ゴルゴナの大冒険   作:ビール中毒プリン体ン

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原作よりバカになりすぎ感が否めません…が書いててなぜだか癒やされました。
ちょっとおフザケ回。


キングとじじい

死の大地地下に埋め込まれている大魔宮(バーンパレス)に帰還したゴルゴナは、

ある程度の”お叱りの言葉”や同僚からの”嘲りの視線”を覚悟していた。

だが待っていたのは、

 

「戻ったか……ご苦労だった。

 英雄バランを相手に、なかなか善戦したではないか」

 

という大魔王の言葉。

 

「…………」

「策士策に溺れる…って感じだったねぇ。 ご愁傷さま。

 まぁ……バラン君の目の前で女を殺したり、

 アルキードに瘴気撒いて滅ぼしちゃうのプラスだったよ。 ボクとしてはね」

 

ミストバーンは沈黙で、キルバーンは陽気にゴルゴナを迎えていた。

 

「……申し訳ありません。 バランの捕獲にも、引き入れにもしくじりました。

 バーン様の名まで出してしまい………結果は竜の逆鱗に触れたのみ」

 

冥王が自らの失態を詫びる。

自分の戦いは、張り巡らせている”悪魔の目玉包囲網”によって彼らに知られているはずで、

内容も事細かにいちいち言わずに済むので楽は楽である。

 

「仕方あるまい。 あそこまでいけば余とて部下にできると思うであろう。

 フッフッフッ………真魔剛竜剣が独自にあそこまでするとはな。

 ……確かにおまえはミスを犯したが、同時にバランの底力を見極める良い働きもした。

 それに、技術面での功績が大であることは、この2人も知る所。

 そう気に病むこともないが……………

 挽回したいというのならば、早速にでも動くがよい」

 

ゴルゴナとて本気で気に病んではいない。

むしろ、これはこれで

『竜の騎士ともある程度(搦め手込みで)対等に戦える』というアピールになったと考えている。

頭脳面のみでしか活躍できない、

などと思われては今後魔王軍での活動に支障ができるのは想像に難くない。

基本的に、力を信奉する魔族においては戦える力を有していることをアピールするのは重要だ。

それは、異魔神時代…未熟だった頃の魔人王と、

詰めが甘かった竜王を見ても明らかなのである。

幸い、今回の失態は大魔王と同僚達はさほど重要視していないようなので、

ゴルゴナとしては一安心であったが、

(新参の我が…これ以上失態を重ねることはできん)

という思いもある。

 

「畏まりました………。 汚名を返上してごらんにいれまする……。

 して、我の成すべきこととは?」

「ミストバーン。 ゴルゴナにあれを見せよ」

 

大魔王の言葉を受けて、沈黙の影が音も無くひれ伏す冥王へと寄ると、

ス…と暗闇の懐中から一枚の図面を取り出した。

 

「これは……城の設計図……………いや、移動要塞でございますな」

「その通り。 おまえにはそれを建造してもらいたい。

 ムーを知るお主ならば、色々と気づく点もあろう。

 基本形はそれとして………あとは好きに手を加えて構わぬ。

 その名も鬼岩城。 ……余の期待を上回る玩具を期待するぞ?」

 

ククク、と笑う大魔王は老練な威厳を纏いながらも

どこか少年のような雰囲気の笑みを浮かべている。

それ程に、この”鬼岩城”なる物が楽しみなのだろう。

 

「ははっ……。 しかし、取り掛かる前に一つ………やらせて頂きたいことがございます」

「ほう…言うてみよ」

「我と、部下達………ムー人はこの世界に流転してきた客人。

 現世のコトワリに疎いところがございまする……。

 それを補うためにも……魔界の賢者を得たく思い…………ぐぶぶぶぶぶ」

「以前、キルバーンが見つけた男か。

 よかろう………だが、お主自らが出向くこともあるまい。

 その者を召し出し、おまえの元に遣わそう」

 

バーンの心は既に鬼岩城へと傾いている。

大魔王としては、ゴルゴナにはさっさと建造に着手してもらいたく、

賢者ザボエラのもとにはバーンパレスで暇を持てましている者が使者として赴くこととなる。

こうして、鬼岩城建造計画が始動したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔界の辺境にある地下迷宮。

己の研究を守るための罠がそこかしこに設置してある鉄壁の研究所兼自宅。

そこの最下層に彼と息子はいた。

今日もいつもの通り研究三昧の平穏な日々である。

 

「キィ~ッヒッヒッヒッ。 この研究が完成した暁には、どっちに売り込もうかのう~。

 冥竜王様か大魔王様か………どちらがわしの研究の素晴らしさを理解してくれるかの、ザムザ」

「……父上は、もう少し外を出歩いたほうがようございます。

 冥竜王ヴェルザーは…たしか、1、2年前に死にましたぞ」

「な、なんじゃとぉ!? ヴェルザーといえば、あのボリクスを下した不死身の化け物じゃぞ!?

 死んだのか!?」

「あ、あぁ、いや…正確にはたしか封印されたのです。

 竜の騎士に敗れて石にされたとかネズミにされたとか、金色のスライムにされたとか…。

 まことしやかに噂されておりますよ」

 

どれがホントかはわかりませんがね、と世間の適当さにやや皮肉気味に笑う若い魔族。

そんな彼に”父上”と言われた魔族は、背も小さく顔もしわしわの老人で、

2人は親子というよりジジイと孫といったほうがシックリくる。

そんな2人の研究室には大量の大型カプセルがズラリと並べられていて、

その中には多種多様なモンスター達が保存液に浮かんでいた。

 

「ザムザよ。 不確かな情報に躍らされるのは負け犬のすることだ。

 それに封印されたことを、死にました…などとわしに報告するとはどういうつもりじゃ。

 学者なら正確性をもっと重視せんか、正確性を! まぁったく、おまえという奴は」

 

ザボエラが飛び上がると、手にしていた杖で息子の頭をぽかりっ!とぶっ叩いた。

こうでもしないと背の高い息子の頭に届かないのだ。

 

「いたっ」

「無駄に背ばっかり伸びおって! その頭は空っぽか! んん!?

 わしの息子の割に笑い方くらいしか似ておらんのだからなぁ、不出来な息子じゃ」

「ひ、酷いモノの言われようですね……………。 ん? あ…ち、父上」

「なぁんじゃ! まだ何かあるか!」

「索敵晶に反応があります。 何者かが迷宮に近づいてました」

「なんじゃと! わしの研究を狙うネズミか!! どんなやつじゃ!」

「今、入り口の悪魔の目玉の映像を出します……」

 

ザムザが索敵晶と呼んだ人の頭程度の水晶球に並ぶ大きな水晶。

それに迷宮の玄関口の映像が映し出されると、

 

「もしもし! もしも~~し! 我輩は偉大なる魔界の神バーン様の使者!

 キング!! マキシマム!!!! 扉を開けられたしっ!

 大魔王様の御用であ~~る! 開け~~い!」

 

ザボエラ特性の大扉をガンガン殴り鳴らす、大柄の金属生命体がいた。

 

「ぬぅぅ~~! これで何度目のノックだと思っているんだ!

 全くこれだから田舎もんは嫌なのだ。

 わざわざキングであるこの我輩が来てやっているというのに……」

 

大げさな動きでマキシマムとやらが無駄に太い腕を腰にあててため息をつく。

 

「だいたい我輩はバーンパレスの無敵の守護者。

 なんで魔界の田舎に来なきゃならんのだ。

 だいたいバーン様もバーン様であるなぁ。

 あんな不細工で卑しい新参者のゴルゴナとかいうよくわからん

 自称・冥府の主の代わりに我輩をこ~んなカビ臭いとこに使いに出すとは!

 えぇい! 思い出したら腹が立ってきた!

 こうなったら我輩のこのオリハルコン製の剛腕でぇぇ、

 こんな安っぽい扉ぶっ壊してくれるわ!」

 

間抜けなちょび髭のすぐ下にある口をあんぐり開けて、

握り拳にハァ~っと息を吹きかけ温める仕草。

果たして金属生命体の彼がそんなことやって意味があるのかは不明だ。

 

「…おっとその前に。

 万が一ということもある。 この扉にとんでもないトラップが仕掛けてあるかもしれん!

 また、この扉がとんでもなく硬くてタフだった場合…。

 我輩の剛腕で一撃で砕けぬ、

 というとてもかっこ悪いことになってしまってはキングの威厳に関わるからな。

 ヌゥン! キィィングスキャァァァァン!!」

 

ピカァァァァっと派手に光る彼の目が眩しい。

 

「トラップはない……うむ。

 むむ…扉のHP400……よんひゃく!?

 しゅ、守備力は………げぇ!? 190!!

 高過ぎるだろう!! 一撃ではとても砕けんぞ!

 ザボエラとかいう田舎者は何を考えているのだ!

 こんな田舎の迷宮の扉をなんでこんな丈夫にしているのだ!バカではないか!?」

 

正真正銘のバカにバカと言われては心外だろう。

呆気にとられて見ていたザボエラ親子が、ようやく口を開いた。

 

「おい、そこの木偶の坊。

 見るからに脳みそが空っぽのようじゃが、

 さっき言っていたことは本当か?」

「む! いったいどこから声が…! 面妖な!」

「ここじゃ間抜け! 上じゃ! 上を見んか!!」

 

キョロキョロしていた無駄にオリハルコンなマキシマムが扉の縁の出っ張りを見ると、

 

「なんと、そんな地味な所に悪魔の目玉とは。

 さすがの我輩の目を持ってしても見破れんはずだ!」

「えぇい…、あまり口を開くな。 馬鹿が伝染るわい!

 話をすすめるぞい! おまえは本当に大魔王バーン様の使いなのか?

 馬鹿すぎてとても信じられんわい。 証拠を見せんか」

「証拠だと?

 くく……ぶはは、なぁ~っはっはっはっはっはっはっはっはっ!

 我輩そのものが証拠そのものよ!

 見よ! この輝くボディ!

 この体は全て超金属オリハルコンでできているのだ!

 いかなる魔法も我輩を傷つけられん!

 そんなスペシャルな我輩を部下に持てる御方は、

 世界広しといえどもバーン様ただお一人なのだぁ!」

「ほ~、なるほど。 では…ザムザ」

「はい父上。 ポチッとな」

 

悪魔の目玉の向こう側。 研究室でザムザが何かのスイッチを押したらしい。

扉のサイドからガシャコン、と怪しげな悪魔像が飛び出てきて、

 

「うん? ……!? うぎょええええええええ!!!??」

 

像の口からたっぷりと業火が吐出された。

 

「き、貴様らぁぁ~~~! 我輩は客人だぞ!!

 大魔王様からの使者の我輩に炎を浴びせるとは何事だぁ!!」

「おお! 父上! 燃えませんぞ!」

「むむ! まさか本当にオリハルコンなのか。

 これは驚いたのう。 どうも本当に大魔王様の使い走りらしい」

「使い走りではない!

 今回は特別なのだ! 我輩に仕事を押し付けてサボった冥王がおるのだ!

 我輩こそバーンパレスの真の守護者! キング!!! マキシマム!!!!!」

 

胸を張り、腰に無駄に太い腕をあてて勇壮にポーズを決める。

 

「ああ、わかったわかった。 いちいちやかましい奴じゃ。

 まっとれ。 今支度をする」

「ようやく父上が日の目を見る機会が巡ってまいりましたね!

 大魔王様に召しだされるなんて大変な名誉ですよ!」

 

そこでぶつり、と目玉の通信が切れた。

 

「フフン。 なんと、早くもスカウトが成功してしまった。

 我輩、こんなヘッドハンティングの才能もあったのだなぁ。

 自分の多才っぷりが恐ろしい……ふっ」

 

髭を優雅に撫でる仕草は妙に様になっているリビングピースである。

自称・バーンパレスの守護者の、見出された新たな使用用途。

それは使い走りであった。

が、後に彼の更なる使用用途が外道の大蜘蛛から提案される。

手足を切り取ってベホマをかけて再生させまた切り取るオリハルコン生産工場。

彼を待ち受ける運命は過酷だった。

 


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