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三河の事態は、現段階も全国放送されている。
そして全国の人達が目の前で起こった事に驚愕し、恐怖した。
武蔵の副長が圧倒的な力を振るい、戦っていたにも関わらず、ソイツは彼の力など御構い無く、彼を消し去った。
彼が居た場所には蒼い炎と共に
――遊ぼう
ただそれだけが残されていた。
唖然としているのは三河で騒動を起こしている元信もだった。まさかの事態に動揺を隠せずにいた。
武蔵のメンバーもそれぞれ悲鳴にも似た声を上げている者、目に涙を浮かべる者、目の前の事が信じられずに肩を震わせる者。
だが、そんなのも束の間、轟音と地震が三河を襲った。
画面上から見ている者達も物凄い轟音が響いたのに驚き、画面を見続けている。
元信は轟音のした方角に視線を向け、またカメラを向けさせた。
『なぁッ!?』
誰が発した言葉か分からないが画面を見ていた者、武蔵から見ていた者は仰天していた。
三河近くの山が不自然に削れ、削れた山の向こう側から金色の光が漏れているのだ。
夜ということもあって、分かり易いぐらい見えており、その光は先程ノアが放っていた黄金の光に似ていた。
山の向こう側がどんな状況か、現段階では分からないが、落ち着いているとは到底いえない程に爆撃音のような音が聞こえてくるのだ。
明らかに誰かが戦っている。
あの光を放てるのは現状で考えられるのは、先程まで居たノア以外考えられなかった。
光が出ていた方向を見ていると徐々に光が収まっているのだが分かった。
少しずつ弱くなってきた光が見えなくなった。
それと同じくして新名古屋城から伸びていた光の塔が全て消え去った。地震のような振動が止み、光も消え、何時も通りの三河に戻ったと思えるぐらい静かであった。
「しくじりました」
光が見えていた山の方に視線やカメラが向いており、突如として新名古屋城に通じる橋から声が聞こえた。
全国で見ていた者が聞き覚えのある声に驚く。
全視線がそこにいる彼を捉えた。
――ノア
公主隠しにあった筈の"ノア"が膝をついていた。
そして先程とは違い、黄金の槍や剣など持っておらず、無双していた彼とは思えない程にノアは傷ついていた。
綺麗な金色の髪以外全てに彼の血が付着していた。武蔵アリアダスト教導院の服は白い生地の部分が全て真っ赤になっており、黒い生地の部分も血が付いたであろう跡が付いている。頭から流れる血のせいで瞳が血の色で染まっている。口からも血が流れている。
髪も肩の部分まで黒髪になっており、先程よりも浸食が進んでいた。
「……まだ」
血塗れになりながらも立つノア。震える脚を殴って無理矢理立つ。
「まだ間に合いますよね」
ゆっくり立ち上がるノアの体からは血がポタポタと垂れ、彼の足場に血の池を作る。
「君はまだ無理をしようというのかい? そのままだと君――死ぬよ」
元信は断言した。あの血の量は危険だ、と
「……こうでもしないと元信さん止まらないでしょう」
確かにね、と笑う元信は思う。
諦めが悪いのは昔から変わらないな、と
「でもね、君を失うのはこの世の損失だ」
言葉をつづける。
「それにこれ以上ノア君に術式を使い続けさせるわけもいかない――」
――だから副長、ノア君を倒してくれるか
元信の言葉にその場から飛び退くノアであったが、それが失敗であった。
「眠ってもらうぜ」
飛び退いた先に壁が現れ、その壁に反応できず激突してしまい、衝撃で一瞬だけ思考が意識できなくなってしまっていた。その隙を本多・忠勝は見逃さなかった。
宗茂と戦っていた忠勝がノアの首元に刃先の部分ではなく棒の部分で殴打したのだ。
連戦に及ぶ連戦で疲労が出ていたノアは完全に力を出せはしなかった。
忠勝の攻撃をまともに受けてしまったノアは橋の上に沈んだ。
「忠勝様、急ぎませんとこの場所も危険です。ノア様を退避させねば」
忠勝の首元には鹿角がいた。先程のノアの前に壁を作ったのは彼女の重力制御によるものだ。
「静かになりましたね」
橋の上に新たに新しい人物が現れた。
忠勝に倒されて気を失っている宗茂の隣にスッと現れ、気を失っている宗茂の頬を優しく触り、忠勝の方に向いた。
忠勝の近くで気を失って倒れているノアの方を一目だけ見た後に両義腕の少女は、目の前にいる武人と自動人形を見た。
「どちらが勝利を?」
「我の勝ちに決まってんじゃねえか、立花・誾」
と、ややかすれた声で、忠勝が言う。
「立花・誾、立花・道雪の娘ですか」
忠勝の言葉に鹿角が反応し、応えた。
「地脈炉は壊れてねえ、それに二人は地面に沈んで、我はこの通り立っている」
指で二人の事をさしながら忠勝が言った。
「ノア様には不意打ちで、尚且つ私の重力制御のおかげでもありますのに」
鹿角が忠勝の言葉に対して口を挟んだ。
「おま、我が勝利に浸っているのによ」
「立花・宗茂様だけならまだしもノア様も全快の状態で戦っていましたら負けていましたよ」
「勝ちゃいいんだよ!」
だが、その通りだ、と悔しそうに頬をかきながら忠勝は鹿角の言葉を認めた。そして誾の方を向いて言った。
「お嬢ちゃん、早く二人を連れて帰りな。今は崩壊の直前のわずかな静けさってヤツだが、すぐにここは消えるぞ」
「では、忠勝様達も――」
忠勝の言葉を理解し、彼らと一緒に退避しようと言おうとした誾あったが忠勝の足下に広がり始めていた血の海を見てしまい、言葉が言えなかった。
「若いのにやりやがるぜ、あと五十年もしたら我に勝てるかもしれなかったがな」
忠勝は決して無傷で宗茂に勝利したわけではなかった。
速さを生かして戦っていた宗茂であったが場数の違いが明らかに出てしまい、苦戦を強いられていたが、ノアが倒した機竜の亡骸やノアの武器の衝撃波などで地表にいる宗茂達は足場の悪い中、戦い続け、若い宗茂の思い切りの良さが忠勝に一撃を喰らわせる要因になったのだ。
だが、忠勝はその上をいっていた。悲嘆の怠惰で抉られ斬られながら宗茂に重い一撃を放ち、彼の意識を失わせてしまっていた。
「……申し訳ありません」
と、ふと、俯いた誾に対して、忠勝は笑った。
「ま、これも仕事だ。我が勝利したから、これから三河は消える。ただそれだけだ」
「……何故、地脈炉による三河の消失にそこまでこだわるのですか? 元信公は」
「さっき殿が言ったろ? "創世計画"ってやつだ。大罪武装を始めとする幾つもの教材によって解かれる"創世の試験問題"それにこの若も重要な存在だ」
沈んでいるノアを指さして忠勝は言う。
「それよりも早く帰んな。我も歳だから疲れたわ」
やれやれだぜ、と一言愚痴をこぼした。
「立花・誾様、この老いぼれに戦う意思はないので、警戒しなくてもよろしいですよ」
鹿角の言葉に、ひでぇな、と忠勝は苦笑いしていた。
誾はその言葉が本当だろうと信じ、宗茂とノアの身を両肩に担いで運ぶ準備をしていた。
「なあ」
忠勝の声が飛んだ。
「ここに来たの、アンタの独断か?」
「いえ、子供ではないので許可を取りました。――返事が来る前に来ましたけど」
両肩に二人を担ぎ終わり、この場を去ろうとする誾は再度忠勝達の方を向いた。
「ここで、――忠勝様達は中退ですね」
「勝ち逃げって言わねぇ?」
「忠勝様がここで中退されても、
「……ずいぶんと負けず嫌いだな」
「当然です。夫、立花・宗茂は西国最強でなければいけないのです」
と言って、誾は一歩下がった。
「お、そうだ――」
忠勝が手にしていた蜻蛉切を誾に放り投げた。誾はノアを担いでいる方の義腕で受け取ると、眉を歪め
「これは――」
「再戦したいなら三河消失で吹っ飛ばしたら駄目だろが、――大罪武装とまでいかずとも、神格武装だ。これくらい無くちゃあ、そっちのボウズと対等の勝負になるめぇよ」
Tes.と言って、誾が一度蜻蛉切の重みを確かめるように握り直した。そして彼女が一歩下がり、そのまま二歩、三歩と行き、
「――よい再戦を」
言葉を最後に誾の姿が消えた。加速して、一気に距離を空けたのだった。
「さて」
忠勝は背後を振り向き、首元にいる鹿角を確かめ、新名古屋城にいる松平・元信の下に歩き始めた。
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忠勝は歩きながら鹿角に話をする。血を垂らしながらも歩き続ける。
「なあ」
忠勝の言葉に鹿角は反応して言葉を待った。
「二代のヤツ、若とちゃんと子作りすっかな?」
「……どん引きです」
「いやいや、最後ぐらい娘の心配ぐらいさせろよな」
「それでそういう言葉が出てくるのは可笑しいと思いますが?」
「だって二代のヤツにそういう知識教えてないじゃん」
「……」
二人とも珍しく息が合いため息を吐いた。
そして忠勝は無人の町を歩きながら群衆に向かって一言。
「おい、先生よ、我にも酒くれよ」
離れた場所にいる元信に忠勝は言った。
「あとであげるからお預けな、この後に存分に飲み明かそうよ」
忠勝の事を見て、笑みを浮かべて応えた元信。
「先生よ、我、中退だってよ」
「安心しなさい。井伊と榊原もそんな感じだから」
「結局、残ったのは酒井の馬鹿だけかよ。――馬鹿のくせにいつも上手いことやりやがるな」
だよな、と元信が応えた。
「若のヤツ大丈夫だよな」
「大丈夫、大丈夫、なんだって公主隠しから帰ってきたしね」
確かにな、鼻で笑うように忠勝が応え、肩の力を抜いた。
「大罪武装という教材は準備して、撒いた、先生はこれぐらいしかしてないさぁ」
満足した笑顔を浮かべて言った元信。
「――はじめの一歩は先生とお前らだ。何より一番乗りという響きが良い――」
元信はマイクを握り直し、そしてこう言った。
「――これより授業を始めます!」
元信の言葉と同時に新名古屋城が爆発消失した。
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爆発の光を正面に捉え、忠勝は笑っていた。
先に消失した元信を看取り、忠勝は笑っていた。
消える瞬間、元信が軽く手を振っていたのを忠勝は見たからだ。
「ったくよ、酒飲みたかったぜ」
愚痴をこぼした忠勝。
「忠勝様……」
首元で黙っていた鹿角が声をかけてきた。
先程から発言していなかったから停止したものかと思っていた忠勝であった。
「どうした鹿角」
「最後なので、奥様の魂を御返ししようかと」
鹿角は忠勝の妻の指輪を魂にして作られた存在の自動人形であった。
彼女の舌には青珠が埋め込まれており、それが鹿角の魂である。
鹿角は忠勝に舌を見せ、取れ、と言わんばかりに押し付けてきたが、
「いいぞ、別に。それよりも最後まで話に付き合えよ」
鹿角を魂を取ることはなかった。
「女房の指輪を魂にしたら、……まぁ口の悪さがそのままでよ」
言って、忠勝は鹿角を抱き寄せた。
「だがよ、女房を近くに感じられた。感謝するぞ鹿角」
忠勝の言葉に鹿角が目を細め、小さく笑った。
その笑みに忠勝は苦笑を返し、
「タイミング良過ぎるぞ、お前」
次の瞬間、その身と声も、等しく光に飲み込まれた。
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そして三河は新名古屋城を中心として消滅した。
消滅に際して約直径十数キロに及ぶ爆発消失が起こり、遠く奥州、九州からも確認された。
爆風が三河付近三十キロ前後まで町の残骸などを辺りに飛散させた。
急な雨などの環境の変化も爆発によって生じたが、明朝には回復していた。
三河消失の最善で戦っていた、西国無双"立花・宗茂"と武蔵総長連合 副長兼全補佐"ノア"は、本多・忠勝に敗北し負傷して気絶してしまうが現場に駆けつけた"立花・誾"によって回収され、三河を脱出し、怪我の治療と避難のために、三人は三征西班牙の警護艦に回収された。
治療中のノアは重症であったが、命に別状がないものの意識を失ったまま目を覚まさないでいた。
そして翌明朝。各国が動き出し、武蔵が緊張に包まれる中、三河に来訪している教皇総長インノケンティウスが、聖連の臨時代表として判断を下した。
三河という中東の貿易港を消失させた責任を松平家に追及するものであった。
三河君主の子である自動人形の魂と同化した九つ目の大罪武装を奉還することで責任を取らせようということであった。
方法は、彼女の魂を三征西班牙の審問艦にて分解し、大罪武装を取り出す。
自動人形は魂を壊されれば死ぬため、これは彼女の"自害"を意味していた。つまりホライゾンが死ぬということ。
そして三河の嫡女として認知された自動人形が、指導者である己の責任を引責自害として了承した。
自害執行予定時刻は本日の午後六時。
それが、自動人形となったホライゾン・アリアダストの"自害"の時間であった。
そして治療中の武蔵アリアダスト教導院、総長連合 副長兼全補佐"ノア"に対しても判断が下されていた。
意識を取り戻し次第、事情聴取及び大罪武装級武装を聖連への献上、聖連への永久服従が下された。
ホライゾン・アリアダストと同様にノアは身柄を拘束されていた。
やっと一巻が上が終わったとか……
アニメ三期やるまでに二巻を終わらせたいな(願望)