バカと渡世と半人前   作:順風

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第4話

バカテスト 化学

 

第4問 塩酸は社会でどのようなものに使われているか答えなさい

 

【霧島翔子の答え】

 

工業用の洗浄剤や洗剤、化学研磨剤など

 

【和泉剣のコメント】

 

正解です。私は専門じゃないので前者の回答ぐらいしか知りませんでしたが実際にこういった使われ方をすることもあるようですね。いずれにしろ正しい使い方をすることが重要です。

 

【土屋康太の答え】

 

理科の実験

 

【和泉剣のコメント】

 

まぁ予想の範囲内ではありますが不正解です。

 

【姫路瑞希の答え】

 

料理

 

【和泉剣のコメント】

 

死人を出す前に家庭科だけ小学生からやり直して来てください。

 

 

 

「先生! 助けてください!」

「……何があった?」

 

廊下を歩いている俺の目の前に突然現れた吉井。こっちは午前中の授業のまとめを書かないと……

 

「このままだと……僕死にます」

「吉井、大げさだろう。お前が死ぬわけがないだろう。バカなんだから」

「バカは風邪引かないみたいなノリでいわないでください!」

 

指導室から声を聞いて出てきた西村先生からもさんざんな言われようだな……いいのか文月学園……ん? 昼休み……昼食……おとといの吉井の話に確か……

 

「まさか……まさかと思うが……」

「そうです! それです!」

 

化学物質を混入した料理を出すというクラスメイトがいるとか言ってたあれか!

 

    ○

さて……いきなり話が跳んでいたので補完的な意味も込めて今日の俺の行動を簡単に紹介しよう。

 

まず登校。特に変わったことはない……と思いきや目の前でスタンガンから逃げている男子生徒がいた。女子生徒の方は美人なのにもったいない……というか傷害容疑寸前だぞ。警察仕事しろ。

 

……そういえば吉井の話に似たような状況があったような気がするが……まぁいずれわかるか。

 

登校後の職員会議。正式に教師として(しつこいが免許はまだない)初めてのことなので緊張はする。自己紹介をしたが昨日会った危険な人は若干震えていた。多少呵責は感じるが俺は悪くないので気にしないことにする。

 

三回目になるがまだ免許がない。なのでしばらくは授業見学とそれについてのレポートを出すことになっている。一時間目はDクラスの現代国語の授業だった。

 

このクラスはごく平均的な教室という感じで授業もいたって普通だった。がしかしえらく目につくのは元の世界なら速攻で校則違反でとっ捕まる事確実のオレンジ色のツインテール……もといドリルテール。登校時見た2人も紫と赤毛だったがこれも大丈夫なのか? と聞きたくなったので西村先生に聞いたところ「一応は問題ない」とのこと。

 

自然に会話してたから忘れていたけど吉井も金髪っぽかったと思いだしたのはその時だったりするが。

 

二時間目はCクラスの化学。一言で言うなら大学の講義をする場所といったイメージだろう。つい最近まで大学にいた身だから懐かしい感じがする。

 

三時間目はEクラスの英語。ここはなんというか小学校の木工室とかそういった表現が的確な感じの教室だった。ちなみに俺は英語はからっきしなのでこのクラスの英語でもギリギリだったりする……

 

そして四時間目。Aクラスの日本史の授業にお邪魔したが……

 

(ここ……どこのホテル?)

 

まず内装。絨毯にどうみても高価そうな椅子……というかソファ。一人がけの。さらに手元には紅茶か何かを汲むためのティーセット、何か知らんが冷蔵庫まであるし。

 

……この環境で勉強できる自信ないな……友人なら間違いなく堕落するレベルだ。

 

そんなぶっ飛んだAクラスの授業を眺めこういうところで耐えられる人間が一流なんだろうなぁとか中堅大学在学だった以前を思い出しながらふけったりしているうちに昼休みになった。

 

   ○

 

で、ようやくここで冒頭に戻るわけだが……

 

「……そのクラスメイトは何を作ってきたんだ?」

「……クッキーです。木イチゴの」

「クッキー?」

「『酸味が足りないので水の代わりに酢酸を入れました』って……」

「…………酢酸? ちなみにどれくらい?」

「……200ミリリットル」

「…………」

 

一同に沈黙が走る。化学は専門外だから確か……あっちょうどいい所に

 

「布施先生、酢酸の致死量教えてもらえますか?」

「はい?……一般的には160ミリリットルと言われていますが……」

「ありがとうございます」

 

それを聞いて吉井はすごく震えている……200ミリリットルも入れたということは……

 

「俺の考えが正しければその子かなりの量のクッキーを持ってきていると思うんだが……どうなんだ?」

「はい、かごいっぱいの量でした」

「……クッキーの標準配合は小麦粉100グラムにつき30ミリリットル。つまり計算上650グラムオーバーのバイオクッキーが存在していることになる……」

 

なんか……考えただけなのに恐ろしさで身震いしてきた。

 

「で、その子は今どうしてるんだ?」

「意地でも僕らに食べさせようと追いかけてきて「どこにいるんですか明久くーん!」ひっ!?」

 

あれか? 料理の腕を自覚していないヒロインって感じの子なのか?

 

「……とりあえず職員室に来い。俺のスペース隅の方だから邪魔にならないだろうし次の時間Fクラスの授業見学だしな。いいですよね西村先生?」

「……ああ、吉井に同情することはめったにないんだがさすがにこれは俺も同情せざるを得ない……」

「あれ……なんかこの期に及んでもバカにされたような気が……」

 

     ○

遅い昼食を食べながら吉井の話を聞くどうやら原因はあの料理だけではないこともわかった。

 

事の発端は間違いなくバイオクッキーなんだろうがそこに関節を曲げられる女子(吉井は美波と呼んでいた)が自分の弁当の料理を食べさせようとしたという。……その状況どうみても吉井に好意があるんじゃないか? と聞いたところ

 

「あの二人が僕に好意なんて持つわけないですよ! 特に美波にはいつ殺されるかと……」

 

……吉井の鈍感+女子の過剰なツンデレか……まるでライトノベルだな。

 

話の続きに戻ると美波という女子が弁当を食べさせようとするとその子を愛している(ガチの百合だと聞いて引いた俺は悪くない)Dクラスの清水という女子生徒が乱入、なぜか学年主席も乱入してきて(こちらは別件だったらしい)殺されないために逃げ延びてきた。大まかにまとめるとこういうことらしい。

 

元の世界なら訴えれば確実に勝てるレベルのことが平然と繰り広げられているというからまた愕然とした。

 

本当に大丈夫かこの学校……

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