第28話
バカテスト
第28問 大きな事件や異変が起こる前の一時的に訪れる不気味な静けさのことを何というか答えなさい
【霧島翔子の答え】
嵐の前の静けさ
【和泉剣のコメント】
正解です。先生とかがいつもと違う態度だと何かあったのかと驚いてしまいますね。
【木下秀吉の答え】
男子に告白される直前の空気
【和泉剣のコメント】
……まぁ頑張ってください
【吉井明久の答え】
処刑直前
【和泉剣のコメント】
……なんであそこまで本気で殺しにかかるのやら
○
さて陰謀渦巻く強化合宿が終了し再び学園生活に戻るわけだがこの週に以前から準備していた事を始めることになった。
何をするかというと平たく言えば相談室。俺がこの学校に雇われた理由である生徒の相談に乗るために以前から準備をしていた。生活指導室に衝立を置き一応ボイスチェンジャーも導入してプライバシーを保護するようにしてようやく開室にこぎつけた。……まぁ来るかどうかは知らないけど。一応月・木の放課後に開いてその他の時間は要相談といった形を取らせてもらった。俺も仕事あるんだから。
ところで臨時職員として働き出してしばらくたっているが教師になるためにするべきこととして教育実習があり俺がここに来るまでそれをしていたことは以前話した通りだがまだ実習授業をしていない。そのため二週間後ぐらいに行うことになっていたのでそれの準備もあり割と忙しい。
……先生ってやっぱり忙しい。
○
「その割に全く来ないこの現状は何なんだろう」
この日の放課後、相談室を開室したのだが今のところ誰も来る気配がない。三年にも伝えているはずだから誰かしら来てもいいような気もしないでもないんだけど……
「こんなシーンどっかで見たことがあるような気がするんだけど……どこだっけ?」
なんだか状況にデジャブを感じたのだがよく思い出せない。
コンコン
「どうぞー」
そんなことを思っていたらやっと相談者がやってきた。ちなみにだが衝立はガラスが曇りっぽい感じになっているので俺から見ると制服と髪形で性別を判断できる程度だ。どうやら最初は男子生徒らしい。
『あの……匿名でいいんですよね?』(ボイスチェンジャーを通した声)
「出したければ構わないけど匿名で大丈夫だ」
……相談に来る生徒は大概何かを抱えているから来るものだ。なのでこんな反応は当然だと思う。
「それで何についての相談?」
『この前の強化合宿の時にちょっとひ……女の子と気まずくなってしまって』
強化合宿ってことはこの生徒は二年生か。
「具体的にはどういうことだ?」
『男女対抗試召戦争のときなんですけど……その女の子に運悪くぶつかってしまって。絶対嫌われたと思うんです……』
まぁ乱戦になっていたからそんなことがあってもおかしくないだろう。にしてもずいぶん被害妄想が激しいな……
「ぶつかったぐらいなら謝れば許してくれると思うが……」
『その子のむ、胸にぶつかってしまって……』
……ラッキースケベとはこういうことを言うのかどうなのか。
『しかもその子は今謹慎中みたいで……ババァ長に文句を言ったんですけど聞いてもらえなくて』
……そういえば今日午後に学園長にあった時、処分に不満があった奴が学園長室に乗り込んできたっていっていたような。確か……
『そういうわけで姫路さ……女の子と仲直りするにはどうしたらいいでしょうか?』
……というか吉井だなこれ。となるとぶつかった女子っていうのはたぶん……というか間違いなく姫路だろう。強化合宿最終日に一時的に姫路の調子がおかしかったのは吉井との交錯が原因だったということか。
「……さっきも言ったけどちゃんと謝れば許してくれるんじゃないか?」
『で、でも女の子にあんなことしちゃったし……』
思い出したけど吉井も無駄に意地を張るところがあったな。特に女子関係の事になると。
「ところで少し話を変えるがこの相談室のある意味ってなんだと思う?」
『相談室のある意味? えーと……悩みを相談する場所?』
「まぁそうなんだけど……相談室のある意味っていうのは最後のひと押しをするっていうことが重要になる」
『一押し?』
「実を言うとさ、確かに相談室に来る人のほとんどは悩みを抱えている。それを何とかしたいからここに来るわけだ。でもそういう人のほとんどが実はもう答えを見つけているような人が多い。要するに答えが見つかっても不安だから相談に来る。それを読み取って一歩を踏み出すサポートをする。それが相談室とかのある意味だと思っている」
……まぁ今の話ほとんど受け売りなんだけど。
「たぶん君にも何をすればいいかの答えは出ていると思う。だけど決心がつかない、嫌われるかもしれない。そんな不安があるからここに来たわけだ」
『…………』
「自分の考えたように進んでみればいい。自分で納得ができれば後悔もないはずだ」
『分かりました。やってみます』
そういって男子生徒(たぶん吉井)は相談室を退室していった。
「青春やってるねぇ……俺はそうでもなかったけど」
自分の高校時代と比べて俺はそんな物思いにふけっていた
○
吉井(おそらく)が来たあとそれを皮切りにして何人かが相談室にやってきていた。が、しかし……
『女子にモテるにはどうしたらいいんですか!』
「とりあえず自分本位で動かず相手の気持ちを考えられるようになった方がいい」
『木下秀吉に告白したんいんです! いい方法を教えて下さい』
「一生かかっても無理だと思うからあきらめた方がいい」
『とにかくモテたいんです!』
「そんな考えじゃモテるモテない以前の問題だと思う」
……こんな感じでFクラスの生徒(きっと)が三人ほどやってきたが正直真剣に答えるほどの事でもなくそれ以前の問題といった印象が強かった。
……だってねぇお互いにお互いが牽制しあううえに常識を伴っていない状況でモテたいとか女子と付き合いたいとか言われてもどうしようもない。出直してこいと言って帰したが。優しくすることだけが教師ではないということだ。
コンコン
「どうぞー」
どうやら五人目の相談者が来たらしい。時間的にもこの一人で今日は終わりだろう。
『よろしくお願いします』
「よろしく。どう言った相談で?」
五人目も男子生徒のようだ。さっきまでの三人と比べると随分落ち着いているな……少なくともFクラスの男子ではないだろう。
『実は……好きな人がいるんですが気持ちを伝えるべきか迷っていて……』
あーこういうパターンか。パターン付けしてはいけないということは分かっているけど(千差万別だから)それでもある程度の傾向みたいなものは見えてくるものだ。
「どうしてその人を好きになったんだ?」
『それは……可憐で何事に対しても真剣に取り組んでいるということが特に……』
「なるほどね……」
『そしてなにより……一目ぼれしてしまったんです。吉井君に』
「なるほどねー吉井……はい!?」
たぶん職員室ぐらいまで聞こえるぐらい大声で叫んでしまったが俺は悪くない。そう信じたい。