バカテスト
第36問 宴会などで行われる多人数が集まって楽しみながらプレイするゲームのことをなんというかこたえなさい。
【霧島翔子の答え】
パーティーゲーム
【和泉剣のコメント】
正解です。こういったゲームをする際は個人の資質にあまり左右されない偶発的要素が強いゲームがよいとされます。楽しむことが前提なのでそこは忘れないようにしましょう。
【吉井明久の答え】
友情破壊ゲーム
【和泉剣のコメント】
もう少し楽しむことに重点を置いたほうがいいのではないでしょうか。
【清水美春の答え】
豚野郎破壊ゲーム
【和泉剣のコメント】
リアルファイトはやめてください
○
『さぁ全員が所定の位置につきました! それではこれから親を決めます』
「どうやって決めるんだ?」
『ここは一番東側にいる吉井選手にサイコロ二つを振ってもらい、出た目の数だけ反時計回りに数えて決めます』
「完全に麻雀の親決めじゃねーか……」
ただのパーティーゲームのはずなのになぜか麻雀の親の決め方で進行するゲームに雄二は呆れ顔だった。
「……製作者の中に麻雀好きがいたから。それに何にしろ回す順番は決めないといけない」
「……まぁそうだけどよ」
翔子の言うことはもっともではあるが他にもっと決め方はあるということを雄二は言いたかったのだろうが反論するだけの材料もないのでそれ以上のことは言わなかった。
『それでは吉井選手、出てきたサイコロを振ってください!』
「うわっ! 床が開く光景なんて初めて見た……それっ!」
床が開いてサイコロが出てきたことに驚いてはいたがすぐにサイコロを振る。
「出た目は10……ってことは」
「一周回って明久に戻ったの」
『……まぁこういうこともあるから気にしない方針で行くけど。とりあえず詳しいルールをできる限り簡単に説明します! プレイヤーは各々一つずつ割り当てられている機械から出てくる四本の剣のうち一本を選んで刺していきます。先ほど説明したように青ひげを飛ばしてしまうと剣に書かれている罰ゲームをしてもらます! 罰ゲームが書いていないアタリのもあるからどの剣をを残すか、どの剣を使うかもポイントになるでしょう。なお1ゲームにつき1度だけ順番を飛ばせるパスを使えます。青ひげを飛ばすか、罰ゲームを実行できないと失格になります』
「……おい、今どう聞いても矛盾しているルールが」
『それでは始めましょう! ゲーム開始です!』
雄二が剣の説明の中にあった違和感に気付くが剣はそれを受け流してゲーム開始を告げる。
一人目の明久から順番に優子、秀吉、雄二、翔子、ムッツリーニ、愛子、美波、瑞希の順にゲームが進行する。
「じゃあ僕からだけど……いったいどんな恐ろしい罰ゲームがあるんだ……」
とりあえず明久は4本の剣の罰ゲームを確認する。
・メイド服を着る
・ドレスを着る
・浴衣を着る(女性用)
・セーラー服を着る
「全部女装じゃないか!」
明らかに悪意がこもっているのではないかと思うぐらいにひどい手札だった。どれ一つ救いがない。
『……資料には罰ゲームの一覧もあったんだが……執事服とかそういうのもあるはずなんだけどな……どうしてこうなった?』
もはや放送席にいる剣も困惑を隠せずにいる。
「さっさと進めろ明久」
「…………遅延行為」
「二人だってこんなの嫌でしょ!? そしてムッツリーニ! そう言いながらカメラの準備をしている理由を説明してもらおうか!」
「いいから早くしてくれ。こちとら間が空きすぎて感覚狂ってんだ」
「それここの都合じゃないよね!? 間違いなく外側の都合だよね!?」
明久の突っ込みは理にはかなっているものの、この空間に生じたメタな空気には通じなかったらしい。
「はぁ……冷静に考えたら一回目だしいきなり当たるなんてことはないよね……たぶん。それに……勝てばいいんだし」
明久はおもむろに剣を選んで刺す場所を選択し始めた。
「さて……行くよ!」
「待ってください明久君!」
「へ? どうしたの姫路さん?」
刺す場所を決めた明久に瑞希が声をかけた。
「そ、その……どの剣を選んだんですか?」
「え……メイド服のを……」
「そうですか! ちょっと待ってくださいね!」
瑞希はムッツリーニのもとに駆け足で向かい、少し話をした後元の位置に戻った。刹那、明久の背筋に何か冷たいものが流れた気がした。だらりという擬音がおそらく的確だろう。
「お待たせしました」
「待つんだ姫路さん、今のひそひそ話になぜか僕の貞操の危機が迫っているがするんだ。って美波!? なんで美波もムッツリーニとひそひそ話を!?」
「気にしないでさっさと刺しなさい!」
「そうですよ! 決して明久君を世界でby……いえ何でもないです」
「中途半端で切るのはやめて! 怖いから!」
(話題が尽きない奴らだな……)
放送席の剣は少々疲れていたようで突っ込みを入れる気も起きなかったようだ。
○
『えー……紆余曲折ありましたが吉井選手の刺した剣は青ひげを飛ばさなかったのでセーフとなります』
「…………チッ」
「残念です……せっかく女装姿が見れると思っていたんですけど」
「そうよ! アキはもっと流れを考えるべきよ!」
「僕、なんで責められているんだろう?」
成功したはずなのに明久にかけられる言葉はなぜかお叱りの言葉だった。
『やり方はわかったと思うから早めに進めてくれ。ちょっと時間が押しているからな』
剣がそう言ったあとからゲームは徐々に進んでいく。
「飛ばさなければいいのよ。飛ばさなければ!」
「選択肢は多分に残っておるしの」
木下姉弟がクリアしたのを皮切りに雄二、翔子、ムッツリーニ、愛子、美波、瑞希と回り一巡が経過。二巡目に入り明久と優子がクリアし秀吉が二本目を刺したところで異変が起きた
『ピーッ』
「なんじゃ? 今何か音がしたような……」
『えーと木下、今刺した剣の内容読み上げてもらえるか?』
「んむ? えーっとじゃな『コスプレ(女性用高校制服)』じゃが」
『さっきの音は失格にはならないけど罰ゲームを受けないと失格になるということだ。』
「なんじゃそれは! 初耳じゃぞ!?」
「なるほどな……さっき微妙に矛盾したルールがあると思っていたがそういうことか」
「……元々そういうルールだった」
「あんまりじゃ!」
『ただ拒否するかは個人の自由だからな。これで失格になってもダメージはない』
ちなみに剣がもうひとつのルールについて微妙にぼかしていたのはそのほうが面白いからというだけである。この男の頭にもこの世界の感覚が入ってきているのだろう。
「さすがにリタイヤしたくはないからの……着替えてくるぞい」
「「(ワクワク)」」
(ダメだこいつら早く何とかしないと……)
男に興奮する時点でいろいろとあれだとは思うのだが元の世界でも割とそういう風潮があるのが恐ろしいものだ。
○
「なぜかウィっグまで用意されておった……なぜじゃ?」
帰ってきた秀吉は紫色のツインテールのウィッグに赤を基調とした女子制服……ま、要するにひらがな四文字のタイトルのマンガのキャラの格好になっていた
「……これは、いい!」
凝視する吉井に周りをカメラでひたすらにシャッターを切っている土屋。
『これ……ちゃんと最後まで終わるのか?』
そんな思いはもはや昴の中だけでは処理しきれずについ言葉にしてしまうほどであった。