中に見張りのメイドを騙すぐらいの口達者にね 」
セシリアの表情から、苦労が滲み出ている。
今日の様に抜け出す事がかなりある事が分かる。
「そうか。苦労してるな 」
セシリアに近づいて、頭を撫でる。
気持ちよさそうに目を細めるセシリア。
「ファウスト程ではありませんわ。貴方が、会社を設立し大きくしたのは、私と結婚する為でしょう?」
「……流石にバレるか 」
俺とセシリアが恋人であったとしても、外部の人間から見れば主人と従者。
古い言い方だが、身分が圧倒的に違う。イギリスの中でも地位の高いオルコット家。
その一人娘で国家代表候補生。いくら、男性IS操縦者と言えど、政敵からすれば弱さとなる。
だから、昔からあるイギリス政府とのコネを使い、会社を設立。それを大きくすれば外部の人間から見ても釣り合う。
序でにセシリアの警護がしやすくなるしな。
「身分なんて物は気にしませんのに 」
「そう言うと思ってたさ。だが、女尊男卑の風潮が色濃い現状は、どんな弱みだろうと作る訳にはいかない。
そう言う意味では、ジャックが表舞台に立つ事も無くなるがな 」
「それを了承の上で、鍛えてやっているでしょう?ソフィアが表からオルコット家を守り、ジャックが裏から守る 」
「ああ。それが、オルコット家の男の役目だからな 」
セシリアの父親であるセドリックさんから、オルコット家の男の役割は裏方になっている。
セドリックさんは、カレンさんが色々と豪快な性格だったからと婿養子と言う立場から裏に徹したのだろう。
本人にも鋭い観察眼があったしな。
俺は元々が裏の人間だ。それしか出来ない。
「ファウスト 」
セシリアが俺の名前を呼んで、自分の胸に俺の頭を持っていく。
流石に照れる事はしないが、慣れないなこの感じは。
俺の頭がゆっくりと撫でられる。
「大丈夫。ジャックは、私達の子供です。心配しなくても、しっかりやってくれますよ 」
俺が何を考えているのか筒抜けだな。
「ジャックが俺に憧れるのも理解ができる。だが、あいつは俺の様に生きる未来しか無かったわけでは無い。
生まれの良い坊ちゃんとして、生きる未来もあったんだ。そう考えるとついな 」
「信じましょう?ジャックもソフィアも貴方の子供なのですから 」
「そうだな。セシリアの子供だ。それだけで、俺が信じるに値する 」
「相変わらず、自己評価が低いですわね 」
セシリアの腕から解放され、俺はセシリアの横に座る。
そして、互いの手が少しづつ近づいて絡み合う。
暖かい。この温度を感じられるだけで俺は幸せな気持ちになれる。
俺とセシリアは二人の時間を大切に過ごすと決めている。互いに、IS学園にいた頃とは立場も私事に使える時間が変わったのだ。
俺が休みの日を作るのは、こうしてセシリアと過ごす為でもある。というより、理由の大半がそうだ。
「セシリア。俺は、何よりもお前が大切だ 」
「ええ。分かっています 」
俺が込めた意味まで理解して返事をくれたのだろう。
込めた意味それは、俺は子供達よりもセシリアを優先する事。
親として、失格なのは理解している。でも、これは変える事が出来ない性分の様だ。
「貴方は貴方の好きな様にして下さい。そうして、疲れたり傷付いたら此処に戻って来て下さい。
子供達も喜んでくれますよ。今日の様に 」
セシリアが此方に顔を向ける。
その瞳は潤んでいる。どうやら、我慢の限界らしい。
数年前から、合図だと理解したその反応を確認してセシリアとキスをする。
俺が会社を設立し、セシリアと結婚して子供が生まれて、俺は随分と幸せな人生を送っているな。
「…いっぱい愛して下さいね?」
その言葉に俺は無言のキスで応じた。
〜翌日〜
「はぁ、亡国もしつこいな 」
朝方に俺の携帯に連絡が入った。
その内容は、日本に亡国の残党が現れたから協力してこれを倒して貰いたいと言うものだ。
無論、連絡を寄越したのは更識だ。
『どうせ、セシリアちゃんといちゃいちゃしてるだけなんでしょ?少し、手伝って貰えないかしら?』
こんな巫山戯た感じで連絡を寄越す知り合いは一人しかいない。
いや、天災という可能性もあるがそれは考えたく無い。
「休暇が終わったから良いが、昨日連絡をしていたら、キレてたな 」
会社に戻り、飛行機に乗る。
日本に行って更識の依頼を片付けたら今度は、イギリスから頼まれているISの新装備の開発。
それを明日の昼過ぎまでに終わらせ、セシリアに同行し外交の手伝い。
これが終われば、会社での書類整理と新人執事の研修か。
最低でも二、三週間は働き詰めとなるか。
「ふー、忙しいな。次に休みを取れるのはいつになるか 」
まぁ、こんな生活も悪くは無い。
幸福とはこういう事を言うのだろう。
俺は口元が緩むのを感じた。
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