ゴルゴナの大冒険   作:ビール中毒プリン体ン

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待ってくださっていた方は申し訳ありません……半年空いてしまいました。
以前ほどのペースは難しいかもしれませんが、これからはちょこちょこ更新できそうです。
久々の更新だというのにダイ大要素が薄いというか……趣味丸出し!


恐怖!機動鬼岩城

「パプニカでクーデター未遂!?」

「ええ……なんでもバロンさんとテムジンさんが、

 パプニカ王の一人娘、レオナ姫を儀式にかこつけ暗殺しようとしたそうです。

 魔王の遺産……『キラーマシーン』まで持ちだしたそうですよ」

 

リンガイア王都にほど近い連合軍の陣幕。

ベンガーナの鎧を着た兵士達が戦車に砲弾を積む様を横目で眺めながら、

弟子のポップに変事を説明してやるアバン。

アバンが受け取った書簡にはパプニカ王家の紋章が刻まれており、

それが信頼性の高い情報であることを証明している。

何度かバロンらと顔を合わせたことのあるポップは、

 

「へぇ~、確かにちょっと人相悪かったし……やっぱ人間、顔に出るんすねぇ」

 

うんうんと首を縦に振りながら何やら1人納得するが、

それを見たアバンは、

 

「ポップぅ~? そのような曖昧な要素で人を判断しちゃいけません……、

 って確か先週の座学の授業でも教えましたよね……?

 見た目だけでの判断では思わぬ落とし穴にハマりかねません。

 モシャスの実演もしてみせてあげたでしょう?」

 

メガネをキラリと光らせて、弟子へ口頭注意。

ポップが「あんれぇ~、そ、そうでしたっけ? へへ」と

口笛を吹きながら素知らぬふりをして誤魔化す。

困った子だな……と心で溜息をつきつつも、アバンのポップを見る目はどこまでも優しく、

不出来な子ほど可愛い、といったところだろうか。

 

「さて、本題はこれからです。

 パプニカからの書簡によると、レオナ姫の推挙で

 是非とも私に家庭教師を任せたい逸材を見つけた……とのこと。

 とゆーわけで……早速荷物をまとめますよポップ」

 

両手でほれほれ、と急かすアバンに

 

「えぇ? 今からパプニカくんだりまで行くんですか先生!?

 アバン先生がここ離れちゃ色々とまずいんじゃあ……」

 

フローラ様も黙っちゃいませんよ、と心配事を提起する。

カール王国のフローラ王女とアバンがただの君臣の間柄でないことは、

他人の恋路に敏感なポップにはとっくにお見通しであった。

というより、アバンとフローラの仲は公然の秘密……、

国際的公認の仲という感じで、

「なんとまだ結婚していなかったのか、それはいかん。早く責任をとりなさい」

といった認知である。

当人同士はきちんと公私を分けているようだが、

これだけ長期にわたって共に政治やら戦争やらでがっちりタッグを組んで行動していれば、

周りも(もしかして……?)と勘ぐる空気を感じ取れたのは一度や二度ではないだろうし、

なにより周囲の者の多くが二人がさっさとくっついてくれることを願っている。

ハドラーの乱からこっち、地上世界は乱続きである。

カール王国唯一の正統王位継承者であるフローラが、

20代後半に入ってなお独り身であるのはカール王国にとって冗談では済まない。

王国を揺るがす一大事になりかねないのである。

フローラの想い人がアバンであるというなら、昔からの誼もあるのだし

大勇者アバンはさっさと観念すべきだ。

そんな視線を最近はヒシヒシ感じるアバンなのであった。

”ハドラーを打倒した勇者と結婚しその力を一国家の為に専有した”と、

国際感情の逆撫でを憂慮していたが故に

フローラと添い遂げることを半ば諦めていたアバンだったが、

そんな配慮も魔王を倒せば

人類同士の摩擦にさえ気をつければ平和になる……と信じていたからで、

現状においてはフローラとアバンの婚姻は自他ともに望むところで、Xデーは近いように思える。

だが今は、

 

「大丈夫ですよ。 フローラ王女にはちゃんと事情を説明しましたし………、

 不幸中の幸いにも今は戦況は膠着状態。

 ダイ君の修行が長引くようなら彼を連れてまたここに戻るつもりです。

 もちろんダイ君と親御さんが望めば、ですが」

 

アバンにそんな暇がないのであった。

明らかに色恋話に持って行こうとしていた弟子の額に

「ていっ」とデコピンしながら言ったアバンに、

 

「ダイぃ~? なぁーんだ男か~!

 ちぇっ、女の子なら楽しい修行生活になると思ったのになぁ」

 

師の発言から男性名であろうと当たりをつけたポップが落胆する。

そんな弟子に、

 

「ポップぅ? さっきも言ったでしょ。

 人を一つの側面だけで判断してはいけませんよ。

 ダイ君が男の子だなんて、いつ私が言いました?」

 

と言ってやると

 

「え、ええ!? お、女の子なんですかっ!?」

 

あからさまに喜色を浮かべてアバンに飛びついてきた。

 

「男の子です」

 

すってーーーん、とその瞬間ポップががに股を綺麗に天へ向けてすっ転ぶ。

すぐにガバッと起き上がり、

 

「ひどいっすよ先生! 一瞬期待しちゃったじゃないッすか!」

 

やけに真剣な顔で抗議してくる弟子を見ながら、

修行に関してもこんな顔で本腰を入れてやってくれたらなぁ、と思う勇者の家庭教師であった。

 

 

 

アバンらは、以前に言ったことがあるパプニカ王国まで瞬間移動呪文(ルーラ)で飛び、

そこから船で海洋を一路デルムリン島へ向かう予定である。

パプニカに到着した時点で、デルムリン島へルーラすれば手間も時間も短縮できるだろうが、

ルーラを習得できている者は案外少ない。

かの有名なパプニカ三賢者ですら全員は習得していないし、

ルーラを使える者でも自分一人が飛ぶのが限界………という者も少なくない。

三賢者の上役であった賢者バロンは当然優れたルーラの使い手で、

デルムリン島へ行った経験もあるドンピシャな人物だったが

暗殺未遂事件の主犯の一人であり当然案内など頼めない。

一刻も争う昨今の世情だが、

パプニカに到着した後は少々のんびりした船出にならざるを得ないのであった。

一時的にアバンがデルムリン島というド田舎へ隔離されたのと時を同じくして―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ベンガーナ王国上空50Km。

成層圏を、ゴウンゴウンという重低音を響かせながら飛行する巨大な人影があった。

鬼岩城。

新生魔王軍の巨大人型機動要塞が今、その悪魔の如き産声をあげようとしている。

 

「座標…ベンガーナ上空………予定地点到達しました」

 

「高度50Km……姿勢制御、Xプラス2、Yプラス1、Zマイナス1……鬼岩城、安定しております」

 

(ラング)の間、稼働率100%……

 工房を停止させます。暗黒闘気、国家消滅砲へ収束を開始」

 

「射角よし。 目標、旧アルキード王都。 チャージ5%……10%……15%」

 

「生命反応索敵………本城周辺には反応皆無……敵影無し」

 

玉座の間の周囲……外壁付近に設置された椅子に座しながら

不気味な機械類を操作するムー人らが次々に報告を上げる。

中央の玉座でそれら聞くは妖魔士団長・冥王ゴルゴナ。

玉座の間・上方に映し出される眼下のビジョンを、

外骨格を歪め不敵な笑みを作っているように錯覚しそうな貌で見つめていた。

 

「グブブブブ……落成式など鬼岩城にとってはただの余興。

 鬼岩城の真価はこれより試されるのだ。

 バーン様も注視しておられる………ぬかるでないぞ」

 

「もちろんです。 鬼岩城の処女航海……必ずや成功させてみせますわ」

 

玉座の隣に立つキアーラが自信たっぷりに応える。

この度の鬼岩城の起動。

当然のように、魔軍司令ハドラーは知らない。

そもそも、彼は鬼岩城が機動要塞であることも知らず、

ただの地上侵攻の本拠地としか認識していない。

新生魔王軍を纏める総司令とは言っても、

”この事実”がハドラーへのバーンの信頼の程度であった。

遥か上空に、ただ駆動音を響かせるだけの鬼岩城は、

地上の人間の誰にも知られることもなく悠々と飛び、

まったく危うげな事もなく(ラング)の間から暗黒闘気を砲へと充填している。

兵団を安々と産み出す量の暗黒闘気が怒涛のように蓄積され、

心臓(ハート)の間から生み出される電力によって激しくピストン運動を繰り返す圧縮機が、

莫大な暗黒闘気を窮極に圧迫しブラックホールの如き暗黒弾を形成しだす。

 

「チャージ50%突破……55……60」

 

ポポルヴーの読み上げは淀みなく進み、

カウントが進む度にムー人達の喜色は強くなっていく。

そして……死の大地・大魔宮(バーンパレス)から

水晶を通して見ている大魔王もまた同じであった。

老王の側に控える死神が、

 

「フフ……国家消滅砲………ボクも凄くワクワクしてますよ。

 名前負けしてないといいですがねェ」

 

なんとも楽しそうに笑っている。

 

「………余の肝いりの鬼岩城。

 フッ………この程度で躓いてもらっては困るな」

 

紅の美酒に酔いながらバーンもまた口角を釣り上げていた。

 

「80……85……90……95……100%。

 国家消滅砲……発射準備宜し」

 

ポポルヴーのGOサイン。

 

「総員、耐ショック」

 

キアーラが告げ、

 

「発射」

 

ゴルゴナがただ一言命じた。

その瞬間、開放されていた胸部装甲中心の砲身が、

全ての光を塗り潰さんばかりに漆黒に輝く。

悪鬼の腹底から響いてくる呻き声を髣髴とさせる低音が天に木霊し、

暗黒弾が彼方の地平へ放たれ………数瞬後。

黒黒とした激光がアルキード領を包み込み、一拍置いて大地を裂く振動と轟音。

衝撃波がやがて鬼岩城まで届き、その巨体を僅かに揺らしたが、

総オリハルコン張りの装甲と異魔神の細胞がそれらを防ぎきる。

 

「……演算機マキシマムによる各部チェック……オールグリーン」

 

圧倒的な殺戮劇を前にフロレンシアは淡々と鬼岩城の状態を検査し、

 

「お、おお………素晴らしい……っ!!」

 

ツークーマンは感嘆し、

 

「かつてのムーの超兵器にも劣らない!」

 

トピアポが賞賛する。

 

「オティカワン、旧アルキードはどうなっておるか」

 

ゴルゴナが尋ねると、

 

「はい………映像、でます」

 

立ち昇る巨大なキノコ雲を解析し、映像の倍率を高める。

と、そこに映る光景は―――

 

「グブ……ぐぶぶぶぶぶぶぶ………バーン様もお喜びであろう……!」

 

衝撃と流入で激しく渦巻く大海が映るのみ。

かつてそこにあったであろうモノは、何一つ映ってはおらず、

それを見て初めて冥王が楽しげに笑うのであった。

彼の主たる大魔王も、

 

「ふ……フハハハハハハハハハハ! 素晴らしい……!

 大陸ごと亡国を消し飛ばしおった。

 まさにその名に恥じぬ出来栄えよのぅ。

 余の玩具がこれほどに上出来とは………予想はしておったが、

 いざ目の当たりにすると……………クックックックックッ。

 年甲斐もなく心が昂ぶっておるわ」

 

大魔宮にてさも愉快そうに大笑い。

 

「地上の地図を描き直さなきゃなりませんねェ。

 小型の黒の(コア)を何度も撃てるのと同義ですねアレは……最高に物騒だなァ!

 ウクククククククク!」

 

可笑しくて仕方ない、といった風のキルバーン。

ピロロと共に彼らもケタケタと不気味に笑っていた。

 

「うむ………今宵は酒がすすみそうだな。

 余の鬼岩城………まさに匠の逸品と言えよう。

 人間と天界共への宣戦布告に丁度良き狼煙だとは思わぬか、ん?」

 

死神にオモチャの感想を求めると、

 

「仰るとおりで………」

 

キルバーンも全面的に賛成であった。

と、大破壊の様子を写していた映像にゴルゴナが割り込み、

 

「バーン様……鬼岩城は極めて良好でございます……。

 如何なさいますか………このまま成層圏からの地上全土の狙撃も、鬼岩城ならば可能ですが」

 

お手軽な地上殲滅プランを提案するも、

バーンはふむ…と軽く思考して、

 

「……ゴルゴナよ、それでは些か芸が無い。

 鬼岩城は実に素晴らしいが、いくら気に入ろうが遊び過ぎれば飽きもする。

 地上は、あくまで6軍団の食い合いの場。

 それが終われば……地上(フタ)を除けるのに手段は問わんが、な。

 どちらにせよ、鬼岩城なりピラァ・オブ・バーンなりでの掃除は後のことだ。

 そなたらはギルドメイン山脈に帰還せよ」

 

オモチャを大事に仕舞い込むことにしたようだった。

冥王が短く了承し、キアーラに鬼岩城の帰還を命じると自身は一足先にリリルーラで姿を消した。

 

 

 

 

この日、地上から旧アルキードが永遠に失われ残滓も残らず、

国家消滅砲の余波によって復興しつつあったベンガーナは甚大な被害を被った。

そして、アルキード消滅の暗黒光を宣戦布告代わりに

世界各地に大魔王6軍団中、5つの軍団が一斉に侵攻を開始。

北国オーザムに氷炎魔団。

勇者の国・カール王国には超竜軍団。

ベンガーナに魔影軍団。

ロモス王国には百獣魔団。

パプニカ王国は不死騎団。

そして、本人のたっての願いもあってアバンのもとに魔軍司令ハドラー。

リンガイアを除く5大国に魔物の群れが襲いかかる。

世界の破滅の序曲が始まったのである。

 




~鬼岩城試射会のお知らせ~

大魔王軍に所属する皆さん、お友達を誘って是非!鬼岩城においでください。
王国侵攻でお忙しい方のために悪魔の目玉によるライブ映像も地方にお届け!
皆で一緒に人間の国家消滅で盛り上がろう!!
気になるあの子とお近づきになるチャンスかも…!?
当日は氷炎将軍によるバーベキューと冷えたビールも用意しております。
気軽にご参加下さい。

(担当:妖魔司教ザボエラ・妖魔学士ザムザ)




嘘ですすいません

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