第1話
バカテスト
第1問 あなたが行ってみたい外国の国はどこですか? またその理由も答えてください
【姫路瑞希の答え】
行きたい国 フランス
理由 とてもおしゃれな国だから
【教師のコメント】
イメージで選んだようですね。
【坂本雄二の答え】
行きたい国 ない
理由 どこに行こうともハネムーンにされてしまうから
【教師のコメント】
霧島さんとお幸せに
【吉井明久の答え】
スカンディナヴィア
【教師のコメント】
ドヤ顔でこの回答を書いた君の表情が目に浮かびます
※スカンディナヴィアとは北欧諸国(ノルウェー・スウェーデン・デンマーク)を指す。一国の名前ではない。
物語はいつだって前触れなく始まる。
そこに明確な理由なんて存在しない。進んだ道が物語という領域に入っただけなのだろう。
Scrittore ignorante
「物語って言ってもねぇ……」
元の住人が忘れて行ったと思われるその本を閉じて本棚に戻す。今住んでいる家は男一人が暮らすには少々広い。元々はファミリー向けのマンションなのだろう。
「なんでこうなったかなぁ……」
そう。
今俺はその学校には通っていない。いいや、通えないのだ。
……いちいち回りくどく言うのも面倒になってきたから単刀直入に言おう。
どうやら俺は異世界に来たらしいです。
○
最後に残っている元の世界の記憶は教育実習中の学校の校庭でサッカーボールだったか何かがいくつか同時に頭部に激突したことだけだ。気が付いたらどういうわけだか文月学園という聞いたこともない学校の保健室で寝かされていた。
俺を見つけたという西村先生にいろいろと聞いてみたところここは日本ではあるがどうやらまったくの別世界であることが分かった。
別世界に来てしまったということを西村先生に伝えたところ驚いた様子ではあったが思ったより驚いていなかったのはなぜなのだろうか?
戸籍なし、住居無し、金なし(所持品は着ているスーツのみ)の三重苦に見舞われていた俺だったがここの学園長は臨時職員として俺を雇ってくれるそうだ。(なんでも教師が足りていないそうで)ただ教員免許は持っていないのでこの世界で教員免許を一年以内にとることという条件が付けられたけども住まいと支度金をもらえただけでもありがたい。戸籍に関してはなんとかしてくれるらしいが大人の世界にわざわざ首をつっこむ必要はないだろう。
そういえばあの学園長も違う世界から来たと言ってもあんまり驚いてなかったような気がする。むしろ近くにいたいかにも出来そうな先生の方がよっぽど驚いていた。
……現状説明はこんな感じでいいかな? そんなわけで今はその住まいにいるわけなのだがもう夕方に近い。当然腹が減る。
調理器具は一通りそろっているし食材の買い出しにでも出かけますか。
○
「うーん……ここ数日塩水続きだからなぁ。今日は奮発して砂糖水に……」
いったいなにを言っているのだろうかこの子は……みたところ高校生みたいだけど大丈夫なのか?
「いや、しかしムッツリーニに頼んでいる秀吉の写真分を引くとギリギリ足りない……だけどさすがに……」
もしかして写真のために食費ケチっているのか? たぶん一人暮らし何だろうけどそこまでいくほどのひどさとは……
「うん、今日はやめておこう! あと数日は塩水で踏ん張れるし」
「いや死ぬから」
「うわっ! ……どちら様?」
おもわず反射的に突っ込んでしまった。まぁいいか。
「塩水だけで過ごしてたらいずれ死ぬよ? 今の内は平気でも倒れてから遅いんだって」
「な、なぜ僕の思考が読まれているんだ……」
「普通に聞こえていたんだが……」
この子、頭大丈夫かな?
「君高校生でしょ? 一人暮らし?」
「はい、文月学園に通っています」
なん……だと!?
「それほんと?」
「そうですけど……」
「俺その学校で今度から働くことになっているんだけど」
「ええーっ!?」 新しい先生!? 女性だったらよかったのに……」
「聞こえているぞ」
本音と建て前という言葉を知らないのだろうか。
「とにかくだ。一人暮らしなら余計に健康には気をつけないと本当に体壊すぞ。これから働く学校なのに死人が出られては困る」
「でも今月はもうぎりぎりで……」
さてどうするか……このまま注意だけしたところですぐに改めるとは思えないし……
「まったく……とりあえずうちに来い。食事くらいはなんとかしてやる。さっきの話を聞く限りあと数日で仕送りがあるんだろう?」
「ほんとですか!」
食費の所に多少上乗せして学園長に請求しておこう。