ソフィー・ポッターとハリー・ポッター 作:雪の結晶
あ、地面が見えてきた。
天国も見え隠れ――ってダメだ!
「『ウィンガーディアム レヴィオーサ!!!』」
地面すれすれで間に合った。
一度大きく浮かんでから、そっと地面に降りる。
「ソフィー」
「なに、ダフネ?」
ダフネがそっと、地面に落ちていた、焼かれた植物のようなものを拾い上げた。
「これ……たぶん、『悪魔の罠』です。弱点は、炎や太陽の光。さっき、ソフィーが酸素があるか調べるために穴の中に防火したでしょう?たまたま、小さく生えていたこれに当たるとは考えにくい。つまり――」
「この先にある何かを守るための、罠として置いてあったということね」
ハーマイオニーの言葉にダフネはうなずき、そのまま上を見る。
「きっと、あそこから落ちてきたら、張り巡らされた『悪魔の罠』がクッションのように侵入者を受け止め、そのあと襲う。ある程度の知識――一年生以上の知識があれば、普通に通り抜けられるような罠なので、まだまだこれから続いていくと考えられるでしょう」
怖いこと言わないでよ、ダフネ。
そこで私は怖いことに気づきかける。
Q. 学校に、なんでこんな危険な罠――というか、なんで三頭犬のような怪物がいる?
A. 何かを守るため。
Q. これから罠が続いていくとして、ここまでして守りたいものとは何?
A. とっても貴重or危険なもの。
Q. ダンブルドアが直々に張り巡らしたであろう罠を、通り抜けられそうな人物は?
A. ヴォルデモート。
Q. さてさて、親愛なる『死の飛翔』は、いま、どんな状態?
A. ダンブルドアによると、魂の欠片がこの世に引っかかっていて、復活しようと企んでいる状態。
Q. 復活するには、何が必要?
A. 一番手っ取り早いのは、『賢者の石』でしょうね。(byダフネ)
Q. さてさて、最初の疑問に戻ろう。
学校に、なんでこんな危険な罠――というか、なんで三頭犬のような怪物がいる?
A. ヴォルデモートから『賢者の石』を守るため。
あー!!気づいちゃった、気づいちゃった!!気づいちゃいけないことに気づいちゃった!!
どうしよう!?
「ダフネ、ハーマイオニー!!」
「ええ、きっと、ソフィーのQ&Aは正しいのでしょう。つまり、この先には『賢者の石』があり、それをヴォルデモート卿の手下――つまり、死喰い人が狙っているのでしょうね」
「私もダフネと同意見だわ!いまの『例のあの人』は自分じゃ動けないでしょうし、手下にこっそり盗ませようとしているんだわ!」
そんなー!頭のいいふたりに肯定されてしまった!ヤバくね?
「ちょっと待ってよ。『賢者の石』って何?」
ハリーが手を挙げて質問する。
話し合った結果、私が答えることになった。
「『賢者の石』とは、ニコラス・フラメルとアルバス・ダンブルドアが共同で作った、不老不死になれる石のことよ。信頼できる情報源によると、ルビーみたいな色の、透き通った石で、不老不死の効果プラスそこらへんの小石を金に変えることもできるわ。ちなみに、不老不死になるには、『賢者の石』で作れる『命の水』を飲む必要があるの。ただ、『命の水』が唇に触れた瞬間、その人は呪われるから気をつけたほうがいいわ」
私の脳内で、クリップボードを持った赤ペン先生が私の説明を添削し、花丸と笑顔をくれた。どうやら、あっていたらしい。
ハリーとロンが納得したところで、どうしようか話し合う。
私「どうしようか」
ダフネ「三頭犬の部屋まで『浮遊呪文』を使い続けることはできません。この呪文は、あまり性能の良い魔法ではないので」
ロン「代わりに何かいい呪文ないの?」
ハーマイオニー「ないわよ。あったらとっくに言ってるわ」
ハリー「じゃ、先に進もうぜ!」
ロン「賛成!」
というわけで、先へ。『夜に屋外でじっとしてると、朝動けなくなるわよ』という私の言葉を聞き、ダフネとハーマイオニーが顔をひきつらせていたが、まぁ無視しておこう。
「ロン、扉があるぞ!」
ハリーが大声で言った。
「鍵がかかってい――」
ハリーが顔をしかめた。なぜなら、バタバタッという音が鳴り響き、声が聞こえなくなったからだ。
私は音の正体に気がついた。
「上よ!なにか――光った鳥みたいなものが――いるわ!」
光った鳥みたいなものを観察していたダフネが、声を張り上げた。
「鍵です!羽のついた鍵が、飛んでます!ソフィー――!」
言いたいことがようくわかった。で、実行した。
「『アクシオ!――鍵よ来い!』」
こんなの、自殺行為。オススメしないどころか、他の人がやっていたら止めに入っている。けど――。
「ソフィー!あれです、さびていて、一番速く飛んでる鍵です!扉の鍵穴と一致します!」
――これをしなきゃ、飢え死にする。
それが、一番の恐怖だった。
扉の前に立ち、深呼吸。
あともう少し――三、二、一!
鍵との距離があと一メートルになったとき、私は呪文を解き、杖を投げ捨てた。どうせこのまま迫ってくる。もう呪文も杖も、無くて大丈夫だ。
あと三十センチ――腕を伸ばす。
あと二十センチ――片足を扉につけ、前に飛ぶ準備をする。
あと十センチ――先頭の鍵が左腕に突き刺さり、あと何本か肩に突き刺さった。
あと五センチ――思いきりジャンプをする。
あと三センチ――鍵が頬をかすり、血が出た気がする。あともう少しだ。
あと一センチ――捕まえた!!
私は体を丸め、衝撃をやわらげる落ち方で床に降りた。
杖――杖は――?
あった。まず、左腕に刺さった鍵を抜き、裂いたハンカチで押さえ、魔法で出した包帯を巻く。肩に突き刺さった鍵も、同じようにする。
頬には包帯は巻けないので、「『エピスキー』」と呪文を唱えて治した。
痛い。とにかく痛い。ダドリーに、包丁でかすり傷を何本もつくられたときよりも痛い。木から落とされたときよりも痛い。
痛いときはどうするんだっけ?そう、とにかくゆっくり深呼吸だ。
すぅー、ふぅー。
なんだか痛みが薄らいだような気がする。
話し込んでいるダフネ、ハーマイオニーのほうへ体を引きずりながら近づいていくと、ふたりに呆れた目をされた。
「まったく、無理ばかりしますね」
「本当に、無理しかしないわね」
そこまで言うなら助けてよ。
「前に『その人が助けを求めず、諦めていたら声をかけず、静かに見届けてあげるべし』と言ってたじゃないですか」
ああ、そうだった。
前に、ダフネに「目の前に自殺をしようとしている人がいたら、あなたはどうしますか?」と聞かれたとき、答えとともに『鉄則』を少しだけ教えたのだった。
『鉄則』
鉄則一、諦めるな。人生を諦めることは、自分を見捨てることだ。
鉄則二、押してダメならぶっ壊せ。
鉄則三、猫に小判をやるくらいなら、質屋に持ってって売って、そのお金で食糧を買うべし。なるべく安くて腹持ちの良いものを。
私は鉄則三までと、鉄則一の付けたしを教えたら、なぜかダフネに三ガリオンもらった。もちろん、ありがたくいただいておいた。
「やっぱりソフィーはどこか不思議ね」
「グレンジャーも同じ意見ですか。でも、ポッターとソフィー、全然性格違いますよね」
「きっと、ソフィーは虐待以上のもの――飢え死にしかけたり、半殺しにされたり、屋外で夜を過ごしたりするうちに、社会適応力が高くなったんだと思うわ。誰とでも仲良くなれるし、というかなるし――」
「――貧乏精神にあふれた、何があっても使えなくなるまで捨てないという考え方ですしね」
誉められてないよね?
でも、仕方ないじゃない。
ゴミを漁って、ボタンや布の切れはし、余り毛糸や糸くずがあれば拾ってきて、唯一持っている上着、赤紫のウィンドブレーカーの内側に縫いつけたものだ。フェルトや布は、内ポケットを増やすのに役立つし、もっと小さかったら腕の部分の内側につけて暖かくなるようにした。ちなみに、サイズはぶかぶか。きっと、このままだと三十歳まで着れる。そのあとは、カバンか何かに作り変えよう。
それを話すと、ふたりにすごい目で見られた。
まぁ、いいか。
話は終わりにして、次の部屋に――進み、ロンが倒れ、ハリーがその横に膝をついて座っているのを見た。
「ハリー!ロンは――ロンは、どうしたの?」
ハーマイオニーが問いかける。
なんか感動的なシーンだけど……まぁ、気絶してるだけだよね。
軽く痣が出来てるから、魔法で治してあげよう。
「『エピスキー――癒えよ』このまま寝かせておいてあげて。魔法で起こすと、脳に影響が出るかもしれないから」
「ええ――そうね」
涙ぐむハーマイオニー。だから、ただ気絶してるだけだって。
そのあと、何が起こったのかハリーから話を聞いていると――。
ドーン、バーン!!
扉の向こうから大きな音がした。
「なんでしょうか?」
「わかんないわよ、私に聞かないで」
「行ってみよう。ハーマイオニーはロンと一緒に待ってて」
「わかったわ」
杖をかまえ、そっと扉を開ける。
「トロールだ!」ハリーがささやく。
「気絶してる!」
「じゃあ、さっきの音は……」
「何者かが、トロールを倒した音ですね」
ダフネ……無表情でそんなこと言わないで!
「たぶん、ヴォルデモートの部下だ。『賢者の石』を守らなきゃ!」
ハリーがずんずん進む。トロールの横を通り抜け、次の扉を開けた。
「待って!」
このままじゃマズイ。絶対マズイ。
「ハリー、話を聞いて」
「ヴォルデモートは父さんと母さんを殺したんだ!」
「知ってるわよ!そのせいでどれだけ不幸なめにあったか!」
「父さん達が嫌いな君にはわからない!」
「違う――!」
ハリーが進み、私達が追いつくと、前と後ろに炎があらわれた。
閉じ込められた。でも、それより重要なことがある。
「ハリー」
ハリーはふりかえった。
「私、今気がついたんだけど――」
「なに?」
ハリーから『父さん達が嫌いな君にはわからない』と言われたとき、私は無意識に否定しようとした。そう、無意識に。
つまり、私は母さん達を恨んでるわけではない。嫌いなわけではない。
覚えているだろうか。私はホグワーツ特急で、『親戚、ほかにいないわけじゃなさそう』だと言った。
よし、考えてみよう。
私達の両親、ジェームズ・ポッターとリリー・エバンズは、魔法が大嫌いなダーズリー家に子供を預けようとするだろうか?否である。ほかに親戚がいないなら別だが、漏れ聞いた話だとハリーの名付け親だって存在する。
では、なぜ、ダーズリー家なのか。考えればわかる。誰かの独断だ。
誰か、とは誰だろう?ダンブルドアに決まっている。
『組分け帽子』に、無理矢理私達をグリフィンドールに入れさせようとした爺だ。英雄とその妹を、他の人の判断に任せるわけない。
つまり、私を地獄に蹴落としたのは
気づいたからには仕方ない。私はそのことを告白した。私は、母さん達を嫌っているわけではないと。ダンブルドアを憎んでいるのだと。
ハリーは驚いたようだが、ここでグリフィンドールとスリザリンの差がわかったようだ。〈グリフィンドール〉と〈スリザリン〉は互いに憎み合う存在。〈スリザリン〉の私が兄であるハリーを別にして、〈グリフィンドール〉の象徴であるダンブルドアが好きになれるわけがないと。
これで、わかった。やっと母さんに顔向けできる気がする。
さあ、次に進まなくては。
「ダフネ、わかる?」
「もちろんです。ただ、前に進めるのはひとりだけ。〈光〉側の英雄か、〈闇〉側の英雄か」
「どういうことだ、グリーングラス」
ハリーが困惑した表情で聞く。
ダフネは当たり前だというように答える。
「〈光〉はもちろん、〈生き残った男の子〉、英雄のあなたですね。〈闇〉は、〈英雄〉のあなたが引き受けられない、それこそ闇の仕事を引き受けるほう、ソフィーです。まあ、それは良いとして、どちらが進みます?」
ハリーが口を開く。
「ハリーよ」