気がついたらONEPIECE世界で霊体になっていたんですがこれは(仮) 作:無闇
「つまりは…どういうことだ?」
少し怒気の含んだ声でそう問いかける。
わかってはいるがわざわざそう問いかけるということは、ドフラミンゴもそうは思いたくはなかったのだろう。
コラソンが裏切ったなんて。
《コラソンが海軍のスパイだったんだ》
しかし現実は非情で。
ドフラミンゴの表情はずっと先程から真顔だ。彼は笑ったりするが、怒り、悲しみや呆れなどはあまり表情には出さない。そういう時は大抵、無表情である。
今この時もそうであり、剣を向けてきたディエス・バレルズの部下の頭を引っ掴み、その手に力を入れていた。まるで、八つ当たりのように。
《ドフィは今何処に?》
電伝虫から聞こえる、自身の部下…初代コラソンであるヴェルゴの声にあぁ、と呆れ混じりな声で答える。
「スワロー島にいたんだが、軍艦二隻を見た時は流石に気づいたよ……可愛い弟が裏切ったってなぁ」
眉間に皺が寄る。
ドンキホーテファミリーにとって、裏切りはご法度である。それはもう罪深く、死刑に値する。例え、実の弟だとしても。
「改めて思ったよ、俺の家族はお前達だけだ」
そう宣言した。
そのドフラミンゴの言葉に、付き添っているファミリー達は全員微笑んだ。だがそれは優しい笑みでは無く、ニヒルな笑みだったが。
「ミニオン島に上陸したが……一歩遅かったようだな」
《…あぁ》
「“オペオペの実”を盗まれたと大騒ぎだ…ヴェルゴ、そこにコラソンがいるのだろう?…絶対に逃がすなっ!“オペオペの実”を持っているぞっ!」
《わかっ…いない!彼奴らっ》
「……逃げたか」
ドフラミンゴの指示にヴェルゴは頷くが、先程までいたコラソンとローがいないことに気づく。
その場所には、血で染まった雪だけ。あの傷の量で動けるなど、コラソンは相当タフなのだろう。
「まぁいい。町から出ていないのなら…逃しはしない」
そう告げて、通話を切る。
ドフラミンゴが無表情のまま自身の能力を発動させた。何重にも重なった太い糸は、空を中心に町を囲うように落ちて行く。
まるでそれは“鳥籠”のよう。
この町にいる人々はたった今、自由を失った籠の鳥へと成り下がった。
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ローがコラソンを助けようと、声をかけた海兵はヴェルゴだった。
初代コラソンであるヴェルゴの事は、何処かの任務についているという情報しかファミリーには知らされていなかった。海軍に潜入調査中など、当の本人であるヴェルゴと指示したドフラミンゴしか知らないも当然。
最悪の事態になった。コラソンが必死に書き上げた文書は千切り捨てられ、武装色の覇気を全身に纏って殴られる。鳩尾ばかり狙われ、既に満身創痍。更にはローも殴られ、口から吐いた血や頭の切り傷から流れた血などで純白の雪は桃色に染め上がった。
そんな彼らが逃げた。何処にそんな体力があったのか、ヴェルゴは首を傾げたが…それは間違いでもある。
正確には満身創痍だったが、そこまで傷は深くなかったということ。
本来コラソンは何発もの銃弾を受けた状態で殴られているはずだが、実はそのバレルズの部下にやられた銃弾による傷は完治しつつあったのだ。
理由は何者かによる適切な処置のお陰で、コラソンの身体には銃弾など一つも無く、異物が無くなったことにより本来の治癒力がその傷を治そうと働いたということ。そんな魔法みたいなことあるわけないだろう、しかしあったのだ。現に起きたのだから。
「(…治療されてなきゃヤバかったかも知れない…)」
ヴェルゴから逃げ延びたコラソンは使われていない民家へ隠れていた。
コラソンは硝子のない窓から空を見上げる。上空には白く太い糸が張り巡らされていた。
血はもう止まっているが、銃弾が残ったままで血も垂れ流しになっていたのなら、大量出血で血が足りず立てる事すらできなかったかも知れない。
コラソンはローとヴェルゴが来るまで軽く気絶していた。その間に治療を施されたのはわかるのだが、一体誰が?只々首を傾げる。
「…っ…コラ、さん…?」
か細い声が聞こえた。それは聞き慣れたローの声だ。
ローが気づいたことに安堵し、優しく声をかける。大丈夫か?と。
軽く大丈夫と微笑んだローは、遥か上空にある白い糸に気づき目を見張る。
「なんだ…あれ…」
「……恐らくドフィの能力だろう…見たことはないが…」
コラソンの目線の先ではバレルズの部下達が互いに殺しあっていた。…いや、一方的に殺しているという方が正しいだろう。
身体が傀儡人形のようにカクカクと動く者は皆、己の武器を用いて仲間を殺して回っていた。誰もが“止めてくれ”と泣き叫びながら。
これもドフラミンゴの能力の一つである。
“パラサイト”。
それは人を操る能力。一度ドフラミンゴから放たれた糸に絡み取られたが最後、傀儡人形と化す。自身では動くこともできず只々操られるのみ。
ドフラミンゴは好んで仲間同士で戦わせる。それは相手戦力を削ぐ意味でもあるが、被害者達には一溜まりもない能力だ。
だって嫌だろう。仲間に刃物を向けられ殺されるのは。裏切られた、皆そう思う。
「(檻の中で“パラサイト”……地獄だな)」
再び眠りについたローに近寄り、屈む。そしてその頬を撫でながらコラソンは一つの決意をした。
彼の目にはもう迷いはない。
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「マリンコード01746…海軍本部ロシナンテ中佐」
拳銃をドフラミンゴに向けながらそう告げた。
コラソンの目の前には、バッファローやベビー5以外のドンキホーテファミリー全員が勢揃いしていた。
ドフラミンゴを中心として並んでいる彼らの目は全てコラソンに集中しており、当のコラソンはそれを物ともせずに言葉を続ける。
「ドンキホーテファミリー船長ドフラミンゴ。お前が生み出す惨劇を止めるために潜入していた…俺は海兵だ…!」
嫌われたくない。只それだけで、隠してきた事実。だが、ローにはバレバレであり逆に隠しているのかも怪しいほどであった。
本当に隠すつもりがあるなら、目の前で海軍元帥と通話なんてしない。
バレてただろうなぁ、とコラソンはふっと笑いながらドフラミンゴを見据える。
巫山戯るな、そう一括してドフラミンゴはコラソンに吼えた。
「“オペオペの実”を何処へやった!?ローは何処だっ!?」
明らかに血管が浮き出ている。それはドフラミンゴの怒りが頂点に近づいている証拠。
コラソンはそんな兄から発せられた言葉に鼻で笑う。 彼にその質問は愚問であった。
何せ、“オペオペの実”はローに食べさせたのだから。
その事実を聞いたドフラミンゴは眉間に皺を寄せる。
「上手く能力で檻から逃げて、今頃海軍の監視船に保護されてるだろうよ……手出しはできねぇぞ?」
勝ち誇った笑みを浮かべる弟に、ドフラミンゴは歯を食いしばる。相当怒っている。彼の近くにいたファミリー達の位置が少しドフラミンゴから遠のいた気がした。
上空から島を見ていたバッファローとベビー5はドフラミンゴに通信で“監視船で少年を保護した”というのを聞いたことを伝える。もっと早く教えてほしい情報だった。
コラソンは驚いた。ローならコラソンがもたれ掛かっている宝箱の中にいるのだから。つまりその少年は知らない誰かと言うことだが、コラソンやローにとってこんな有難いことはない。
ドフラミンゴは直様指示を出す。これからその監視船を沈め、ローを奪え返すと。監視船からすればとばっちりな罪だが、ドフラミンゴはそう思い込んでいるのから仕方が無い。
このまま送り出してしまうのもいいが、一つ気になる。もう既に保護された--と思われている--ローを追ってどうするのか…それだけを聞きたかった。
だが、返ってきた答えは半ばコラソンの予想していた通り。
自身の為に死ねるよう教育すると、そう言って嗤う。
ドフラミンゴは懐にしまった拳銃を取り出し、コラソンに向ける。カチャリと静かに音がなった。
「…何故二度も家族を殺さなきゃいけないんだ」
怒りを混じえて言ったその言葉は捉え方によっては死んで欲しくはないよう聞こえる。
だが、彼はドンキホーテファミリー船長。今この時、コラソンを逃したりすれば…コラソンはドンキホーテファミリーがしてきたことを全て海軍に話し、今後の計画も無くなってしまう。それだけは避けねばならない。……ならどうするか?
答えは一つ。
死人に口無し、だ。
「ローはお前には従わねぇよ…」
ふらりと拳銃を向けながらも立ち上がる。
コラソンの身体はもう限界だった。最初に受けた傷は癒えつつあるが、ヴェルゴによる武装色付き鳩尾集中攻撃、ピーカによる岩石での締め付け、ディアマンテによる金属バットでのフルスイング、グラティウスによるただの蹴り…その全てがコラソンの身体にダメージを蓄積して行っている。
今この時、生きているのが不思議なくらい彼は重症だ。
そんな彼は言う。
ローは打ち勝ったのだと。あと三年しかなかった命が救われた、彼奴はもう自由だと。ほっといてやれと、そうドフラミンゴに叫ぶ。
ドフラミンゴは額にまた血管を新たに浮きださせ、ついに引き金を引いた。実の弟に向けて。
最初は二発。
コラソンの身体が浮かんだところでもう二発。
止めに五発目を撃ち、辺りに銃声が響く。
宝箱に再度強く打ち付けられ、生きる活力を失い動かなくなったコラソンから目を離して、ドフラミンゴはファミリーの元へと歩き出す。
「船に戻るぞ!」
あれだけコラソンの前では怒りを露わにした彼の表情筋は今やまったく動いてはいなかった。
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死んではダメだ。
そう自分に強く言い聞かせる。今死ねば、自身のかけた能力が解けローの声が、音が島中に響いてしまう。それだけは避けたかった。
自分はもうすぐ死ぬ。兄を止める、なんて目標は叶わなかったけれど、充実した日々だった気がする。
特に、この半年間は楽しかった。ローと笑い合い食事を共にした、あの日々は。
「…(結局ステラには、会えなかったなぁ…)」
ローが一人の時いつも笑っていた。誰かがいるのは明白だった。
最初の頃、中々打ち解けなかった時はその光景を目にして少し相手を妬んだモノだ。
まぁその相手が見えない奴なんて、思いもしなかったが。
ステラという子はローが言うにはローにそっくりらしい。昔に親から暴力を受けていた彼女は大人が怖いんだとか。その事実は驚いたけれど、彼女もまた優しい子なのだと思った。優しくなければ、大人が怖くはならない…逆に恨み危害を加えるだろう。彼女がいればローは安心だろうなぁ…。
…死ぬ時は眠たいと言ったのは誰だっただろうか?今はそれに共感ができる気がした。
「(…歩け、ロー)」
気づかれず、そっと…遠くへ。
お前を縛るものはもう何もない。
白い街の鉄の柵も、短かった寿命も…もう何もお前を制限するものはない。
瞼をそっと閉じる。
「(お前はもう…自由なんだ)」
次会う時は、あの世かな…?
「銃弾五発…肋骨にヒビ、内臓出血……生きてるのが不思議なくらい…」
……?
「…まだ貴方は死ぬべきじゃない」
……誰だ?
「生きてコラさん…必ず」
……そりゃ無理な相談かもなぁ。
そう心の中で呟く。
この世に繋がっていた意識が段々と遠のいて行く中、俺が最後に見たのは白いファーの帽子をかぶった子供の姿だった。
ローの姿によく似ていた。
メリークリスマス!作者は今年も友人達と過ごします、悲しいっ!!青春したいっ!←
ということで!幼少期編終了!
次の話は番外編?で、設定や幼少期編に対するあとがき、これからの話を年明けに。
ではでは、よいクリスマスをー!