バカテスト
第32問 世間で噂話をしていても、それは長く続くものではなく、やがて自然に忘れ去られてしまうものだということを何というか答えなさい
【姫路瑞希の答え】
人の噂も七十五日
【和泉剣のコメント】
正解です。それだけ世間が動いているということでもありますね。
【坂本雄二の答え】
明久と付き合っているなんて噂よ、早く消えろ!
【和泉剣のコメント】
だからいずれ消えると思うんですが……
【吉井明久の答え】
僕がバカみたいだという噂もいずれ
【和泉剣のコメント】
それは噂ではなく事実です。もっと精進してください。
○
「……つまり吉井たちを逆恨みした清水がクラスを煽動したと」
「Dクラスは若干女子が多いし、無駄に団結力が高い。代表の平賀も無難にまとめようとしたんだろうが押されると弱いからな……能力自体は決して低いわけじゃないんだが」
坂本の平賀に対する評価が高めなのは、描写にはなかったものの先日の強化合宿の際男子をうまくまとめていたことが大きいのだろう。男子に限ったことではないが指揮ができる人間はそう多くない。信頼と判断力がないとなかなか務めあげられないものだからだ。
ただそんな平賀でも清水が強硬に押し進める事を止められなかったのだろう。指揮をする人間にも得意不得意があるということだ。タイプが違うとも言うのだと思うのだが。
「…………ついでに盗聴器も見つけた。一応ジャミングしている」
「……また盗聴器か」
「抜くと動きに気付かれるしそれが妥当だろう」
坂本の言うとおり動きを感づかせないようにするにはそれぐらいがいいのだろうが……土屋よ、そんな技術どこで覚えた?
「Dクラスが攻めてくるのは分かったけど……雄二、勝算はあるの?」
「うちのクラスで補充がすんでないのは島田と姫路だけだ。対するDクラス側だが……」
「…………謹慎者が多いから朝から補充をしている。ただ明日まではかかると思われる」
「点数だけならある程度は太刀打ちできる。作戦を使うことが前提だがな」
坂本が現状をまとめているが……こうしてみるとやっぱりクラス間の戦力の差は大きいな。Fクラスはジョーカーが多いのもあって他のクラスとも太刀打ちできているが一つ上の三年のFクラスは普通に成績下位者の集まりだった。他のクラスもそのクラスにあった成績の生徒が集まっている。そのためか三年で試召戦争が起きたという話は今のところ聞いていない。
「現状確認はこんなものか。さて、まず島田の事についてだが……早急に真実を伝えるべきだと思う」
「それはその通りだな」
「確かにのぅ」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 勘違いなんてことが分かれば美波に……」
「それは俺がさせないから心配するな」
「ムッツリーニ、島田を連れてきてくれるか?」
「…………分かった」
忍者のように消えた土屋を見て俺はこの学校がやはりどこかおかしいということを再認識させられた。
○
「……それで、あのメールは間違いだったってこと?」
「そ、そういうことです……」
屋上に島田を連れて来ての話し合い。一通り話が終わったその時、島田が拳を振り上げたので
「はいストップ」
「なんでそんな紛らわしいメール送ってくるのよ!」
「それを確認もせず余計なトラブルを起こした島田が言える義理か!」
じたばたと暴れ今にも吉井に襲いかかろうとしている島田を抑えつけながらそう付け加えた。五分ほど格闘した結果なんとか襲いかかるのをやめる程度までは沈静化したので島田を放した。
「にしてもまた面倒なことになったな」
「これは俺としても頂けないな。まさか写真争奪のために召喚獣を使った争いになっていたとは……」
土屋が島田を連れてくる時一度教室に戻ったらしいのだが、その時西村先生が戦死者を担いで出てきたらしい。話を聞くと教室内で写真の争奪をしており、その延長で召喚獣での戦闘になったらしい。
……ちなみにその話の最中、土屋が血涙を流していたのは完全に余談だ。
「写真を使ってこっちの戦力を落としにきやがったか……」
「戦争としては間違ってないんだが……やっていることは相当陰湿だな」
味方同士で戦わせるというのを戦略と見るか陰謀と見るかでずいぶん評価の変わりそうなことだと思う
「とにかく早いこと清水を鎮めた方がいい。ムッツリーニ、頼む」
「…………わかった」
血涙を拭き終わった土屋が盗聴器のスイッチを入れて誤解であったことを清水にそれとなく伝えられたようでDクラスとの戦争は回避することができたらしい。その場にいたらまずい島田をこの場から離し、昼食を取っていたのだが……
「…………さらに面倒なことになった」
十分もしないうちにまた情勢が変わり再びFクラスに危機が訪れようとしていた。
○
「Bクラスが試召戦争を?」
「…………これがそのテープ」
土屋はテープを取り出し再生する場所を選んでボタンを押した。
『あ、あのっ、明久君の女装写真を持っているって本当ですかっ?』
『…………一枚100円。二次配布は禁止』
『あるだけ全部お願いしま……』
「…………間違えた」
「何!? 今の何!? 今の会話のほうが僕にとってよくない状況なんだけど!」
どう聞いても違うテープだった。……男子の女装写真が売れるってどんな学校だよほんと。
「うるさい明久。つまらんことで騒ぐな」
「つまらないことじゃないよ! なんで僕の写真が秀吉の写真と同じように裏取引されてるの!?」
「待つのじゃ明久! 今のお主のセリフの方がワシにとってよくない状況なのじゃが!?」
「一応教師の前なんだからそういう裏とか言うな。見て見ぬふりも大変なんだ」
さらっと注意したのは以前も言った通り土屋が運営している写真店は文月学園内でもかなりの力があるため仮に廃止でもしようものなら暴動が起きるレベルだからだ。……学園長も黙認しているみたいだったし。
「…………こっちが本物」
『Fクラスの様子はどうだ?』
『仲間割れを起こしたようでかなり点数を消費してます。それにこちらの動きには気づいていないようです』
『手間が省けたな。よし、補充を済ましていない奴の補充を続けろ。向こうが気づいたら即宣戦布告する』
「なるほど……清水が策を弄さなかったら根本の野郎が何か仕掛けてくるつもりだったってわけか。根本の陰湿さを考えればある意味清水が策を弄してくれて助かったともいえるな」
「どういうこと?」
「聞いた話だが根本は一学期の試召戦争の際もかなり陰湿な策を取ったと聞いているが?」
「うん、姫路さんのラブレターを人質に」
……有機物を人質にとったと言っていいのかわからんがまぁいいだろう。
「清水が仕掛けたのは単なる同士打ちだ。それを根本が仕掛けたとしたら……」
「そうとう陰湿な策に……」
「そういうこと」
「というか和泉先生、アンタ教師なのにこんなことしていていいのか?」
坂本が俺がここにいることが気になったようでそう尋ねてきた。
「別に協力さえしなければ問題ないらしい。Fクラスに有利になるように動くとかしなければ特にそう言った罰則はない。単に興味を持っただけだしな」
たまたま昼食をともに食べていただけだが試召戦争がどういう風に行われるのか、坂本の策って言うのも見てみたくなったというのもある。
とりあえず今は話の続きを聞くとしますか。