救済する者   作:愛すべからざる光

9 / 12
※誤字脱字があれば報告お願いします。


第七話 宿命

ノアが爆発した付近まで移動している最中に立ち止まり、気になっていることを確認していた。片膝をついて地面に手を着いている。

 

「(地脈……流体が新名古屋城に集束されていく)」

 

手から伝わってくるものを感じている。地面より深い底にある地脈を感じていた。先程までの胸騒ぎの理由が分かった。

 

「とりあえず新名古屋城に向かってみますか」

 

木の上に飛び乗りながら木から木へ移動するノア。

 

「花火ですか……」

 

闇の中を飛び移りながらポツリと漏らした。

 

 

 

 

 

 

 

「これは!?」

 

ノアが移動しながら新名古屋城に向かっていると名古屋の街道に三征西班牙(トレス・エスパニア)の武神と陸上部隊が倒れていた。武神は膝を着いて動かない物、二脚を斬られている二体が倒れており、陸上部隊の誰もが片膝を斬り割られている。

 

陸上部隊とは別に治療しながら撤収部隊と思しき者達に担がれて撤収している。その部隊を指揮している両の義腕の少女に見覚えがあった。

 

(ぎん)ではないですか!」

 

「え、ノア様!」

 

誾と呼ばれた少女は、両腕にそれぞれ武神の乗り手と陸上部隊の一人を担いでいた。

 

「久しぶりですね」

 

「四年ぶりですね。それはさておき、何故此処へ?」

 

「流体が集束してるのを感じてね」

 

ノア様だから出来る事ですか、と呟き、自分自身に納得させた。

 

「誾がいるなら、立花(たちばな)宗茂(むねしげ)君の方もいるのかな?」

 

Tes.と言い、目線を新名古屋城に向けた誾。

 

誾の視線の先には、長身に短い金髪、衣服は三征西班牙の主教導院であるアルカラ・デ・エナレスの校章が刺繍されている。そして彼の右手に持つ物は――

 

悲嘆(ひたん)怠惰(たいだ)ですか」

 

Tes.と答える誾。三征西班牙に預けられた大罪武装の一つ。

 

「そして相対しているのは――」

 

「Tes.東国無双“本多忠勝”様、そして自動人形“鹿角”様が立ちはだかっています」

 

大罪武装の所有者から正面には一人の中年男性、そしてもう一人、女中の格好をした女性が男性の首に手を回して掴まっていた。

 

「鹿角さんを負傷させるなんて、いい腕してますね」

 

「西国無双である宗茂様にとって造作もありません。(ですが、ノア様が言えたことではないでしょうに……)」

 

宗茂の実力に賞賛するノアに誾の方も表情を変えずに答える。

 

「もしかしたら、私より強い「そんなことはありません!! 父より強く、私より強い貴方様が……」昔の話ですよ、確かに道雪さんには色々とお世話になりましたね。誾も昔は私と一緒によく鍛錬しましたね。強くなったようで嬉しいですよ」

 

ノアが話をしている最中に誾が声を張り上げて否定した。クールな表情をしている誾が表情を崩してまで声を出し、悲しそうにしているのをノアは気付き、頬を触れながら優しく彼女に喋りかける。

 

「色々と話をしたいのですが、また後にしましょう」

 

「Tes.宗茂様をお願いします。また後でお会いしましょう」

 

まだ二人は話をしたかったが状況が状況あ上に、元信が喋り出したのが気にもなった二人はそれぞれの行動を始めた。

 

誾は負傷者を運び、ノアは元信の元へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ノアが誾と会う遥か前……

 

 

新名古屋城に向かう一直線の橋の上で体格のいい男性が侍女服姿の自動人形を抱えながら、全長五メートルほどの砲筒の武器を抱えながら戦闘体勢のまま睨みあっていた。

 

体格のいい男性は東国無双と呼ばれる猛者『本多忠勝』である。神格武装『蜻蛉切(とんぼきり)』を構えながら目の前にいる若者のことを観察していた。忠勝の首に手を回して抱きついている自動人形は本多家付自動人形『鹿角』であった。彼女は忠勝と相対している人物の攻撃を受けてしまい、下半身が吹き飛んでしまい上半身だけは無事であった。

 

そして本多忠勝と相対している人物は、三征西班牙の主教導院アルカラ・デ・エナレスの第一特務『立花(たちばな)宗茂(むねしげ)』、“神速”ガルシア・デ・セヴァリョスを二重襲名している人物であった。 そして彼の持つ剣砲型武器は大罪武装の一つ“悲嘆の怠惰”を預かる、八大竜王と呼ばれる者の一人でもある。

 

 

お互いに距離を取りながら相手の動きを伺っていながら、宗茂は投降をするように勧告をしつつ何時でも仕掛けられるように準備し、忠勝は何時でも迎撃が出来るように構えている。そして忠勝は投降勧告を無視しつつ交戦を開始した。速さでは宗茂が上回るが戦闘経験の豊富さと長年生きてきた勘で宗茂の猛攻を無傷で闘っていた。そして一時的に二人は距離を空けた。

 

 

「いい腕前だ」

 

「“東国無双”の貴方に言われるのはありがたいですが、こんな状況で言われても嬉しくはないです」

 

違いね、と言う忠勝。

 

「先ほど、飛来した弾丸のような力場を左手から入れ、重力制御の連続操作で何とか横に逃がしましたが、あれは一体――」

 

「大罪武装“悲嘆の怠惰”の超過駆動ってやつだ。――ボウズ、使えるのはどのくらいだよ」

 

「――Tes.」

 

答えたのは、宗茂の声だった。

 

「私の適応力では、一度に五十パーセント前後が限界です」

 

宗茂がゆっくり立ち上がりながら、荒れていた息を落ち着けながら、

 

「投降を、御願い致します」

 

「お前、それだけ息切らしておいてよく言えるなぁ」

 

「今のは、準備が甘かっただけです。かわすことが出来るのは解りました」

 

宗茂は言った。

 

「投降を御願い致します。そして地脈炉の暴走停止に御助力を。そうでなければ――」

 

右手、“悲嘆の怠惰”の剣を下段に構え、

 

「次には私もこれを用います。そうすれば貴方の負けです。――意味は解るはずです」

 

「だろうなぁ」

 

忠勝が笑った。

 

「だがよ」

 

忠勝は言う、背後を顎で示し、

 

「三河の持ち主はそう思ってねえみてえだぜ。――見ろよ」

 

……え?

 

と思った鹿角は腕に力を込めた。

 

忠勝の肩越しに、新名古屋城を見る。すると、一直線の街道の先。新名古屋城の西側門を見る。

 

大きな門だ。開いている。幅二十メートルほどの神木を使った一枚板の扉が左右に遣り戸が、完全に開き切っていた。

 

開口した西側正面口は、奥に存在する多重の隔壁扉も全開にされていた。一直線に、数キロに渡って開かれた穴の向こうにあるのは、光と、

 

「……地脈統括炉」

 

鹿角の声が示すものは、数キロ先の新名古屋城中心に存在する壁のような木壁塊だ。

 

直径一キロほどの、金属内殻と、木製外殻に覆われた統括炉は、

 

「既に四方の抽出路の暴走が完成して、流体を蓄積中……」

 

鹿角の言う通り、統括炉の木製外殻は、鼓動に合わせて外殻材の隙間から光を放ち、また、時折わずかに膨張し、震えさえ生んでいる。

 

既に統括炉の周辺には、液体が光の霧状に変異し、天球図を書くように線円の無数列を重ねて作って回っている。その巨大な光の天球図の中央からは、空に向かって緩やかに光の塔が立ちつつあった。

 

「――あの光の塔が全部内側に落ちたとき、統括炉ですらも許容出来なくなった流体がオーバーロードを起こす、ってわけだな」

 

すると、忠勝の声に答える言葉があった。それは新名古屋城の外部拡声器からの声で、

 

「その通りその通り。何とかここまで来たよ止めるならあと五分くらいじゃないか? 一体そこの立花君はどうするつもりなのかな? 時間は有効に使っていかないとな」

 

声の持ち主の名を、鹿角が呟く。

 

「元信公……」

 

あぁ、と応じる姿は、統括炉の前に立っていた。

 

松平家当主、元信だ。

 

学帽付きの彼は衣服の上に白衣を纏い、小指を立てた右手でマイクを握っている。

 

そして彼は、マイクに対して口を開くと、

 

「よぅし、じゃあ全国の皆! こんばんはぁ――!」

 

息をつき、指を鳴らす。すると彼の横、撮影機材を持った自動人形が現れる。

 

元信は、前に回った撮影の自動人形に対し、マイクを口元に当ててポーズを取り、

 

「この放送! 共通通神帯(ネット)で全国に放送中だからね! よい子の皆、ちゃんと先生の一挙手一投足を油断せずに見ていなければいけないよ! ではチャンネルはそのままで!」

 

息を吸い、

 

「今日、先生は、地脈炉がいい感じに暴走しつつある三河にきていまあーす!!」

 

 

 

 

 

 

 

元信、忠勝、宗茂の三人で会話をしていた。

 

宗茂は地脈炉を暴走させている理由、そしてなぜ三河は消滅させようとしているのかを問いただしている。

 

元信は末世について語る。宗茂に問い、末世について考えさせつつ、末世という危険性を世界に問いかけていた。

 

元信がこう問うた。

 

「危機って、面白いよね」

 

元信は言う。

 

「先生、よく言うよね? 考えることは面白いって、じゃあ、やっぱり、どう考えたって――危機って、面白いよね?」

 

だって、

 

「考えないと、死んじゃったり、滅びちゃったりするんだなぁ、――すっごくすっごく考えないと解決出来ないと思うんだけど、それってつまり、――最大級の面白さだよねぇ?」

 

「――」

 

元信の言葉に、宗茂が息を飲み、何も言えない。

 

だが、元信はマイクを片手に、空いた手で頭を掻きつつ、言葉を繋げた。

 

「危機ってのはとても面白いものだ。だけど、もっと面白いものがあるよね? ハイ、じゃあそこの宗茂君。もっともっと考える必要があるもの、答えて御覧?」

 

直後、宗茂が、大きな声で答えようとする。

 

「――解り「末世(まっせ)ではないんですか? 元信さん?」だ、誰ですか!?」

 

「遅いじゃないか、ノア君」

 

宗茂が声を出した瞬間に空からノアが舞い降りながら元信に答えた。急に現れた存在に驚きながらその人物の存在感に圧倒されてしまっていた宗茂。

 

ノアの答えに満足そうに頷く元信。

 

「招待状を貰っていませんでしたので」

 

「君なら気付くと思ってね。私の期待通りだよ」

 

いいかい?

 

「そう、ノア君が言ってくれた通り末世だ。――この世の滅び。それは全世界の生徒に対する最高のエンターテインメントだ」

 

 

 

宗茂は、元信の言葉に息を飲んだ。

 

……エンターテインメント……!?

 

末世の話はいろいろな方面から聞いている。それがどうやら本当に起きる事であり、対策など何も打てていないことを。だが、

 

「面白いとは、不謹慎な……!」

 

「宗茂君、先生は真面目な話をしているんだよ。も、すっごく真面目、先生は」

 

声が来た。歩き、鼓動の音と、音楽に合わせた声が、

 

「だが、此処まで来た宗茂君にはご褒美に教えてあげよう。末世を回避する方法を」

 

「なっ!」

 

「……」

 

それは、

 

「――大罪武装(ロイズモイ・オブロ)だ」

 

元信は、宗茂の右手にある“悲嘆の怠惰(リピ・カタスリプレ)”を見た。

 

元信は、宗茂が眉を歪めるのにも構わず、

 

「それだけではないが、今のところ、それが最も解りやすい。だからこう言おう。いいですか皆さん、大罪武装を全て手に入れたならば――」

 

一息。

 

「――その者は、末世を左右出来る力を手に入れる」

 

宗茂が叫んだ。

 

「大罪武装を各国に配ったのは貴方です! それが、末世を払うために大罪武装を全て手に入れろと言うのは……、大罪武装を与えられた六つの国に戦争を巻き起こす気ですか!?」

 

「六つの国? 違うよ? 七つだよ? ねぇ、ノア君」

 

元信の告げた言葉に宗茂が動きを止めた。彼は眉をひそめ、横に立つ人物を見た。

 

「七つ……!?」

 

「……」

 

宗茂の視線を感じるが何も言わず瞳を閉じていた。

 

「おやおや、ノア君が言わないなら先生が言っちゃうぞ。大罪武装は八つの想念がモチーフというのは確かだけど、でも、その八つの想念にも原盤とも言えるものがあり、――実は九大罪だったらどうする?」

 

一息。

 

「八つの想念を論じたエウアグリオスは、実は、友人に対する書簡で九つの悪について述べているんだ。八つの想念に含まれていない、その九つ目が「嫉妬……」ありがとう、ノア君」

 

元信の言葉に割り込んだものはノアであった。隣で驚いている宗茂を無視しつつ、元信を見る。

 

二人の会話の中に割り込んでくる者が現れた。

 

「“嫉妬”に当てられた魔獣は、――全竜(レヴァイアサン)だ!!」

 

「K.P.A.Italia、教皇総長インノケンティウス……」

 

ノアが割り込んできた人物の名前を口に出した。歯を剥き出しにしながらインノケンティウス叫んでいた。

 

叫ぶ先、表示枠の中で、元信が頷く。インノケンティウスは奥歯を噛み、

 

「――全竜とは、全ての化物の様相を持つ史上最大の竜! つまり貴様はこう言いたいのだな!? 九つ目、嫉妬の大罪こそが、全ての大罪をまとめたものであり、最高の悪徳なのだと!」

 

「そうそう、、暴食(ガストリマルジア)淫蕩(ポルネイア)強欲(フイラルジア)悲嘆(リビ)憤怒(オルジイ)嫌気(アーケデイア)驕り(ハイペリフアニア)も、何もを妬み、何かになりたいと願う思いの行き過ぎや、その反動によるものだよな」

 

「ならば……、俺の大罪武装の追加発注が無駄だったとして……」

 

インノケンティウスが叫んだ。

 

「その“嫉妬”は、どこにある!」

 

「今、全竜は、既に存在している」

 

それは、

 

「噂を聞いたことがないかい?」

 

「……噂?」

 

ああ、と元信が頷いた。

 

「噂はこういうものだ。――大罪武装は、その材料として、人間を使用している。ゆえに、人間の原罪をモチーフとした能力を使用出来るのだ、と」

 

そして、

 

「それは本当だよ?」

 

この雰囲気の中で元信が冗談を言えるかと言えば半分半分だが、この言葉には納得させるだけの重みがあった。

 

「少し話をしようか」

 

元信はゆっくりと目を閉じながら語りだす。

 

「実はね。先生は一度だけ、“京”に行ったことがあるんだよ。そこで“帝様”に会ったんだ」

 

この言葉に全国で放送を見ている人達は驚きを隠せなかった。

 

極東社会の精神的な統治者。神社組織の長でもあり現人神。俗世不干渉で、環境神群を介し地脈を制御しているとされる存在である。そして誰一人として帝のことを見た事はなかった。性別も不明であり、帝の息子である東ですら親の顔を見たことないと言っていたのだ。

 

「本当に昔だよ。先生はね、そこで一人の少年を預かったんだ。その子はね、とある事情で子供になってしまったという不思議な少年だったんだよ。帝様やその子から説明を聞いた時は私ですら理解できなかったよ。でもこれだけは分かったんだ。これは非常に重要なことであり、私の使命だとね」

 

元信の言葉をただ聞くしかできなかった。

 

「その子を預かり自由に育てたよ、そう、武蔵に預けてね。そして少年は一人の女の子出会った。その女の子のことを妹のように可愛がり、本当の兄妹(きょうだい)にも見えたよ。このまま二人が育っていくのを見ていたかったよ。でもね、それは叶わなかったんだ。何故なら――」

 

――女の子は亡くなってしまったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「元信公、何故こんなことを……」

 

正純は、横にP-01sを置きながら、元信の言葉を聞いていた。

 

聞こえる言葉は、昼に聞いたこと、酒井やノアがこちらに告げたものと同じ内容だった。

 

だが、今の正純はそれよりも気になっていることがあった。

 

ノア、何でお前がそこにいるんだ――

 

昼まで一緒にいたノアが、地脈が暴走している三河にいることが気になってしょうがない。夜には教導院にいるんじゃなかったのかと。

 

「正純様」

 

「……ん、どうした、P-01s」

 

「ノア様が心配ですか?」

 

正純は表情に出ていたのに今気がついた。自動人形にも分かる程に正純は不安を隠せずにいた。

 

「心配していないと言えば、嘘になる。心配だ」

 

「……」

 

P-01sに語りながら放送している表示枠を見る正純をP-01sは見た。

 

「P-01sに正純様が今抱えている感情は分かりません。けど……」

 

「……けど?」

 

P-01sの言葉に疑問を思う正純はP-01sを一度見た。そして気付くのだった。

 

――何故涙を流しているのか

 

自動人形であるP-01sには感情という物がないはずなのに、何故。

 

「今のノア様を見ていると――」

 

P-01sはそれから言葉を述べなかった。

 

頼むから無事に帰ってきてくれよ。ノア。

 

 

 

 

 

 

 

 

元信は語る。

 

「不運な事故だった。少年は瀕死の女の子を一生懸命に治療した。自分の力の限り、でも女の子は亡くなってしまった。そして少年に最後に一言述べて逝ってしまったんだ」

 

――優しくいて

 

「少年は泣いたよ。瞳を閉じたままの女の子を抱きしめながら泣いたよ。体中に血が付こうが少年は女の子を抱きしめていた」

 

「……」

 

元信が語っているのを静かに聞くノアの表情は暗かった。

 

「私の分まで泣いてくれたよね。ノア君」

 

元信が語っていた少年というのはノアであることを暴露する元信。

 

「そう、そして大罪武装は、人間の感情を部品としている」

 

それは、

 

「その人間の名は、ホライゾン・アリアダストという、ノア君の胸の中で息を引き取った女の子だ」

 

『え……?』

 

武蔵にいる住人は聞こえた名に聞き覚えがあった。

 

「ホライゾン、十年前に私が事故に遭わせ、大罪武装と化した子の名だ。そして去年、彼女の魂に嫉妬の感情を込めて九つ目の大罪武装とし、――自動人形の身を与えて武蔵に送った」

 

その自動人形は、

 

「P-01sという名を持って、武蔵の上で生活をしている」

 

武蔵にいる誰もが、次の言葉を聞いた。

 

「自動人形、P-01s、その子の魂が、――“嫉妬”の大罪武装“焦がれの全域(オロス・フトーノス)”そのものだ」

 

元信は一息し、

 

「これが大罪武装の正体と、九つ目の大罪武装の在所だよ」

 

「やはり……」

 

「そうだよ、君が思っていた通り、彼女がホライゾンだよ」

 

ノアが確信を持って言った言葉に頷きながら同意する元信は笑みを浮かべていた。

 

「――ど―し―」

 

小さな声でノアが何かを言っている。

 

何故。

 

「どうして、魂ある自動人形を、――大罪武装にした!」

 

「……」

 

叫ぶノアに対して誰も答えてはくれなかった。元信も口を閉ざしている。ただ流れる言葉は、

 

「今日、ホライゾンを見たよ。……手を振ってくれていた」

 

一言

 

「ホライゾンは、元気なようで、……何よりだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

元信の言葉を聞いて、武蔵上を走り出した者がいた。それは、

 

「――愚弟!?」

 

トーリが速度としては並程度で、しかし彼としては全力で走り出していたのだ。

 

聞こえた事実に誰もが息を飲み、顔を合わせていた中だった。

 

停止と戸惑いの雰囲気を断ち切るように、トーリは走る。学校前の階段を駆け下り、その最中に背後から喜美の声が、

 

「愚弟! アンタ、どこ行くの!?」

 

だがトーリは答えない。ただ走り、息をつき、後悔通りにたどり着く。

 

皆が、あ、と声を上げるが、トーリはわずかに迷い、しかし、

 

「――っ!」

 

勢いつけて暗い道へと飛び込んだ。身を大きく振り、速度を出来るだけ上げながら、

 

「……!!」

 

その、必死に走っていくトーリの動きに、皆の中から応じる者がいた。出る人影は三つ、ネシンバラとウルキアガ、そしてノリキの三人だ。

 

走り出し、一気にトーリに追いついていく三人に、数歩を踏んだ喜美が叫ぶ。

 

「追って! お願い……」

 

喜美の声は三人に届いたはずだが、心配そうな表情を変えることはなかった。

 

「ノア君、か、悲しん、でる……」

 

三人の後ろ姿を見ていた喜美の背後から声がした。

 

「鈴さん」

 

涙を流しながら立っている鈴が居た。涙を拭いながら立っていた鈴だったが座り込んでしまった。

 

そんな鈴に直政とアデーレが近寄った。

 

「トーリくん……ノアくん……」

 

浅間は、喜美の隣に移動し、彼女の肩に手を当てながら心配そうに表示枠を見た。

 

「愚弟……ノア……無事に帰ってきて」

 

小さな声で喜美が言葉を出す。隣にいた浅間には聞こえていたが、他の人達には聞こえてはいなかったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の下まで来てくれたら全ての答えを教えよう、ノア君」

 

正面には忠勝がいる。その遥か向こうに元信がいる。

 

「宗茂君、協力してくれるかな?」

 

「元よりそのつもりです」

 

悲嘆の怠惰を持ち直し構える宗茂。

 

「さぁ、世界大戦が起きるかもしれないし、責任所在の問題で、今度こそ極東は完全支配かもな。そしてもしそうなったら、手引きは先生のせいにされるんだろうなあ」

 

逆光を置いて、元信がマイクの声を作った。

 

「だが、見たいよなぁ。――史上初の、聖譜記述にも無い世界大戦ってのを」

 

元信の言葉に、宗茂とノアは唸りをあげ、

 

「「止めます!」」

 

「いいなぁ! そうだよ二人共、いい答えだ!!」

 

構えを深くした宗茂に対し、元信がのけぞって声をあげる。

 

「そうそう、ノア君には特別に相手を用意してあるからね。宗茂君は、そこの副長と戦いなさい」

 

元信の言葉の直後、宗茂とノアは風を感じた。威圧の、押すような風を。その発生源は、

 

「本多・忠勝……!!」

 

「おうよ、若の相手はアイツ等だがな」

 

首から自動人形の身を提げた武者が立っていた。

 

忠勝は後方を顎で指した。

 

「なっ!」

 

宗茂が驚きの声をあげた。

 

忠勝の後方にある建物の中から巨大な物が次々と飛び出てきた。

 

巨大な羽、手には巨大な鋭い爪、体全体を金属の装甲で覆っており、巨大な竜型の機械が現れたのだ。

 

「私が作り上げた機竜(きりゅう)だ。私の言うことを聞く自動機竜とでも呼ぼうか、大きさは航空艦で例えるなら、ドラゴン級からヨルムンガンド級までいる」

 

宗茂とノアの視界全体に凄まじい数の機竜で埋め尽くされていた。新名古屋城から光を遮る程の数だ。

 

「さぁ、私にノア君の本気を見せてくれ。そして私の下までたどり着いてくれ! この二万の群れを掻い潜って!」

 

盛大に腕を広げながら目の前の光景に笑ってみせる元信。

 

「宗茂君、忠勝さんはお願いします。私はこちらをやります」

 

そう言って、ノアは一歩前に出て、機竜に向かおうとする。

 

「ちょ、ちょっと、貴方一人では無理です」

 

「いいえ、大丈夫ですよ」

 

「何も持たずに素手で、挑むつもりですかッ!?」

 

「だから大丈夫です。武器ならちゃんとありますよ」

 

「何処に!?」

 

宗茂がノアの肩を掴んで、止めようとするが、その前にノアが既に行動していた。

 

地脈が暴走する音や機竜の雄叫びが響くのに関わらずノアの声は忠勝、元信、放送している画面の向こうにいる人達にまで聞こえていた。

 

 

――ここに神の子 顕現せり――

 

 

彼の言葉と同時に彼の左手に光が集まっていき、何かを形成していく。

 

眩い光が収まり、彼の手には一本の槍が握られていた。

 

彼の髪と同じ黄金の光を放ち、一目見ただけで鳥肌が立ってしまい、間近にいる忠勝、宗茂は、槍の異常性を肌で感じていた。

 

 

あれは、常人が持っていいものではない。

 

あの槍は一体何なんだ。

 

 

聖約・運命の神槍(ロンギヌスランゼ・テスタメント)

 

 

ノアは左手に持つ槍を一瞬だけ見つめ、機竜の群れへ向けた。

 

「宗茂君、どちらが先に地脈炉を破壊できるか、競争だ」

 

「……武蔵アリアダスト教導院、副長の力を見せてもらいます」

 

二人はそれぞれの敵に駆け出した。

 




投稿が遅くなってしまい申し訳ありません。

そしてあけましておめでとうございます!!

2014年もよろしくお願いします!


ゆっくり書いていきますが、是非ともゆっくりと待っていてください。
失踪はするつもりはありませんので!


次回は、戦闘とノアの過去を書くつもりです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。