救済する者   作:愛すべからざる光

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第八話 黄金

三河からの放送を見た人々は驚きを隠せずにはいられなかった。

 

総長は無能、副長は優秀という認識を持っていた極東以外の人々は副長の認識を変えざるおえなかった。

 

優秀という言葉で表すには言葉が足らなかった。人としての超越者、超人、黄金、彼を言葉で表すには言葉が足りない。

 

ただ、目の前で起こっている真実からは目を背けられずにいる。

 

放送画面全体を埋め尽くす数の(おぞ)ましい敵に対して、たった一人で戦いを挑み、次々に撃退していく姿に目移りするしかなかった。その光景は美しくもあり、とても残酷であった。

 

闇の中を照らす光であり、彼から目を離すこともできず時が過ぎていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

"栄光丸"艦橋。中央に立つ白の教皇衣は、放送されている画面に叫んだ。

 

「――まさかッ! あの服装! あの槍は――」

 

教皇総長インノケンティウスは、自分が座る椅子から立ち上がり驚きを隠せずにいた。

 

「間違いない。黒を強調したマントに黄金色の髪をなびかせ、金色の槍を持つ――」

 

画面場を見ながら言葉を述べる。

 

「南北朝戦争、レパントの戦いに姿を現した――」

 

――闇を照らす者。

 

「やはり生きていたのか」

 

 

 

 

 

 

 

 

武蔵にいるメンバーもノアの本気というのを見た事は無く、何時にもまして黄金率が増している状態、金色の槍など分からないことで一杯で混乱していた。

 

「あ、あれが副長の……ノアさんの本気」

 

アデーレが静まりかえっていた空間で呟いた。

 

「の、ノア君……」

 

「……(あの光、何処かで見たことがあるさね。思い出せない)」

 

怯えている鈴を左腕の義腕で優しく包みながら落ち着かせて、右手で顔を隠しながら何かを考えている直政がいる。

 

「………」

 

「シロ君」

 

シロジロとハイディは寄り添いながら、画面の中にいるノアを見ていた。

 

「ノアくん、お願いだから無事に帰ってきて……」

 

「ノア、貴方……」

 

浅間と喜美もただ祈るしか出来なかった。

 

「ガッちゃん……」

 

「アイツが、ノアが約束を破ったことないでしょ?」

 

手を繋いで画面を見続けるナイト、ナルゼ。

 

 

 

 

 

 

 

 

機竜の大軍に立ち向かう者がいる。

 

大軍の中で一際に輝く存在がいる。

 

機竜の攻撃をものともせず、金色の槍を振るいながら、前に前にと進んでいく。

 

一振りすれば無級、ワイバーン級の機竜が絶命していく。

 

ドラゴン級も彼の前では全くをもって無力であった。一振りで首を切断され、二振り目で体が半分に切断される。この繰り返しをしていく。

 

減っているとは感じているとは思うが数が多い上に、次から次へと排除しようと立ち向かってくるのであまり実感が湧かずにいた。

 

「(キリがないな)」

 

飛んでいる機竜を次々と落としていき、その機竜を足場にして次の機竜へと向かっていく。

 

ノア自身の術式で浮遊(・・)することが出来るようだが、燃費が悪い為に控えている。

 

 

「元信さん、こんな戦力があれば国取りできますよ」

 

ノアの視線の先は統括炉の前に立っている松平元信を見ていた。

 

ノアの言葉に軽く笑い答える元信、

 

「この大軍はそんな(・・・)ことには使わないよ。君の為に使うために用意したんだよ」

 

満面の笑みで、さも当然のように言ってのける元信。

 

「(……流石にもう時間がないな)」

 

これ以上の時間の浪費は地脈炉の破壊に支障が出ると感じたノアは動いた。

 

一瞬だけ地上の戦況を見たノアは、忠勝と宗茂の戦いが拮抗状態、いや経験の差が響いて忠勝の方が優勢であると踏んだ。

 

「まずは目の前のこいつ等を駆逐する」

 

言葉ともにノアは浮遊し、槍を両手で持ち前に掲げた。

 

何かを祈るように唱えるように空中で浮遊して静止しているノアは無防備であった。

 

そんな無防備な状態のノアを放っておく訳がない機竜達は、背中や腕に付いている武装でノアに一斉に攻撃をしてきたのだ。

 

大砲、ミサイル、槍などを一斉に射出して、彼一点に攻撃を集中させ、排除しようとしている。

 

だが、ノアは機竜の行動などものともせずに態勢を崩さずにいた。迫りくる凶器に怯えも動きもせずにいた。

 

 

 

「――傲慢(プライド )

 

 

 

直撃する、と誰もが思ったその時、一瞬彼が小さく誰にも聞こえない程度に呟いた。

 

その直後、彼に無数の攻撃が直撃し、彼の姿が見えないぐらいに直撃時の煙が散布していた。

 

共通通神帯から全国で見ていた者達は、酷く残酷なビジョンが脳裏を過ぎる。

 

彼が血塗れで煙の中から落ちてくるのだと。

 

その中でも武蔵勢の衝撃は大きかった。梅組メンバー全員が顔を真っ青にして今にも泣き出しそうにしていた。

 

だが、そんな想像など無価値であった。

 

煙がゆっくりと晴れていく。

 

 

 

――なんだ、アレは

 

 

 

煙が晴れて姿を見せたノアは無傷であった。

 

常に輝いて見える彼がさらにその輝きを増して存在していたのだ。

 

容姿から“黄金”と言われている彼の存在感が増幅している。槍からも今までとは比べられない程の光を放っている。

 

「……流石だね。あれだけの攻撃を無傷でいるなんて、それもその槍の御蔭かな?」

 

まるで予想していたように言って来る元信は分かっていた。

 

「その神器(じんぎ)の力はやはり凄いね!」

 

元信が発した言葉は全国の者に衝撃を与えた。

 

神器とは京で帝が所持しているといわれている重奏神州コントロールするために作られた三つの神器である。

 

「先生はこれを機に君の全てのことを話そうと思っているよ」

 

次々に言葉を述べていく元信。

 

「三つの神器を作った君なら自分の神器を作るのは容易いものね」

 

また驚かせることを言う元信。

 

この世界を保つために必要とされている神器を彼が作ったと述べた。

 

「その槍は君の最高傑作であり、最強戦力でもあるもんね。なんせ――」

 

 

 

――神格、聖譜、大罪、それぞれの武装の元となった槍なんだから

 

 

 

今度の今度は信じられないことを述べる元信。

 

ノアが手にしている黄金に輝く槍は各国が保有する神格武装、聖譜顕装、大罪武装の原点になったモノであるという。

 

 

「聖約・運命の神槍は先生の頭脳を持ってしても全てを分析できなかった。だが、その槍の中には膨大な力が眠っているのは分かった。その一部である技術を大罪武装として先生は作った」

 

「……大罪武装を作るまではいい。だが、その大罪武装がホライゾンの一部であるというのは気に食わない!」

 

ノアは周りにいる機竜を先程の倍の速度で殲滅していく。

 

「今の君は"傲慢の光臨"を最大限に生かしているってところかな」

 

六護式仏蘭西の総長連合総長のルイ・エクシヴが持つ大罪武装"傲慢の光臨"の超過駆動をノアは使用していた。

 

「はは、出力も桁違いじゃないか!」

 

"傲慢の光臨"の超過駆動の効果は「所有者が誇りを保つ限り、当人の力を無敵にする」というものであり、大罪武装は出力が低く作られている為に原点であるノアが持つ槍には到底勝てない程の出力を誇っている。

 

ノアは今では機竜の攻撃を避けることなく、受け続けて、機竜を絶命させている。真っ向から突き刺して行っている。

 

 

 

「――怠惰(スロウス)

 

 

 

前方から一斉に襲い掛かってくる機竜の群れに向かって、小さな声で発し、槍を一振りした。

 

その一振りからは黒い手のような攻撃が発生し、機竜の群れを削ぎ落としていく。

 

体ごと消えた機竜、体の一部を削られて上空から地表に落ちていく機竜、一振りで五千もの機竜を屠った。

 

「おぉぉっ!!、次は"悲嘆の怠惰"の超過駆動かい。しかも"悲嘆の怠惰"、"傲慢の光臨"を同時に発動させるなんて、やはりノア君は最高だよっ!」

 

興奮が収まりきらない元信は、まるで初めて玩具を買ってもらって喜ぶ子供のようにはしゃいでいる。

 

迫りくる死の恐怖など知ったこと無く、実際に槍を振るうノアに鳥肌が立ってしまっていた。

 

そんな元信など気にすることなく、さらに機竜の数を減らしていくノア。

 

 

 

「――形成」

 

 

 

機竜の距離を取り、槍を一振りし右手に持ち、呟いた。

 

その瞬間、眩しすぎるほどの光を槍が放ち、画面を見ていた者達は一瞬だけ目を閉じてしまっていた。

 

光が収まりはじめ、画面に再び視線を戻すと彼の()()に変化していた。

 

刀身は三尺余りぐらいであり、剣が光を放ちながら彼の手に握られていた。

 

槍のような禍々しさがなくなり、逆に『美しい』と感じてしまう程の魅力を放っている剣だ。

 

この剣を見たとある人物二人が反応を示していた。一人は玉座から立ち驚きを隠せずにおり、もう一人は自室で只々驚いていた。

 

「……ノア君、流石の先生でもそれは予想外だな」

 

ははは、と笑いながら新しい発見に高揚していた。君はまだまだ、隠し事が多そうだ、と内心で思いながらノアの戦いぶりを見る。

 

 

普通なら変化があった敵に対して警戒するものだが、機竜にそのような思考はなかった。

 

ただ指示されたことを遂行するため、目の前の敵を殺す為に生まれた機竜達はノアに突撃していく。

 

そんな機竜を見ながらノアは剣を両手で持ち薙ぎ払った。

 

 

 

「――勝利すべき黄金の剣(カリバーン)

 

 

 

彼の言葉と同時に光り輝く刀身が伸び、機竜の群れを薙ぎ払っていった。

 

横からの一閃になすすべなく切り払われていく機竜。

 

上半身と下半身が別れ、切断部分から体が跡形もなく消滅していったのだ。触れたモノを全て薙ぎ払っていく。

 

全てを蒸発させていく黄金になすすべもなく消失していく機竜。

 

 

「なるほど、英国の"王陽剣(エクスカリバー)"かい。槍の中に内包されていたのかな」

 

 

元信が先ほど言ったことが本当であったことが本当であったことが証明された。

 

――英国の神格武装である王陽剣もノアは使ってみせたのだ。

 

「視野に映った機竜が全て薙ぎ払われてしまったが、一体どれくらいの射程があるんだい?」

 

「……この三河から英国までは届く」

 

元信の問いに静かに答えたノアに対して元信は笑い、画面越しから見ていた人達は絶句していた。

 

三河から英国までどれだけあると思っているだ、と内心で信じ切れず驚いていた。

 

「おやおや、先生が用意した機竜があと一匹に!! なんということだぁ! 凄いぞノア君!!」

 

嬉しそうに言葉を述べる元信は焦る様子もなく言う。

 

「最後の一匹はとっておきだよ! ヨルムンガンド級の機竜だぁっ!!!」

 

ノリノリで言ってくる元信が空に向かって指をさした。

 

月の光が照らしていたはずの三河に暗闇がやってきた。機竜が月の光を塞ぎ、羽を大きく広げ立ち塞がっていたのだ。

 

「さぁ、先生にノア君の力をもっと見せてくれ!!」

 

子供のようにはしゃぐ元信を尻目にヨルムンガンド級の大きさで凶悪な爪で勢いよくノアに襲い掛かろうと迫ってくる。大きさが大きさなだけに威力も桁違いだろう。

 

だが、ノアは空中から動く気配がなかった。まるで先程のように受け止めるようであった。

 

そして凶悪な爪が容赦なくノアに直撃し、物凄い轟音が三河、武蔵、画面外の者達に響いたのだ。

 

 

 

――え

 

 

 

誰もがそう口にしていた。

 

確かに轟音が響きまわった。

 

だが、その音は金属と金属がぶつかり合う音であった。

 

もっと大地を削るような轟音や雷のような轟音が響くと思っていたがその予想は外れていた。

 

何故なら……

 

――その場から動くことなく片手で持っていた剣で巨大な機竜の爪を受け止めていたのだ。

 

確かに彼は受け止めていた。その証拠に受け止めた直後に彼の背後に物凄い突風が舞っていたからだ。

 

 

「………」

 

 

元信も流石に唖然としている。

 

 

機竜の方も受け止められてからずっとノアを動かそうと力を込めているのに関わらずぴくりともしない。

 

まさに不動(・・)であった。

 

「これで終わらせる!」

 

ノアが言葉を発した瞬間、均衡を保っていたはずの機竜とノアの爪と剣のぶつかり合いが一瞬でノアが機竜ごと上空に押し返したのだ。

 

叫び声のような咆哮をあげる機竜に対して、ノアは両手で剣を持ち、叫んだ。

 

 

 

「――約束された勝利の剣(エクスカリバー)

 

 

 

一層輝きを増した剣が機竜に振るわれ、黄金の光が機竜を呑み込んだ。

 

ヨルムンガンド級の大きさであるはずの機竜を光が呑み込み、光が空高く伸びていく。

 

世界中の者達が画面から目を離し、空を見た。

 

光の光線が伸びた先には放たれた光が収束し、夜空を照らしていた。夜を照らす太陽、三つめの月、と明るい光が世界中の者達に目撃される。

 

光が収束していき、空に視線を移していた者達は画面に視線を戻すと明らかにノアに変化があった。

 

彼の綺麗な金色の髪が変化していたのだ。

 

腰の辺りにある髪が一部だけ黒髪になっていたのだ。

 

「やはり、それ程の力には代償があるのかね?」

 

『ッ!?』

 

元信の言葉に驚く。

 

今までが今までに当たり前のように彼が力を使っていたので気付かなかった。

 

「……」

 

「沈黙は肯定と思っていいんだね」

 

悲しそうな表情でノアを見ている元信。

 

「ノア君が無理する必要は本当にないのにね……」

 

「……では、投降してください」

 

「それはできない」

 

ノアが投降を呼びかけるも拒絶する元信。

 

「なら止めます。まだ時間はある」

 

元信の決意が揺るがないと分かったノアは当初の予定通り流体を抽出している抽出炉の破壊を決意するノア。

 

「まだ無理をするのかね、ノア君。無理はいけな――ッ!?」

 

元信の言葉を耳にとめながらも、手に持つ剣を両手で持ち、先程と同様に"約束された勝利の剣"で抽出炉の破壊をしようと構えるのであったが、背後からノア自身得体の知れない悪寒を感じ、早急に振り返って見ると――

 

 

 

 

 

 

 

「何故このタイミングで現れるんだ」

 

絶句してしまった元信は目の前の現象に驚きを隠せないでいた。

 

 

――公主様

 

 

ノアの背後に蒼い炎が現れて、彼が消えてしまった。

 

めのま

 

その場に残るのは蒼い炎で描かれた二境文。

 

そして――"遊ぼう"という文字だけであった。

 

 

 




ホライゾン更新……一年以上ぶり……本当にすいませんでした。
途中で何度も書き直しをしたり放置したりしていました。
誠に申し訳ありません。

期間を開けながら書いてしまったので、ちょっと違和感あるかもしれません。
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