バカテスト
第23問 徳川幕府第8代将軍である徳川吉宗の別名を答えなさい
【坂本雄二の答え】
米将軍
【和泉剣のコメント】
正解です。徳川吉宗は御三家出身では初めての将軍でもあります。幕府財政に直結する米相場を中心に改革を続行していたことから米将軍と呼ばれました。
【吉井明久の答え】
暴れん坊将軍
【和泉剣のコメント】
必ずそう答える人がいると思っていました。
【須川亮の答え】
異端審問会を行い貴様を処刑する!
【和泉剣のコメント】
死んだ人に対してまでするつもりですかあなたたちは。
○
「試召戦争、昨日とはうって変わって女子が勝ちましたね」
「坂本も言っていましたが短期決戦なので流れをつかんだ方が勝ちに直結しますから」
もはやおなじみになりつつある夕食時の先生たちとの会話。今日は数学の木内先生と高橋先生だ。
「それに無駄な動きをする要因がなくなったというのもあります」
「私は昨日は女子の方のフィールド展開を担当していましたが確かにいまひとつ協調性に欠けるところがありましたね」
それに対し今日は霧島を中心にしっかりとした戦いを見せていた。ただ男子の敗因はそこだけではない。
「ただ男子の士気って思ったより高くないんですよね……最終日に向けた課題はその辺でしょうか」
今日戦争を見ていて思ったのは男子の士気の低さ。上がりが鈍く補習が嫌だから頑張っている……という印象を非常に感じた。
「指揮官に課せられた使命みたいなものですね」
木内先生がもう食べ終えたのかふきんで手を拭きながらそう言う。
「そういえば木内先生って採点が早いってこの前聞いたんですがでどうしてですか?」
坂本が先ほどの戦争前にそんなことを言っていたので聞いてみた。
「単に手が慣れて早くなっただけですよ」
「そうでしたっけ? でも私の記憶が正しければ奥さんに負けないようにするために早くなったと聞いていますが」
「……そう言えば高橋先生は知っていたんでしたっけ」
「木内先生の奥さんも先生なんですか?」
「……ええ。私は以前他の学校で勤務していたんですが、五年ぐらい前にこの学校に転勤した際に一番採点が早かったのは私ではなく当時高橋先生の教育係をしていた私の妻になった人なんです」
「……それと採点が早くなったのと今一つうまくつながらないんですが」
なんというか端折られ過ぎてよくわからない。
「転勤してきた当初は私の採点速度はどの先生方より遅かったんです。当時まだ仮採用だった高橋先生よりもです」
「試召戦争では採点の特徴も反映されやすいですからね。そんなこともあって生徒から試召戦争では使えないと見られていたんです」
……確かに採点が早ければそれだけ反映されるまでの時間が短くて済む。採点は遅いけど甘い世界史の田中先生のような特徴があれば別なんだろうけど木内先生にはそれはなく、むしろ採点は厳しめの方だ。
「それを見た良美さん……木内先生の奥さんが煽ったんです。『生徒の役に立てない教師じゃ意味はない』って」
「あのときは本当にイラッと来ましたね……本当に」
当時を懐かしむように言う木内先生。
「でもそうしないと生徒のためにもならないと思って彼女の採点の速さを目標にすることにしたんです」
「それでいつの間にかライバルみたいになってしまって……競っているうちに互いに惹かれあってしまったんですよ」
なるほどね……争っていたらなんだか互いが互いを必要とするようになってしまった……っていうことなのかな? 木内先生、そこまで言わなくていいとでも言わんばかりに高橋先生を見ていますけど。
「今でも妻とたまにやるんですよ。でもいまだに私が負け越してますけど必ず勝ち越して見せます」
そうつぶやいた木内先生は心底悔しそうだった。
○
夕食も済み、風呂の警備をしていたらまたFクラスの男子が攻めてきたのでこれを撃退したり、今日の分の個人成績を整理したりした後、ちょうど見回りの時間だったので各フロアを回っていた時の事。
さりげに防音性能が高いこの合宿所ではあるがそれでもうるさい時はうるさいわけで
「静かにしろ!」
と叫んだのは一回や二回ではなかった。その原因はまくら投げだったり、言い争いだったり、処刑だったりとこれまたFクラスの生徒ばかりだった。
そんな中残りの巡回もするため歩いていると
「あれ、西村先生。なんでここに?」
「ああ、なんだか吉井達が騒ぎを起こしそうな気がしたから来たんだ」
いやまさかそんなことは
「てめぇどうしてくれる! 訂正メール送れないじゃねぇか!」
「そう、そうだよその気持ち! それが今僕が雄二に抱いている感情だよ!」
「静かにしろお前ら!」
……西村先生は吉井達の行動の予知でもできるんだろうか。あまりにも的確すぎる。
○
夜の見回りも俺と西村先生の担当があるので時間になった後、気になって吉井達の部屋に行こうとした。廊下は電気が付いているので暗くない二階の見回りが終わって三階へ向かうための階段へ向かっていたそのとき
(あの特徴的な髪形は……)
オレンジ色の髪にドリルテール、絶賛疑いにかかっている清水美春だった。合宿所には西側と東側の二つの階段があり俺が上ろうとしていたのは東側、清水が向かっていったのは西側の階段だ。
また何かやらかすきじゃないと東側の階段を上ると一つの部屋のドアがちょうど閉まるところだった。
(あの部屋は確か……姫路と島田がいる部屋か?)
ゆっくりと廊下を歩いているとドアが乱雑に開き清水が飛び出てきた。こちらには全く気付かずFクラスの面々が宿泊している西側のフロアへ入っていく。
……もうなんとなく次の展開が読めてきた
「助けに来ましたわ! お姉様!」
大方そんな事だろうと思った。うん、こいつが女子風呂に仕掛けていたとしてもやっぱり違和感感じない。
高橋先生に頼んで工藤から場所を聞きだし、施錠する前に探してもらったところ、やはりもう一台のカメラはあったそうだ。
「み、美春!? どうしてここに!?」
……なんか知らんが島田までいるのか。面倒だけど仕方ない。
「で、お前らは何をやっているんだ?」
「て、鉄人……じゃなかった。まだ話が通じる……」
……一応話が通じる人だとは思ってもらえているらしい。というか西村先生は話が通じない人扱いか。
「そこ三人、消灯時間過ぎてるんだから早く部屋に戻れ」
霧島と島田はしぶしぶと言った感じではあるが指示には従ってくれた。さて、問題は……
「私はお姉様の純情を傷つけたこの豚野郎を抹殺しないといけないんです」
「戻れと言っているんだが?」
「嫌です!」
もちろん
「そっか。じゃあ……」
そういって後ろを振り返れば……
「清水、貴様には補習が必要なようだな」
恐らく騒ぎを察知して飛んできた西村先生がいるはずだから。