ゴルゴナの大冒険   作:ビール中毒プリン体ン

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大蜘蛛と分離した時のゴルゴナの下半身の肉ダルマってなんだろう。
という疑問への私なりの解釈です。
なんとなく回想シーンの人工生命体と似てるし
肉っぽくもあるけどちょっと樹木っぽいデザインだし、と思いまして。


探求者ゴルゴナ

大魔王バーンの命を受けてゴルゴナの研究漬けの日々が始まる。

かつて、兄や同僚達と不老不死の夢に突き進んでいた時以来のことだ。

だが、あの時と余りにも環境が違う。

魔界のバーン勢力の技術は決して低くはない。

しかし、聞いた話によるともう一人の実力者、冥竜王ヴェルザーの陣営の方が

魔導研究は一歩先んじているらしい。

だが、そのヴェルザーの技術力ですらムー帝国の超文明には叶わないだろう。

ムーは時間と空間をも自由に操る超時空国家で、

あの文明水準にあって初めて不老不死研究の基盤が整うのだ。

ゴルゴナがいかに奮闘しても、一人では限界がある。

数十年の年月があっという間に過ぎ去ってしまい、

気付けば、彼が授かった進化の秘宝は残り2つ。

30回もの進化を無駄にしてしまった。

彼の研究所の廃棄庫にはいくつもの異形のモンスターが転がっている。

 

(やはり、世界樹の再現は不可能だ………。

 あの樹は神性が強すぎる…………

 あれを生み出すということは……新たな神の一柱を創造するも同義)

 

ゴルゴナが、己が書いた研究日誌を乱雑に破り捨てる。

彼が書き溜め、そして捨てた魔導研究書の数は既に四桁を超える。

 

「だが、必ず何か手はある………科学と魔導の研究において、不可能などということはない。

 壁は必ず乗り越えられる………。

 ただ見落としているだけだ…!

 必ずある…………発想を変えるのだ………」

 

ぐぐぐ、という不気味な呻き声を上げながら、ゴルゴナは六本の腕で腕組をし、考えこむ。

 

(……昔は、こうした時にはあの6人の意見を聞いたものだったが……。

 思えば、彼奴らは優秀な研究者であり錬金術士であったな。

 奴らの頭脳を失ってしまったのは正直惜しい。

 ともに、ムー崩壊を生き延びるために大蜘蛛と融合し……

 その媒介に人工生命体の不死細胞を使用した。

 …………我の人間であった時の肉体があれば……

 そこからエキスを取り出すことも不可能ではなかったであろうが………、

 ――む…そう、か。 我の今の体は、王弟ゴルゴナと大蜘蛛の肉体が混ざり合っている。

 ならば………!)

 

「以前よりも更に深く、詳細に! 我が細胞を調べる必要がある………!」

 

ゴルゴナはまさに不眠不休、一心不乱の研究を続けた。

それは彼の人間時代……魔導研究の第一人者としての血が騒いだ結果である。

そして、

 

「ぐぶ、ぐぶぶぶぶ……我の予想通り………!

 1万2千年前に混ぜ込んだ人形のエキスは、未だ我が体内に残っていた。

 さすがは我が創りだした肉人形よ………劣化は見られんな………。

 しかも………それに加え、あの6人の残滓までも発見できたのは僥倖。

 一気に襲いかかった年月によって風化し尽くしたと思っていたが………」

 

己の体内から抜き出した世界樹のエキスを収めた試験管をゆるく振るう。

 

(………念のため……魂吸器で我が魂魄の再調査もしておくべきであるな)

 

ゴルゴナはあの者達の知恵と経験を欲し、

それ故に、出来るかもしれないのならやる価値はある。 そう判断した。

すぐさま魂吸器に魔力を注ぎ起動させる。

するとすぐに、

(やはり………我が精神にも奴らの搾り滓が混入していたか)

 

と判明した。

以前は自分と大蜘蛛の魂に気を取られすぎて見落としていたようだった。

 

(しかし、細胞も魂魄も、我に何の影響もないことから分かる通りあまりに微弱。

 これではいかに培養しようとも奴らの復活は不可能………。

 そして、これっぽっちのエキスではどの道、不死人形を造るのには足りぬ。

 ………ならば………)

 

己の体内に、カスとはいえ取り入れてしまっている6人の古代ムー人。

それがために冥王ゴルゴナが得意とする死の秘術を用いた復活はできない。

一応は、彼らはゴルゴナの体内で生きている状態なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはりこれ以上の成長は無理か………。

 胎児サイズを超えると肉体の崩壊が始まる。

 やはり、ベースとなった細胞に……もはや生命力が残されていないのだ」

 

半年の後、6人の古代ムー人は半透明のカプセル内に胎児状態で漂っていた。

 

(我から採取した世界樹のエキスは非常に貴重なもの………。

 しかし、一度抽出と蒸留の法を確立してしまえば二度目は容易い)

 

世界樹のエキスを使えば生命力の枯渇などあっという間に補える。

ゴルゴナが体内からかき集めたエキスは濃度が薄く、

しかも取り出しすぎればゴルゴナ本人が衰弱してしまう。

血液等と同様に、時を置けば体内で一定量は作り出されるが、

それには多くの時間がかかる。

バーンの期待に添えるような不老不死を成し遂げるには、

今のペースでは千年近くかかってしまうだろう。

 

「……ならば、このエキスはうぬらに使うが吉か」

 

コンコン、と鋼のような爪でカプセルを叩く。

そして6つのカプセルと無数の管で繋がった吸水装置に試験官を押し込むと、

カシュッと短い音がし即座にそれが飲み込まれ、カプセル内をエキスが満たす。

 

「ぐぶぶぶぶ………

 ツークーマン、オティカワン、トピアポ、フロレンシア、キアーラ、ポポルヴー。

 再び我のためにその頭脳を役立てよ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そして、蘇ったのはあたしだけ……というわけですか」

 

エキス投入から1週間がたっていた。

 

「うぬらの貧弱さが、我の予想を上回っておっただけのこと。

 脆弱な奴らめ………」

 

「……ゴルゴナ様だって人間だった時は運動音痴の太っちょだったじゃないですか」

 

「………………」

 

今、黒衣の冥王と対等に話しているのはどうみても人間の女だった。

しかもその人間は、太く短いホクロのような眉が特徴的だが、

その瞳は大きな愛らしいもので、黒々とした長髪も相まって清楚な雰囲気のする美少女である。

まさに美女と野獣。

彼女は古代ムー人の一人であり、名をキアーラという。

カプセルから出たてで、

彼女の意外に肉付きのいい肢体は培養液で濡れていてなかなか艶かしい。

割と豊かな胸部と下腹部の局所らはしっかり両手で隠し、

微妙に体もねじって恥じらっているからより一層艶姿が際立つ。

そんな彼女の周りには、干からびてヒビ割れた5人の残骸が転がっていた。

エキスが足りず、肉体が崩壊し精神と魂の固定にも失敗した成れの果てである。

 

「あの………何か着るものを下さい」

 

「そこに布がある………巻け」

 

「えぇぇっ!? 乙女に向かってなんてことを!」

 

「キアーラ………早速だが、

 古代ムーにおいても随一と言われた錬金術の腕前を振るってもらうぞ」

 

「ちょ、ちょっとお待ちを! いきなりですか!?

 1万2千年ぶりにまともな体に戻ってしかも蘇りたてですよ!? 休暇を申し立てますぅ!」

 

割れ物を包んでいた布を適当にひっぺがして、

自分の裸体にまきまきしながらキアーラが涙目で訴える。

 

「ムー帝国のような福利厚生が魔界にあるとでも思っておるのか? 休暇などない」

 

軽く一蹴する。

無慈悲であった。

 

「そんなぁ~! というか魔界ってどういうことなのですか!

 魔州湖からこっち、全然情報が入ってないからさっぱりです!

 説明をお願いいたします! あと塵取りどこですか?」

 

死体を通り越して残骸になっている元同僚5人を片付けながら、

キアーラは訴えを続ける。

冷酷なゴルゴナと付き合いが永いだけあって色々と耐性ができていた。

彼女自身、研究に入れ込むと結構酷いことを平然とやってのける性分で

なんだかんだでゴルゴナと気が合い、太陽王ラ・ムーに見捨てられるだけのことはある。

 

「………そうであったな……説明してやろう……」

 

そこから小一時間ほど今までの経緯を教えてやったゴルゴナであった。

ツークーマン達の残骸は潔癖症のキアーラが綺麗に分別して捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小間使いの魔族女性から洋服を貰ったキアーラは、

今、なかなか際どいスリットの入った極薄のドレスを着ている。

しかし、大蜘蛛と完全融合して人としての性欲やらが低下しているのか、

それともただ研究欲に思考が支配されているのか。

ゴルゴナはキアーラの太ももに眼もくれず

次元乱気流やら並行世界やら多元宇宙論等の説明を熱心にしていた。

 

「つまり我々は時空の乱れによってこの世界に流れ着いた……とお考えで?」

 

居室にあるソファーの、絹のような肌触りを楽しみながらキアーラが問い返す。

 

「ぐぶぶぶ……そうだ………後は言った通り……

 我らは大魔王バーン様の御力によって再誕した」

 

魔法関連なら大魔王バーンの知識は群を抜いておりゴルゴナと対等以上に語り合える。

しかし科学関連ではゴルゴナは孤独だった。

それ故にキアーラという同郷の部下が復活してくれたことは、

ゴルゴナにとって色々な意味で助かった。

 

「5人を再生させるのはしばし捨て置く………。

 奴らに必要な量のエキスがあれば、不死のゴーレムが創れるからな……。

 キアーラよ………おまえはバーン様より賜りし魔具の数々を元に、

 古代ムーの研究施設と同等のものを造るのだ。

 若くして天才と謳われた貴様だ…………不可能ではあるまい」

 

「魔具を拝見しなければ何とも言えませんが………お任せ下さい」

 

浅く一礼したキアーラは、控えめな口調であるが声色は自信に満ちている。

超帝国ムー全土から集められた魔導士・錬金術士達。

その中でも最も優秀な6人に選出された自負であった。

彼女が合力してから不老不死の研究速度が格段に上がった。

往時の水準とまではいかなかったが研究器具の性能はだいぶレベルアップし、

ゴルゴナの体内からのエキス抽出の効率が飛躍的に上昇した。

キアーラ復活から僅か2ヶ月のことである。

 

「では、そのエキスで人工生命体の生産を?」

 

「やらぬ。 高効率は結構だが、このペースでいけば我が枯渇するわ。

 抽出対象そのものを見直さねばならん。

 そもそも………あの時、我らが創ることができた不死のゴーレムは偶然の産物。

 その予期せぬ変異へと至る過程を記録した莫大なデータは帝国崩壊とともに失われた………。

 キアーラよ………おまえはあのデータ群を覚えておるか?」

 

ゴルゴナが、黒衣から八つ目の内の6つを覗かせ視線で訴える。

 

「いえ……それはさすがに……」

 

ムーが誇った研究所のデータバンクである。

それに記憶されていた情報量は、神々の頭脳ですら覚えきれぬだろう。

 

「であろう。

 だからこそ前回、異魔神復活のために闇のオーブを探しまわらねばならなかった。

 此度は、その闇のオーブすらないのだ。

 ならば、我らは記憶を頼りに試行錯誤を続けねばならぬ………。

 そしてエキスの源そのものを創る必要がある………そう、すなわち世界樹を!」

 

「せ、世界樹を創る!? そ、そのようなことが……できますか………!?」

 

キアーラの大きな瞳が見開かれる。

かつて、神をも恐れぬ研究に邁進してきた彼女でさえも驚愕を隠せない。

 

「できる………!

 我一人では成し得なかっただろうが貴様が手に入った。

 そして…今の我らには、かつて無かったものもある………!

 それすなわち”進化の秘宝”なり………!」

 

ゴルゴナのローブから輝く2つの宝玉が取り出され、

爪で器用に挟まれたそれは美しい暗黒色の光を放つ。

 

「進化の……秘宝……」

 

「ぐぶぶぶ……キアーラよ。 かつての我らの悲願……完全なる不老不死は近いぞ」

 

ゴルゴナの八つ目がギラリと光る。

 




復ッ活ッ
キアーラ復活ッッ!キアーラ復活ッッ!キアーラ復活ッッ!
でもキアーラって原作でセリフが2コマしかない!

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