救済する者   作:愛すべからざる光

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更新が遅くなってすいません。
リアルがガチで忙しくなってしまって、書く時間がない状態になってしまって。

※誤字・脱字があれば報告をお願いします。


第二話 授業という名の模擬戦

右舷二番艦、多摩表層部に店を構えるパン屋兼軽食屋『青雷亭(ブルーサンダー)』という場所にとある人物がいる。

 

「あはは、クラスの女の子達の朝食作ったのに自分のは作ってなくて食べれなかったってかい、あははー」

 

頭巾に前掛けをした中年の女性が手を叩きながら盛大に笑っている。頭巾をかぶった女性はこの店の青雷亭の店主『(あおい)善鬼(よしき)』という。

 

「恥ずかしながら、でも直政もマルゴットもナルゼも喜んでくれたので、私的には納得してますから」

 

彼女とは反対側に座っている男性はノアだ。今頃になって朝食を食べているようだ。

 

「ノア様は完璧超人に見えて抜けているのですね」

 

ノアの横に座っている女性が言う。彼女は長い銀髪をした自動人形の少女。ノアの隣でお茶を入れながらノアに話しかけている。彼女の名前は『P-01s』という。

 

「そうそう、ノアは見た目も中身も完璧にみえて、何処かすっぽ抜けているんだよ、あははー」

 

P-01sの返答に店主が返し、まだ笑っているようだ。そんな光景をノアは苦笑いで誤魔化してご飯を食べていた。

 

「Jud.武蔵様から色々とノア様の噂は聞いておりますが、“完全無欠(かんぜんむけつ)”、“好男子”、など色々二つ名があるようですが?」

 

「P-01、ノアは確かに掃除、洗濯、料理、面倒見の良さ、器量、さりげない優しさ、他にも色々とあるけど、そういう所が全部合わさって、“完全無欠”、なんて呼ばれてるし、それにさりげない優しさが乙女心をくすぐるなんて喜美の奴が言っていたよ」

 

P-01sの疑問に店主が答えてくれた。店主が言った言葉にP-01sは手をポンっと叩きながら納得しており、本人であるノアは苦笑いを浮かべて頬をかいている。

 

「皆さん、私を評価し過ぎなのですよ。私はやりたい事をやっているんですからね」

 

箸を置いて、店主とP-01sの方を向きながら胸に手を当てて言うノアを見て、店主は、また笑い出してお腹を押さえていた。P-01sの方はじーっとノアの事を見ながら何かを思っているようだ。

 

「P-01s? 何かあった?」

 

ノアの方を見ながら動かなくなっているP-01sに気付いたノアは言う。

 

「――ご飯粒が付いていますよ」

 

そう言うとノアの口に付いていたご飯粒を取り、自分の口に含んだ。その行動に驚く、店主とノア、二人が疑問を浮かべ、首を傾けるP-01s。

 

「そんな処理の仕方を誰に教わったんだいP-01s?」

 

店主の言った事にノアも頷きながらP-01sに答えを求めた。

 

「Jud.本で読んだので、男性の方はこういうのをやって頂くと、喜ぶと書いてあったので」

 

二人はその事を聞いて内心で一緒の事を思う。『教育に悪いのでその本を捨てよう』と。

 

「ノア様、教導院の方へは行かなくて大丈夫なのですか?」

 

真喜子(まきこ)さんには連絡してあるから大丈夫だよ、途中から合流するつもり」

 

まだ残っているご飯を食べて二人と談笑して、ご飯を食べ終わった。

 

「ご馳走様でした」

 

「お粗末さまでした」

 

ノアが両手を合わせてお礼を言って店主が答えてくれた。食器を片付ける為に奥に行ってしまった店主。そしてそっとP-01sが暖かいお茶を持ってきてくれていた。

 

どうぞ、と言いながら出してくれたお茶を、ありがとう、と言いながら受け取るノア。

 

「――衝撃音が近付いてきます。そろそろ梅組の皆様が来るようです」

 

P-01sが言葉に出して言ってくれた事に頷きながら、席を立ち、P-01sの前に立つ。

 

「ちょっと手を貸してくれないか?」

 

ノアの言葉を理解できずに首を傾げながら手をノアの方へ差し出したP-01s。その手を両手で掴んだノアは何かを思いつつ手を優しく包んだ。

 

「―――暖かい」

 

まるで割れ物を大事に持っているようにP-01sの手を包んでいるノアはその手から暖かみを味わっていた。P-01sはノアのこの行動を理解できていなかった。自分は何をされて、何をすればいいのか、分からないという答えしか彼女の内心では解らないことだらけだった。

 

「ごめんね、ありがとう」

 

手を離してP-01sの頭をさりげなく撫でてから出口に向かっていくノアを止める者が居た。

 

「P-01s?」

 

服の袖を少し摘みながらノアの顔を見ながら彼女は言う。

 

「……今度来ましたらもう一度、手を握ってくれませんか?」

 

P-01sがそんな事を言うとは思っていなかったので面を喰らったノアであったがすぐに持ち直し、笑顔で了承して店を後にした。

 

その後、店主が声を掛けて来るまでP-01sはノアに掴まれていた手をじーっと見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

梅組一同とオリオトライが授業という名のデスゲームをしている。場所は教導院から遠退き、多摩の商店街通りに来ていた。

 

「―――アイスが」

 

再三(さいさん)の攻撃も受け流され、攻撃した本人、“浅間 智”、が叫んでいた。悔しそうにペルソナの手の上で膝を着いている。

 

浅間の近くに居る点蔵も悔しそうにしており、彼も攻撃したのだが、受け流されて一撃を与える事ができなかったのだ。だが、ここで諦める訳にもいかないので追いかける事に専念し走っている。

 

「ほらほら、貴方達の力はそんなものなのかしら」

 

後ろ向きで走りながら梅組の生徒に呼びかけるオリオトライは楽しそうに満面の笑みを浮かべていた。昔と比べて成長していることを思いながら、ついつい笑みがこぼれてしまっていた。

 

自分の言葉で梅組の生徒の走るペースが上がったのを見て、満足そうに笑みを浮かべ、自分も前を向く為に方向転換しようとしたのだが、オリオトライは何かを感じていた自分の後ろに誰かいるという気配だ。

 

「遅れてすいませんでした」

 

オリオトライが前を向くとそこには申し訳なさそうに頭を下げているノアがいる。オリオトライはその光景を見て律儀にちゃんと謝ってきた事にも驚きつつ、何時の間に背後を取られたのかという驚きの方が大きかった。油断はしていなかったのに全く気配を感じなかったのだ。

 

「別に謝らなくていいわよ。連絡してくれたんだし、トーリなんて連絡無しよ。ほら、走って走って!」

 

立ち止っているノアの肩を掴んで強制的に走らせるオリオトライに体勢を崩しかけてしまったノアであったが、立て直してオリオトライの後を追いかけて行く。走りながら説明を聞き、やる気が出てきたようだ。

 

「一撃入れればいいんですね?」

 

「そうそう、ノアにとっては余裕かもしれないけどね」

 

オリオトライの言葉を聞いて、一気に加速してオリオトライに近づいて拳を振るうノア。オリオトライも鞘付きの長剣で真正面から来た攻撃を受け流して、逆に自分はその受け流した勢いを利用して反撃に転じていた。回転しながら来る斬撃をノアはしゃがんで回避して、今度は脚を払おうとした。

 

「バレバレよ」

 

脚を払う瞬間にオリオトライに読まれていた為にジャンプして避けられてしまい、隙を見せてしまったノア。その隙を見逃すことなく長剣を振り下ろすオリオトライ。

 

「先生のその行動も予想していたよ」

 

自身の手を着いて長剣の攻撃を脚で受け止めたのだ。止められた事に驚きもせず笑みを浮かべて楽しそうにしているオリオトライはすかさず後ろに後退しながら体勢を整える。

 

「でも私がヤクザの事務所に着いちゃえばいいんだから逃げるわ」

 

オリオトライは屋根と屋根を飛びながら品川方面へ向かって行く。逃がすつもりもないのですぐにその後を追うノア。

 

 

 

 

そして少し後ろに居た梅組のメンバーは先程の戦闘を見て、やはり凄いと感心していた。

 

「ノア殿はリアルアマゾネス相手に一歩も退かんで御座るな」

 

「拙僧には追い込んでいるようにも見えたが」

 

点蔵、ウルキアガの二人が言う。前方にいるノアに追いつこうと走る。

 

「絶対にノア君には一撃入れて貰ってアイスの恨みを晴らしてもらって、一緒にアイスを食べに行きましょう!」

 

「あ、あ、あさまさん、く、口から、よ、欲望が漏れてる」

 

浅間と鈴もそれぞれ言う。

 

「流石は我が主様です。すぐに加勢に参ります」

 

「相変わらず、ミトはノアに夢中なことさね」

 

ネイトや直政もそれぞれ感想を述べていた。

 

「ガッちゃん、ノーちゃんと一緒に先生に仕掛けよう!」

 

「そうね、二人だけでも行けそうだけど、ノアが居れば確実にイケるわね!」

 

ナルゼ、マルゴットの二人は飛んでいるので先程の戦闘がよく見えていた。そして皆より先にノアと合流してオリオトライに仕掛けようとしている。

 

 

 

 

 

 

あれから再び何人かが追いつき仕掛けて、何人かが一撃を入れるのに成功している。ノアがオリオトライに仕掛けている時に不意に仕掛けて一撃を決めたのだ。今のところではノア、浅間、マルゴット、ナルゼの四人が一撃を入れている。

 

「(さっきまで無傷だったのにノアをが合流してからボロボロにされたわ)」

 

オリオトライは内心で愚痴りながら、自分の生徒達が成長しているのに喜んでいた。実際にニヤニヤしながら走っているのが証拠だ。

 

「(ノアを中心に動けばこのクラスヤバいわね)」

 

途中参戦したノアが入ってきて、急に勢いを増したのだ。誰かが牽制し、その牽制も足りなかったらまた誰かが加わり、一人では決して仕掛けてはいかなくなり、常に三人で仕掛けてその三人の中にはノアが必ず入っているのだ。オリオトライを釘付けにしている間に堪らず残りの二人が仕掛けるという手順でオリオトライに四回も攻撃を通したのだ。

 

「(ここは一つ策を仕掛けちゃいますか)」

 

点蔵とウルキアガとノアの攻撃を捌きながら、内心で色々考えた結果、まずは要であるノアを分断することを考え付いたオリオトライ。

 

「ちょっとノア、一人の女性を痛めつけて傷物(きずもの)にしてどうしてくれるのよ!?」

 

「傷物――」

 

オリオトライの言葉、“傷物”、という単語に反応したノアは追い駆けていた脚を止めてしまい、その場で止まってしまった。梅組の全員が思った事は一緒だった。またやりやがったあの女、という気持ちであった。

 

「……私が一人の女性を傷付けてしまったというのか、私は女性を幸せにできないというのか、私の存在理由とは一体なんなんだ、私はどうなってもいいんのだ、彼女達が幸せであれば…、私は誰一人も救えないというのか……死ぬしかない」

 

その場で膝を付いて、空を見上げながら、独り言をつぶやいている。

 

ノアのトラウマスイッチが入ってしまったようだ。

 

彼は女性限定で、しかも向こうが傷ついたり、泣かれたりした時にそれを直接言われた場合にネガティブ思考に入ってしまうのだ。言われない限り正常なのだが、本人に言われた場合のみくる発作だ。そして親しければ親しいほど、そのダメージは大きい。

 

『ちょっとタンマ!!』

 

ノアが膝を付いてブツブツ言っている側に梅組全員が集まっていた。

 

「ノアさん、元気出してよ! 私まだ先生に一撃入れていないんだよ!」

 

「ノ、ノアくん、げんきだして、わたしたちにはあなたがひつようなの!」

 

アデーレ、鈴がの目の前で必死に励ましていた。

 

「全く、完璧超人に見えるのに弱点があるなんてね(でもこれがギャップっヤツなのかしら?)」

 

「でもそんなノーちゃんに惚れてしまっているガッちゃんとナイちゃんがいるのでした~」

 

ナルゼ、マルゴットがノアの後ろに立って両肩に手を置いて慰めている。ナルゼはノアの事を観察して慰め、マルゴットは自分達が惚れてる事を堂々と言っていた。

 

「心配しなくても私達が付いているさね、だから安心してノアは私達の前に立っておくんさね」

 

「そうですとも、我が主様は堂々としていただくだけで我々は安心するのです。我らに道を示して下さい!」

 

直政、ミトツダイラの二人はノアの前に来て励ましていた。直政はノアの顔を強制的に自分の方に向けさせ、目と目を合わせて言う。ミトツダイラもノアの前で膝を着き言っていた。

 

「あ、あれ、私達の出番ないのでは?」

 

「バカね、私達はこの後よ、ノアが疲れている所に私達二人が接近して、胸を当てて癒してあげるのよ~! そしてそのまま押し倒されて色々と――」

 

浅間、喜美がノアの背後で何やら話していた。浅間は考えを喜美に相談していて、喜美は授業が終わってからの事を考えているようだ。話がどんどん進むにつれて腕を組みながら悶え始めている。

 

「ノア殿でも女性には勝てないで御座る」

 

「拙僧も“強い女性”には勝てないぞ」

 

点蔵、ウルキアガもノアの近くで心配そうにしながら女性の事について話していた。

 

「ノアの奴が動けなくなったらお金が動かないではないか! ノアのいる所には必ず儲けがあるのに!」

 

「シロ君、こういう時もお金の事を考えているなんて素敵!」

 

シロジロ、ハイディの二人も近くにはいるが全然違う事を考え言っていた。

 

「(ノアの奴が動けなきゃ、弟妹達が泣いちまうな)」

 

「(完璧な人でも弱点は無いとね)」

 

ノリキ、ネシンバラも近くに寄りながら心配しているようだ。ネシンバラの考えは心配しているのか微妙であるが。

 

小生(しょうせい)が思うにウチのクラスの女性陣はベタ惚れですな」

 

「……」

 

「カレーどうですか!」

 

「御広敷君が言っている事は誰もが知っているよ、ねぇ、ネンジ君」

 

「Jud.そんな事は承知済みよ!」

 

御広敷、ペルソナ、ハッサン、健児、ネンジの五人も近くに寄り話をしていた。

 

ノアの周りにはすぐに梅組の全員が集まっていた。彼はそれほど信頼されて、愛されている。

 

「……すいません、トラウマが再発したみたいで」

 

先程の落ち込みようからどうにか回復して気持ちの整理ができたようだ。マイナスオーラ全快であったが皆の声を聞いて立ち直れたようだ。先程と違い目に輝きが戻り、何時ものノアに戻っている。

 

そして全員が前方にいるオリオトライに目を向けていた。律儀にもオリオトライも走るのを止めて、待っていてくれた。

 

「(あらあら、これは逆に逆鱗に触れちゃったかしら?)」

 

多数の殺気を感じながらオリオトライは走り出した。だが、走り出した瞬間に元いた場所に矢と槍が突き刺さっていた。浅間の矢とアデーレの槍をミトツダイラが投げたようだ。

 

『追えー!』

 

誰かの号令で全員が一斉に動き出した。行動は早く何人かはオリオトライに追いつき仕掛けている。怒涛の勢いで攻める梅組メンバーに対して冷や汗を流しながら捌くオリオトライ。

 

 

 

 

 

 

中央全艦の艦首付近・展望台

 

 

 

再開した授業を遠くから見守る視線があった。

 

早朝にノアと一緒に居た自動人形“武蔵”と煙管を咥えた中年過ぎの男性“酒井 忠次”である。酒井は武蔵アリアダスト教導院の学長である。

 

「相変らずノアの奴はモテるな」

 

煙管を咥えながら笑っている酒井は先のノアのトラウマ現場を見ていたようだ。酒井が何時もノアを見掛けた時は周りには常に女性がいるな、と考えながら口にしていた。

 

「………」

 

それに対して武蔵は沈黙を続けていた。先程まで重力制御を操作しながら展望台を掃除していた自動の箒が全部停止していた。

 

「――武蔵さん? もしかして機嫌悪い?」

 

「いえ、そんな事はありません――以上」

 

「ちょ!? そう言って俺の足を踏まないで!」

 

酒井が武蔵の異変に気付いたので指摘してみると、ちゃんした返答が返って来たが、逆に足を思いっきり踏まれていた。酒井は何時も武蔵といることが多いので少しの変化に気付いたようだ。

 

「ごめんごめんって、俺が悪かったから!」

 

「酒井学長が何を言っているのか、理解できないのですが――以上」

 

「うわぁー、さらに重くなったよ」

 

酒井が謝っているものの、武蔵は顔色一つ変えずに冷静に踏んでいる足にさらに力を入れている。

 

「ギブギブ、武蔵さんがノアの事が心配で一杯なのは分かったから解放して!」

 

「先程から酒井学長が何を言っているか、全く理解できないです――以上」

 

「げっ、次は箒が飛んできた、ぐはッ!」

 

酒井は自分で墓穴を掘っていた。武蔵は酒井の言葉に対して片手を振り、重力制御で箒を酒井にぶつけた。酒井は足を押さえられていた為に動けずに箒の直撃を受けてしまい気絶してしまった。

 

「“浅草”、“品川”、今日はノア様の大好物な料理を御馳走してあげましょう。いいですね?――以上」

 

「「Jud」」

 

武蔵が言うと二つ鳥居型の表示枠が宙に現れた。武蔵と同じ自動人形の“浅草”と“品川”だ。二人は返事をして閉じた。

 

「では、私も仕事に戻ります――以上」

 

見下ろして見ていた梅組の授業を見ながら重力制御で箒を操りながら掃除を再開した武蔵であった。

 

 

 

 

 

 

「さてと殴りこみたいけど……」

 

オリオトライの言葉は途中で止まった。周りを見て言う。

 

「私とノアが一番だけど、すぐに皆も着たようね」

 

「先生は梅組生徒の評価を多少変えた方がいいですよ」

 

オリオトライとノアが交戦しながら同時にヤクザ事務所前に着いていた。その後すぐに梅組の皆も、走り着いていた。

 

「そうね、アナタ達タフになったわね」

 

それぞれ呼吸を整えて疲れているのが伺えるが誰も倒れたりはしていないようだ。逆にオリオトライとノアは息一つ乱していない。

 

「先生に言われても嬉しくありません!」

 

「くそぉ~、あとちょっとで御座ったのに!」

 

「何で、何で、私が一撃も決められなかったなんて!」

 

浅間、点蔵、ミトツダイラが何やら騒いでいる。自分達が必死になって仕掛けたのに対して余裕がある態度にツッコミを入れていた。点蔵とミトツダイラは自分達が一撃を入れられなかった事を悔やみながら、余裕でいるオリオトライに腹をたてているようだ。地面に手をついて悔しそうにしているが、他にも決められなかった者達もいるのに二人は特に落ち込んでいた。

 

「点数をあげる人は、ノア、浅間、マルゴット、ナルゼ、ノリキの五人よ、いいわね!」

 

『Jud』

 

全員が了承。再開した授業でノリキがオリオトライに一撃を決め、一人増え、そしてノアは追加で五撃、浅間は一撃をさらに決めていた。他のメンバーも頑張っていたが、オリオトライに受け流され、避けられたりして対応され、一撃を決められなかった。だが、点蔵とミトツダイラはもう少しの所までいったのだが、先にオリオトライが逃げおうせてしまい、間に合わなかったのだ。

 

「じゃあ殴り込みに行くけど、ノア行ってきて」

 

「私ですか?」

 

オリオトライの言葉に頭に?を浮かべるノア。他のメンバーも分からなかった。

 

「先生、皆のせいで疲れたので代理にノアを選びました。教師の命令です!」

 

「権力を使って強制的にやりやがったこの教師!」

 

「しかもノアが女性からの頼みを断れないのを知っていてさね!」

 

ウルキアガと直政がツッコミを入れた。他の生徒も同じように頷いていた。

 

「うるさいわね、ねぇ~、ノアお願い」

 

オリオトライが真正面からノアに抱きついてお願いしてきた。ノアもノアでその行動を素直に受け入れてされるがままにされていた。

 

「なっ! 貴女は授業中ですのに何をやっているのですか!?」

 

「このリアルアマゾネス撃ち抜きますよ」

 

ミトツダイラと浅間がそれぞれ戦闘態勢に入って、一触触発になりかけていた。ミトツダイラも自分の武器である、神格武装“銀十字”を出して装備し、浅間も弓を構えた。

 

「智もミトも怒らないでよ。先生の頼みなら断れないですね」

 

手で二人を止めて、オリオトライの抱擁を解きノアはヤクザの事務所の玄関まで来て……

 

「失礼ーーしますッ!!」

 

普通はノックをするもんだろうがノアは拳を放ち、玄関を吹き飛ばして開けるという荒業をやってのけた。ノアと少し離れた所で見ていた梅組メンバーは唖然としている者や青ざめている者や苦笑いを浮かべて口元が引きつっている者や様々な反応をしている者が居たが、オリオトライは大爆笑して眺めていた。

 

「覚悟はいいかな?」

 

『ぎゃあーー』

 

ノアが乗り込んで行った事務所からは叫び声が聞こえ、その場にいた人達は事務所に向かって合掌をした。武蔵の副長が制裁をするのだから無事で済むわけがない。

 

 

「――あれ? おいおいおいおい、皆揃って合掌して何やってんだよ?」

 

 

合掌していると背後から声が聞こえ、振り返ると茶色の髪に、笑ったような目。崩して着込んだ鎖型の長ラン型制服に、左の脇には紙袋を抱えていた青年が居た。周りに居る誰かが言った。

 

「トーリ “不可能男(インポッシブル)” 葵……」

 

この人物こそ総長兼生徒会長の“葵・トーリ”その人だ。

 

「さてと、君は、先生の授業をサボって何をやっているのかな?」

 

「えぇ? 先生マジで俺の戦利品に興味あんのかよ!」

 

トーリは脇に抱えていた紙袋に包まれていた物を先生に見せた。

 

「今日発売のされたR元服のエロゲ“ぬるはちっ!”。これ超泣かせるらしくて初回限定が朝から行列で大変だったんだよな!」

 

トーリが熱くエロゲについて語っているがオリオトライは半目でトーリの肩に手を置いた。

 

「あのさ君、先生が何を言いたいか解る?」

 

「何言ってんだよ先生! 先生の言いたい事なんて分かるに決まってるじゃん!」

 

トーリはそういうとオリオトライの両胸に手を伸ばして揉もうとした。

 

「――トーリ、流石にそれは見逃せないな」

 

オリオトライとトーリの間に割って入るようにノアが入ってきて、トーリの手を掴んで止めていた。

 

「おぉ! ノア居たのかよ!」

 

「事務所に殴り込んでいたからね、ほれ!」

 

掴んでいたトーリの手を放し、ノアは事務所の方を指差して殴り込みの後を見せていた。トーリも事務所の玄関が派手に壊されてるのに笑みを浮かべて親指を立てて笑っていた。

 

「そうそう、皆、ちょっと聞いてくれよ。前々から考えていたんだけどさぁ……」

 

一息の後、トーリはこう切り出した。

 

「――明日、俺、コクろうと思うわ」

 

いきなりのトーリの告白予告に皆が同じ反応をした。ただ一人を除いて。

 

「悔いが残らないように頑張るのですよ」

 

「おう! 任しとけ!」

 

ノアの言葉に拳を握り締めて気合を入れたトーリ。

 

『待ったー!』

 

ノアとトーリ以外の面々は二人の会話に疑問を持たずにはいられなかった。

 

「ちょっとノア殿、納得するのが早過ぎで御座るよ!?」

 

「こんな展開も話的にはアリかな……」

 

「愚弟、いきなり現れて熱心にエロゲの話をして、いきなりコクるなんて。まさか画面の向こうにいるんだったらコンセントにチンコ突っ込んで痺れて死ぬといいわ! 素敵! 賢い姉に説明しなさい」

 

「ノア×トーリ……イケるわね。ネタ貰い!」

 

点蔵、ネシンバラ、喜美、ナルゼや他の面々もツッコミを入れながら状況を把握しようとしていた。ノアの把握力が異常すぎる。

 

「で、誰に告白するんだ?」

 

ノアが代表して切り出した。

 

「――ホライゾンだよ」

 

人の名前を確かに言った。だが――

 

「馬鹿ね、十年前に、あの子は亡くなったのよ」

 

「解ってるよ、ただ、そのことから、逃げねぇ」

 

トーリは笑みのまま、もう一度皆を見渡した。

 

「コクった後、きっと皆に迷惑かける。俺、何も出来ねぇしな。俺の尻拭いってか――世界に喧嘩売るような話だもんな」

 

髪の毛を掻きながら皆に話を言うトーリ。

 

「じゃあ愚弟、今日は色々と準備の日よね、そして今日が最後の普通の日?」

 

そうだな、とトーリが笑顔で言った。

 

「じゃあ喜美、盛大にやるかー!!」

 

「うふ、そうね。盛大にやる為に買い物に行きましょうノア!!」

 

トーリの返事を聞くとノアが皆の前に出て提案してきた。それに乗じて喜美もノアの腕に抱きついていた。

 

「ノアと姉ちゃん、俺より盛り上がってるってどういうわけよ!」

 

トーリが二人にツッコミを入れている時であった。彼の肩を後ろから叩く人物が居た。

 

ん? とトーリが振り向いた背後。そこに立つのオリオトライはが、据わった目つきで右足を軽くステップさせている。

 

「なんだよ先生! 姉ちゃんとノアにツッコミを入れてくれるのか!?」

 

トーリの言った事に首を横に振り、否定したオリオトライは言う。

 

「遅刻してきて、話を聞かずに自分の世界に入り込んで、あまつさえ――私の胸を触ろうとしたこの馬鹿をどう懲らしめ様かと考えているのよ」

 

次の瞬間オリオトライの右足がトーリの顎に当たり、空に高く飛び上がった。

 

飛び上がったトーリに追撃するオリオトライは空中にいるトーリの元まで跳躍し、回し蹴りでヤクザ事務所にゴールを決めた。

 

 

 

そして誰かが言った――――コンボが繋がった!

 

 

 




はいはい、ハーレム乙乙、という感じで書いてみました。

一巻は、必ず書くつもりでいますので、お楽しみに!!
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