夜の武蔵アリアダスト教導院に多数の人影がある。
「夜の教導院は、やっぱり雰囲気が出てますね」
ノアの言ったことに対して喜美や鈴が肩をビクッと反応させていた。二人が怯えているのが分かっていたノアは二人をの傍らに寄り、自分の方へ抱き寄せて、頭を撫でてあげた。
「あ、ありがとう、ノ、ノア君」
「もっと強く抱きしめなさいっ!」
鈴と喜美もノアに体を預ける。喜美はノアの胸に頭を乗せて和み、鈴は背が低いので腹部に両手を回して抱きついていた。
「トーリの馬鹿は、まだ来ないのかい?」
「総長遅いですね」
「トーリ殿は、何をやっているんで御座る」
「まさか、今日手に入れた「ぬるはち」をプレイしているのでは?」
それぞれがこの場に来ていないトーリに愚痴る皆。
「では、先ほど作ってきました、どら焼きとたい焼きを食べながら待っていましょうか」
ノアは撫でていた手を一旦離し、手を前に出し、小声で何かを言うと手の上に大量のどら焼きとたい焼きが出現し、男性陣は小腹が空いていたので丁度良く、ノアが男性でも食べやすいように甘さを控えめにしているどら焼きを食べる。
「たい焼きは、チョコ、カスタード、あんこの三種類の味があるからね」
ノアの言葉に女性陣は悩みながら選んで食べていく。
「あんこ美味しいです!」
「浅間さん、カ、カスタードも、おいしい、です」
「ガッちゃん、チョコとあんこ食べさせあいっこしよう」
「いいわね、でも相変わらずノアの作る物は美味しいわね」
「ノアさん、何でも出来てスゴいですよね」
「パーフェクトよ、ノア。生地のモチモチ感、カスタードの甘さ過ぎない味、何よりも“思い”を感じるわ、そう、情熱のような炎が、熱い思いが!」
「Jud.Jud.喜美が暴走しているのは放置で。確かに、美味しいさね」
女性陣は大量に用意あったはずのたい焼きを全て平らげてしまった。
「どうだい、東。美味しい?」
ノアは今日戻ってきた東に味の感想を聞いてみた。
「Jud.
ノアの前で美味しそうにパクパク食べていく東を見て微笑むノア。
「それは何よりです。ところでミリアムとは仲良くなれそうかい?」
「う~ん、大丈夫だと、余は思っているけどちょっぴり不安なのが正直な気持ち」
どら焼きを食べながら不安げな表情を浮かべる東に対してノアは言う。
「正直なのは偉いです。ミリアムはとても賢い子です、東とも話をしていくうちに仲良くなっていくよ。最初はちょっとだけ警戒しているだけだよ」
「本当?」
「Jud.待ってるのも男の子の大切な役割ですよ」
不安げな表情をしている東はノアの言葉を聞いて、一変して嬉しそうに満面の笑みを浮かべている。東の表情につられて、ノアも笑みを浮かべる。
「マルゴット、あの光景を見て、色々浮かんでしまう私はダメなのかしら?」
「ナイちゃん見る限りじゃ、仲の良い兄弟に見えるけど?」
「いえ、あれは……東受けのノア攻めに決まっているじゃないッ!!」
一部が東とノアのことをネタにしようとしたのは、二人は知らない。
「甘い物を食べていい気分だから、さっきの話の続きをしよっか。ここだけの話って何なの、アサマチ?」
ハイディが話を切り出してきた。名前を呼ばれた浅間は、絶品たい焼きの美味しさの酔いに浸っていたが、ハッと意識を戻した。
「は、はい、それは――」
直後、浅間の近くに移動していた喜美が両手を振り上げた。
「ここからは浅間によるスーパーエロ話タ――イム!!」
「えええ、ちょっと喜美ってば勝手に何を――、というか男衆も正座しない。あのですね、喜美はどうしていつもいつもそういうことを――」
「だって私、エロの神様を奉じてるもの。正確には芸能ウズメ系のサダ派ね」
う、と浅間が息を詰めた。対し、喜美が浅間の肩を笑顔で叩いて、
「フフフ、アンタんとこで代理契約した時なんて、女しか儀式に関われないからアンタが手伝いで来て、裏の滝で二人で脱いで――」
「おぅわぁ――!!」
浅間の大声で喜美の発言をぶった切った。そのあとで皆に振り向き、あたふたと、
「へ、変なことあったわけじゃないですよ!? ですよ!? ぎ、儀式は基本的に機密なので、口外は神の個人情報をバラすというか――」
「フフフ、ノアを家に呼んでいたのを忘れていて、気配でノアが裏の滝まで来た時は、アンタ私より早くノアに抱きついていたじゃないの」
「あ、あれは、体を隠す物が近くなくて
「ふ~ん、咄嗟に抱きついてキスまでして、そのまま服を脱がす人がいるのかしら?」
「わぁぁ――!!」
喜美の発言に喜美の肩を掴んで激しく揺らす浅間。男衆は正座しながら興味津々に聞いている。女性陣も男衆の後ろで話を聞いている。
「服のボタンを一つ一つ外しながら、ディープなディープなキッスをして、うっとりしながらノアのたくましい胸板を舐め――」
「うひゃ――! ちょっと喜美っ! それ以上は私やノアくんが恥ずかし――」
「智は私の上半身を味わい尽くしたあとに、ゆっくりとズボンを脱がしに――」
「きゃぁッ――!! ってノアくんも参加しないで下さいっ!」
浅間の後ろから話し掛けてきたのはノアだった。喜美の悪ノリに参加している。
「その後はモ・チ・ロ・ン、ノアの流体砲でズドンよね?」
「べ、別にズドンされてイっちゃったわけないじゃないですからねッ!? そうです、あれは快楽が全身を支配し、
からかわれてるって気付けよ、と何人かが言うが、一部は顔を真っ赤にさせて動揺していたり、下半身を抑えている男子もいる。
「と、ということは、つまりそれはアオカ――」
点蔵は最後まで言えず校庭に吹き飛ばされた。七回は転がって行きうつ伏せに倒れた。
「て、点蔵ぉぉ――」
何人かの男子が叫ぶが彼が起き上がることはなかった。
「勝手に殺さないでくだされッ!?」
急に飛び起き叫ぶ。
「って、浅間殿! なにやってるんで御座るか! 反応できない速度で構えて撃たないでくだされ」
「え、点蔵くんがムカついたので、つい」
点蔵をふっ飛ばしたのは浅間であった。三つ折り状態から一瞬で展開させ、一瞬で射撃したのだ。
「死ぬかと思ったで御座る!」
「ちっ」
「舌打ちしたよね、舌打ちしたよね、この駄巫女」
点蔵が一人で騒いでいると、シロジロが、
「葵姉、単に怖い話が苦手なだけで話をそらすな」
「そ、そうですよね、そうですよね、駄目ですよね! 喜美ったらホラー能楽見ると椅子に座った時点で気絶してるようなヘタレなのに、そういうのエロ話で誤魔化そうとして!」
「ああ。――だからそういうエロ話はちゃんと私に売れ。十倍にするから」
「さ、最悪――!」
まぁまぁ、とハイディが仲裁に入る。その上で彼女は、
「はいはいアサマチー、さっきの話の続きしよっか。一体、ここだけの話って何なの?」
「う、うん、それはね……」
というタイミングで葵姉がまた何か言おうとするのをノアが抱き寄せて止めた。
そして浅間が、周囲が沈黙したのを確認した後で、ゆっくりと告げる。
「実は、……結構、あるんですよね」
その言葉に喜美が、これ? これ? となぜか自分の胸を笑顔で下から寄せ上げてくるのを、またノアが止めた。
そこからは都市伝説である“公主隠し”の話しながら雑談をした。
“公主隠し”が起こり始めた歴史、最近になって復活したという話、そして実際に本多・正純の母親が遭ったという話。
そして一番起こっている場所は、現在いる三河周辺と帝がいる京の周辺という。直撃圏内にいる。
「皆、私があげたブレスレットはしているかな?」
喜美が震えながらノアに抱きついてるのを気にすることなく、ノア本人は皆に聞く。
ノアの言葉にそれぞれブレスレットが付けている手を上げて分かりやすく見せてくれている。
「このブレスレットには、色々と私の術式が刻んであってね。魔を打ち祓う加護、病魔を打ち祓う加護、呪術を打ち祓う加護、と色々と入っているから“公主”ぐらいなら一度は祓えるかも」
喜美のブレスレットを触りながら解説するノアの言葉を聞いて、驚きを隠せないでいる。
「え、ノアさん、それって本当ですか?」
アデーレが自分のブレスレットを触りながら聞いてくる。
「えぇ、ちゃんと効力がありますよ。あと、これを聖連に売ると軽く見積もっても武蔵が一ヶ月は養えるぐらいの価値はあると思うよ」
その言葉にまた驚く梅組メンバー。
「ほ、本当で御座る?」
「本当、本当」
「ノア、貴公が作ってくれたこのブローチもか」
「うんうん、ウルキアガはブレスレットとか無理だからそれにしたけどね」
「そ、そ、それは本当なのだなノア」
「う、うん、っていうか大丈夫かシロジロ?」
「あはは、シロ君たら動揺を隠せてないよ」
「吾輩は何も持っていないが?」
「ネンジには前にノア特製のグミを食べさせたでしょ、あれに施してあったのだよ」
この場にいる皆が自分のブレスレットに触りながら述べる。
「でも都市伝説だからゆっくり考えていけばいいんじゃないのかな?」
「そうよね、
マルゴットとナルガが手を繋ぎながら言ってくる。
「そうだな、怪談としてはいくらか効いたな。でだ、今いないのは、正純は住んでる多摩の艦首側に三河の花火とやらを見に。東は引っ越しで遅れて、ミリアム・ポークウは無理、そしてミトツダイラは家が夜間外出禁止だな。となると……、あとは仕込み中のトーリが……」
シロジロが言った瞬間だ。
「オッケー、遅れた!
いきなり校舎の正面玄関が開き、トーリが校舎の中から顔を出した。
そっちかよ、という皆の顔を前に、彼は笑みの顔で校舎内の闇を示し、
「早く来いよ! ――暗くて面白いぜ!!」
・
・
・
・
「はい、そういうわけで着きました図書室」
という浅間の言葉が教導院内に響いた。浅間の近くには四つの影がある。
影の一つに艦内整備用のレンチを担いだ直政がうんざり顔をしていた。
「どうだい、アサマチ、ノア。霊視のないあたしらにや、居ても大物以外見えないんだけどね」
彼女の横にいるアデーレが吐息混じりに、
「ですよねー……、ラップ音とか解りやすければいいんですがね……」
ラップ音という言葉に慌てて首を左右に振ってみせるのは鈴だ。
「や、それは、困り、ます、音は……、や」
「大丈夫ですよ。この辺りにはいませんよ」
怖がっている鈴に優しく接するノア。
浅間も、Jud.と言い答える。アデーレや鈴が、ほっ、としている間もなく。
「
「そうですね。
ノアの言葉と同じく浅間も頷きながら言う。そして廊下の向こう側に弓を構えて射撃した。
一秒してから、
「よし」
「お見事」
という浅間の頷きとノアの言葉に、直政は平然と無言で、アデーレは慌て、鈴は身を震わせた。
「な、何! 何ですか!? 一体!」
「あ、気にしないでいいですよ、離れなければ大丈夫です」
「全然安心出来ないですよー!」
アデーレの叫び声が廊下に反響する。
「あんまし声出すと、寄ってくるぞ。昼に静かでも夜には動くもんだしな」
「ナ、ナオさん、……ずいぶん、詳しい、ですね」
「そりゃよくアサマチのトコに遊びに行くからね。それよりアデーレは
「いや、最近ようやく着られるようになったんですけど、旧式のせいか重くて」
見てみたいなぁ、と興味有り気に頷く直政は、一度だけ周りを見渡して言う。
「ノアを除いたら、昼間にいたメンツだね」
そうですね、とアデーレが頷きながら反応し、浅間も鈴も頷いていた。
「そうだったのですか。そういえば買い出しを手伝えなくて、すいませんでした。重かったですよね?」
「そ、そんなこと、ないよ、ノア君が、ナイちゃん、ガッちゃんに、荷物運び、手伝って、頼んでくれて、いたから」
「そうさね。気にしなさんな」
ありがとう、とノアは答える。
「さてと、入りましょうか」
弓片手に浅間が扉に手を掛ける。
「ま、待って、もし、も、急に、出て、きたら、どうするの?」
鈴がノアの服の袖を掴みながら言った。怖がっているのか、多少だが脚が震えている。
「大丈夫ですよ。私が守りますから、心配しないで下さい。鈴さん」
袖を掴んでいた鈴の手を握ってあげるノア。ノアに手を握られて安心したのか、震えが止まっていた鈴。
「ノアさん、ノアさん、私もお願いしていいですか?」
アデーレも怯えていたので、どうぞ、ともう一つ空いている手でアデーレの手を握った。
えへへ、と二人とも笑みを浮かべて嬉しそうにしている。先程まで怖がっていたのが、嘘のようだ。
その光景を見ている浅間に直政も微笑ましく見守っていた。
「では、いきます」
浅間の言葉が聞こえ、すぐに扉を開けた。
・
・
・
・
あの後、図書室では変態二人が待ち構えており、その光景を見た浅間は無表情で射撃をぶち込んだ。浅間以外の皆はすぐに中庭に避難している。問答無用で射撃しまくる浅間に流石のノアも止めに入ることが出来なかった。
「あっ、また爆発しましたね。浅間さんでしょうか、マルさんでしょうか」
アデーレの言葉に鈴が、二人共、と言い、アデーレは納得していた。
「鈴さん、音とか大丈夫?」
「Jud.ノ、ノア君が、いるから、大丈夫」
あれからずっと座りながらも鈴と手を繋いでいるノア。
「喜美も大丈夫?」
「今は、大丈夫よ、今はね……」
鈴と手を繋いでいながら反対側で、喜美が抱きついている。先ほどまで発狂していたのに落ち着かせるために今の状態になっている。喜美は座っているノアの膝に頭を乗せて休んでいる。
「はぁ、はぁ、予想以上に疲れました」
浅間が教導院の中から出てきた。息を切らしながらおぼつく足取りで中庭まで歩いてきた。
「お疲れ様です、。水を汲んできますので、喜美をお願いし――」
「イヤァァーー」
「……無理そうですね」
「ノ、ノア君、私が、汲んできます」
「すいませんがお願いします。鈴さん」
「Jud.」
喜美がノアを離さなかったので、鈴が変わりに水汲みに行ってくれた。
鈴が行こうとした方から大きな声が響いた。
「一体何の騒ぎだこれはぁーー!
皆が振り返り、その声の主を見てみると、鈴の前に立っていたのは王様、ヨシナオだ。
「全くもってけしからん! 誰だ、こんなことを始めたのは! 出てきたまえ!」
全く正論だな、と皆が頷く中、ヨシナオに対して違う反応をする者がいる。
「――ひゃっ」
怯えた声が聞こえた。その者はヨシナオの正面にいた。
「――ひ、あ、あっ」
両手を胸に当て、震えを押し殺す鈴だ。
目が見えない鈴は無防備に殴られたのと同じ状態だ。
「――? どうしたのかね。言いたいことがあるなら言ってみたまえ、さぁ!」
その促しに、鈴は大きな口を空に向かって開いた。
「うわーん!」
鈴が泣いた。
それまであった音を吹き飛ばす音に、皆が引き、ヨシナオは慌てた。
「こら君、一体――」
「この、こ、この、おじ、ちゃん、き、きらい――」
すげぇ鈴さん、超正論だ、と皆が頷く。
「き、君らは! こんな騒ぎをしておいて――」
鈴の言葉を聞いて、ヨシナオが反応するが、
「ヨシナオ王。女の人を泣かしておいて、いいわけですか? みっともない」
「ノ、ノア殿」
泣いている鈴を抱き上げて、ヨシナオから少し離れた位置に移動したノアが罵倒する。鈴が泣き止むようにあやしながらヨシナオを見る。
「貴方の民が、貴方のせいで泣いてしまったのですよ。ヨシナオ王、貴方は武蔵の民を愛しているはずだ。例え一人でも悲しい思いを……泣いている人がいれば手を差し伸べるのが王、周りを人一倍気にするのも王、そういうものではないですか? 貴方はそういう御方だ」
ノアの言葉を聞き、何かを思ったのか、ノアと鈴の前で軽く片膝を落とす。
「驚かすつもりはなかった。許されよ。そしてノア殿、そなたの言葉に心打たれた。そなたが言う王に私はなる努力をしよう」
そういうと背を向けて歩き出した。
「後日、主犯であろう総長兼生徒会長に事情を聞きに行くと伝えておいてくれ」
ヨシナオはそれだけ言って帰って行った。
「あれー、さっきベルさんの声が聞こえたような気が?」
校舎の窓から勢いよく、トーリが顔を出してきた。
「ヨシナオ王が来たけど、帰ってしまったよ」
「マジで! 麻呂が来てたのかよ!」
「鈴さんも無事だから、トーリもこっちに来なよ」
「ちょっと待ってろよ、すぐ行くぜ!!」
校舎内から走ってきている音が聞こえてくる。
「鈴さん、すいません。私が水を汲みに行けば怖がらせることもなかったのに……」
鈴を抱きかかえているノアは、申し訳ない気持ちで鈴に謝った。
「ち、違うよ、わ、私が、弱い、から」
「そんなことないよ、鈴さんは強い子だよ」
ありがとう、と言う鈴。
「もう少しこのままでいようか」
ノアの言葉に頷いて抱きつく鈴。
「まるで兄妹みたいですね」
「まぁ、ノアはお兄ちゃんっぽいところもあるしね」
「そうそう、小等部のときに後輩や先輩に“お兄ちゃん”“お兄様”“兄者”“兄貴”とか呼ばれてたたしね」
「あ、あったわね、そんなのも」
「ノアさん、小さい頃から大人の雰囲気がありましたもんね」
浅間、直政、マルゴット、ナルゼ、アデーレが二人の光景にを見て、各々言う。
「――!」
鈴が突然両耳に手を当てた。鈴の行動にすぐにノアが反応した。
「皆、膝をつけ」
鈴を驚かせないように周囲に伝え、行動させた。ノアの言葉に皆も反応し、校舎から出てきたトーリもすぐに反応していた。誰も彼も鈴を中心に置き、膝を突いた。
「――あ、あっち」
鈴の指を指した方角に全員が向いた。
向いた先には山があり、闇がある。夜なので先の見えない暗闇が続いていた。だが、突如として暗がりの中から照らす光が生まれた。
発光の光。炎だ。
「あれは、爆発じゃないかね」
直政がつぶやいた直後、遠くの方から轟音が聞こえてきたのだ。この音から察するに爆発音だろう。
「あのあたり……三河を監視する番屋の辺りじゃないかな」
ネシンバラが眉を
「ノア君、大丈夫?」
皆が番屋の方を向いていたが、鈴は音でノアの呼吸音が変わったのに気付いた。鈴の言葉に皆がノアの方を向いて心配した。
「顔色が悪いで御座るよ」
「大丈夫かい、気分が悪いの?」
点蔵、ネシンバラの二人が心配している。
「少し嫌な気配がして、それに胸騒ぎがしてね(何だこれは……体の中から込み上げてくる、この感じ)」
胸の辺りを押さえて、ぎこちなく笑ってみせるノア。そんな彼の笑みに皆は不安を感じた。
「大丈夫なんですか!?」
「問題ないよ。ただ気になっただけだよ(なんなんだこれは)」
浅間が心配そうに近づいて支えてくれる。だが、ノアの言葉には何時もの余裕さが感じられないのを皆は察した。
「よし、気になるなら行って来いよ!」
「トーリ?」
「もう解散するつもりだったし、エロゲやりたいし、気になるなら行けよ」
ノアが一人で何か悩んでいる所にトーリガ後押ししてくれた。本音も多少入っているが親指を立てながら言っている。
「わ、私も、もう、大丈夫、だ、だから」
鈴が言う。
「でもちゃんと帰ってきなさい! でないと、オ・シ・オ・キ・よ」
「鈴さん、喜美」
皆が頷き答えた。
「ありがとうございます」
頭を下げて礼をするノアは、皆に背を向けて移動しようとする。
「トーリの告白の後に、私のことを全て話します。私がいなかった四年間のこと、私の過去、存在意義を」
それだけ言うと跳躍し、階段を下りながら三河方面へ跳んで行き、皆の前から姿を消した。
「ようやく聞けるんですね」
「そうね。
浅間、喜美が見えなくなったノアの姿の方を見て言った。
「そうだね。ノアの奴、私達がどんなことしても口を割らなかったしね」
「そうだよね。ノーちゃんがお風呂に入っている時に全員で乗り込んで、お色気攻めしながら聞こうとしたのに全く効果なかったもんね。逆に食べられちゃったし」
「そんなこともあったわね。あと、媚薬が入っている料理をご馳走して、はかせようとしてもケロッとしてたもんね。逆に私達にも食べさせてきて大変な目にあったわね」
直政、マルゴット、ナルゼの三人もノアの消えた方を見ながら言った。
「やっと、は、なしを、聞ける、ので、わたし、嬉し、い、です」
「ノアさん、私達には嘘ついたことありませんしね」
鈴、アデーレの二人も言った。
「ノアの過去か、アイツの金の出所が気になる」
「こんな時までお金のこと考えてるなんて、シロ君、素敵!」
シロジロ、ハイディの二人は、一応心配しているようだ?
「ノアも色々と苦労しているんだね」
「そうだぞ、余。ノアは色々と苦労しているんだぞ」
お前が言うな、と皆に言われる。
「おーし、続きは今度な」
「ま、待って!」
トーリが一言かけて解散させようとしたが、鈴がそれを遮った。
鈴が大きな声を出したことに皆が驚き目を見開いて動きを止めた。
「あ、あれ……、その」
皆は鈴の指した方向を見た。そこにいるのは一人の少年。
「――余?」
東は、鈴に指されたことに首を傾げた。
「ええと」
服を見て、頭、胸、腰を見て、確認する。
何故そんなに見られているか、分からない東は、もう一度自分の体をくまなく見た。
「余! そっちじゃなくて! 後ろ! 後ろ!」
「後ろ?」
言われ問い返した方向に顔を向けた東は、まず一つのものを見た。こちらの制服をの後ろ裾を握った小さい手だ。
白くて長い髪を乱した、白い肌の少女。東の知らぬ子だ。
慎重が一メートルに満たない子供の身体は、半ば透けていた。
「パパ、いないの……」
少女が口を開いた。そして俯き、
「ママ、見つからないの……」
迷子か、と思ったが、それより先に言うことがある。
その一言を東の代わりに皆が叫んだ。
「で」
息を吸い
「出たぁーー!!」
更新遅れてすいません。
こんな暑い中を色々と行動していたので書く暇がなかったです。
感想をドシドシお待ちしております。