蒼き雫に救われし者   作:マスターBT

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なんとなく思いついたお話。初作品の思い入れというのでしょうか。
こんな話いいなぁって思いつくのです。蛇足かもしれませんが、楽しんで頂けたら嬉しいです


番外編 IS学園で特別教師

主人公SIDE

 

IS学園。俺がISを動かし、セシリアとともに入学し、十数年前に卒業したいわば母校と呼べる場所。

本来なら用事はないんだが、織斑千冬に呼ばれ再び俺は来ていた。

 

「よく来たな。ファウスト・ドラクレア」

 

IS学園に着くと相変わらずの暴君が立っている。

俺が現在、三十六歳である事を考えれば、織斑千冬は四十の後半かそれ以上と言ったところだろうか。

凄まじい勢いで振り下ろされる出席簿を避ける。

 

「…随分な出迎えだな。織斑千冬」

 

「挨拶もせず、人の年齢に対して考察している貴様よりはマシだ。

まぁいい、付いて来い。お前の息子も待っているだろう」

 

俺が来た理由。それは、遺伝か何か分からないが、ISを動かした俺の息子ジャックに専用機を届けると同時にここの学園長と織斑千冬に男性IS操縦者兼、イギリス代表IS操縦者セシリアの夫として普段できない授業をしてくれと頼まれたからだ。

本来なら微塵も受ける気のない仕事だが、セシリアがキラキラした目で行って来いと言うのと、少しばかりジャックがどの様に過ごしているか気になったから引き受けている。

 

「ここだ。紹介したら入って来い」

 

織斑千冬が立ち止まったのは一年一組の教室。

 

「ほぅ。俺らと同じ教室か」

 

「そうだ。貴様らの代から代表候補生や問題児はこのクラスに入れられている」

 

「だから担任はあんたと言うことか。副担任も引き継いでるのか?」

 

「山田先生は……だいぶ前に寿退職したぞふふっ…」

 

おっと未だ、未婚で弟に先越された女性の地雷を踏んだ様だ。

面倒だったのでそのまま、幽鬼の様にふらふらと入っていく織斑千冬を止めることなく俺は外で待機する。

 

『ちょ!?織斑先生、どうかしたんですか!?』

 

『気にするな。更識先生』

 

……気のせいか?どこかの駄会長の声が聞こえた気がするが。

 

『では、今日だけの特別講師を紹介する。入って来い』

 

多分これが合図だろう。

扉を開け、教室に入る。教壇には織斑千冬。そして、見慣れたいけ好かない駄会長の姿。

マジで先生なんかやってるかあいつ。

とりあえず、駄会長に殺気を飛ばしつつ教壇に登る。

 

「知っている人も多いとは思うが、男性IS操縦者のファウスト・オルコットだ。

本日の午後授業を担当する事になった。1日限定だが、息子のジャックと共によろしく」

 

これぐらいの世辞が言えなければセシリアの隣には入れないからな。

目の前の席で固まっているジャックを見る。

ありありとなんでいるの?って思ってるのが伝わってくる表情だ。

視界の端で、織斑千冬と更識が耳栓を付けるのが見えた。俺も事前に用意しておいた耳栓を付ける。

ジャックがそれを見て慌て始めるがもう遅い。

 

「「「「キャァアアアアア!!」」」」

 

耳栓をしていても煩いと分かる音量が聞こえてくる。

おそらく、直撃した奴はかなりのダメージを負うであろう音響兵器だ。

 

「ぬぉぉ……」

 

ジャックが、なにやら耳を押さえている。

それを見ながら、憐れみの笑みを浮かべる。

 

「くっそぅ……親父、息子の不幸を喜ぶなよ…」

 

「はっ!訓練をしてやってるのに、危機管理能力が低い馬鹿を笑って何が悪い?」

 

「それ、息子に言うことかよ…」

 

呆れたようなどこか納得しているような態度のジャックを見つつ、視線を更識に向ける。

俺の視線に気づくと、ヒラヒラと手を振ってくる。それを無視して、織斑千冬へと視線を移す。

 

「無視しないでよ!結構、久しぶりでしょうに」

 

更識が大声をあげて、俺に近寄ってくる。

 

「…好き好んで俺がお前を相手にすると思うか?そもそも、なんでお前が教師なんてやってんだよ?」

 

「手の空いてるときに、OBとして協力しているの。貴方がセシリアさんの手伝いをしているのと一緒よ」

 

口を開こうとして、背後から感じた殺気に反応し、半歩位置をずらす。

すると、ブォン!と空気を裂く音が聞こえ、俺がいた場所に出席簿が振り下ろされる。

 

「…ここは、同窓会の会場ではないのだが?更識先生にオルコット特別教諭」

 

さて、そろそろ黙るか。授業の妨げをするのは本意ではないし、何よりセシリアの評価を下げかねない。

 

「では、織斑教諭。俺はどこで待機していればいいのですか?」

 

俺の言葉にポカーンとする織斑千冬。

 

「……は、お前がセシリア・オルコットのいない場所で、敬語を使えるなんて…」

 

「はっ倒すぞあんた…‼」

 

俺たちにとっては見慣れた光景で、かつての日常を思い出させる場面だが、ジャックや女子生徒達には全く馴染みのない光景の様だ。全員、ポカーンとした表情をしている。

大方、まじめで暴君一直線の織斑千冬と、なんでも飄々とした態度で受け流す更識が声を荒げたりするのが珍しいのだろう。

 

「では、オルコット特別教諭。貴方は、教室の後ろに椅子を用意した。

そこで、我々の授業を見つつ、講義の内容を考えてくれ」

 

「分かりました」

 

教師としてのポジションに戻った織斑千冬が言ってくるので素直にしたがう。

さて、後ろか。……ソフィアの席のすぐ後ろじゃないか。

 

「ふふっ、父様の講義が聞けるなんてわたくし、楽しみですわ」

 

「ああ。楽しみにしていろ。まぁ、今は先輩先生方の授業を楽しみするとしようか」

 

簡単にソフィアと話し、後ろの席に座る。

反抗期?そんなものはまるで、訪れなかったソフィア。この年でも父親大好きというのは、どうなのだろうか。

 

 

 

 

ジャックSIDE

 

うっそだろ。親父が来るなんて聞いてないぞ。小中の時だって仕事が忙しくて全く授業参観に来たことなんてないのに…なんかすごい緊張してくるぞ。

ソフィアの奴は、緊張してないのだろうか。現在、先生に当てられ回答を述べているソフィアを見る。

 

「ISの普及における女尊男卑は、現在織斑教諭の弟さんである織斑一夏さんがモンドグロッソを優勝。

さらに、私たちの両親であるオルコット夫婦が女尊男卑を真っ向から否定。この事によりある程度、男性の権威は復活していると私は考えております」

 

気のせいだな。うん、気のせいだ。

一夏さんの名前の後に語彙を強めて、両親なんて言ったのは。

もう一度、ちらりと見ると、親父にだけわかる様に手を振っているソフィアが見える。

緊張なんて微塵もしてないなあいつ…

 

「オルコット兄、これを解いてみろ」

 

当てられ電子黒板に表示された問題はIS理論の数式だ。

こんなの天災さんと親父に仕込まれた問題に比べればなんの捻りもない簡単な問題だ。

見てからすぐに浮かんだ回答を入力していく。

 

「これで良いですよね?」

 

「…ああ。合っている。だが、一応授業中に教えた解法で解け。オルコット妹以外分からんって顔をしているだろう」

 

あー…そういえばこの方法はまだ授業でやっていなかったか。

親父が後ろであきれている気配を感じつつ授業は進んでいった。

そして、いよいよ親父の授業が始まる。

……なぜかアリーナで。すでになんとなく予想がついている俺とソフィアは遠い目をしている。

 

「さてと、俺の授業だがISがどのような使われ方をしているか分かるか?」

 

親父が質問を俺たちに投げかける。

それと同時に、俺とソフィアに質問には答えるなとアイコンタクトをしてきた。

 

「はい!モンドグロッソなどのスポーツ競技として使われています」

 

クラスでも元気のある女子が質問に答える。

まぁ、普通の人ならそういう返答だよな。

 

「確かにそう言った運用が表向きだ。だが、それだけではない」

 

そこで言葉を区切り、殺気を放出する親父。

俺とソフィアは殺気に反応し、親父から反射的に距離を取る。

 

「ジャックとソフィアは理解しているようだな。

ISの別側面は兵器だ」

 

気が付くと自分のISを身にまとっている親父。

アサルトライフルの銃口はこちらを向いている。人を簡単に殺せる兵器を向けられるというのは人を容易く恐怖に陥れる。親父から学んだことだ。

その証拠にクラスの女子は固まっている。

 

「ここの教師は優しいからな。こう言った事は教えてくれないだろう?

打鉄もラファール・リヴァイヴも用意してあるぞ?俺に立ち向かう気概のあるやつはいるか?」

 

クラスの女子はもちろんの事、俺もソフィアも動かない。

俺たちは親父の質問を理解しているだから動かない。

 

「…誰も動かないか。それで良い、それが正解だ」

 

親父の殺気が消えていく。

 

「ISは兵器だ。この事実は変わらない。だからこそ、今ここで俺に立ち向かおうとしないのは正解だ。

勇気と無謀は違う。もし、この場でISを纏えば俺と殺し合いをする事になっていただろう。

ISに関わるというのならこういった闇の部分があることを理解すると良い」

 

アサルトライフルを下ろす親父。

 

「まぁ、安心しろ。君らがIS操縦者となり、世界に出て闇に触れずに済むように俺の会社が存在している。

さて、君たちがどのような未来に進んでいくとしても、ISは関わるだろう。その時に後悔をしない選択肢を選ぶ術の一つとして俺が示せるものを見せよう」

 

アリーナ上空に白いISが現れる。

え、まじか。親父、よく呼べたな。

 

「なんていうかお前がそんな口調って気色悪いわ」

 

「お前に言われんでも分かってるわ」

 

親父の横に並び立つ白いIS。

その操縦者は織斑一夏。モンドグロッソの優勝者。

 

「俺が教えられるのは力だけだ。存分に見て盗め。そして、俺たちを超えて見せろ」

 

あくどい笑みを浮かべる親父。

ああ、この人はなんでこんなにも俺たちをやる気にさせるのがうまいんだ。

俺たちは観客席へと案内される。

親父と一夏さんの戦いってどっちが強いんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

主人公SIDE

 

「あー、めんどくさ」

 

「少しは立派だと俺の感情を返してくれファウスト」

 

そんなもんいまさらだろって感情をこめて鼻で笑う。

 

「で、戦うんだろ?」

 

好戦的な目で見てくる一夏。

随分と戦うことが好きになったようで。

 

「どれだけ強くなったか見せてみろ。世界最強」

 

「お前に勝たない限りその称号を名乗るつもりはねぇよ」

 

ブルー・サーヴァントを身にまとう。

改修を続けているが、所詮前世代の機体だ。どこまでやれるか。

 

『あまり私をバカにしないでくれるかなぁ。マスターの動きに合わせられるISなんて私しかいないよ』

 

相変わらずの減らず口に安心する。久々に全力で動かすぞ。壊れるなよ?

シールドビット、攻撃ビット全てを展開。久々のビット操作により頭痛に襲われるが、ブルーサーヴァントが受け持っている分もあるため、そこまでキツくはない。

 

「相変わらずの展開数だな……でもビットを回避するために反射神経と反応速度は最も訓練しているさ」

 

攻撃に回したビット達を避けていく一夏。その言葉の通り、俺の攻撃を躱し続けてる。

死角、フェイント、正面からその全てが綺麗に避けられる。

なるほど、確かに訓練を積んでいるようだ。しかも、これ完全に俺対策だろう。

 

「はぁ、男にモテても嬉しくないが?一夏」

 

「それは釣れないぜファウスト。世界最強の称号だってお前をぶっ倒すために手に入れた過程にすぎねぇよ」

 

高校以来だが、ナメて勝てる相手ではなくなったようだ。

 

「正面から潰してやるよ。一夏」

 

口角が上がるのを自覚しつつ、殺気を全開にしハルパーを展開。

ビットを維持したままイグニッション・ブーストで斬りかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソフィアSIDE

 

その笑みは完全に悪役ですよ父様。隣で座っている兄様が震えているところから、あの笑みは完全にトラウマになってるのでしょう。

 

「でも、あの笑みを浮かべている父様、素敵ですわぁ…」

 

「ソフィアが親父の娘ってよく分かる顔だよ…」

 

母様を中心に育てられたわたくしですが、血には抗えません。

政治や策略はわたくしの得意分野ですが、最も興奮するのは罠と知らずに足を踏み込んだ人間が見せる絶望の顔や、心が折れる瞬間なのです。

 

「わたくし、あんな顔してます?」

 

「あぁ、してるよ。全く、母様が呆れる理由がよく分かる」

 

ため息を吐きつつ、父様と一夏さんの戦いから目を逸らさない兄様。

でも、兄様も中々だと思いますよ?父様を中心に育てられた兄様は戦いというより、殺し合いを得意分野としている。

普段は温厚で優しい兄様も、戦いになると豹変する。父様の使えるものはなんでも使う根性を完全に引き継いでしまっているのですわ。

 

「一夏さんもやっぱり、強いな。親父のビット攻撃に加え、近接戦戦闘を前に20分以上戦ってる」

 

「そうですわね。それに、父様の策を全部正面から破ってます。普段は鈴さんにすら、良いようにされる方ですのに」

 

わざとビットを薄くする部分を作り、その場所からしか逃げられないようにし、アサルトライフルでの一斉放火を浴びさせようとする父様の策に反応し、最も厚い部分を機体速度にモノ言わせた突撃をし、突破したりハルパーによる攻撃をフェイクに機動力を奪うために、ブースターをシールドビットごと破壊しようとする策も見えているように避ける一夏さん。

だけど、父様も攻め手がないわけではない。愚直なほど真っ直ぐな一夏さんの攻撃に合わせ、カウンターを決めたりなどでダメージを与えている。

わたくし達や他の学生達が魅入る戦いの中、更識先生が後ろから声をかける。

 

「二人の戦いをよく見ておきなさい。あれが、女尊男卑という世論を真っ向から否定し、その力を示した男性同士の戦いよ。

そして、生き方も考え方も対極に位置する者同士の戦いでもあるわ。あなた達には、良い糧になるんじゃないかしら?」

 

そう言う更識先生の言葉に戦いをよく見てみる。そして、ある事実に気付く。

どうやら兄様も気づいたようで、苦笑している。

 

「父様はあくまで、兵器としてのIS運用を」

 

「一夏さんは、スポーツや競技としてのIS運用を見せながら戦ってるのか」

 

「正解よ。オルコット兄妹………まぁ、あの二人はそんなこと全く、考えてないと思うけど」

 

聞こえてますよ更識先生。わたくしもそう思ってたから言われてそう判断しましたわ。

一夏さんの愚直さは、きっと憧れを羨望を集めるだろう。それこそ、世界競技として理想的なIS操縦者として。

対して、父様の戦い方は相手の動きを利用したり、自らの兵装を使い、外道と言われても仕方がない運用をしている。

きっとそれは勝利を絶対とする兵器としてのISなのだろう。

 

「……ははっ、やっぱり遠いなあの背中…追いつけそうにないぞ」

 

兄様が呟く。その声には、憧れを強く感じた。

 

「……それはわたくしもですわ。兄様」

 

わたくしの言葉には、諦めを強く感じたと思う。

だって、わたくしは父様が大好きだから、その背中にずっと守られたいと思ってしまうから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

主人公SIDE

 

シールドエネルギーは残り僅かか。グリモアとビットを全力で運用し、瞬間加速を多用した。

エネルギーが保つわけがない。だが、それは向こうも同じだろう。

ちらりと客席に視線を向けると、ジャックとソフィアが俺を見ている事に気付く。

それだけで、やる気が出てくる。流石に、セシリアに応援された時よりは出ないが。

 

「……全く、俺も単純だ」

 

「昔からだろう。それは?」

 

「言えてるか。一夏、提案だ…次の一撃で決めよう」

 

「それは俺が圧倒的に有利だと分かっての提案か?」

 

零落白夜流星を有している一夏に対し、俺は決定的な攻撃手段を持っていない。

 

「なに、たまにはお前の得意な立場で戦ってやるという訳だ」

 

「馬鹿にしてくれるな相変わらず。なら、遠慮はしねぇ!」

 

白式が輝く。あの時と同じ、輝きをもって。

それを見つつ、笑う。

 

「あれを破らないと、一夏は折れない。分かってるな、ブルーサーヴァント」

 

『全く、壊れたらちゃんと修理してよ?』

 

「あぁ、約束するさ………狂戦士システム起動」

 

理性を保ちつつ、これを使うのは物凄く疲れる。

だが、手札を出し切らなければ負けるのは俺だ。息子と娘が見てるのに、無様な真似を晒すわけにはいかない。

 

「零落白夜流星!」

 

俺に向かって流星のごとく、向かってくる一夏。

確かに、流星のような速度、エネルギーを秘めている。

 

「だが、知ってるか?一夏。流星ってのは地に落ちるか燃え尽きる運命があるんだよ!」

 

ハルパーもしまい、ビットも回収する。

触れれば瞬く間に、エネルギーを奪う白き流星を俺は、なんの武装も展開せず真っ正面からブルーサーヴァントのバックアップを受け、受け止める。地面を削りながら、流星に抗う。

 

「「…うぉぉぉぉぉおおおお!!!」」

 

自分の身体がどうなるかなど無視し、俺と一夏は吠える。

ブルーサーヴァントの少ないエネルギーがゴリゴリと削られていく。

装甲も剥がれ落ち、流星のエネルギーにより融解していく。それでも、俺は負けるわけにはいかない。

 

「ッツ!?」

 

剥がれた装甲により、急所が露わになった俺に対し、武器を僅かに逸らす一夏。

やっぱり、お前は甘い。それが敗因だ。

 

「終わりだ。一夏」

 

僅かに逸れた事により、発生した隙間に手をねじ込み、一夏の首を掴む。

そのまま、自分の身体を捻り、地面へと叩きつける。

巨大な爆発が発生する。それでも、手を離さず捕まえる。

爆発により、発生した砂埃が収まる。

 

「…くっそぉ。俺の負けだ。ファウスト」

 

「ゲホッ…俺にお前が勝てるわけないだろう一夏」

 

ISを解除した一夏が悔しそうな表情をしながら俺を見ていた。

それを見て、ブルーサーヴァントを解除する。そして、一夏に手を伸ばす。

 

「だがまぁ、世界最強は伊達じゃなかったな」

 

「皮肉にしか聞こえねぇよ」

 

笑いながら俺の手を取り、立ち上がる一夏。

さてと、授業と締めの言葉を言わなければな。

 

「…これが俺の示せる唯一の授業だ!存分に参考にしてくれ。

そして、後悔のない選択をしてくれ。以上で、俺の特別授業を終わる。聞きたいことあれば、こいつに聞いてくれ」

 

そう言って、一夏の背中を叩く。

 

「は?ちょ、待って!?」

 

「午後から1日空けてとけと連絡しただろう?」

 

「嵌めやがったな!?ファウスト!!」

 

「引っかかるお前が悪い」

 

騒ぐ一夏を放棄し、アリーナから出る。

すると、さっきまでアリーナにいたはずのジャックとソフィアが目の前に立っている。

 

「……おう。どうした?」

 

「授業が終わったのなら、放課後。生徒の自由時間ですわ」

 

「あぁ、ソフィアの言う通りだ。なぁ、親父?」

 

「……あぁ、そうだな。で、どうした?」

 

身体中が痛い。全く、ピーキーすぎるワンオフアビリティだ。

気を抜かぬ様に、意識しないと気絶しそうになる。

返事を返さない二人を疑問に思いつつ、暗転しそうになる視界を必死に食い止める。

すると、二人が俺に近寄り、左がソフィア、右にジャックが肩を貸してくる。

 

「なっ…」

 

「辛いんだろ親父。これぐらいは、やらせてくれ」

 

ジャックが心配そうに言う。

 

「ふふっ、父様の弱み一つゲットです」

 

なぜか嬉しそうなソフィア。

ゆっくり、ゆっくり、歩くその速度と二人の体温がなんだかとても心地よく感じたのは俺だけの秘密である

 




父親の背中を超えたいと願う息子と、父親の背中に守られたい娘。
珍しく、セシリアが登場しない、お話。

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