バカと渡世と半人前   作:順風

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第15話

バカテスト

 

第15問 特定の目的を持っている場合、障害があると逆にその障害を乗り越えてでも目的を達成しようとする気持ちが高まる心理現象の事を何というか答えなさい。

 

【木下秀吉の答え】

 

ロミオとジュリエット効果

 

【和泉剣のコメント】

 

正解です。演劇部である木下君にはピンと来たのでしょう

 

【霧島翔子の答え】

 

……私は雄二とどんな障害も乗り越えて幸せな家庭を築く

 

【和泉剣のコメント】

 

自分の事じゃなく問題を答えてください……

 

【吉井明久の答え】

 

この泥棒猫!

 

【和泉剣のコメント】

 

そういう障害の事を言っているのではありません。

 

    ○

昼食を済ませ教員用の部屋でしばしの休憩を取っていると西村先生が部屋のドアを開けて入ってきた。高橋先生から間もなく到着するという連絡が入ったので最終確認をするとのことだ。

 

十分ほどで確認が済み合わせたかのようにA~Eクラスのバスも到着した。

 

生徒たちの表情を見てみると勉強合宿とはいえどどこか楽しげな表情だった。まぁ学生時代の遠出ならそんなものだろうな。

 

さて今は高橋先生が説明をしているがその後職員会議がある。初の課外での仕事だ。気合を入れていかないとな。

 

「では先ほど配ったプリントに書かれた部屋に移動してください。夕食までは自由時間ですが節度をもって過ごしてください。教師は会議を行うので集合してください」

 

呼ばれたのでここにいる教師全員が集合する。

 

「では会議を始めます。まず夕食時までの見回りですが……」

 

こういうのって生徒の時は遠目に見るだけだったからあまり感じなかったけど目が真剣だ。(当然だが……)

 

「西村先生はこれから来るFクラスの生徒に説明をお願いします。和泉先生はその補佐を」

「わかりました」

「それでは後は階ごとに分かれての話し合いとします」

 

各階の担当者ごとに分かれていくのを西村先生と見送り玄関から外を見る。まだ誰も到着はしていないようだ。

 

「ところで西村先生、ここにくるだけなら電車の方が早いはずなのになんで誰も来てないんでしょう?」

「あいつらの事だ。大方道草を食っているんだろう。それに見ろ」

 

西村先生が示したのは教員用に配られたしおりの一ページ。そこには『Fクラスは15時までに合宿所に到着すること』と書かれている

 

「ああ、なるほど。遅めの時間設定になっているのもあるんですか」

「こういう時間設定である以上わざわざ早く来たりはしないだろう」

 

……確かにそれならまだ来ていないことに納得できる。

 

「たぶん後1時間は来ないだろう。楽にしていていいぞ」

「わかりました」

 

   ○

本当先輩の経験は侮れない。先ほどの会話から1時間ほど経った頃Fクラスの生徒数名が姿を現した。ただし……

 

「「「じゃんけんぽん!」」」

「グーリーコ!」

「横溝! 一歩がでかすぎる! やり直しだ!」

 

……なぜかグリコをやりながら。普通はグリコって階段でやるものじゃなかったっけ?

 

「貴様ら! 遊んでいないでさっさと来い!」

 

西村先生の雷も落ちました。集合場所の前でこんなことやっていればそりゃ怒られるでしょ。

 

その後もFクラスの生徒たちは様々な状態でこの合宿所にやってきた。

 

「森! もう500歩行ったんだからじゃんけんだろう!?」

「「「あばよー!」」」

「てめぇら最初から最初からそのつもりだったな!」

 

荷物を押し付けられてそれを置いてきたり

 

「抜け駆けして電車内で声をかけるなど万死に値する!」

「「「異端者には死を!」」」

 

死の追いかけっこをしていたりとここに来るまで人に迷惑かけていないか心配になるぐらいの状況だった。

 

が、それはまだ序の口であることをその時の俺は知る由もなかった。

 

   ○

「後来てないのは……吉井達だけか……」

「のようですね……」

「西村先生……ちょっとよろしいですか?」

「ああ……和泉先生、少しここを任せます」

「わかりました」

 

時刻は現在15時十分前。もうじき集合時間なのだが……

 

「来たみたいだな……ん?」

 

なんだろう。えらく焦っているように見える。坂本が何かをおぶっている……

 

「和泉先生! 明久が!」

「吉井!? 何があったんだ!?」

「詳しい説明は後だ! とにかくAEDを!」

「わかった! 部屋に運ぶからついてきてくれ!」

 

入口にあったAEDを取り出してそう言うが島田と姫路が見当たらない。

 

「残りの二人は!?」

「途中から飛ばしてきたからまだこの敷地の入口あたりにいるはずじゃ!」

 

まいったな……処置は必要だし……あ、ちょうどいい所に!

 

「遠藤先生! ちょっと頼みがあるのですが!」

「あ……はい。なんでしょう?」

「ちょっとここを離れなくてはいけなくなってしまったのですこしだけここをお願いしてもいいですか? 後女子2人ですぐそこまで来ているらしいので」

「はぁ……わかりましたが」

「後西村先生には336にいると伝えてください!」

 

さっき西村先生がどっかいってしまったから仕方がない。

 

「坂本! 336に運べ! 俺も手伝う。木下、AED頼む」

「わかった!」

「了解じゃ!」

 

     ○

「一時はどうなるかと思ったな……」

「まったくだ」

「……前世の懺悔をし始めたのにはワシらも相当焦ったからの」

「…………無事で何より」

 

部屋に運び込んだあと大島先生も呼んで処置をしてもらったおかげで吉井は何とか息を吹き返した。……ただここまで二時間近くかかった。救急車も呼ぼうとした……正確には呼んだのだが偶然に偶然が重なってすぐには来られず到着が一時間後。そのあと運ばれる直前に息を吹き返し病院に行った方がいいと勧めたのだが本人が固辞した。

 

「……先生、本当にごめんなさい」

「……理由が理由だ。責めたりはしない」

 

実はこの騒動の原因はまたもや姫路の料理だった。なんでも『ゼリーにクロロ酢酸と水酸化ナトリウムをいれたんですけど』というこれまた料理人が驚く発言が飛び出した。ただ復活した吉井によると

 

「今までのと比べればずっとマシ」

 

とのこと。中和されたのか?……ちなみに姫路は俺以外にすでに事情を詳しく知っている西村先生の所で指導中である。

 

「……とりあえず後三十分ぐらいで夕食だ。無理はするなよ?」

「ありがとうございます!」

 

    ○

「西村先生、遠藤先生すいませんでした」

「いえ……あの状況では仕方ないですよ」

「そうだな。生徒の事を第一に動くのは大事なことだ」

 

今回の場合だと一部のという前置詞が付きそうだけど……

 

「ところで姫路は?」

「指導の後、家庭科関係の課題を出した。満点が必須になるようにしておいたからいやでも知識に叩き込まれるだろう」

「……それは考えてませんでした」






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