バカと渡世と半人前   作:順風

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第21話

強化合宿日誌

 

第21問 強化合宿三日目の感想を書きなさい

 

【木下秀吉の答え】

 

前略(※坂本雄二に続く)

 

【和泉剣のコメント】

 

日誌をリレー形式で綴るのはどうなんでしょうか……そういえば中学校の同級生に卒業文集をつながるようにしていた人達がいましたね。

 

【坂本雄二の答え】

 

ふと眼を開けるとそこには着物をはだけさせた翔子が迫っていた。拷問道具で抑えられていたわけではないが翔子の顔が近付いてきて(※土屋康太に続く)

 

【和泉剣のコメント】

 

……とんでもないタイミングで切りますね。積極的すぎるのもどうかと思いますが……

 

【土屋康太の答え】

 

中略(※吉井明久に続く)

 

【和泉剣のコメント】

 

まだ続くんですか……

 

【吉井明久の答え】

 

横を見ると雄二が霧島さんに迫られていて使えない。目の前には暗殺に来たと思われる美波が。その時突然ドアが開いて現れたのは……(※島田美波に続く)

 

【和泉剣のコメント】

 

……なんでその人に繋ぐんですか。

 

【島田美波の答え】

 

後略

 

【和泉剣のコメント】

 

嫌なら嫌なりの対処をしてください。

 

    ○

強化合宿三日目。スケジュール自体は前日と同じなので朝に関してはこれと言って特筆することはなかった。

 

ああ、そういえば昨日の覗き騒ぎもあったのでそのダイジェストから。

 

 

 

「どけぇぇぇ!」

「今の俺たちを止められる物は何もない!」

「「「いざ、理想郷(アガルタ)へ!」」」

 

本当に馬鹿ばっかりだ。

 

「やっぱりこうなったか……」

「和泉先生か!?」

「いや、和泉先生は臨時教師だから召喚獣を出せないはず……」

 

まぁ特に伝えたわけじゃないからな……当然か。

 

「ちゃんと出せるから心配するな」

「ちっ……出せるのか……日本史で減らしていない奴は行くぞ!」

 

須川が指示を出して向かってくる。確かに全教科で点を削ったわけじゃないから教科ごとに分ければまだ決行はできたってことか。選択肢は縮められたけど。

 

「「「「「試獣召喚!」」」」」

 

   Fクラス 須川&朝倉&速水&野中&竹倉

日本史     78&86&67&69&88

 

「ここは俺達が抑える! いけお前ら!」

「「「おおーっ!」」」

 

足止めをしてその間に他の連中を通す。間違った選択じゃない。しかしそれは

 

    臨時教師 和泉剣

日本史   988点

 

きちんと足止めができたらの話だけども。

 

「何だあの点数は!?」

「1000点目前だと!?」

「んじゃ……いくぞ!」

 

      ○

もちろん結果は言うに及ばず。全員の召喚獣を真っ二つにして西村先生が連れて行った。……ただ正直全力で戦えたわけじゃない。一番点数の近い高橋先生(全教科800点近い)にも教わったが慣れしかないとのこと。

 

そのため自分で制御できるレベルで先ほども戦っていた。とはいっても召喚獣の点数=強さが変わるわけではなくただ単にスピードを操作できる範囲にしただけなので強いのは変わらない。でもそうしないと自滅してしまうので仕方ない。

 

……話が盛大にそれたが本日もFクラスとAクラスは合同での自習となっている。今日は西村先生も目を光らせているがFクラスの生徒のほとんどは昨日の試召戦争と覗き騒ぎのせいで補充試験の真っ最中。最初の一時間から二時間はテストの監督をしていたけど今ここにいるのはAクラスの生徒と、覗き騒ぎに参加しなかった吉井達ぐらいだ。つまり騒ぎの原因がほぼいない。

 

……なんかやることないな。Fクラスの補充試験は午前中いっぱいはかかるようなので戻ってこない。しかも西村先生もいるし騒ぎを起こしそうなのは吉井達のみ。そこまで気を張る必要もないし先生には『休めるときには休んでおいたほうがいい』と言われている。かといって寝るなんて論外だ。というかありえない。

 

どうしようか考えていたが

 

「ん? 和泉先生、何を書いているんですか?」

「ちょっと久々に絵でも描こうかなと。スケッチですけど」

 

鉛筆とスケッチブックを取り出して書きだすのを見て西村先生が声をかけてきたのでそう答える。元々絵を描くことは好きでよくキャラ絵とかを書いていたのだがこのドタバタの間に書くことはほとんどなかった。なら今書こうと思い立ったからだ。

 

「といってもそこまでうまくはないですけどね。下手とは言われないぐらいです」

 

    ○

自習メインといっても休み時間はある。教室を見ていながらも絵を描いていた俺が気になったのか吉井がやってきた。

 

「先生、何を描いているんですか?」

「見るか?」

 

俺が見せたのは坂本と坂本一筋の霧島を描いた絵。霧島が坂本の膝に乗っていた時のもある。

 

「う、うまい……」

「そうか? 俺よりうまい奴なんてごまんといるぞ?」

「……先生」

「……急に背後に現れるな霧島。で、どうかしたか?」

「……この絵ください」

「ただのスケッチだし、こんなのじゃなくても」

「……雄二との思い出だから」

 

まぁ……そこまで言うならいいか?

 

「わかった。暇つぶしで描いたものだがそれでもいいなら」

「……ありがとうございます」

 

心なしか嬉しそうに席に戻る霧島。喜んでくれたなら問題ないか。

 

「霧島さん嬉しそう……」

「まだあるけど見る?」

「あ、はい」

 

見せた絵は西村先生だったり、Aクラスの女子をまとめて何人か描いたものだったり、男子が集まっているのを描いていたりと人物絵中心、背景は最低限のスケッチだらけだ。吉井とかの絵もある。

 

「いや、それでもうまいですよ!」

「俺からするとまぁまぁだけどな」

 

そんなことを言っていると坂本がトイレから戻ってきた。霧島がうれしさからトリップしかけているのをみて俺が描いたスケッチを見て……愕然とした。

 

「和泉先生! なんであんなものを!?」

「何か問題あったか? 単にさっきの状況をスケッチで描いただけだけど」

「あいつあれをアルバムにして家宝にするって……」

「いや確かに家法にするということはぶっ飛んでいるけどそれは別に問題ないだろう? 直接被害があるわけでもないし」

「……先生、時間があればまた書いてほしい」

「……まぁ時間があればな」

 

坂本が勘弁してくれとか言っているけど、もう少し自分の感情に素直になるべきじゃないか? しかしアルバムか……よく考えたら俺がこの世界にいるのは召喚システムの不具合が原因の一つではないかと見ているらしい。今のところ俺もこの世界にずっといようとは思っていない。できれば帰りたい。しかしこの世界で培ったり出会ったりした人達の事を何かの形で残しておくのも大事。そう思った。

 

(時間があれば積極的に描いていくか。今度はスケッチじゃなくてちゃんと色付けをした物を)

 

いつか帰るときに備えて思い出を残す意味で絵を描こうと思った強化合宿三日目の午前中だった。






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