ゴルゴナの大冒険   作:ビール中毒プリン体ン

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皆さん鬼岩城魔改造案、ありがとうございました。
大変参考になり、いくつか本ssに取り入れさせていただきました。
ちょろっと漏らしただけなのに皆さんの食い付きが凄くて驚いたですよ!
思わぬ形でアンケートっぽくなってしまって
アカウント停止になるかとちょっと焦りました。(;´Д`)ダイ大人気スゲェ

バランを魔王軍入りさせなかったのも鬼岩城を魔改造したかったから…
と言っても過言じゃありません。^p^


キングの尊い犠牲

知性溢れる老人が盤上の駒を眺めている。

彼の忠実な側近達はチェスを嗜まない。

指す相手がいなくなって久しいチェスを1人で楽しむのが最近の彼の日課である。

そんな主をミストバーンは静かに見守り、

キルバーンは…

 

「おや? その駒……その輝きはオリハルコンですか?」

 

バーンの持つ僧正の駒(ビショップ)の異様な煌きに気付き思わず聞いていた。

 

「うむ……マキシマムの能力から生み出された駒だ」

「あぁ…あのキングの。 彼の忘れ形見ってわけですね……」

「…………あの掃除屋は、自分の身の丈にあった役目を見出したようです。

 あちらの方が、バーン様のお役に立てるでしょう……」

 

まだ死んではいないので忘れ形見ではないし、

ミストバーンの数年ぶりの発言も実に薄情なものだ。

キルバーンの肩では一つ目ピエロのピロロが「面白いやつだったのにね……」と涙ぐんで

「泣くのはおよしよ、ピロロ。 彼はボクらの心の中に生きているよ」と

死神から冥竜印のハンケチを渡されるというふざけっぷりである。

 

「ふ……、ゴルゴナから渡された真・鬼岩城建造計画書………。

 あれが実現する日が待ち遠しい。

 ここまで心躍るのはいつ以来か…………。

 マキシマムを我が臣としておいて良かったと……今ようやく思えた」

 

掌で駒を転がし、弄ぶバーンの顔は満足気だ。

部下の適材適所は大切である。

今まで”オリハルコン製の金属生命体”という希少種である

マキシマムを持て余していた大魔王。

本来なら前線で将兵として存分に使いたかったが、

いかんせんマキシマムは馬鹿すぎた。

情報の集積と相手の能力を見抜くスキャン能力、そして生み出した駒を自在に操る力。

どれも素晴らしいが……どれも全く活かせないのがマキシマムであった。

いつかは成長するかもしれないと長い目で見てきた大魔王であったが、

(マキシマムの使い方は、ゴルゴナのやり方が良いかも知れぬな)とも思い出している。

 

バーンとて、マキシマムからの”オリハルコンの採取”を思ったことはある。

あるのだが、そこまでして必要か……と問われれば、バーンには必要ないのだ。

三界で最強の剣は己の手刀であると自負しているし、

現在の老人形態でも光魔の杖を使用すればオリハルコンを上回ることはできる。

それに、加工方法も面倒なのだ。

魔界の名工ロン・ベルクならば比較的容易く行うだろうが、

彼は偏屈な男でしかもバーンのもとを死を覚悟で去っていった。

安々とは戻らないだろう。

バーン自身の超魔力を使えば、

加工は不可能ではないがさすがにロン・ベルクほどの鍛冶技術はない。

オリハルコン製の二流武器など創出しては、大魔王の沽券に関わる。

つまり、手間を考えるとオリハルコン製の武具など割にあわないのだ。 大魔王にとっては。

 

だが、それも今までの話。

今はムーの技術を持つゴルゴナがいる。

彼は、効率のいい精錬方法を熟知しているし加工技術も修めているのだという。

そしてそれを用いて、大魔王の密かな夢……決して果たせぬ遠い夢……

己の最強の姿であるはずの鬼眼王を模した玩具を、とびきりの逸品に仕上げてくれるという。

バーンの心は少年のように高鳴り……有り体に言えばわくわくしている。

ゴルゴナの、”マキシマムからの切り出し”など二つ返事で許可である。

 

「酒が美味い………」

 

片手のワイングラスが、もう空になっていた。

最近の大魔王の酒量は右肩上がりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、大魔宮の一室にて。

 

「えーそれでは不死生物研究にかかりきりのオティカワン、ツークーマン両名を除き、

 我々で鬼岩城建造計画修正会議を行います」

 

頭が長いタレ目のトピアポが進行役をやっている。

本当は6人衆のリーダーは自己主張していたキアーラなのだが、

面倒臭いからトピアポさん任せます、という押し付けにより彼が務めている。

見た目通りに気弱で押しが弱い彼は、昔からこういう役割であった。

慣れたもので卒なくこなしている。

ちなみにゴルゴナはミストバーンと一緒に

どこかにオリハルコンを切り出しに行っていて不在である。

 

「まずは建造場所の再確認だけど……ギルドメイン山脈に囲まれた盆地のままでいいのよね」

 

とはフロレンシアの発言。

 

「そうです。 ギルドメイン大陸南東部……旧テラン東部のギルドメイン山脈です」

 

頷きながらトピアポが肯定した。

 

「そういえば、ギルドメイン中央にゴルゴナ様は面白い種をばら撒いたらしいな」

 

愉快そうにポポルヴーが笑って言う。

 

「うふふ……なんでもベンガーナ王国は、

 南のアルキード…北のテランからのアンデッド大軍団に

 南北から攻め立てられて毎夜激戦を繰り広げているそうですよ。

 常に腐臭が風に乗って王国全土に漂っているとかで……

 疫病が絶えず自慢の経済力もガタガタで国力も見る見るうちに低下してるとか。

 ベンガーナ王国のアダ名が疫病王国になったらしいです」

 

にこにこのキアーラは何故か誇らしげだ。

 

「カール王国が自慢の騎士団をベンガーナに増援として出したようね。

 勇者アバンは子供のお守り……英雄バランはお尋ね者にされて消息不明。

 アバンは子守してる場合じゃないでしょうに。

 そんなにヒュンケルとかってガキが可愛いのかしら……確かに子供ながらイケメンだけど」

 

フロレンシアもくすくすと笑う。

雑談に花が咲きかけたところで、

 

「皆さん。 鬼岩城会議は始まったばかりですよ。

 さぁ、こっち見てください」

 

トピアポが伸縮棒でホワイトボードを叩いた。

キアーラとフロレンシアの「は~い」という間の抜けた美声がトピアポのやる気を削いでいく。

が、1万2千年前からいつものことなのですぐ回復する。

話し合いは5時間におよび、途中休憩を2回挟んだ。

結果としては、

 

城本体を一回り巨大にし、武装の積載量を増やしつつ快適な居住性も維持する。

(浄水施設を置き、シャワーと風呂を完備する……とは女性陣の強固な意見)

身長145mから160mに……重量も増大する為、

下記する浮遊機能による補助で、歩行時、土中に沈み込まないようにする。

 

起動毎に岩石のみで生成される腕部と脚部に、攻撃用魔法球を埋め込むようにし、

腕部外苑・指先・掌・脚部スネ・脚部フクラハギからの光線攻撃を行えるようにし、

全方位攻撃を可能とする。

 

頭部・玉座の間・下部に可動機構を施し眼部光線砲と大魔砲『いかづち』を可変砲台にする。

 

城側面から生産工場からでる廃液を放出する機能を取り付け、

城内を清潔に保つと同時に、地上の毒の沼化による環境汚染攻撃を行う。

 

弾幕を腕部と脚部で補う代わりに胸部の電磁投射砲を削減し、

国家消滅砲・開閉式超高圧縮暗黒闘気砲を搭載する。

(使用時は”肺の間”の暗黒闘気供給機を

 フルでこちらに転用するため歩兵の生産はストップせざるを得ない)

 

増大する本体重量を支え自重崩壊を防ぐ為オリハルコン製の支柱を通し、

巨人形態時を考慮し骨格状に配するムーバブルフレームを採用する。

これによって堅牢性と機動性の向上が見込まれる。

 

我らが偉大なる主、大魔王バーンの最終目的を考慮し、

鬼岩城に単体飛行能力を付与する。

ムーの飛空艇の技術を転用すれば改造は容易であると思われる。

 

3mmオリハルコン装甲だけでは竜魔人バランに対する備えが不十分である。

異魔神が竜王に与えたメカバーンのマホカンタコーティングを鬼岩城外壁に施す。

また、オリハルコン装甲と壁面の吸着力を高めると同時に

被弾時の衝撃を吸収する目的で、

装甲・壁面間に不死のゴーレムの細胞……イマジン細胞(仮称)を敷き詰める。

 

超装甲と超火力を誇る鬼岩城だが

城内に敵勢力の侵入を許した場合の防備が不十分である。

反乱・侵入者対策としてザボエラの体内から搾取した魔香気を

ガス状に噴出するダクトを取り付ける。

 

最後に……超火力、超装甲を誇るムーのオーバーテクノロジーを搭載した本要塞が

敵の手に渡った時の為の機密保持として、

大魔宮(バーンパレス)のピラァ・オブ・バーンに搭載されているものと同型の黒の核晶(コア)を搭載し

自爆機能を取り付ける。 

※自爆機能の存在は演算処理機マキシマムには秘匿すること。

 

という改善?案がまとまった。

 

「こんなところかしらね」

「シャワー機能は必須ですよね~」

「当然ね」

 

と女性陣が笑っている。

男性陣は男性陣で、

 

「う~む……肘部の魔法動力球の出力をもっと上げれば、

 腕部を高速で打ち出す質量兵器にもなるはずなのだが」

「それには動力球の出力が現状の2倍以上必要ですよ?

 残念ながらそれを求めるとコストが増大しますし……」

 

などと未だ盛り上がっていた。

マキシマムと、さり気なくザボエラまでが著しい人権無視の嵐に晒されそうな未来であった。

だが、生ける駒と魔族は人ではない。 仕方ない。

しかもムーの変態科学者達は、祖国が滅びるのも厭わず研究を続けた筋金入り達である。

仕方ない。

 

後日、この改修案を提出されたバーンは、たいそう喜んだという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某所某日……謎の切り出し場にて。

 

「いやぁぁぁぁぁ!!! もうやめてぇぇぇぇぇ!!!」

 

字面だけ見れば艶かしい悲鳴だが、

実際は野太い声で叫ばれているため少しも嬉しくない。

そんな叫び声を上げているのが、

 

「我輩もう死ぬ! いい加減もう死ぬかもしれん!

 痛いのだぞ!? 金属生命体とはいえ痛いのだよおおお!!!」

 

拘束具に押さえつけられ一切の抵抗手段を失ったキング・マキシマム。

そしてそんなオリハルコンを冷淡に見つめる者が2人。

ミストバーンとゴルゴナである。

 

「………時間だ」

 

ミストバーンが告げると、パァぁっとベホマの光が生けるオリハルコンを覆いだして、

達磨のオリハルコンに見る見るうちに手足がうにょうにょ生えてきた。

暗黒闘気刃による切断に伴う、回復の遅延効果。

それが切れた途端にかけておいたベホマが効果を発揮しだしたのだ。

そして、

 

「ぐぶぶぶぶぶぶ…………ザボエラ。 やれ」

 

今度は冥王が告げると、青ざめつつ鼻水を垂らしている老人が

 

「は、はいぃ! ただいま!」

 

と震えた声でレバーを引く。

すると超高速で回転する暗黒の刃が喚くマキシマムに迫り……。

 

「のぉおおおおお!? ストォォォォップ!! ストップ!!!!

 ひ、ひいいいいいいいいいいいいいいい!!!???」

 

甲高い金属の摩擦音がその部屋に響くのだった。

今日のノルマはあと2トン。 マキシマムの悲鳴が途切れることはない。

 


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